言語学習の成否は学習者個人の特性のみによるものではなく、学習者をとりまく社会との政治的、権力的関係をみることなしに語ることはできない。社会文化的な視点から第二言語習得研究に新たな地平を切り拓いた基本文献の、待望の邦訳。
まえがき
訳者まえがき
本書の構成
第1章 言語学習の真実と嘘
サリハと第二言語習得規範
アイデンティティと言語学習
力とアイデンティティ
動機と投資
エスニシティ、ジェンダー、階級
言語とコミュニカティブな言語運用能力を再考する
第2章 アイデンティティと言語学習の研究
方法論的枠組み
中心的な問い
研究する者とされる者
研究
データ整理
著者解題
第3章 成人移民言語学習者の世界
国際的な文脈
移民女性にとってのカナダ社会
研究参加者の略歴とアイデンティティと言語学習
著者解題
第4章 エヴァとマイ:歳よりも大人びている
エヴァ
著者解題
マイ
著者解題
第5章 お母さんたちと越境と言語学習
カタリナ
マルティナ
フェリシア
著者解題
第6章 第二言語習得理論再考
自然言語学習
アルベルトとSLAの文化変容モデル
情意フィルター
アイデンティティを再概念化する
社会的実践としての言語学習
著者解題
第7章 教室とコミュニティで話す権利を主張する
教室における言語学習と成人移民
コミュニカティブな言語教育の先へ
多文化主義を再考する
可能性の教育学としてのダイアリースタディ
月曜日の朝を変える
結びの著者解題
解題 アイデンティティ理論をめぐって広がる対話
アイデンティティ研究と言語学習の関連性
ポスト構造主義のアイデンティティ理論
アイデンティティと投資
想像の共同体と想像のアイデンティティ
アイデンティティ・カテゴリーと言語学習
研究の方法と分析
アイデンティティと言語教育
グローバルな視点
デジタルテクノロジー、アイデンティティ、言語学習
アイデンティティと抵抗
新たなテーマと今後の方向性
あとがき
訳者あとがき
文献案内
参考文献
人名索引
事項索引
著者・訳者紹介
コピペ、パクツイが蔓延する時代。「同じ」と「違う」の、日本語学的分析。どこまで「類似」でどこから「盗作」?
絶えず変化するコンテクストの中で私たちは構文を創造的に使用する。しかしその一方で「言えそうなのに言わない」表現が存在する。たとえば explain me this は言えそうなのに英語母語話者は言わない。創造的でありながら制約が多い言語を子どもや大人はどのように学習するのか。本書はさまざまな構文の実例や実験研究をわかりやすく解説しながら、この問いを探ってゆく。構文文法を初めて学ぶ読者にも薦められる一冊。
原著: Adele E. Goldberg(著)Explain Me This: Creativity, Competition, and the Partial Productivity of Constructions
訳者まえがき
はじめに
謝辞
第 1 章 序章
1.1 言語学者と心理学者を悩ませる難問
1.2 本書の構成
1.3 CENCE ME の原則
1.4 効率と表現性を大切にする従順な話者
第 2 章 語の意味
2.1 意味は豊かで構造的で部分的に曖昧
2.2 膨大な潜在記憶
2.3 慣習的に関連しあう意味
2.4 創造性
2.5 競合が語の意味を制限
2.6 学習と流暢さが過剰一般化を抑制
2.7 まとめ
第 3 章 構文はカテゴリ化への招待状
3.1 意味(意味論)
3.1.1 エビデンス
3.1.2 構文彙(コンストラクティコン)
3.1.3 適合性
3.2 形式(統語論)
3.3 音声パタン(音韻論)
3.4 談話文脈(情報構造)
3.5 社会的文脈
3.6 地域差
3.7 言語差
3.7.1 一参与者の事態
3.7.2 二参与者の事態
3.7.3 三参与者の事態
3.7.4 連続動詞をもつ言語
3.8 構文は(再帰的に)結合する
3.9 まとめ
第 4 章 創造性:カバレッジの重要性
4.1 知識と記憶
4.2 言語の記憶
4.3 項構造構文における動詞
4.4 項構造構文の名詞句スロットはなぜ開放型か
4.5 単純な定着
4.6 創造性と生産性
4.7 カバレッジ:部分的に抽象的な事例のクラスタ
4.7.1 エビデンス
4.7.2 トークン頻度
4.8 カバレッジのモデル化
4.9 まとめ
第 5 章 競合:統計的先制
5.1 形態と意味の制約
5.2 統計的先制
5.3 エビデンス
5.4 リキャスト
5.5 Explain Me This 問題
5.6 確率計算
5.7 二次的要因:確信度
5.8 メカニズム:エラー駆動型学習
5.9 統計的先制におけるカバレッジの重要性
5.10 まとめ
第 6 章 年齢とアクセシビリティの効果
6.1 幼児は保守的である
6.2 幼児は言語産出を単純化しやすい
6.3 足場かけが早期の抽象化を促進
6.4 大人の英語学習者はなぜ間違い続けるか
6.4.1 強く定着した L1 が表象領域を歪める
6.4.2 文法形式を予測する能力の低さ
6.5 まとめ
第 7 章 選ばなかった道
7.1 動詞と構文の適合性で説明できるか
7.2 見えない素性や深層構造に説明力はあるか
7.3 定着による保守性
7.4 許容限度と十分量の値は説明変数となるか
7.5 機能を無視して頻度に注目するとは
7.6 記憶容量と生産性は反比例するか
7.7 先制される形式は生み出されなくてよい
7.8 十分量のデータを経験
7.9 まとめ
第 8 章 現在地とこれから
参照文献
訳者解説
索引
著者紹介
訳者紹介
1908~09年に行われた「一般言語学講義」の第二回目。聴講したリードランジェとパトワの記録ノートを訳出。記号学の成立から言語の共時性へと至る。二人のノートを対応させながら講義内容を見るとより深く理解できる。
いかにして正しく古典を読むかー古典を実証的に解明するためには、そこに記された文字、それが示す言葉、その発音と意味との関係性を明らかにせねばならない。古代における音韻体系の把握から経書テクストの読みの刷新を目指した、戴震・段玉裁・王念孫らによる「古音学」の歴史と方法を精緻に論じる画期的成果。
「幸福」という概念の考察にあたって言語学からの独特の光を当てたり、日・英語の積年の問題に意表を突く発想で切り込んで仕組みを解き明かしたり。ことばに関して思わず「そうだったのか」となる十数編の論考を収めた。
比較認知科学や発達心理学における豊富な研究データをもとに、“Usage-Based Model(用法基盤モデル)”のアプローチから、子どもの言語習得のプロセスを明示する。子どもがどのように言語を習得するのかは、生得的言語モジュールを仮定するのではなく、一般認知能力に支えられた高度な学習によることを実証する認知言語学の最新の研究書。
険しい雪山を越え、教授も訪れたという集落・ウタツに到着したハカバ一行。人間に似た見た目の人に出会ったり、暗闇の中で命がけの狩りをしたり、「分からない」をかみしめながら、少しずつ考えを巡らせてゆく。
ソシュール、チョムスキーなど今世紀の言語学者13人を選び、言語をめぐる諸概念が形成される現場、言語認識論の歴史的ドラマを活写する。
好奇心が旺盛なこと、ほかの人が言ったり、書いたりしていることを鵜呑みにしないこと、筋の通った考え方を貫こうとしていること。じつは、そのすべてがある一つのことに結びついていくのです。自分のあたまで考えるためのヒントが満載。
発想のユニークさと論理の明晰さで、言語学のみならず、日本語・日本文化論に数々の新知見をきりひらいてきた鈴木教授は、問題関心の出発点をつねに自身の知的・日常的生活に置いている。知る人ぞ知る座談の名手が、その発想工房の楽屋裏をはじめてみせてくれた1冊。
提唱以来、半世紀を経過した生成文法の本来の目的とは何だったのか。自然科学の一分野としてこれから目指すべきものは何か。第一線で活躍を続ける著者が言語学の核心を説く。