無伴奏チェロ組曲の全曲をフルートに置き換えて見事に新たな世界を切り開いた藤井。その表現意欲はついにジャンルを超えた。クラシックのベースを崩さずに、ボサ・ノヴァに完全に溶け込んでしまうところが、彼女の凄いところ。次回はジャズにもぜひ挑戦を臨みたいところ。
トスティの伊語歌曲集(ただし巻末に英仏語も各1曲)。シラグーザはまさにリリコというにふさわしい甘く柔らかい声と、弱音への心配りで、アルバム・タイトル曲をはじめとするトスティのミニアチュールを心地よく聴かせている。ピアノのサポートもバランスよく感性豊かだ。
独特のヴァイオリン・スタイルで他の追随を許さない個性を発揮しているギトリスの、面目躍如とした小品集。絶妙な緩急や強弱や自由自在の節回しなど、ギトリスでしか表わし得ない音楽の世界が繰り広げられている。
ウクレレ・アルバムとして、ボッサ・アルバムとして最強の一枚。ウクレレとギターによる涼やかな音色、自然体というしかない音楽との戯れ……何時間でも聴いていたくなる。多重録音3、8、12、15曲目や6弦ソロ6、10曲目など、聴きどころも満載だが、やはりデュオ曲が美味しい。★
NHK教育『趣味悠々』講師として久々にTVにも登場した荘村清志の、40年近いレコーディング・キャリアを横断する内容のベスト盤。絢爛たる曲目と、派手さに走らず堅実な演奏の過去録音に続いて、最後の2曲で、60歳にして一段と柔和になった新録音を聴かせてくれる。
人気ゲーム・ソフト『THE IDOLM@STER』のキャラクター別CDシリーズの1枚。本作では、天海春香をフィーチャー。新録曲はもちろん、ボーナス・トークなども収録されている。
フジテレビ系アニメ『月面兎兵器ミーナ』のサントラ盤。音楽を担当したのは、ドラマ『花より男子』や映画『リンダリンダリンダ』などで知られる実力派・山下康介で、激しいナンバーからコミカルな楽曲までを収録している。
バリトン・サックスだけのアルバムとは珍しい。ソプラノやアルトによる耳慣れた演奏とは違い、重厚で落ち着きがある。その特性を活かしてか、やや遅めのテンポ。バッハやクライスラーの名品も燻し銀のような風情が漂う。高橋悠治の委嘱作は対話的で面白い。
セカンド・アルバム。例によってよくできているが、20年以上続く甲本ヒロトと真島昌利の双頭バンドとして、こぢんまりとまとまりすぎかも。ベーシストとドラマーがもっと自己主張したらベター。ラモーンズと軍歌をミックスしたような曲調の「むしむし軍歌」は面白い。
新婚一年目の刑事夫婦が、招待旅行で北海道を訪れた。しかし、宿泊先のホテルに、次々にメッセージが届けられた。もともと十津川警部が行く予定のホテルだった。あるいは十津川警部に対して恨みを抱いている人間からのメッセージかもしれない。十津川警部の前に、過去の事件が亡霊のように浮かび上がってくる。トラベル・ミステリー。
大型ソプラノとして期待されていたころの、2枚目のソロ・アルバム。「チェネレントラ」のコロラトゥーラのアリアから「フィガロの結婚」のケルビーノのアリアまで、カサロヴァの懐の深さをみせつけている。