マクロファージは疾患ごとに多様なサブタイプの存在が明らかになるなど,疾患との深い関わりが注目されています.本書はこのような最新の知見を中心に,マクロファージ研究の総集編といえる内容となっています.
第1章 マクロファージの分化・活性化・制御を知る8つの方法
1.脂肪酸によるマクロファージ機能制御
2.iPS細胞とマクロファージ
3.腸内細菌叢とマクロファージ
4.神経ガイダンス因子によるマクロファージ機能制御
5.死細胞由来リガンドによるマクロファージ活性化
6.抑制化レセプターによるマクロファージの機能制御
7.炎症細胞社会におけるマクロファージ
8.noncoding RNAとマクロファージ
第2章 病気とマクロファージの多様性を知る14の方法
1.関節破壊を惹起する炎症性マクロファージの同定ー破骨前駆細胞の新たなサブセット
2.マクロファージ分化経路とその治療標的としての可能性
3.メタボリックシンドロームにおけるマクロファージの役割
4.皮膚疾患とマクロファージ
5.NASHにおけるマクロファージの多様性
6.病気ごとに異なるマクロファージサブタイプと非免疫系とのクロストークー線維化にかかわる免疫系と非免疫系の関係性
7.肺におけるマクロファージの役割
8.新しい単球サブセットによるがん転移促進
9.神経系マクロファージによる痛覚変調
10.動脈硬化の発生および進展におけるマクロファージの役割
11.心臓マクロファージの不均一性による心臓管理
12.腎臓病,腎線維化におけるマクロファージ
13.ミクログリアと神経変性疾患
14.脳梗塞後の炎症とマクロファージ
第3章 感染症とマクロファージを知る4つの方法
1.ウイルス感染に対する宿主クロマチンの高次構造変化と感染症の病態形成
2.フラビウイルスと単球・マクロファージー感染防御と病原性の2つの側面から
3.マクロファージを介する宿主と結核菌の攻防
4.マクロファージによる細胞内寄生虫破壊機構と寄生虫の抗マクロファージ戦略
第4章 最新の解析技術を用いた免疫細胞を知るための5つの方法
1.1細胞遺伝子発現解析をはじめとする1細胞オミックス技術の進歩とマクロファージ研究への応用
2.in vivo微小環境における,神経伝達物質を介した免疫細胞の制御ー質量分析を用いたアプローチ
3.100万以上の細胞をミクロンレベルの空間分解能でワンショット観察可能なトランススケールスコープAMATERAS-外れ値科学の創出をめざして
4.マスサイトメトリー,マスサイトメトリーイメージングによる細胞の網羅的解析
5.革新的要素技術が切り拓く高解像度空間トランスクリプトーム解析法
2000年にデンマークのNGO(Stop the Violence)が、北欧最大級の音楽祭であるロスキレ・フェスティバルで始めた「人を貸し出す図書館」ヒューマンライブラリー。障害者、ホームレス、性的少数者など、社会のなかで偏見やスティグマを経験したことのある人々が「本」になり、一般「読者」と対話をするこの「図書館」は、世界中に広がり、現在では90カ国以上で開催されている。本書では、大学や団体をはじめとする国内外の多様な実践を紹介すると同時に、偏見の低減効果、ヒューマンライブラリーの運営がもたらす学習効果などに関する分析を行い、自己と他者の関係性の再構築、また、日常の生活空間と差異を再構築する場としてのヒューマンライブラリーの意義を論考する。
会社はなぜ存在するのか。そして、どのようになっていくのか。オックスフォード大学クラレンドン講義に基づいた著者最新の研究成果が、企業理論の新たな地平を切り開く。
「生物多様性」をテーマにしたシリーズの第3巻。
かつては植物の中の一群とされていた藻類だが、現在では多様な起源をもつ生物の集まりであるとわかってきている。研究の歴史や人との関わりをはじめ、原核生物や原生動物との系統関係、葉緑体の起源や細胞内共生による進化過程など、さまざまな視点からこの生物群を解説する。
豊富な植物画を配し、分類形質一覧表等の付録も充実。
第 I 部 藻類の多様性と分類体系
1.藻類の多様性
2.藻類の多様性研究の歴史
第 II 部 さまざまな形質からみた藻類の多様性と系統・進化
3.分子系統学からみた多様性
4.葉緑体にみる多様性
5.光合成色素にみる多様性
6.鞭毛と鞭毛装置にみる多様性
7.有性生殖にみる多様性
8.藻類の光運動反応
9.藻類の概日時計
10.細胞内共生による葉緑体の獲得と藻類の多様化
第 III 部 植物群ごとの特徴 -図版解説とコラムー
1.藍色植物門
2.原核緑色植物門
3.灰色植物門
4.紅色植物門
5.クリプト植物門
6.不等毛植物門
7.ハプト植物門
8.渦鞭毛植物門
9.ユーグレナ植物門
10.クロララクニオン植物門
11.緑色植物門
地域の和、科学の眼、自然の力、元気な生態系を取り戻そう。
奈良県大宇陀で守られる日本最古の私設薬園、史跡、森野旧薬園が所蔵する門外不出の家宝「松山本草」全10巻を初めてフルカラーB5判上製本で公開。
森野家は奈良県大宇陀で約450年の間、吉野葛製造を営んできた旧家である。薬草を中国からの輸入に頼り、財政を逼迫させていた享保年間に、森野家10代目、初代藤助賽郭は、八代将軍吉宗の命を受けた幕府採薬使、植村左平次とともに大和地方を調査した功により、幕府より薬草を下賜され、これを自家の裏山に植えたのが森野旧薬園のはじまりである。
江戸へ出かける機会の増えた藤助賽郭は、さまざまな専門家との交流を経て、晩年、自家の山に「桃岳庵」を建て、そこで薬草や動物の写生を日課とした。これが「松山本草」であり、主に702種の植物の他、昆虫、鳥獣、貝が彩色されて全1001種が描かれている。「草上」「草下」「蔓草藤」「芳草・灌木」「山草・湿草・毒草」「水草・石草」「殻草」「木」「鱗蟲禽獣」「介」の名前が各巻に付けられた和装冊子の状態で全10巻となっている。
藤助賽郭の植物画は、江戸享保改革期の薬種国産化政策を背景に、当時の生薬基原種や、すでに生息していた西洋生薬など、園内の植生を描き出している。
1750-1768年の間、森野藤助賽郭が写生した「松山本草」には1丁に2頁が描かれており、多くは1頁に2種の植物が描かれている。大和地方調査時に発見し、その後森野家がカタクリ粉製造をする端緒となった、カタクリの頁には「本草綱目」「大和本草」の説明文が引用され、賽郭の思いが伝わる。本書ではそれらを1頁に1頁ずつ収載している。薬草は使用部位も描かれ、開花時期、異名、上品、中品、下品などの記載もみられる。
ほかに、現在の植物と「松山本草」の全図絵にある植物の比較解説を行い、図絵への書き込みをデータ化し、収載するとともに和名、学名を記した図絵解読一覧、森野旧薬園の植生調査リストを掲載。江戸期の薬園の姿をいまに伝える森野旧薬園の姿と意義を明らかにする。
はじめに
序章 本書の視角:松山本草と森野旧薬園研究
第一章 森野藤助通貞賽郭真写『松山本草』
森野藤助賽郭と松山本草
生薬品質における基原植物同定と博物学
松山本草翻刻
1. 第1巻 草上 (59頁:1-121種) 121種
2. 第2巻 草下 (61頁:122-241種) 120種
3. 第3巻 蔓草藤 (51頁:242-341種) 100種
4. 第4巻 芳草・灌木 (19頁:342-377種) 36種
5. 第5巻 山草・湿草・毒草 (43頁:378-459種) 82種
6. 第6巻 水草・石草 (31頁:460-518種) 59種
7. 第7巻 穀菜 (33頁:519-582種) 64種
8. 第8巻 木 (61頁:583-702種) 120種
9. 第9巻 鱗蟲禽獸 (48頁:703-787種) 85種
10. 第10巻 介 (55頁:788-1001種) 214種
図絵解読一覧 (計1001種)
第二章 森野旧薬園から学ぶ生物多様性の原点と実践
江戸・享保改革期の薬種国産化政策と森野家
森野薬園時代の漢薬種育成と生薬栽培の伝統
森野旧薬園における生育植物の現況
生息植物リスト(2010〜11年時現在)
森野旧薬園の環境社会学的意義:国内における生息域保全
終章 総括と展望
おわりに
本書では,目の前の子ども同士や子どもと保育者との間で生まれるやりとりや気持ちを大事にして,臨機応変に保育をつくりだしていく「インクルーシブ保育」の実際を伝える。
第?部で「みんなが同じ」であることを前提としない「インクルーシブ保育」の考え方を伝える。第?部では,実践事例をとりあげ,面白い活動が生まれる中でクラス集団の関係性や子ども一人ひとりの姿,保育者自身の認識などが変化していく過程を伝える。第?部では,インクルーシブ保育と従来の障がい児保育や統合保育とのちがいについてあらためて検討し,これからの保育の実践や研究のあり方について考察する。
ネズミ類研究の最前線ーー多様性や進化研究のモデル動物として注目されるアカネズミをはじめ,琉球列島のケナガネズミやトゲネズミ,人間とのかかわりが深いハツカネズミ,ネズミ類が媒介する人獣共通感染症など,気鋭の研究者たちが多様で興味深い研究内容を紹介する.
はじめに(本川雅治)
序 章 日本のネズミ(本川雅治)
I 進化
第1章 日本のネズミの起源(佐藤 淳)
第2章 日本のネズミ化石(西岡佑一郎)
第3章 アカネズミの形態変異(新宅勇太)
第4章 アカネズミの集団史と進化(友澤森彦)
II 生態・生活史
第5章 アカネズミの採餌行動(島田卓哉)
第6章 アカネズミの社会行動(坂本信介)
第7章 実験動物としてのアカネズミ(越本知大)
第8章 琉球列島のネズミ類(城ヶ原貴通)
III ヒトとネズミ
第9章 ハツカネズミの歴史(鈴木 仁)
第10章 ネズミ類が媒介する感染症(新井 智)
終 章 これからのネズミ研究(本川雅治)
特集:チョウ類の多様性とその保全
世界で約2万種,日本では250〜300種いると言われている蝶。
古今東西で人々を魅了し,生物多様性の指標でもある身近な存在だが,今各地で急激に減少しており,危機的状況にある。
チョウ類の衰亡はなぜ起こり,どのようにすれば食い止めることができるのか?
本特集では,最前線で活躍する研究者たちが,まずチョウ類の形態,生活史,行動などの多様性を概観,保全に関する遺伝学的アプローチから現場での取り組みや環境教育まで紹介する。
巻頭グラビア7頁は「身近なチョウも減っている -里地里山のチョウ絶滅危惧ランキング」,日本の蝶の儚く繊細な美しさを堪能いただくとともに,彼らを絶滅から守るためのきっかけになれば幸いである。
◎巻頭グラビア
身近なチョウも減っている -里地里山のチョウ絶滅危惧ランキング(平井 規央(大阪府立大学))
◎特集:チョウ類の多様性とその保全
総論 チョウ類の多様性とその保全(平井 規央(大阪府立大学))
1.チョウの斑紋と遺伝 -メンデルの法則から分子遺伝学へ(八木 孝司(大阪府立大学名誉教授))
2.チョウの行動学 -成虫の生きている姿に迫る(竹内 剛(大阪府立大学))
3.チョウ類の移動とその多様性 -海や国境を越えて渡りをする種も(平井 規央(大阪府立大学))
4.アリと共に暮らすシジミチョウ -化学物質を使って巣仲間になりすましたイモムシ(上田 昇平(大阪府立大学))
5.チョウの群集生態学 -過去30年間の日本のチョウ群集の研究の歩みと今後(大脇 淳(山梨県富士山科学研究所))
6.衰退する里山のチョウ類 -モニタリングサイト1000里地調査の結果から(石井 実(大阪府立大学名誉教授/大阪府立環境農林水産総合研究所))
7.遺伝子の視点から考える,チョウ類の保全(中濱 直之(兵庫県立大学))
8.チョウ類の保全の現場から -チョウ類保全に必要な10の活動(中村 康弘(日本チョウ類保全協会))
9.絶滅危惧種のチョウを用いた環境教育の可能性(江田 慧子(関西学院大学))
◎連載
植物を集める!!
[第7回]シーボルトの植物画法への貢献(長田 敏行(東京大学))
高校生物・ワクワク宣言!!
熊本県内の淡水産ヌマエビ類に見られる共生・寄生生物の生息状況 -1年生の気づきから始まったエビ班の6年間(松藤 加代子(熊本県立東稜高等学校))
「高校新教科 理数」の学び方
[第2回]理数探究と生物遺伝実験 -高校におけるRT-PCR法を用いた分子生物学実験(田中 福人(ノートルダム清心女子高等学校))
実験観察の勘どころ
共に手を動かし,考え,実験観察の取り組みを育てる -教員実験研修会「KOBE金曜EveLabo」の6年間から(薄井 芳奈(KOBEらぼ♪Polka))
◎フォトコンテスト
生物科学学会連合「第三回 生きものの “ つぶやき ”フォトコンテスト」-審査発表(1)
変容する社会のなかで、北欧諸国の介護は市場化がもたらす課題にどのように向き合っているのか。日本の介護労働の実態は北欧諸国とどのように異なり、どのようにあるべきか。
グローバル化、新自由主義的政策の流れのなかで、普遍的給付を原則としてきた北欧諸国の高齢者介護は市場化と多様化の向きを強めている。スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、それぞれの社会情勢や歴史、政策方針を背景にして変化する「介護サービス」の最新動向を、北欧諸国の介護研究の第一人者との共同研究から分析する。また、日本の介護労働は北欧と比較してどのような状況にあるのか、大規模な比較調査から明らかにする。
はじめに 社会の変容と高齢者介護ー国際比較、介護現場の視点から
第1部 NORDCARE調査からみた北欧諸国と日本の高齢者介護
第1章 「施設」と「在宅介護」の境界線ー介護労働者の日常からみえるもの
第2章 スウェーデンと日本の介護労働者の実像ーホームヘルパーと施設職員の属性を中心に
第3章 日本とデンマークの介護労働環境ー介護労働者のストレスとその背景
第4章 仕事の裁量とやりがいーWærnessの「ケアの合理性」概念に焦点をあてて
第5章 スウェーデンの認知症ケアにおける認知症看護師の役割ーヴェクショー市の事例をもとに
第2部 北欧諸国の高齢者介護の今ー市場化動向とその多様性
第6章 北欧4カ国における高齢者介護の市場化とその特徴
第7章 スウェーデンにおける高齢者介護の市場化ー競争、選択、より厳格な規制の要請
第8章 デンマークにおける高齢者介護の市場化ー自由選択、質の向上と効率化の追求
第9章 ノルウェーにおける高齢者介護の市場化ー背景とトレンド、それに対する抵抗
本邦の喘息ガイドラインにおいて,喘息は「気道の慢性炎症を本態とし,臨床症状として変動性を持った気道狭窄(喘鳴,呼吸困難)や咳で特徴付けられる疾患」と定義されている。一方,COPDは「タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することなどにより生ずる肺疾患であり、呼吸機能検査で気流閉塞を示す疾患」と定義される。いずれの疾患も,発症因子や発症年齢,臨床的特徴,炎症病態,併存症の種類,治療反応性などには大きな多様性があり,疾患を単一のものとして捉え,一様な治療管理を行うことには限界があることが指摘される。
近年,多様性をもった疾患をフェノタイプやエンドタイプというサブグループとして捉え,多様性を病態に即して理解し,治療管理を行うという考え方が広がりつつある。喘息では,近年,臨床に登場した分子標的治療薬やサーモプラスティなどの治療選択において,治療が有効と考えられるフェノタイプ・エンドタイプを同定することが必須となっている。さらに,今後も様々な分子標的薬が登場することが予想され,以前にもまして病態の多様性を把握し,治療を最適化する必要性が高まってくると考えられる。また,COPD治療管理においても,好酸球性炎症が存在する病態をどのように取り扱うか,フェノタイプごとにどのような治療薬の選択を行うべきかなど,治療の最適化への模索がなされている。
本特集の目的は,喘息とCOPDに関し,フェノタイプの臨床的特徴や同定方法を明確にし,これらに対する治療のアプローチや臨床結果についての最新の研究成果を基に理解することで,読者の日常臨床にこのような概念を反映していただくことにある。また,好酸球性気道炎症を伴うCOPDや喘息・COPDオーバーラップなど,フェノタイプの同定の不確実性や,新たな試みについて読者が理解し,実臨床における混乱を少しでも解消することを目的とする。
このような本特集の目的のため,喘息やCOPDの診療・研究の第一線にあるエキスパートに執筆をお願いした。また,読者がよりプラクティカルにフェノタイプの分類手法や治療選択を理解できるように,エキスパートによる症例提示とその解説をしていただいた。
本特集は,呼吸器診療に携わるすべての医師が,喘息とCOPD診療において,画一的な治療から個々に最適な治療の実現にステップアップするための新たな視点を得るのに役立つものであると確信する。
カメムシの産卵と孵化においては,新しい生命の誕生と同時に,“母から子への共生細菌の受け渡し”という,もう一つのイベントが繰り広げられている。これがうまくいかないと新しい生命の誕生もなかったことになってしまうという,カメムシにとってはとてつもなく重要なイベントである。なぜそれほどまでに重要なのかというと,カメムシは共生細菌の力に強く依存して生きており,共生細菌がいないと生きていけないからである。つまりカメムシは,どんなに元気な子が生まれても,母親から子への共生細菌の受け渡しがうまくいかないとその子は成長できずに死んでしまう。すなわち新しい生命の誕生はなかったことになってしまうのだ。そして共生細菌を受け渡す方法は,カメムシの種類によって大きく異なる。そんな知られざる,しかし非常に重要なイベントに強く魅了され,「研究ってめっちゃ楽しいなぁ,これはやめられまへんなぁ」とカメムシの研究にのめり込むようになった著者が,研究の楽しさと発見の喜び,そのワクワク感とドキドキ感を込めて,カメムシと細菌の共生という現象の面白さをいきいきと伝える。
北海道から沖縄の日本産クモ類、約700種類の生活史や生態環境などを解説。
雌雄、幼虫、網、卵嚢などの多彩な生態写真(約3000枚)を掲載しており、図書室などの参考図書としても最適。