・血管、リンパ管の機能不全は、動脈硬化、高血圧、肺高血圧症、浮腫などの疾患を引き起こす。また一方で、過剰形成は、がんや糖尿病網膜症の病態進行を促進する。
・シングルセルRNAシークエンシング技術の進展により、血管を構成する細胞の臓器、疾患における多様性が明らかになるなど、血管研究は大きなパラダイムシフトを迎えようとしている。
・COVID-19でも血管の機能不全が重症化の要因とされたことで、血管の形成や機能を制御するメカニズム解明の重要性は高まった。また、国内において様々な血管疾患への効果的な治療法が開発されつつある。
■血管・リンパ管研究の最前線と治療への展開
・はじめに
●血管の形成と制御因子
・血管内皮細胞の多様化
〔key word〕内皮細胞、組織特異的内皮細胞、単一細胞解析、細胞系譜
・血管壁細胞の分化決定メカニズム
〔key word〕壁細胞、血管平滑筋細胞、ペリサイト、神経堤細胞、中胚葉、細胞間相互作用
・VEGFとその受容体システムの血管新生、がん、炎症、妊娠高血圧症候群への関与
〔key word〕血管内皮細胞、増殖因子、血管透過性因子(VPF)、血管新生因子(VEGF)、腫瘍血管
・Tie2受容体活性化による血管安定化の誘導と血管病治療戦略
〔key word〕血管内皮細胞、Tie2、アンジオポエチン、血管成熟化
・TGF-β・BMPファミリーによる血管形成制御と機能維持
〔key word〕Transforming growth factor(TGF)-β、骨形成因子(BMP)、Smad、マルファン症候群(MSF)、肺動脈性肺高血圧症(PAH)
・Ephrinファミリーによる血管形成制御
〔key word〕Ephrin-B2、血管新生、細胞極性、血管内皮増殖因子(VEGF)シグナル
・抗血管新生因子ーー血管新生のブレーキ役としての血管新生抑制因子
〔key word〕ネガティブ・フィードバック制御因子、バソヒビンー1(VASH1)、微小管、脱チロシン化、細胞内輸送
・血管形成・血管新生・成熟化を担う転写制御ネットワークーー内皮エピゲノム環境に基づく転写制御
〔key word〕内皮エピゲノム、ゲノムワイド解析、bivalentエピゲノムスイッチ、内皮分化・活性化・成熟化シグナル、tip/stalk細胞
●血管構築と血管機能・病態
・メカノセンシングを介した血管細胞の分化誘導
〔key word〕流れずり応力(shear stress)、伸展張力(stretch)、血流、ES細胞(胚性幹細胞)、内皮前駆細胞
・血流に起因する力学的刺激が創傷治癒過程の血管新生を制御するメカニズム
〔key word〕血管新生、創傷治癒、内腔圧、BARタンパク質、TOCA1
・プロスタグランジンによる血管透過性の制御
〔key word〕血管透過性、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、プロスタノイド、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)
・造血幹細胞ニッチを形成する新たな血管起源の解明ーー内皮細胞の起源が血管多様性に与える影響
〔key word〕内皮細胞多様性、細胞起源、生体イメージング、造血幹細胞ニッチ
・動脈管の分化と閉鎖の分子機序
〔key word〕動脈管開存症、血管リモデリング、プロスタグランジンE(PGE)、EP4
●血管の臓器・疾患特異性とその変容の制御機構
・シングルセル解析による血管内皮細胞の細胞多様性研究
〔key word〕血管内皮細胞、細胞多様性、シングルセル解析、類洞血管内皮細胞、アエロサイト
・骨血管の多面性ーー部位による形態学的、および機能的差異
〔key word〕内軟骨骨化、血管内皮増殖因子(VEGF)、血管新生、老化
・血管内皮細胞が制御するがんの進展
〔key word〕腫瘍血管内皮細胞(TEC)、腫瘍血管新生、血管新生阻害療法、がん微小環境、アンジオクラインファクター
・がんの進展と転移における内皮間葉移行の役割
〔key word〕トランスフォーミング増殖因子(TGF)-β、内皮間葉移行(EndoMT)、部分的内皮間葉移行(partial EndoMT)、がん関連線維芽細胞(CAF)、EndoMTレポーターシステム
・血管狭窄時の内皮間葉転換の役割
〔key word〕頸動脈結紮モデル、内皮間葉転換(EndMT)、細胞間接着、血管リモデリング、低酸素応答
・低酸素シグナルによる心血管リモデリング
〔key word〕低酸素応答システム、低酸素誘導性転写因子(HIF)、心血管リモデリング
●リンパ管の形成と関連する病態
・リンパ管形成を制御するシグナル
〔key word〕リンパ管内皮細胞(LEC)、シグナル伝達、リンパ管発生、内皮細胞間接着
・FOXC転写因子によるリンパ管形成制御機構
〔key word〕FOXC、リンパ管新生、リンパ管の弁、パラクラインシグナル因子、臓器特異的リンパ管
・リンパ管の恒常性維持機構
〔key word〕リンパ管内皮細胞、細胞間ジャンクション、弁、内皮間葉移行(EndoMT)、炎症性サイトカイン
・リンパ管腫の増悪メカニズムに対する考察と展望
〔key word〕リンパ管新生、嚢胞性リンパ管腫、EGF(epidermal growth factor)シグナル、分子標的薬
●血管の炎症と老化
・血管の老化と慢性炎症
〔key word〕加齢、血管変化、慢性炎症
・動脈硬化性疾患克服に向けた新規脂質異常症治療薬の開発
〔key word〕アンジオポエチン様タンパク質3(ANGPTL3)、家族性高コレステロール血症(FH)、動脈硬化性疾患
・血管の老化とその治療、再生、若返りーー細胞老化の視点から
〔key word〕血管老化、治療、動脈硬化
・血管バリア機能の制御による重症感染症治療の可能性
〔key word〕血管透過性、重症感染症、血管内皮細胞、クローディンー5(CLDN5)、Roundabout4(Robo4)
●血管研究のフロンティア
・組織微小環境を制御するアンジオクラインシステム
〔key word〕アンジオクライン、恒常性維持、再生、がん、幹細胞
・三次元微小血管モデルを用いた組織構築による疾患・生体現象の解明
〔key word〕生体模倣システム(MPS)、微小血管モデル/デバイス、共培養、血管イベントの定量評価
・再構成解析系を駆使した血流による血管新生の生体力学機序の解明
〔key word〕血管新生、血流、力学刺激、マイクロ流路デバイス、血管内皮細胞運動
・血管機能の代謝調節
〔key word〕解糖系、脂肪酸代謝、ケトン体代謝、ミトコンドリア
●血管疾患と血管を標的とした治療法
・IL-6シグナルによる肺動脈性肺高血圧症の病態形成機構
〔key word〕肺動脈性肺高血圧症(PAH)、炎症、インターロイキン6(IL-6)、SM-22α-Cre、レグネース1
・心血管系の恒常性を維持する大動脈弁の役割と弁石灰化メカニズム
〔key word〕内皮細胞傷害、大動脈弁、石灰化、線維化
・遺伝性胸部大動脈瘤・解離とゲノム医療
〔key word〕遺伝性胸部大動脈瘤・解離(HTAAD)、次世代シークエンサー(NGS)、遺伝学的検査、個別化医療
・動脈硬化の病態と治療法の開発ーー心外膜脂肪組織の治療標的としての可能性
〔key word〕心外膜脂肪組織(EAT)、血管周囲脂肪組織(PVAT)、動脈硬化病変、心血管疾患(CVD)、治療標的
●血管疾患と血管を標的とした治療
・心血管病の炎症における酸化ステロールの分子生物学的役割の解明
〔key word〕酸化ステロール、血管内皮機能障害、単球・マクロファージ、炎症
●血管疾患と血管を標的とした治療法
・高血圧を標的とした治療ワクチンの開発
〔key word〕ワクチン、抗体、高血圧、核酸医薬
・虚血肢治療用血管再生遺伝子治療製剤の開発
〔key word〕遺伝子治療(gene therapy)、血管新生(angiogenesis)、肝細胞増殖因子(HGF)、末梢動脈疾患(PAD)、プラスミドDNA
・糖尿病性血管障害の発症機序と予防方法
〔key word〕インスリン抵抗性、動脈硬化症、自己由来DNA、Toll様受容体(TLR)9、cGMP-AMP synthase(cGAS)-stimulator of interferon genes(STING)
・網膜疾患における血管をターゲットとした分子標的治療
〔key word〕血管内皮増殖因子(VEGF)、抗血管新生療法、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性
本雑誌「医学のあゆみ」は、最新の医学情報を基礎・臨床の両面から幅広い視点で紹介する医学総合雑誌のパイオニア。わが国最大の情報量を誇る国内唯一の週刊医学専門学術誌、第一線の臨床医・研究者による企画・執筆により、常に時代を先取りした話題をいち早く提供し、他の医学ジャーナルの一次情報源ともなっている。
「小児科臨床」76巻4号〜77巻3号に掲載された「小児科学レビュー 最新主要文献とガイドライン」を集約した一冊。主に2022〜2023年に国内外で発表された論文・ガイドラインから、小児科学分野のエキスパートが主要文献をピックアップし、レビューしています。小児科領域全般の最新の研究成果や動向を把握するに役立ちます。
1.救急医療
2.呼吸器疾患
3.感染症
(1) 小児細菌感染症
(2) ウイルス感染症 -RSウイルス感染症の予防ー
(3) 予防接種
4.循環器疾患
(1) 先天性心疾患
(2) 不整脈
(3) 心筋症
5.消化器疾患
(1) 消化管疾患 -機能性消化管障害、特に過敏性腸症候群についてー
(2) 肝胆道疾患 -欧米を中心としてアウトブレークした原因不明の急性肝炎ー
6.神経疾患
(1) てんかん
(2) 脳炎・脳症
7.神経筋疾患
8.血液疾患
(1) 貧血・骨髄不全
(2) 造血器腫瘍
(3) 血液凝固異常
9.固形腫瘍
10.腎尿路疾患
(1) ネフローゼ症候群
(2) 腎 炎
(3) 先天性腎尿路異常
(4) 尿細管機能異常症
11.水電解質異常
12.内分泌疾患
(1) 成長障害
(2) 性分化疾患
(3) 肥満・やせ
(4) 糖尿病
13.先天代謝異常
14.原発性免疫不全症
15.アレルギー疾患
(1) 消化管アレルギー
(2) 気管支喘息
(3) アトピー性皮膚炎
(4) アナフィラキシー
16.膠原病と類縁疾患
(1) 膠原病
(2) 川崎病
17.先天異常症候群
18.精神疾患・こころの問題
(1) 小児精神疾患
(2) 心身症
(3) 発達障害
19.新生児疾患
(1) 新生児感染症
(2) 慢性肺疾患
(3) 脳室周囲白質軟化症
(4) 新生児蘇生
20.児童虐待
その無駄な医療、そろそろやめませんか?第一選択薬でうまくいかないとき、不必要な医療を減らしたいときの処方箋。
点眼薬は眼科領域の疾患に対する検査及び治療のための投薬手段として簡便かつ有効な優れたシステムだが、使用法によっては有効に働かなかったり、逆に眼に障害を起こしたりする場合もある。本書は眼科で用いられる頻度の高い点眼薬について使用法と使用上の注意をまとめたものである。
本書は日常で診療する消化器疾患の成り立ちや全体像を把握し、個々の症例のその時点・時点において、EBM、ガイドライン、Informed Consentを駆使してもっとも適切な医療サービスを支援する一助となることを願って企画したものである。
「感染したら症状が出るはず」「症状が消えたからもう薬はいらない」「抗生物質を使ったから治った」「コンドームさえ着用すれば無事」などなど、従来の「常識」には盲点が多い。基本的な知識を身につけ、確実な予防と治療に取り組むことを啓蒙する書。
畜産に関する情報を満載!公務員試験・企業入社試験をめざす方々や関連自治体・関連企業従事者必携の一冊。
英国医師会出版部門(BMJ Publishing Group)発行の『clinical evidence concise issue16』の完全翻訳版。日常よく遭遇する226疾患における臨床上の疑問に対して、簡潔な表現で世界最新・最良のエビデンスを提供。
地球の素顔を伝えるビジュアルマガジン【特集】
●生命を変えるDNA革命:
生物の遺伝情報を思い通りに改変できる「ゲノム編集」技術。難病の治療など、無限の可能性を秘めた新技術だが、その使用への懸念もある。
●蚊と人間の終わりなき戦い:
ジカ熱やデング熱、マラリアなどの感染症を媒介する蚊。地球上で最も危険な生物ともいえるこの虫と、人間はどう戦えばいいのか。
●パンダを野生に:
中国は、ジャイアントパンダを飼育下で繁殖させることに成功し、順調にその数を増やしている。次の挑戦は、生息地を保全し、パンダを野生に戻すことだ。
●枯れる地下水:
米国の穀倉地帯を支える「オガララ帯水層」の地下水が枯渇しつつある。国内はもとより、世界の食料供給への影響が懸念され始めた。対策はあるのか?
●大海原の王者 ヨゴレはどこへ?:
シリーズ「海のハンター」の最終回は、温暖な外洋に分布するヨゴレ。凶暴な「人食いザメ」として、船乗りたちに恐れられていたが、半世紀ほどの間に、乱獲などによって世界の海から急速に姿を消した。
●捕らわれの鳥たち:
鳥の生態調査などのために使われる「かすみ網」。アーティストが研究者に同行し、網にかかった鳥たちを記録した。その姿に何を感じるか?
【コラム】
●生命をつなぐ:はさみは大きいほうがいい
●VISIONS 世界を見る:「おんぶじゃないよ」「水面がキャンバス」「カヤネズミの素顔」
●写真は語る「身近なハンター ハエトリグモ」(坂本 昇久)
●EXPLORE 探求のトビラ
ワイルドライフ「逃がした魚は大きくなる」:米国の生物学者が、湖で巨大な金魚を釣り上げた。
地球「黒ずんだ氷は解けやすい」:グリーンランドで氷の融解が加速している原因は「黒ずみ」だった。
サイエンス「移ろいやすい金星の素顔」:金星の大気中で刻々と変化する渦を、欧州の探査機が撮影した。
人間「パンダ人気、熱狂の歴史」:動物園の人気者は、いつから世界中で愛されるようになったのか。
人間「機内では味覚が変わる?」:飛行機に乗ると、トマトジュースを飲みたくなるのはなぜか。
●ルーペで見つけた! 「美女に狙いを定めて」
●読者の声
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●次号予告
●日本の百年「富士を眺めてひと休み」
ほか