『ナラティブ研究の実践と応用』は、「語り」すなわち「ナラティブ」の分析を通じて、社会が抱える問題の理解や解決を目指すナラティブ・アプローチの成果を一冊にまとめたものです。ナラティブ研究では、語られた人生の出来事や経験を読み解き、問題解決のために活用します。一人一人の語りを精緻に読み、解釈する手法は、質的研究の一つとして定着していますが、近年では言語コーパスの充実により、「質」と「量」の融合研究も注目を集めています。ナラティブ研究の理論と手法が日々アップデートされる中、研究領域は広がり、特に教育、医療、心理学等の分野で成果を上げています。本書は、このようなナラティブ研究の知見を、各分野の実践例とともに紹介しています。
Part 1「教師・ALTのナラティブ」には、言語教師として成長するALTおよび英語音声指導に奮闘する小学校教師の語り分析と、「教師のナラティブ」に関するコラムを収めています。Part 2「外国語学習者・グローバル人材のナラティブ」には、「英語学習」、「グローバル人材育成」、「留学」、「欧米とアジア」といった現代的テーマに関する論考とコラムを掲載しています。Part 3「社会を読み解くナラティブ」では、文学作品、ノンフィクション、高齢者のライフレビュー、そして大学生の語る「葛藤ナラティブ」の分析に加え、医療現場および現代社会における語りをテーマとするコラムが掲載されています。
本書には、教育、グローバリズム、文学、医療、人間関係等多岐にわたるテーマにおいて、ナラティブ研究の汎用性と専門の垣根を超えて学ぶ学際研究の成果が示されています。ナラティブ研究の導入・発展に加えて、外国語教育、留学指導、グローバル人材育成に関わる教師・研究者、そして文学、心理学、医療、社会学分野の研究者にとっても重要な示唆を得られる一冊となっています。
マイノリティとしてのろう児が抱える不利益構造を新たな角度から抽出し、「ことば」=「日本語(国語)」という言語観と多言語社会への不寛容を批判する中から、誰もが「ことば」や「情報」から疎外または排除されない社会の形を展望しようとする、障害学的社会言語学の成果!
提唱以来、半世紀を経過した生成文法の本来の目的とは何だったのか。自然科学の一分野としてこれから目指すべきものは何か。第一線で活躍を続ける著者が言語学の核心を説く。
言語学入門書にこそ、なじみのない言語をーー! 言語学テキストのほとんどは、最もなじみのある言語を中心に作られている。しかし、既存の枠組みを取っ払って考えるという言語学の基本を実践するのに、なじみのない言語こそ格好の素材である。日本語や英語とは違ったことばの世界があることを知り、なじみのある言語を見つめ直すことにもつながる。筆者の研究対象であるガーナの言語を主に取り上げ言語のしくみを紐解いていく、一味違った言語学入門書。
はじめに
第1章 言語の多様性と危機言語ーアフリカで話されるのは「アフリカ語」?
1.1 世界にはいくつの言語があるのか
1.2 話者数による分布
1.3 話者数の多い言語
1.4 地域による分布
1.5 言語数の多い国家
1.6 危機言語
第2章 言語の系統と類型ー対象言語を俯瞰的にみる
2.1 系統的分類
2.2 類型的分類
2.3 基本語順
2.4 母音
2.5 譲渡可能性
コラム1 アカン語のあいさつ
第3章 音声学ー言語音をつかまえる
3.1 音声学とは
3.2 発音のしくみと音声器官
3.3 国際音声字母
3.4 子音
3.5 母音
3.6 超分節音
第4章 音韻論ー音のしくみ
4.1 音韻論とは
4.2 音素の設定
4.3 音節とモーラ
4.4 さまざまな音韻現象
4.4.1 同化
4.4.2 中和
4.4.3 母音調和
4.4.4 声調
4.4.5 アクセント
コラム2 アカン語の名前
第5章 形態論ー語のしくみ
5.1 形態素
5.2 語形変化
5.3 語形成
5.3.1 派生
5.3.2 重複
5.3.3 複合
5.4 異形態
5.5 語とは
第6章 統語論ー文のしくみ
6.1 文法とは
6.2 語順
6.3 格標示
6.4 一致
6.5 動詞連続構文
6.6 主題化
コラム3 アカン語のことわざ
第7章 言語をフィールドワークする
7.1 未調査言語の調査
7.2 フィールドワークによる言語調査
7.3 対象言語を決める
7.4 インフォーマントを決める
7.5 基礎語彙調査
7.6 文法調査
7.7 基礎調査の先へ
第8章 言語の変種ー言語内の多様性
8.1 言語変種
8.2 言語と地域差
8.3 言語と階級差
8.4 言語と性差
8.5 言語と年齢差
8.6 言語と場面、状況
8.7 言語意識と変種
コラム4 アフリカと「文字」
第9章 言語の変化ー言語の通時的多様性
9.1 言語は変化する
9.2 音の変化
9.3 語彙の変化
9.4 文法の変化
9.5 文法化
第10章 一つの言語とは何か
10.1 ガーナの言語状況
10.2 言語学的にみた「アカン語」
10.3 「アカン語」という言語名称
10.4 アカン語の標準化、書記化
10.5 メディアにおけるアカン語
10.6 おわりに
コラム5 シンボル・模様が伝えるメッセージ
索引
本書は、これまでの一連の言語教員や言語学習にまつわる応用言語学の理論が、どのようにして展開されてきたのか、また、応用言語学の分野で展開され構築されてきた理論が、さらに日本の英語(外国語)教育にどう応用できるのかを考え、編纂されています。
1996年に発見された幻の書物「言語の二重の本質について」をはじめ、言語学者の格闘を生々しく伝える草稿群。厳密な本文校訂、詳細な校註、明快な訳文で、ここに甦る。
本書はコーパス言語学のみならず言語についての本であり、コーパスの実証的な調査研究が、以前には手に負えなかった言語学の研究課題に対して、いかに新しい解決の光を投じることができるかを示している。
ある日突然、ハカバ達を訪問してきたミノタウロス。様々な種族と話せる彼は、なぜかハカバを観察し始めて…? 狩猟採集、ラミアやワーキャットとの交流(?)…未知なる種族達と魔界を集団移動する第2巻!
マルチメディア・コーパスという新しいタイプのコーパスによって,言語と非言語行動との関係を計量的に調査・分析する. とくに「擬音語・擬態語と身振りとの関係」「終助詞ネと視線との関係」「指示詞と指差し及び映像との関係」について,新たな知見を加える.書きことばの表記・語彙・文法研究が中心であった従来のコーパス言語学に対して,話しことばの表現行動研究という新たな領域の可能性を展望する先駆的な研究書
ー速記文字で80の言語と文化にふれるー
線や点といったシンプルな符号を駆使して、会話などの人の言葉を素早く写しとる速記術。本書は独学で工夫を重ねてアルファベットを中心に独自の速記文字を開発した著者が、その多言語兼用の速記術を各言語ごとに例文を載せながら分かりやすく解説した、日本で唯一の佐藤式速記術のテキストです。フランス語やイタリア語などのお馴染みの言語はより詳しく、それ以外にもクルド、チベット、マケドニア、バスクなどバリエーション豊かな80言語の速記術を掲載。姉妹編の『60言語の簡単速記術』と併せご活用ください。
目次
14言語の簡単速記術
ドイツ
フランス
スペイン
イタリア
ブラジル
ルーマニア
ロシア
ブルガリア
ポーランド
チェコ
ハンガリー
フィンランド
トルコ
スウェーデン
13言語の簡単速記術
ペルシャ
アラビア
ハングル
中国
オランダ
ハンガリー
現代ギリシャ
デンマーク
ノルウェー
ウクライナ
セルビア、クロアチア
現代ヘブライ
リトアニア
19言語の簡単速記術
リトアニア
ラトヴィア
エストニア
インドネシア
マレー
フィリピン
ベトナム
ヒンディー
ベンガル
タイ
ラオス
ビルマ
カンボジア
モンゴル
ネパール
ウルドゥー
エスペラント
英語
日本語
44言語の簡単速記術
英語
日本語
18言語の簡単速記術
エジプト アラビア
ラテン
ウズベク
ウイグル
パンジャービー(パキスタン)
パンジャービー(インド)
シンハラ
タミル
台湾語
上海語
広東語
グルジア
スワヒリ
アムハラ
アイスランド
アイルランド
英語・日本語の簡単速記術
英語・日本語
17言語の簡単速記術
英語・日本語
ドイツ
フランス
アイヌ
古典ギリシャ
古典ヘブライ
現代ギリシャ
現代ヘブライ
バスク
カルターニャ
ロマ
テルグ
マラーティー
アゼルバイジャン
カザフ
スロベニア
ハウサ
ヨルバ
12言語の簡単速記術
スペイン
イタリア
ロシア
クルド
ブラジル
チベット
アルバニア
アルメニア
イディッシュ
スロヴァキア
マケドニア
ベラルーシ
著者略歴
学部4年生から大学院生、他の言語を専門とする学生や研究者に、「ドイツ語と社会の関わり、ドイツ語のさまざまな用いられ方」を解き明かし、ドイツ語という言語の相貌を丁寧に解説・紹介。各章冒頭にトピックに概説を付し、文章理解への助けとした他、読書案内とコラムによって、各章の記述を補完した。
まえがきより(一部省略・修正)
第1章は,クリスチャン・マティスンの論考で,音声から日常のディスコースへと探究の領域を移動しながら体系機能言語理論を概観し,言語とかかわるための体系機能的なストラテジーを導入している。ストラテジーとして導入される音声ヨガやディスコース日記,ディスコース地理と意味の潜在性をとらえる理論が言語を探究するのに必要な「言語のセンス」を高め,後続する章の探究を支援している。
第2章では,日本語の体系機能文法を意味分析のリソースとしてもちいて,日本語の意味・文法システムとそのシステムの具現化をテクスト環境に位置づけ記述している。それは,テクストの底辺にある意味をあらわにするのに体系機能的なテクスト分析が有用であり,言語の専門家でなくともテクストの意味づくりを知ることができるということの一例でもある。
第3章は,照屋がマティスンと開発をすすめているレジスター研究の概要を示したものである。英語教育,日本語教育,言語学教育に実践応用している枠組みでもある。意味のまとまりとしてのテクストに焦点をあて,異なるコンテクストで展開する社会意義活動を8つのフィールド(活動領域)に類型化し,あるフィールドで展開するテクスト群があるレジスター的な意味文法的素性をもちながら,テクストタイプとして具現していることを例示している。
第4章は,ジョン・ベイトマンのマルチモダリティ理論と方法論に関する論考である。意味づくりの様式である意義モードを理論・実証的に再考し,意義モードを物質と形式,ダイナミックなディスコース意味論が密接に相関したまとまりとして定義づけ,それが存在論的基盤となってはじめてマルチモーダルメディアとジャンルの緻密なマルチモーダル分析が可能となることを提示した。
第5章の奥泉香の論考は,意味表現様式の異なるひとつ以上の様式,モードによって具現されたマルチモーダルテクストのなかから絵本を国語科教育の学習対象としてとりあげ,絵本のイメージと言語が相補的に,かつ独立してつくりだす意味を系統的に提示している。国語科の授業で示された中学生の意味づくりが,体系機能的なマルチモーダル研究とマルチモーダルリテラシーの必要性を示唆している。
第6章は,ハイジ・バーンズの論考で,第二言語発達を把握することに焦点をおきながら,公共一般や特殊な場面での言語使用に不自由を感じない第二言語の使用者を育成するために,指導による言語発達をどのように想定するべきなのかという疑問を専門家に投げかけ,それと同時に,体系機能理論をベースにした方法論だけでなく,教育実践につなげていく枠組みを提示している。
第7章は,公開講座のためにハリデー先生が準備なされた未出版の原稿を照屋が翻訳した。ハリデーは,言語の性質と機能についての意識を獲得することは,教育をうけた一般大衆でも可能であり,言語がもつ意味づくりの機能を理解することが21世紀への挑戦につながっていくことを,体系機能言語学的な観点から多言語を複雑な環境社会体系のなかに位置づけている。