「シリーズ 話し合い学をつくる」待望の第二巻。多領域からの研究・実践報告や議論を通して、「共創」を実現するための「話し合いのモデル」と、それを基調とする「社会・制度・政策のあり方」を探求する「話し合い学」の構築をめざす。
執筆者:村田和代、井関崇博、森篤嗣、杉山武志、青山公三、加納隆徳、田村哲樹、荒川歩、小宮友根、土山希美枝、篠藤明徳、坂野達郎、佐野亘
neuro(「脳・神経」)、そしてdiversity(「多様性」)。
この2つの言葉から生まれたneurodiversity(ニューロダイバーシティ)は、「脳や神経、それに由来する個人レベルでの様々な特性の違いを多様性と捉えて相互に尊重し、それらの違いを社会の中で活かしていこう」という考え方であり、社会運動を指す言葉です。
自閉症スペクトラム障害をはじめ発達障害と呼ばれる現象を、能力の欠如や優劣とは異なる視点、意味で捉えなおすための言葉であり、そしてさらには「すべての人の脳や神経の在り方」がその対象となる裾野の広さを持った言葉でもあります。
本書は発達障害に関わる支援者や教育者はもちろん、当事者やそのご家族、そして「多様性尊重社会の実現」に関心を持っているすべての方に「ニューロダイバーシティ」という人間理解の新たな視点をお届けする入門書となっています。
はじめに
第1部 ニューロダイバーシティとは何か?
第1章 ニューロダイバーシティという言葉の基礎知識
第2章 ニューロダイバーシティに関する議論,批判
第2部 ニューロダイバーシティ視点の人間理解
第3章 脳・神経の仕組みが異なるということの臨床的理解
第4章 脳・神経の違いが生む異なる体験と文化
第3部 ニューロダイバーシティの諸側面
第5章 『教育』×『ニューロダイバーシティ』
第6章 『働く』×『ニューロダイバーシティ』
第7章 『家族』×『ニューロダイバーシティ』
おわりに 対人支援者,教育者がニューロダイバーシティを学ぶ意味
あとがき
生物多様性の基礎理論から,森林,沿岸,里山の生態系の保全,社会的側面を学ぶ入門書。〔内容〕生物多様性とは何か/生物の進化プロセスとその保全/森林生態系の機能と保全/沿岸生態系とその保全/里山と生物多様性/生物多様性と社会
第1章 生物多様性とは何か (宮下 直)
1.1 地球環境と生物多様性
1.2 生物多様性の危機要因
1.3 生物多様性の三つの階層
1.4 生態系サービスと生物多様性
第2章 生物多様性の生態学理論 (瀧本 岳)
2.1 個体群の理論
2.2 群集・生態系の理論
2.3 生物多様性と生態系機能の理論
コラム1 ロジスティック方程式
コラム2 平衡状態と平衡点の局所安定性
第3章 生物多様性の進化プロセスとその保全 (瀧本 岳)
3.1 進化・適応・種分化
3.2 人間活動による進化プロセスの改変
3.3 人間活動がもたらす種分化プロセスの改変
3.4 まとめ
コラム3 種を定義する
第4章 森林生態系の機能と保全 (鈴木 牧)
4.1 森林の特性と生物多様性
4.2 森林生態系の機能とサービス
4.3 森林の減少と劣化
4.4 森林の利用と保全
コラム4 寄生者による宿主の操作
コラム5 ニホンジカの増加はなぜ起こったか
第5章 沿岸生態系とその保全 (佐野光彦)
5.1 沿岸浅海域の生態系と生物多様性
5.2 サンゴ礁
5.3 マングローブ域
5.4 砂浜海岸
コラム6 海洋保護区
第6章 里山と生物多様性 (宮下 直)
6.1 里山とは何か?
6.2 二次草地と生物多様性
6.3 水田の生物多様性
6.4 モザイク景観と生態系サービス
第7章 生物多様性と社会 (宮下 直)
7.1 生物多様性条約と生物多様性国家戦略
7.2 保護地域
7.3 生物多様性保全を支える経済的な仕組み
7.4 生物多様性と人間の福利:人の健康を例に
コラム7 保護区選定における相補性の考え方
引用文献
用語索引
生物名索引
教師に求められる資質・能力の一つとして挙げられるファシリテーションとは何か。識者に今一度、ファシリテーションについて解説していただくとともに、多様な子どもたちがいる教室でファシリテーションがどのように機能しているのか、具体的な実践で見せる。
1.巻頭言 学校とファシリテーション
2.誌上レポート 授業の中のファシリテーション〜豊田哲雄さんの教室〜
3.ファシリテーションとは何か
4.座談会 学校教育実践におけるファシリテーションの現在地を探る
5.ファシリテーションで授業が変わる
6.特別寄稿 学校教育とファシリテーションの歩み〜「学校教育に関するファシリテーション書籍一覧表」をもとに〜
多民族・多言語多文字社会である中国における「調和的言語生活の構築」とは、何を意味しているのか。言語政策の現代的展開を追いつつ、その実施過程に現れた諸問題と「言語意識」の危機的状況を明らかにするとともに、圧倒的力を持つ「普通話」(=国語)のもとでの危機に瀕した(方言を含めた)少数言語の現状と、その位置づけを展望する。
まえがき 今、なぜ危機言語か/石剛
言語意識と現代中国と/石剛
1.はじめに
2.「語言生活派」というブランド
3.社会言語学研究の今日的状況
4.言語政策発想の転換
5.言語政策の実行過程に見る諸関係
6.言語政策と言語意識
7.おわりに
危機言語の認定と保護/黄行
1.国家言語と民族言語
1.1.言語同一性と同一言語の認知/1.2.国家言語/1.3.民族言語/1.4.国家言語と民族言語への帰属認識
2.危機言語の基準
2.1.危機言語/2.2.言語の認定基準/2.3.中国の言語グループと民族グループ/2.4.危機言語の認定と保護
3.少数民族言語使用状況調査
3.1.少数民族言語文字調査状況/3.2.少数民族言語文字政策/3.3.中国少数民族言語の使用発展状況/3.4.少数民族言語文字使用状況調査の理念
中国における言語の多様性と言語政策/周慶生
1.はじめにー中国における言語政策の「主体性」と「多様性」
2.「主体多様」言語政策とその受容
2.1.建国時期の言語政策/2.2.文化大革命時期における言語政策
3.改革開放下の言語政策
3.1.普通話の等級標準化/3.2.少数民族言語文字の規範化
4.国家通用言語文字法の公布とその実施
4.1.『言語法』の主な原則/4.2.『言語法』の実施
5.現代中国の言語政策とその実施
5.1.方言使用の実態/5.2.少数民族言語使用と二言語教育
おわりに
言語の危機と言語の権利ーー付録:中国危機言語データベース基準(案)/範俊軍
少数民族の言語危機と言語人権についてに
1.危機言語の歴史趨勢と現実的緊迫性/2.危機言語と言語生態学の視角/3.危機言語の保護の人権視角
付録:中国危機言語データベース・デジタル基準(案)
1.中国危機言語データベース・デジタル基準説明/2.中国危機言語データベース・デジタル基準
潮州語、温州語、そして播州語ーーその現状と言語多様性のゆくえ/寺尾智史
1.45年前の、そして45年後の『タイからの手紙』--バンコクから
2.温州語のネットワークーー世界に散らばる商用リンガ・インテルナ
3.90年後の『方言矯正方案』-華僑/華人を受け入れた側の言語再考
新疆ウイグル自治区における漢語教育と検定試験ーーHSK、MHKの比較分析から見た政策変容/王瓊
はじめに
1.HSK体系について
1.1.HSKの定義/1.2.HSKの構造/1.3.HSKによる「民漢兼通」の新基準
2.MHK体系について
2.1.MHKの定義と内容/2.2.MHKの構造/2.3.構造からみたMHKの動向ーー「民漢兼通」の最終的な意味/2.4.MHKによる新たな「民漢兼通」基準の設定
おわりに
あとがき 言語意識の危機/石剛
現代の多様化した教育問題を考えるにあたり必要不可欠である、「ジェンダー」や「ダイバーシティ」(多様性)の視点から編まれた教育の理念・教育の歴史及び思想、いわゆる「教育原理」の学びを深めるテキスト。
第1部では、教育の思想・歴史について、2部では、教育の理念について、3部では現代日本の学校教育が抱える諸問題を取り扱う。
<執筆者>藤田 由美子, 谷田川 ルミ, 奥野 佐矢子, 本多 みどり, 田渕 久美子, 高橋 英児, 二井 仁美, 角替 弘規 , 岩本 健良
生きものについて全て知りたい!その想いをつきつめて,行けるところまで行ってみよう!ゲノムという設計図をもとに織りなされる植物の世界。遺伝子の働き,細胞の色,クチクラの組成といったミクロな視点から,高地への適応,画像解析による形態や植生の解析といったマクロの視点まで。階層を横断して生き物を調べつくした研究を様々なノウハウと共に紹介!
一口に「生きものを調べる」と言っても,調べる対象は無限にある。ある特徴一つをとっても,どんな機能があるのか?どんな素材でできているのか?どんな遺伝子が作用しているのか?……等々,知りたいことが次々に出てきてしまうから。そんな疑問の数々も,画期的な技術の発展により調べ尽くすことができる時代に。そんな新時代の研究者たちがみている景色を一緒にのぞいてみませんか?
【 本書の特長 】
多彩な研究例を紹介
・ゲノム解析がひもとく植物の歴史や多様性
・食物生産の効率化や品種改良への応用
・小さな細胞の中で何が起きているかを知る
・生物工学で生物時計を見える化!
研究に役立つ技術の紹介
・ゲノムをまるっと見る「GWAS」の使い方
・バーチャル植物をつくっちゃう? 画像解析技術の可能性
分子生物学の基礎知識もコンパクトに紹介
【 目次 】
第1部 ゲノミクス編:ゲノムを読んだら何がわかる?
第1章 ゲノム解読技術の発展と,野生アズキの耐塩性研究
第2章 ゲノム情報から迫るハワイフトモモの種内多様化プロセス
コラム1 反復配列・トランスポゾンとその検出
第3章 植物の雌しべが花粉を選び分けるしくみ
第4章 大量ゲノム情報時代の植物育種
第2部 フェノミクス編:植物を調べつくす方法
第5章 なぜ青いバラは咲かないのかーアントシアニンによる多彩な花色の発現機構ー
第6章 接木の科学によって,技術をさらに使いこなす
第7章 赤外分光法によるヤセイカンランのクチクラの構造解析
ー物理化学者による非破壊計測の試み
コラム2 クチクラワックスを介した花芽防御機構の標高分化
-春先のマイルドな凍結ストレスへの繁殖器官の適応ー
第8章 作物生産科学におけるC3型個葉光合成とその変動光応答
第9章 ウキクサを光らせて概日時計を視る
第3部 ノウハウ編:こっそり教えるテクニック
第10章 植物におけるゲノムワイド関連解析の落とし穴
コラム3 倍数体ゲノムのバイオインフォマティクス
第11章 植物3次元形態のデータ化,定量化,モデル化
コラム4 画像情報に基づく植物・植生の判別とその発展
-深層学習による技術発展を中心にー
コラム5 ゲノム解析の前提となる分子生物学の基礎知識
雄しべ・雌しべの出現時期や活性期がずれる雌雄異熟の現象を追究した異色の観察図鑑。自家受粉を避け、多様な遺伝子を取り込むべく展開される雄しべと雌しべのしたたかなドラマ。雄性期・雌性期の実相を明らかにし、花の新しい常識を今拓く。鹿児島県小・中・高等学校理科教育研究協議会推薦、鹿児島植物同好会推薦。241種掲載。
「生物多様性の維持がいかに人類の健康で文化的な生活のために必要か」をテーマに、生物多様性の喪失が人間の健康に与える潜在的脅威の全てを考察した初めての本。人間の豊かな生活が原因で起こる危険について警告している。
刊行によせて/序文/訳者序文
第1章 生物多様性とは何か?
種絶滅率の測定/二次的な絶滅/個体群と遺伝的特性の喪失/結び
第2章 人類の生活が生物多様性に与える脅威
陸上における生息環境の消滅/海洋における生息環境の消滅/淡水域における生息環境の消滅/天然資源の乱獲/移入種問題/感染症の脅威/環境汚染/紫外線(UV)/戦争や武力衝突が環境に与えるダメージ/地球規模の気候変動
第3章 生態系サービス
生態系サービスの特徴/生態系サービスの経済的価値/生態系サービスにとっての脅威/結論
第4章 自然界からの薬品
なぜ天然薬品なのか/天然産物の医薬品としての歴史/薬発見の伝統的な医療の役割/南米土着の医薬/いくつかの天然由来の薬品の概観/工業国でのハーブ治療薬/医薬品の可能性のある食品/殺虫剤および防かび剤としての天然産物
第5章 生物多様性と生物医療研究
医科学研究の歴史概略/生医学研究における動物と微生物の役割/結論
第6章 絶滅危機にある医学上有用な生物
両生類/クマ類/霊長類/裸子植物/イモガイ類/サメ類/カブトガニ類/結論
第7章 生態系の攪乱、生物多様性の消失および人間の感染症
生態系の攪乱と感染症への影響/媒介者、病原体、宿主の多様性と人間の感染症/生物的制御/種の搾取とブッシュミートの消費/気候変動と感染症への影響/結論
第8章 生物多様性と食料生産
歴史的背景/農業/家畜(酪農?)生産/水生態系からの食料/結論
第9章 遺伝子組み換え作物(GM作物)と有機農業
遺伝子組み換え食品/有機農業/複合農業/結論
第10章 生物多様性の維持のために一人一人が何を為すべきか[提案の章]
自分たちの地球に何をしているのか?/なぜ浪費は止まらないのか?/生物多様性を保全する方法/多くの声が当局を動かした実例/すばらしい業績を残した個人活動家/生物多様性の維持に貢献ー私たちができる10の事柄
科学の現場のダイナミズムに迫る
本書は、「科学とは何か」という極めて大きな問題を巡る、ほぼ半世紀にわたる著者の議論のエッセンスを、分かりやすくまとめたものである。
20世紀における科学の急激な発展と、それが引き起こした倫理的諸問題の考察からはじまり、科学には限界があるか、他の形態の知とどのような関係を保たなければならないのだろうかという問いに答えようと試みる。
本書の軸となる章では、科学の対象が異なるのに応じて用いられる方法も多様になるが、この多様性によって提起される問題の柔軟性にもかかわらず、科学の内に見出される統一性とは何を意味しているのか、そして、数理科学と経験科学という科学的知識の二つのタイプの対象および方法の相違、それらの間の関係が論じられる。
地域活性化策として注目を集める地域ブランディングについて,ビジネス・ブランディングの理論を援用しながら,その本質に迫る。そして,これまで別々に議論されてきた地域空間と地域産品のブランディングを統合し,地域ブランディングを体系的に考察する分析枠組みを提示する。また,本書では,食文化資源を活用した事例を多数取り上げ、地域ブランディングにおける食文化資源の有用性も明らかにしている。
序 章 地域ブランド研究の意義と本書の目的
第1部 理論編
第1章 ブランドの意味と役割ーーブランドの基礎知識⑴
第2章 ブランドのマネジメントーーブランドの基礎知識⑵
第3章 地域ブランドの分析視角ーー地域ブランディングの統合モデル
第2部 事例編
第4章 地域ブランドの付与条件ーー事例:あきたこまち
第5章 地域ブランドの製品選択ーー事例:仙台牛たん焼き
第6章 地域ブランドの市場選択ーー事例:関あじ・関さば
第7章 地域ブランドのダイナミズムーー事例:大阪産(もん)
第8章 地域ブランド資源としての地域産品ーー事例:富士宮やきそば学会
第9章 地域ブランドのマネジメントーー事例:食の都・大阪推進会議
第10章 地域ブランドの競争と共創ーー事例:B-1グランプリ
終 章 地域ブランディングの論理ーーその固有性とビジネス・ブランディングへの示唆
「生物多様性」をテーマにしたシリーズの第3巻。
かつては植物の中の一群とされていた藻類だが、現在では多様な起源をもつ生物の集まりであるとわかってきている。研究の歴史や人との関わりをはじめ、原核生物や原生動物との系統関係、葉緑体の起源や細胞内共生による進化過程など、さまざまな視点からこの生物群を解説する。
豊富な植物画を配し、分類形質一覧表等の付録も充実。
第 I 部 藻類の多様性と分類体系
1.藻類の多様性
2.藻類の多様性研究の歴史
第 II 部 さまざまな形質からみた藻類の多様性と系統・進化
3.分子系統学からみた多様性
4.葉緑体にみる多様性
5.光合成色素にみる多様性
6.鞭毛と鞭毛装置にみる多様性
7.有性生殖にみる多様性
8.藻類の光運動反応
9.藻類の概日時計
10.細胞内共生による葉緑体の獲得と藻類の多様化
第 III 部 植物群ごとの特徴 -図版解説とコラムー
1.藍色植物門
2.原核緑色植物門
3.灰色植物門
4.紅色植物門
5.クリプト植物門
6.不等毛植物門
7.ハプト植物門
8.渦鞭毛植物門
9.ユーグレナ植物門
10.クロララクニオン植物門
11.緑色植物門
会社はなぜ存在するのか。そして、どのようになっていくのか。オックスフォード大学クラレンドン講義に基づいた著者最新の研究成果が、企業理論の新たな地平を切り開く。
著者は、米国で25年間、最先端の医療経済学の研究と教育に従事した後、2020年に日本へ帰国。「99%」の住民の生活水準を改善するため、「プランB」を提案している。「プランB」とは、日本が採用している大企業・大都市中心の「プランA」のオルタナティブ(代替案)である。「プランB」を経済学的な切り口から詳解したのが、前著『日本再生のための「プランB」-医療経済学による所得倍増計画』(2021年3月集英社新書刊)。本著と前著は姉妹本であり、どちらから先に読んでも理解できるように執筆した。
本著は、同じ「プランB」を別の切り口から説明している。すなわち、個人の職業選択、創造性の伸ばし方、海外への転職、地方が悩む人口減少などの具体的な質問に回答する書簡形式で、「プランB」がどのように役立つかを説明。
また、本著は、「プランB」の最小単位である一個人の内部の多様性を豊かにする「道具としての(アウグスト・ボアールの)演劇」への招待状であり、すべての年代、地方を担う人々への応援の著でもある。
奈良県大宇陀で守られる日本最古の私設薬園、史跡、森野旧薬園が所蔵する門外不出の家宝「松山本草」全10巻を初めてフルカラーB5判上製本で公開。
森野家は奈良県大宇陀で約450年の間、吉野葛製造を営んできた旧家である。薬草を中国からの輸入に頼り、財政を逼迫させていた享保年間に、森野家10代目、初代藤助賽郭は、八代将軍吉宗の命を受けた幕府採薬使、植村左平次とともに大和地方を調査した功により、幕府より薬草を下賜され、これを自家の裏山に植えたのが森野旧薬園のはじまりである。
江戸へ出かける機会の増えた藤助賽郭は、さまざまな専門家との交流を経て、晩年、自家の山に「桃岳庵」を建て、そこで薬草や動物の写生を日課とした。これが「松山本草」であり、主に702種の植物の他、昆虫、鳥獣、貝が彩色されて全1001種が描かれている。「草上」「草下」「蔓草藤」「芳草・灌木」「山草・湿草・毒草」「水草・石草」「殻草」「木」「鱗蟲禽獣」「介」の名前が各巻に付けられた和装冊子の状態で全10巻となっている。
藤助賽郭の植物画は、江戸享保改革期の薬種国産化政策を背景に、当時の生薬基原種や、すでに生息していた西洋生薬など、園内の植生を描き出している。
1750-1768年の間、森野藤助賽郭が写生した「松山本草」には1丁に2頁が描かれており、多くは1頁に2種の植物が描かれている。大和地方調査時に発見し、その後森野家がカタクリ粉製造をする端緒となった、カタクリの頁には「本草綱目」「大和本草」の説明文が引用され、賽郭の思いが伝わる。本書ではそれらを1頁に1頁ずつ収載している。薬草は使用部位も描かれ、開花時期、異名、上品、中品、下品などの記載もみられる。
ほかに、現在の植物と「松山本草」の全図絵にある植物の比較解説を行い、図絵への書き込みをデータ化し、収載するとともに和名、学名を記した図絵解読一覧、森野旧薬園の植生調査リストを掲載。江戸期の薬園の姿をいまに伝える森野旧薬園の姿と意義を明らかにする。
はじめに
序章 本書の視角:松山本草と森野旧薬園研究
第一章 森野藤助通貞賽郭真写『松山本草』
森野藤助賽郭と松山本草
生薬品質における基原植物同定と博物学
松山本草翻刻
1. 第1巻 草上 (59頁:1-121種) 121種
2. 第2巻 草下 (61頁:122-241種) 120種
3. 第3巻 蔓草藤 (51頁:242-341種) 100種
4. 第4巻 芳草・灌木 (19頁:342-377種) 36種
5. 第5巻 山草・湿草・毒草 (43頁:378-459種) 82種
6. 第6巻 水草・石草 (31頁:460-518種) 59種
7. 第7巻 穀菜 (33頁:519-582種) 64種
8. 第8巻 木 (61頁:583-702種) 120種
9. 第9巻 鱗蟲禽獸 (48頁:703-787種) 85種
10. 第10巻 介 (55頁:788-1001種) 214種
図絵解読一覧 (計1001種)
第二章 森野旧薬園から学ぶ生物多様性の原点と実践
江戸・享保改革期の薬種国産化政策と森野家
森野薬園時代の漢薬種育成と生薬栽培の伝統
森野旧薬園における生育植物の現況
生息植物リスト(2010〜11年時現在)
森野旧薬園の環境社会学的意義:国内における生息域保全
終章 総括と展望
おわりに
民主政治の根幹をなす選挙は、はたして公正・中立に行われているのか。選挙制度が選挙結果に与える影響は既に多くの研究がなされているが、選挙実務そのものがいかなる影響を及ぼしているかを、国内外の実態調査から余すところなく解明する。本書では、世界各国の選挙ガバナンスの多様性を紹介し、選挙管理制度がなぜバリエーションに富み、いかなる選挙ガバナンスが選挙管理の質、民主主義の質に良好な影響を与えるかを考察する。