度重なる悪夢に悩まされ、眠りにつくことを嫌悪していたケイリンはある日、映画館で魅力的な男性シェーンに出会う。悪夢を見て叫び声をあげていたところを運び出してくれたのだ。今までにない安心感を覚えて、四年前に妹が誘拐されたこと、予知夢を見ることを打ち明ける。あまりに理解ある態度を不信に思って問いただすと妹を見つけるために父から雇われたという。「君の助けになりたい」燃えるようなシェーンの熱い目に見つめられたケイリンの心は揺れた。彼を信じたいけれど、本当に妹を見つけられるだろうか。
不世出のスーパースター・アントニオ猪木がリングを降りて10年。人気の凋落、有力選手の相次ぐ離脱、「リアル」の時代を標榜する総合格闘技の台頭…。プロレスは、時代の流れに取り残されてしまったかのように見える。闘いを通じ男の生きざまを魅せる格闘ロマン「プロレス」は、なぜ終わってしまったのか-。かつてあの熱狂の渦の中にいた人間たちの証言を得て、世紀の“大沈没劇”とその行方を検証する。
アリソンが恐れていた日がついに来た。二年半、必死に忘れ去ろうとしていたルークが現れたのだ。彼女が経営する傾きかけたホテルへの投資者として。ルークは、女性なら誰でもひれ伏すほどにすてきな男性。そしてアリソンを無惨なかたちで捨てていった人…。アリソンはルークと別れてから子どもを生んだが、もうすぐ二歳になる息子の存在を、彼には告げていなかった。だがルークはどこからかそれを知り、息子に会いたいと言う。金と権力と危険な魅力で、すべて思いどおりにするつもりなのね。それにしても、彼はずっと前にほかの女性と結婚したのに、どうしてわたしの息子を必要とするの?今度だけは、けっして彼に屈するわけにはいかない。
米国で過去30年、日本でも小泉政権以降“構造改革”という名で推進された新自由主義的改革。しかしその帰結は超格差社会、そして“リーマン・ショック”に始まる世界同時不況だった。本書は今日の状況を恐ろしいまでに言い当て、また未来への指針を明確に示している。
未曾有の不況の中で、苦しくなる一方の国民生活。しかし強欲な役人は、この期に及んでも自分たちの利権を主張するだけ。まさに「官僚栄えて国滅ぶ」。こんな状況を、いったい誰が救えるのか?気鋭のジャーナリストが霞が関を斬る。
豊かさと平等を標榜する「理想の国」アメリカ。建国時からオバマ大統領の「Yes, We Can.」に至るまで、その理想は高々と掲げられ、人々を導いてきた。しかしその一方でこの国は、その理念・理想を裏切るような、複雑かつ困難な問題をいくつも抱え込んできた。人種問題、貧困問題、暴力・リンチ、家庭の崩壊……そうした現実に、アメリカ文学はどう立ち向かってきたのか。19世紀から現代に至るまでの、代表的なアメリカ文学作家(ホーソーン、メルヴィル、ジェイムズ、ヘミングウェイ、フォークナー、バース、パワーズなど)のテキストを通して、理想と現実のはざまで苦しむ「アメリカ」を、作家の想像力がいかに描いてきたかをたどる。
第一章 「家庭」なき「家」の「日常」 ─『七破風の家』随想
第二章 『大理石の牧神』の「幸運な堕落」をめぐる二重のプロット ─十九世紀アメリカのデモクラシーとプロヴィデンス
第三章 メルヴィルと貧困テーマ ─声を上げる貧者たち
第四章 『大使たち』とジェイムズのアメリカ ─ニューサム夫人「殺し」を読み直す
第五章 「新しいニグロ」と「白人なりすまし小説」 ─ハーレム・ルネッサンスの理想とパラドックス
第六章 記憶のまなざし ─「リンチの時代」のアメリカとフォークナーにおける暴力の表象
第七章 禁酒法時代から読む「ドライ・セプテンバー」
第八章 原罪から逃避するニック・アダムズ ─「最後のすばらしい場所」と楽園の悪夢
第九章 作家の作家の声 ─二つの「音声計画」に見る創作科の声の政治学
第十章 際限のない可能性 ─リチャード・パワーズと『ガラテイア2.2』
山津波で宿を追われた旅人たちが辿り着いた丘の上の村は、かつて貴族と外宇宙生命体とが死闘を繰り広げた古戦場であり、“神祖”が作った実験場に隣接していた。過去を留めたまま眠りについていた村と貴族の城塞は、旅人を迎えて突如目覚め、村にOSBを素材にした合成生命体が徘徊しはじめる。一行のパニックが頂点に達した時、Dが現われた。圧倒的な人気を誇る“吸血鬼ハンター”シリーズ、書き下ろし最新刊。
物心がついて以来、ケイトは悪夢に悩まされてきた。円満な家庭で何不自由なく育った、正直で優しく、陽気で勇敢なケイトにとって、そのしつこい夢の正体は全く不可解なものだった。そんなケイトが、ある日軽い気持で出かけたクリニックの献血室で隣り合わせた男に一目惚れし、心臓が宙返りをしてしまう。“笑顔がとてもすてき。なんて感じのいいひとかしら”この日の偶然の出合いは、ケイトが密かに思い描いていた“未来”を暗示しているかのように思われた。すっかり心を奪われた彼女は大胆に男にアプローチする。しかし…その男が思いもよらぬ苛酷な運命を背負わされていることを、そして善意の献血が悲しむべき夢の真相を明かすことになるのを、その時のケイトはまだ知らなかったのだ。
SCMは複雑難解ではない。SCMは、人間の常識で理解できる知恵と技法の集まりである。SCMを計画し実施することによって、プロジェクトを大きな失敗の可能性から護ることができる。本書は、ソフトウェアコンフィギュレーションマネージメント(SCM)に関する、この基本的な真実を明らかにしたものである。さまざまなパターンとアンチパターンがそれぞれ、ソフトウェア開発のどの分野に属するかを、読者が素早く識別し、さまざまな具体的な問題状況の中で資料として役立てられるように分類し、表にまとめた。
大富豪ワイマンは、莫大な資金を投じて、完全コンピュータ制御の外洋ヨットを完成させた。性能を誇示してビジネスに役立てるつもりだ。厳冬のベーリング海を越える世界一過酷なレースに出場した艇の勝利は、確実と思われたがー襲いかかる大波、閉鎖空間で高まる緊張、コンピュータの不審な動き、そしてもうひとつの敵の影が…。息をもつがせぬ波乱万丈の海洋冒険サスペンス。
膝の上で食事を口に運んでもらい、着替えさせてもらって素肌を重ねて濃密な愛撫で親愛の情を確かめ、その証として紅い痕を体に刻んでもらうー。幼い頃に両親を亡くし、親戚である柊慈と暮らす一希は、彼の深い愛情に浸り切っていた。だが柊慈の親友で暴力団若頭補佐の功に、無自覚ながら恋心を抱き始める。そんな時、柊慈が功を庇って負傷し、誘拐されてしまい…。
それは、夏のある昼下がりのことだった。メレディスはプリーリの木陰で、葉ずれの音に身をまかせるように、静寂の中にまどろんでいた。ふと人の気配がして、目を開ける間もなく影が顔にかかり、そして…やさしく唇が奪われた。ああ、やっとこの人は私のもとに帰ってきた。幸せに酔いながらメレディスは、慎み深く、やがて熱い情熱に翻弄されて彼の口づけにこたえた。「マイケル、あなたなのね?」彼女はささやいて目を開けた。じっと見つめるブロンドの男性は…マイケルではなかった。
「すごく忙しいの。会社を出るのは毎晩七時過ぎよ」ステファニーが疲れた顔でこぼした。同僚のジェシーは、ちらりと意味ありげに彼女を見て言った。「いつも社長が送っていくんですってね」ステファニーはどきっとし、必死に心の乱れを隠そうとした。ジェシーが笑って言葉を継いだ。「ロマンチックね、社長が秘書に恋をするなんて」「いやだ、勝手な想像されちゃ困るわ」「でも普通は、残業したからってだれも送ってくれないわよ」ステファニーは黙った。あの事件のせいで、社長との間柄は…。
あるパーティの夜パーシファの後見人マーカス・ストーンヒルが心臓発作で急死する。彼はパーシファの亡き母の愛人だったが、彼女にとってもかけがえのない理想の男性だった。マーカスの親類から追い出され、途方に暮れたパーシファの前にただ一度会っただけのメキシコの大領主ドン・ディアブロが現れ、自分はパーシファの夫になる男だという。それがマーカスの遺志だと知った以上、彼女には逆らうことができず、ともにメキシコに来るが、美しい花々に囲まれて岩山にそびえる館は、パーシファには牢獄に等しく、夫に対しては憎しみがつのるばかりだった。