国家管轄権外区域とは、国際法上どこの国の権限も及ばない区域を意味し、具体的には公海および深海底から構成される。この国家管轄権外区域がなぜ重要であるのか。そこにはマグロやサケ等の水産有用種や、サメやウミガメ等の希少種が多数生息している他、経済的な利益をもたらし得る海洋遺伝資源が多く存在することが知られており、海洋の生物多様性を考えるときに非常に重要な海域であるからである。
このような背景の下、国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ)の保全や海洋遺伝資源の開発をめぐっては、1990年代より活発に国際的な議論が行われてきた。
本書では国家管轄権外区域の環境を守るためには不可避のBBNJの現況や問題を、海洋法、科学、政府間交渉など多角的な観点から第一線の専門家が解説する。
【目次】
はじめに:阪口 秀
第1部 国連海洋法条約の展開とBBNJ
1 国連海洋法条約の展開とBBNJ:坂元茂樹
第2部 海洋生物多様性をめぐって
1 細り行く海の恵みと国際社会 :井田徹治
2 深海の生物多様性に関する研究の歴史とBBNJ交渉:白山義久
コラム●BBNJ交渉と、他の条約との関連:白山義久
3 海洋遺伝資源の利活用の進展 :竹山春子 ・西川洋平・丸山浩平
4 公海域における水産資源管理と海洋保護区:森下丈二
5 深海底の鉱物資源開発と国際海底機構(ISA)の役割:岡本信行・藤井麻衣
コラム●北極の現状と中央北極海における公海水域の未来:幡谷咲子
第3部 海洋生物多様性を守るために - 国連におけるBBNJ交渉
1 国連におけるBBNJ交渉の展開 :西本健太郎
2 海洋遺伝資源をめぐる論点と展望:本田悠介
3 区域型管理ツールの活用のために:八木信行
4 環境影響評価をめぐって:瀬田真
5 能力構築と海洋技術移転:藤井巌・前川美湖
コラム●BBNJ交渉の裏側:樋口恵佳
おわりに:前川美湖
生物多様性の起源や生態系の特性,人間との関わりや環境等の問題点を多数のカラー写真や図を交えて解説。生物多様性と人間/生命史/進化の地図/種とは何か/遺伝子/貴重な景観/都市の自然/大量絶滅/海洋資源/気候変動/侵入生物
第1部 生物多様性の起源
第1章 生物多様性と人間
第2章 変化に富んだ長い生命史
第3章 進化の地図
第4章 種とは何か
第5章 遺伝子,遺伝子,遺伝子
第2部 生態系とその働き
第6章 生物の複雑なつながり
第7章 生物多様性の恩恵
第8章 貴重な景観
第9章 都市の自然
第10章 淡水の生物
第3部 迫りくる危機と解決策
第11章 史上6回目の大量絶滅は進行中
第12章 限りある海洋資源
第13章 気候変動
第14章 世界中にみられる侵入生物
第15章 自然界の行く末は?
用語解説/文献
監訳者あとがき
20世紀後半、グローバル化の波に乗って多くの日本人がアメリカへ渡り、そこで生活を行うことを選択した。「新日系移民」として位置づけられる彼/彼女たちの属するコミュニティやそこでの生活様式は、20世紀初頭に労働を目的として移住した人々とはまるで異なる様相を呈している。新日系移民たちの、日米両国の狭間で揺れ動くアイデンティティの様相と、そのエスニック・コミュニティの中で営まれる生活の諸実態を記した、日系移民研究の最前線!
世界自然遺産の評価を受ける奄美群島。その豊かな生態系の基礎を作るのが、多様な植物の存在である。本書は、鹿児島大学生物多様性研究会が、植物を「自然界に生きる植物」と「人に利用される植物」に分け、19のトピックスを紹介する。
全ての人たちが幸せになってほしいと願う二人の著者が、「差別」という、人類が数千年の歴史を通して未だに解決できていない大きな問題を、より希望に満ちた新しい社会づくりの担い手である高校生と一緒に真剣に考え、差別をなくすための具体的な行動へと結びつけたいという思いで書いた本です。なぜなら差別は、決して個人の問題ではなく、社会を形成する私たち全員の問題だからです。
大切なのは、一人ひとりの違いを認め合い、その人が自分以外の人のために何かしようという意志やその人ができることを尊重・尊敬し合い、協力を通して一緒に問題を解決したり、何か新しい成果を出したりすることではないでしょうか。そのために、私たち一人ひとりがどのように自分を変え、何をしていけばいいのかについて一緒に考えられるような構成になっています。
第1章 より良い社会を創るためのものの見方・考え方
第2章 「幸せ」とはなんだろう
第3章 どんな世界に住んでいるのだろう
第4章 問題の解決に向けて:個の重要性
第5章 よりよい社会づくりに向けて:「多様性」をどう捉えるべきか
第6章 多様な人々と生きていくために 守るべき基本的な倫理の理解と実践
第7章 教育はなぜ必要か
第8章 自分を変えると世界が変わる
保育士養成課程の「子ども家庭支援論」の教科書。子どもと家族に対する,日本国憲法と福祉教育的権利保障,家族の多様性、ジェンダーの3つの視点を柱として,具体的,実践的内容を盛り込み記述。
どのように編修され成立したのか。言語表現から切り込む。
矛盾や齟齬の多い本文は、そもそも「どのように」書かれているのか。
古訓や古注釈によって「読める」ように是正されてきた従来の解釈を見直し、文体的特徴の分析により記述に即した実証的読解のための枠組を構築する。
東アジアにおける文字・漢文・文献の交流を示す史料としての価値を見出し、日本書紀が成立するまでの段階的な編修過程を明らかにする。
生物多様性と生態系サービスを保護・保全することの意義と方法について経済価値による可視化、政策・ビジネスによる主流化の観点から概観した入門書。
いま、安さの追求と大量生産の結果、その多様性が危機に瀕している。食材はもとより、調理法、生産地、季節感などなど、その多彩な世界は護られなければならない。植物遺伝学の大家が語る、毎日の食卓の大切さ・面白さ。
地域住民が身近な環境の健康度を測り、変化を認識し、改善するために開発された「環境ものさし」。本書は、開発者自身が体験した生物多様性への目覚めから、「環境ものさし」の開発・実践、そして、それがもたらした地域社会の変化をドキュメンタリータッチで描き出す。
まえがき
第1章 生物多様性と里山
第2章 「環境ものさし」というツール
第3章 冬みず田んぼにカエル鳴く
第4章 研究者の役割とひらかれた科学
あとがき
教師の役割や責任が変わりつつある今、教師教育も変わらなければならない。教師教育を変革するための最善の方法は何か。また、教師教育の成功をどのように評価するのか。本書では、教員養成と現職研修を見直すために有益な研究や調査を紹介した。OECD諸国の教師が直面している課題に着目するとともに、それぞれの社会的背景のもとで行われている具体的政策や実践とその意義を示した。
東洋経済新報社の元社長、元会長で現在は同社の姉妹組織である(社)経済倶楽部の理事長を務める著者が、『経済倶楽部講演録』(月刊)に執筆してきた時評と書評4年分、計101編を収録。数多くの経済人や識者と交流を深めてきたベテランジャーナリストならではの鋭い視点とユーモア溢れる文章に思わず引き込まれる。
ますます国際化する英語は英語自体の変化をも促している。文化の変容とともに移り変わる言語の様子を、国内外の大学で半世紀にわたってつぶさに研究しながら、併せて英語教育の本質をも考察してきた著者によるこの論文の集大成は、今後の日本における英語教育に、広い視野と深い奥行きもたらしてくれるはずです。
生き物は死なない、と躍起になって論じてきた。”Spherophylon” の刊行に向けての経緯を紹介すると言いながら、本筋から逸れているように見える。しかし、この叙述に、そのおそれは織り込み済みである。
“Spherophylon” で論述しようとした意図は、この複雑で多様化した社会の中で、私たちは今何を考えなければならないか、という問題を、生物多様性の研究を通じて感得した考えのうちから提起したいという点にある。それは、生命系の概念を提起する意味をもっと丁寧に説明することで果たす課題といわれるかもしれない。しかし、読んでいただく人が退屈しないでこの問題に向かうと期待するのは、単純な生命系の解説で果たせることではないと知る。
そこで、下巻の後半では、生命系を考えることによって到達する視点、寿命が尽きても、人が死滅することはない、に突進してみたいと考えた。生命系の概念を説明するために、自分の寿命を考えてもらうことはいいきっかけになると考えていた。一般論の生命を論じてもなかなか関心を向けてくれない人でも、自分の寿命を考えることには熱心である。いわんや、あなたは永遠に死なない、とオカルト宗教のような呼びかけをすれば一応話を聞いてみようかと立ち止まる人があるのも現実である。その人間の弱みにつけ込んで、生命系の久遠の生命を考えてほしいと期待する。ヒトという私たちが属している生物種も、その種の構成要員の一員である私自身も、生命系が永遠に生きるなら、その生の一翼を担うのである。さらに、人のみが認識して知る生には、現在でいえば 80 億分の1で、それが、文化というほどの概念が育ってからでも 1 万年以上もの間のヒトの一員の特性であり、社会に影を残す活動でもある。生命担架体としての肉体の、遺体を残す死があったとしても、それと同時に、自分の生が、先祖から引き継いで預かっていた生であり、継代して子孫に遺す生であることを知れば、自分も永遠の生を生きさせてもらっていることを認識するだろう。
日々の出来事に追われて生き、今の生活の効率だけに執着している現状から、生命系の生の永遠性に着目し、その生命系の生を生きている自分が、個体としての自分の生の維持だけにこだわっている現実を見直す機会を作りたい。それが、生命系の生を、80 億人の地球人すべてに発信したいと考えた理由であり、生物多様性の研究に関わって、呪文のような論文を産出した私が気づいている現実である。その意味で言えば、“Sphelophylon”はコケシノブのモノグラフと表裏の関係にある著作だというのが、それをものした著者の本音でもある。
著作に至った経緯はそれとして、せめて最後のところでは、生命系の概念にこだわる意図は知っていただきたい。それこそが、この世に生を賜った生き物の責任であり、歓びであることを、文化を創出した人の一員として認識したいと考える所以である。
(本文「生命系の生を論じる意味」より)