食虫植物は植物学のフロンティアである。捕虫葉形態形成のように、普通の植物ではわからなかった植物発生の新しい仕組みの発見、あるいは、活動電位のように陸上植物全体に関わるけれども他の植物ではうまく解明できなかった普遍的な現象を解明できる可能性を持っている。それ故、多くの研究が行われ、さまざまな仮説が提唱されている。近い将来、食虫植物だけに留まらない生物学や進化学の全体に影響を与えるような驚きの発見が期待されているのである。
本書は長年、食虫植物に魅せられた著者が、膨大な野外調査と豊富な写真を使って食虫植物の分類や生態などをまとめ上げたものである。ウツボカズラ、ハエトリソウ、ムジナモなど、世界中を歩き廻って集めた2000枚以上の写真と図によって食虫植物の魅力と不思議を存分に紹介し、あわせて図の説明と本文によって、食虫植物の基礎から最新研究までを網羅して紹介した。
食虫植物に興味をもたれる学生から研究者、一般の植物愛好家の方々にも広く読んでいただきたい。【フルカラー】
1.食虫植物の定義と系統分類
2.イネ目の食虫植物
3.カタバミ目の食虫植物
4.ナデシコ目の食虫植物
5.ツツジ目の食虫植物
6.シソ目の食虫植物
7.食虫植物の進化
多民族・多言語多文字社会である中国における「調和的言語生活の構築」とは、何を意味しているのか。言語政策の現代的展開を追いつつ、その実施過程に現れた諸問題と「言語意識」の危機的状況を明らかにするとともに、圧倒的力を持つ「普通話」(=国語)のもとでの危機に瀕した(方言を含めた)少数言語の現状と、その位置づけを展望する。
まえがき 今、なぜ危機言語か/石剛
言語意識と現代中国と/石剛
1.はじめに
2.「語言生活派」というブランド
3.社会言語学研究の今日的状況
4.言語政策発想の転換
5.言語政策の実行過程に見る諸関係
6.言語政策と言語意識
7.おわりに
危機言語の認定と保護/黄行
1.国家言語と民族言語
1.1.言語同一性と同一言語の認知/1.2.国家言語/1.3.民族言語/1.4.国家言語と民族言語への帰属認識
2.危機言語の基準
2.1.危機言語/2.2.言語の認定基準/2.3.中国の言語グループと民族グループ/2.4.危機言語の認定と保護
3.少数民族言語使用状況調査
3.1.少数民族言語文字調査状況/3.2.少数民族言語文字政策/3.3.中国少数民族言語の使用発展状況/3.4.少数民族言語文字使用状況調査の理念
中国における言語の多様性と言語政策/周慶生
1.はじめにー中国における言語政策の「主体性」と「多様性」
2.「主体多様」言語政策とその受容
2.1.建国時期の言語政策/2.2.文化大革命時期における言語政策
3.改革開放下の言語政策
3.1.普通話の等級標準化/3.2.少数民族言語文字の規範化
4.国家通用言語文字法の公布とその実施
4.1.『言語法』の主な原則/4.2.『言語法』の実施
5.現代中国の言語政策とその実施
5.1.方言使用の実態/5.2.少数民族言語使用と二言語教育
おわりに
言語の危機と言語の権利ーー付録:中国危機言語データベース基準(案)/範俊軍
少数民族の言語危機と言語人権についてに
1.危機言語の歴史趨勢と現実的緊迫性/2.危機言語と言語生態学の視角/3.危機言語の保護の人権視角
付録:中国危機言語データベース・デジタル基準(案)
1.中国危機言語データベース・デジタル基準説明/2.中国危機言語データベース・デジタル基準
潮州語、温州語、そして播州語ーーその現状と言語多様性のゆくえ/寺尾智史
1.45年前の、そして45年後の『タイからの手紙』--バンコクから
2.温州語のネットワークーー世界に散らばる商用リンガ・インテルナ
3.90年後の『方言矯正方案』-華僑/華人を受け入れた側の言語再考
新疆ウイグル自治区における漢語教育と検定試験ーーHSK、MHKの比較分析から見た政策変容/王瓊
はじめに
1.HSK体系について
1.1.HSKの定義/1.2.HSKの構造/1.3.HSKによる「民漢兼通」の新基準
2.MHK体系について
2.1.MHKの定義と内容/2.2.MHKの構造/2.3.構造からみたMHKの動向ーー「民漢兼通」の最終的な意味/2.4.MHKによる新たな「民漢兼通」基準の設定
おわりに
あとがき 言語意識の危機/石剛
第一次産業を除く企業の99.7%を占める中小企業。多くの人にとっての働く場であり,自己実現の場である中小企業の多様性を事例をまじえながら描く好評テキストの最新版。コロナ禍での不況で悪化する,中小企業の環境と3つの「中小企業問題」についても厚く論じる。
第1章 中小企業で働くこと=渡辺幸男
第2章 企業の創業と進化=小川正博
第3章 中小企業とは何か=渡辺幸男
第4章 戦後日本の中小企業問題の推移=黒瀬直宏
第5章 戦後日本の中小企業発展の軌跡=黒瀬直宏
第6章 ものづくりと中小企業=渡辺幸男
第7章 中小製造業の経営=小川正博
第8章 中小商業と流通=向山雅夫
第9章 中小商業経営と商人性=向山雅夫
第10章 中小企業の金融=小川正博
第11章 戦後日本の中小企業政策の変遷=黒瀬直宏
現代の多様化した教育問題を考えるにあたり必要不可欠である、「ジェンダー」や「ダイバーシティ」(多様性)の視点から編まれた教育の理念・教育の歴史及び思想、いわゆる「教育原理」の学びを深めるテキスト。
第1部では、教育の思想・歴史について、2部では、教育の理念について、3部では現代日本の学校教育が抱える諸問題を取り扱う。
<執筆者>藤田 由美子, 谷田川 ルミ, 奥野 佐矢子, 本多 みどり, 田渕 久美子, 高橋 英児, 二井 仁美, 角替 弘規 , 岩本 健良
「ホモネタ」やアウティング(暴露)、男女別制服の強要など、性的指向や性自認(SOGI)にまつわるハラスメントはLGBTQ当事者に対する深刻な人権侵害となります。基本的なとらえ方から、事例も多数紹介した初の入門書。
はじめに
マンガで考える「これってSOGIハラ?」
パート1 基礎から知る「SOGIハラってなに?」
1「SOGI」ってなんだろう
2 SOGIの視点で多様な性をとらえる
3「SOGIハラ」をどう防ぐか
パート2 学校で起こるSOGIハラと支援のありかたーーそのとき、あなたにできること
はじめに
1 あなたにできること(1)──想像する
2 あなたにできること(2)──聴く
3 あなたにできること(3)──変えていく
おわりに
パート3 これってSOGIハラ?事例集
はじめに
1 差別的な言動や嘲笑、差別的な呼称
2 いじめ・暴力・無視
3 望まない性での生活の強要
4 不当な入学拒否や転校強制、異動や解雇
5 だれかのSOGIについて許可なく公表すること(アウティング)
6 その他
パート4 SOGIハラのない学校・職場づくりに必要なこと
巻末資料
「生物多様性の維持がいかに人類の健康で文化的な生活のために必要か」をテーマに、生物多様性の喪失が人間の健康に与える潜在的脅威の全てを考察した初めての本。人間の豊かな生活が原因で起こる危険について警告している。
刊行によせて/序文/訳者序文
第1章 生物多様性とは何か?
種絶滅率の測定/二次的な絶滅/個体群と遺伝的特性の喪失/結び
第2章 人類の生活が生物多様性に与える脅威
陸上における生息環境の消滅/海洋における生息環境の消滅/淡水域における生息環境の消滅/天然資源の乱獲/移入種問題/感染症の脅威/環境汚染/紫外線(UV)/戦争や武力衝突が環境に与えるダメージ/地球規模の気候変動
第3章 生態系サービス
生態系サービスの特徴/生態系サービスの経済的価値/生態系サービスにとっての脅威/結論
第4章 自然界からの薬品
なぜ天然薬品なのか/天然産物の医薬品としての歴史/薬発見の伝統的な医療の役割/南米土着の医薬/いくつかの天然由来の薬品の概観/工業国でのハーブ治療薬/医薬品の可能性のある食品/殺虫剤および防かび剤としての天然産物
第5章 生物多様性と生物医療研究
医科学研究の歴史概略/生医学研究における動物と微生物の役割/結論
第6章 絶滅危機にある医学上有用な生物
両生類/クマ類/霊長類/裸子植物/イモガイ類/サメ類/カブトガニ類/結論
第7章 生態系の攪乱、生物多様性の消失および人間の感染症
生態系の攪乱と感染症への影響/媒介者、病原体、宿主の多様性と人間の感染症/生物的制御/種の搾取とブッシュミートの消費/気候変動と感染症への影響/結論
第8章 生物多様性と食料生産
歴史的背景/農業/家畜(酪農?)生産/水生態系からの食料/結論
第9章 遺伝子組み換え作物(GM作物)と有機農業
遺伝子組み換え食品/有機農業/複合農業/結論
第10章 生物多様性の維持のために一人一人が何を為すべきか[提案の章]
自分たちの地球に何をしているのか?/なぜ浪費は止まらないのか?/生物多様性を保全する方法/多くの声が当局を動かした実例/すばらしい業績を残した個人活動家/生物多様性の維持に貢献ー私たちができる10の事柄
SDGs(持続可能な開発目標)達成のためには「生物多様性の保全と持続可能な利用」が必要.それはヒトの衣食住や文化が「生態系サービス」に依存しているから.では将来への課題はどこにある? 生物多様性の大切さと問題を確認し,消費者にできること,教育現場での実践例,国内外でのユニークな取組みを知ろう.【オールカラー】
はじめに
1 生物多様性の危機
2 生物多様性から学ぶ・活かす
3 消費者としての実践と持続可能な農業
4 持続可能な未来のための自然環境学習と市民科学
5 持続可能な地域社会を築く「自然再生」
著者は、米国で25年間、最先端の医療経済学の研究と教育に従事した後、2020年に日本へ帰国。「99%」の住民の生活水準を改善するため、「プランB」を提案している。「プランB」とは、日本が採用している大企業・大都市中心の「プランA」のオルタナティブ(代替案)である。「プランB」を経済学的な切り口から詳解したのが、前著『日本再生のための「プランB」-医療経済学による所得倍増計画』(2021年3月集英社新書刊)。本著と前著は姉妹本であり、どちらから先に読んでも理解できるように執筆した。
本著は、同じ「プランB」を別の切り口から説明している。すなわち、個人の職業選択、創造性の伸ばし方、海外への転職、地方が悩む人口減少などの具体的な質問に回答する書簡形式で、「プランB」がどのように役立つかを説明。
また、本著は、「プランB」の最小単位である一個人の内部の多様性を豊かにする「道具としての(アウグスト・ボアールの)演劇」への招待状であり、すべての年代、地方を担う人々への応援の著でもある。
雄しべ・雌しべの出現時期や活性期がずれる雌雄異熟の現象を追究した異色の観察図鑑。自家受粉を避け、多様な遺伝子を取り込むべく展開される雄しべと雌しべのしたたかなドラマ。雄性期・雌性期の実相を明らかにし、花の新しい常識を今拓く。鹿児島県小・中・高等学校理科教育研究協議会推薦、鹿児島植物同好会推薦。241種掲載。
地球に満ちる多様な生物種は,「種分化」とよばれる進化のたまもの。
種分化を理解することは,生物多様性のなりたちを理解することにもつながります。
では,種分化とは?
そのきっかけは? そのプロセスは?
有名なガラパゴスの「フィンチの嘴」のように,リアルタイムで起きている進化の様相を目の当たりにできる例は,残念ながら限られています。
でも! 今生きている生物の生態の中に,あるいは体内のDNAの中に,その証拠が残されている!
生物学の様々な考え方,手法を駆使して,種分化という現象のおもしろさ,研究方法を紹介します。
ー 進化の研究を志す学生の方だけでなく,生物多様性や生物の歴史について学びたい生きもの好きの方にもおすすめです。
・種分化を学ぶなら知っておきたい基礎知識,研究の展開をまとめた概論「種分化ことはじめ」が便利
・解析手法,日本列島の地史など,これから学ぶ人が知っておきたい重要なポイントを解説したコラム5篇を収録
・植物,昆虫,魚類を材料に,種分化研究の実例を紹介
・生きもの好き究極の問い「地球の生物はなぜかくも多様なのか」に答える地道な研究が見えてくる
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【 著者名付き目次 】
第1部 種分化を体系的に理解する
第1章 種分化ことはじめ -阪口 翔太
コラム1 生殖隔離の定量化 ー松林 圭
第2部 個別の事例から種分化を学ぶ
第2章 自然選択が引き起こすアキノキリンソウの種分化 -阪口 翔太
第3章 6年に1度の一斉開花の進化と生殖隔離 ー柿嶋 聡
第4章 集団の地理的分断から生殖後隔離〜ガガンボカゲロウを用いた種分化研究〜 -竹中 將起・東城 幸治
コラム2 日本列島の形成史ー形成過程とその原動力ー -竹中 將起
第5章 種分化の生態ゲノム学 -北野 潤
コラム3 種分化の転換点ーA tipping point in speciation- -山口 諒
第6章 適応と交雑が織りなす複雑な種のかたち -松林 圭
第7章 雑種形成がもたらす劇的な開花期シフト ー野村 康之
コラム4 種分化における遺伝子流動の多様な働き ー野村 康之
第8章 分布域の境界で起こる浸透性交雑:キイチゴ属に見られる交雑帯と環境勾配 ー三村 真紀子
コラム5 形質の地理的な変異と種分化 高橋 大樹
第9章 有性生殖を二次的にやめたシダ植物の無配生殖種の多様化 -村上 哲明・堀 清鷹
第10章 倍数化種分化における遺伝子発現解析 -清水(稲継)理恵
科学の現場のダイナミズムに迫る
本書は、「科学とは何か」という極めて大きな問題を巡る、ほぼ半世紀にわたる著者の議論のエッセンスを、分かりやすくまとめたものである。
20世紀における科学の急激な発展と、それが引き起こした倫理的諸問題の考察からはじまり、科学には限界があるか、他の形態の知とどのような関係を保たなければならないのだろうかという問いに答えようと試みる。
本書の軸となる章では、科学の対象が異なるのに応じて用いられる方法も多様になるが、この多様性によって提起される問題の柔軟性にもかかわらず、科学の内に見出される統一性とは何を意味しているのか、そして、数理科学と経験科学という科学的知識の二つのタイプの対象および方法の相違、それらの間の関係が論じられる。
はじめに
序 性のあり方の多様性
第1部 日常生活の安心と生活保障
同性パートナーシップの公的承認
同性による法律婚の可能性
トランスジェンダーがおかれている社会の現状と課題
政治の現場から
第2部 平等な社会へ向けて
当事者の抱える事情と相談対応
教育現場で性的マイノリティについて考える必要性
企業研修
当事者の家族と友人をつなぐ
第3部 世界は今
性的自己決定権と性別変更要件の緩和
同性カップルによる家族形成と法制度の変容
国際人権法における性の多様性
おわりに