奈良県大宇陀で守られる日本最古の私設薬園、史跡、森野旧薬園が所蔵する門外不出の家宝「松山本草」全10巻を初めてフルカラーB5判上製本で公開。
森野家は奈良県大宇陀で約450年の間、吉野葛製造を営んできた旧家である。薬草を中国からの輸入に頼り、財政を逼迫させていた享保年間に、森野家10代目、初代藤助賽郭は、八代将軍吉宗の命を受けた幕府採薬使、植村左平次とともに大和地方を調査した功により、幕府より薬草を下賜され、これを自家の裏山に植えたのが森野旧薬園のはじまりである。
江戸へ出かける機会の増えた藤助賽郭は、さまざまな専門家との交流を経て、晩年、自家の山に「桃岳庵」を建て、そこで薬草や動物の写生を日課とした。これが「松山本草」であり、主に702種の植物の他、昆虫、鳥獣、貝が彩色されて全1001種が描かれている。「草上」「草下」「蔓草藤」「芳草・灌木」「山草・湿草・毒草」「水草・石草」「殻草」「木」「鱗蟲禽獣」「介」の名前が各巻に付けられた和装冊子の状態で全10巻となっている。
藤助賽郭の植物画は、江戸享保改革期の薬種国産化政策を背景に、当時の生薬基原種や、すでに生息していた西洋生薬など、園内の植生を描き出している。
1750-1768年の間、森野藤助賽郭が写生した「松山本草」には1丁に2頁が描かれており、多くは1頁に2種の植物が描かれている。大和地方調査時に発見し、その後森野家がカタクリ粉製造をする端緒となった、カタクリの頁には「本草綱目」「大和本草」の説明文が引用され、賽郭の思いが伝わる。本書ではそれらを1頁に1頁ずつ収載している。薬草は使用部位も描かれ、開花時期、異名、上品、中品、下品などの記載もみられる。
ほかに、現在の植物と「松山本草」の全図絵にある植物の比較解説を行い、図絵への書き込みをデータ化し、収載するとともに和名、学名を記した図絵解読一覧、森野旧薬園の植生調査リストを掲載。江戸期の薬園の姿をいまに伝える森野旧薬園の姿と意義を明らかにする。
はじめに
序章 本書の視角:松山本草と森野旧薬園研究
第一章 森野藤助通貞賽郭真写『松山本草』
森野藤助賽郭と松山本草
生薬品質における基原植物同定と博物学
松山本草翻刻
1. 第1巻 草上 (59頁:1-121種) 121種
2. 第2巻 草下 (61頁:122-241種) 120種
3. 第3巻 蔓草藤 (51頁:242-341種) 100種
4. 第4巻 芳草・灌木 (19頁:342-377種) 36種
5. 第5巻 山草・湿草・毒草 (43頁:378-459種) 82種
6. 第6巻 水草・石草 (31頁:460-518種) 59種
7. 第7巻 穀菜 (33頁:519-582種) 64種
8. 第8巻 木 (61頁:583-702種) 120種
9. 第9巻 鱗蟲禽獸 (48頁:703-787種) 85種
10. 第10巻 介 (55頁:788-1001種) 214種
図絵解読一覧 (計1001種)
第二章 森野旧薬園から学ぶ生物多様性の原点と実践
江戸・享保改革期の薬種国産化政策と森野家
森野薬園時代の漢薬種育成と生薬栽培の伝統
森野旧薬園における生育植物の現況
生息植物リスト(2010〜11年時現在)
森野旧薬園の環境社会学的意義:国内における生息域保全
終章 総括と展望
おわりに
2000年にデンマークのNGO(Stop the Violence)が、北欧最大級の音楽祭であるロスキレ・フェスティバルで始めた「人を貸し出す図書館」ヒューマンライブラリー。障害者、ホームレス、性的少数者など、社会のなかで偏見やスティグマを経験したことのある人々が「本」になり、一般「読者」と対話をするこの「図書館」は、世界中に広がり、現在では90カ国以上で開催されている。本書では、大学や団体をはじめとする国内外の多様な実践を紹介すると同時に、偏見の低減効果、ヒューマンライブラリーの運営がもたらす学習効果などに関する分析を行い、自己と他者の関係性の再構築、また、日常の生活空間と差異を再構築する場としてのヒューマンライブラリーの意義を論考する。
あなたの“性”はなんですか?“LGBTQ+”?“ふつう”?さまざまな性のあり方を通して“私”について考えよう。
★2021年度「日経品質管理文献賞」受賞
【概要】
〜組織の継続的発展のために、多様性と効率性を共に高める生産管理へ!〜
現在顧客に対して製品やサービスを提供する製造業やサービス業などの企業では、組織の継続的発展のために、開発した製品やサービスを顧客に提供する活動だけでなく、顧客価値創造活動が求められています。製品やサービスそのものの新規開発とともに、コストやデリバリーの水準をさらに高めることで顧客要求を満足させるための価値創造も求められています。
従来、相反する多様性と効率性のいずれかを重視する生産方式、あるいはそれらの均衡を図る生産方式と同時に、それぞれの生産方式に対して効果的な計画管理が考えられてきました。また、複雑化した製品の効率的生産を支えるために、生産拠点を連携させる計画管理も考えられてきました。結果として、製品やサービスを提供する生産活動では多様性と効率性のいずれかを重視、あるいは両者を均衡するだけでは十分ではなくなってきています。例えばマスカスタマイゼーションと呼ばれるように、多様性と効率性を共に高める生産管理が求められるようになっています。そのような背景から、多様性と効率性を共に高めることを目的に、基本となる方式を高度化した生産方式とその計画管理が考えられています。本書では,そのように高度化された生産管理について述べています。
最近では、IoT (Internet of Things)・CPS (Cyber-Physical System)・AI (Artificial Intelligence) などのICT (Information and Communication Technology) が急速に進展してきています。そのようなICTの活用で多様性と効率性を更に高めた生産活動が期待されており、そのための生産管理のさらなる進化が求められています。
〜JSQC選書とは〜
「新・質の時代」における新たな品質論を各界に展開し広く啓蒙していくことを目的とし、普及啓蒙活動や推進運動の一つの形態とするシリーズ書籍です。広い層の知識人に対して品質の意味・意義を説くために、興味ある時事をとらえつつ、品質にかかわる基本的概念・方法を説明します。
《本書の特長》
▼生産管理に関する基本的な生産方式とそのための計画管理について、さらに多様性と効率性を共に高める高度化した生産管理についても学べます。
▼本書の最後では、急速に進んでいるICTによる生産管理の発展についても紹介します。
1. はじめに
2. 多様性を重視する個別生産とその計画管理
3. 多様性と効率性の均衡を目指すロット生産とその計画管理
4. 効率性を重視するライン生産とその計画管理
5. 効率的生産を支える生産拠点の連携とその計画管理
6. 多様性と効率性をともに高める生産方式とその計画管理
7. おわりに
アメリカには自治体や教育委員会、大学などが運営する数多くの非営利放送局があり、草の根的に公共放送を発展させてきた歴史がある。その背景に何があるのかを探り、教育や社会問題に対してコミュニティレベルで取り組むアメリカ社会の特質を浮き彫りにする。
まえがき
第一章 放送の誕生
放送の起源
通信技術への期待
電気通信のはじまり
有線から無線へ
ハム・ムーブメント
ハム・ムーブメントとアメリカ海軍
教育機関によるラジオ放送
商業放送の原点
ネットワーク、スポンサー、ラジオ広告概念の誕生
NBCとCBSの誕生
第二章 アメリカ公共放送前史
放送の発展
放送のあり方
フーバーの放送政策失態と一九二七年無線法の成立
非営利教育ラジオ放送
教育放送推進組織の誕生
大きな政府か小さな政府か
教育放送に関する議論の衰退
第三章 アメリカ公共放送の誕生史
アメリカの公共放送誕生
テレビの普及とアメリカの放送産業
へノックと教育放送
へノックの経歴
へノックの連邦通信委員会委員就任に対する反応
へノックの描いた教育放送
教育放送枠チャンネルの確保
フォード財団と教育放送
フォード財団の理念
フォード財団の放送局への支援活動
教育放送ネットワークの構築
カーネギー教育テレビ検討委員会の提言
カーネギー教育テレビ検討委員会の公共放送像
一九六七年公共放送法の制定
第四章 アメリカ公共放送の不遇な成り立ち
アメリカの公共放送発展史
アメリカ放送産業の発展
公共放送法の制定後
リベラル・バイアスだ!
自主規制と表現の自由
財源の問題
アメリカ公共放送の現在
第五章 公共ラジオ放送とコミュニティ・ラジオの誕生
非営利公共ラジオ放送
シマリングと教育ラジオ放送
非営利教育ラジオ放送と公共放送
シマリングとコミュニティ・ラジオ
NPRの理念
NPRとシマリング
NPRのその後
パシフィカ・ラジオの誕生
ヒルの人生観
ヒルの考えたラジオ放送の役割
対話をする場の構築
パシフィカ・ラジオの発展
パシフィカ・ラジオとヒルの対立
ヒルの死後
シマリングとヒルが目指した人知の共有
第六章 もう一つの非営利放送
コミュニティ・ラジオ
PEGチャンネルとコミュニティ・メディア形成史
PEGチャンネル義務化
終章 未完の理想像
知識共有手段としての放送の誕生
市民の知識レベル底上げの手段としての教育放送
公共性の模索と公共放送の停滞
戦後の公共放送再興
あとがき
索引
地域の和、科学の眼、自然の力、元気な生態系を取り戻そう。
今、ダイバーシティ(多様性)が企業、社会において重要なキーワードになっている。多様な人々が共に生きるインクルーシブ社会を実現するために必要な教育、それがインクルーシブ教育である。ただ、日本では、インクルーシブ教育=障害児教育という捉え方をされがちである。しかし、多様性といったとき、障害者だけではない。子どもたちが、社会に共生する他者や他の文化を受け入れながら、人間らしく生きるという尊厳をもった人間性を、経験の中で英知と共に獲得していくことが、インクルーシブ教育の最終的な到達目標となる。多様な人々を包み込む、これからの教育の進むべき方向性を考える。
【主な内容】
第1章 インクルージョンとは?
第2章 インクルージョンの四つの局面とインクルーシブ教育
第3章 これからのインクルーシブ教育の方向性と課題
変容する社会のなかで、北欧諸国の介護は市場化がもたらす課題にどのように向き合っているのか。日本の介護労働の実態は北欧諸国とどのように異なり、どのようにあるべきか。
グローバル化、新自由主義的政策の流れのなかで、普遍的給付を原則としてきた北欧諸国の高齢者介護は市場化と多様化の向きを強めている。スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、それぞれの社会情勢や歴史、政策方針を背景にして変化する「介護サービス」の最新動向を、北欧諸国の介護研究の第一人者との共同研究から分析する。また、日本の介護労働は北欧と比較してどのような状況にあるのか、大規模な比較調査から明らかにする。
はじめに 社会の変容と高齢者介護ー国際比較、介護現場の視点から
第1部 NORDCARE調査からみた北欧諸国と日本の高齢者介護
第1章 「施設」と「在宅介護」の境界線ー介護労働者の日常からみえるもの
第2章 スウェーデンと日本の介護労働者の実像ーホームヘルパーと施設職員の属性を中心に
第3章 日本とデンマークの介護労働環境ー介護労働者のストレスとその背景
第4章 仕事の裁量とやりがいーWærnessの「ケアの合理性」概念に焦点をあてて
第5章 スウェーデンの認知症ケアにおける認知症看護師の役割ーヴェクショー市の事例をもとに
第2部 北欧諸国の高齢者介護の今ー市場化動向とその多様性
第6章 北欧4カ国における高齢者介護の市場化とその特徴
第7章 スウェーデンにおける高齢者介護の市場化ー競争、選択、より厳格な規制の要請
第8章 デンマークにおける高齢者介護の市場化ー自由選択、質の向上と効率化の追求
第9章 ノルウェーにおける高齢者介護の市場化ー背景とトレンド、それに対する抵抗
はじめに
序 性のあり方の多様性
第1部 日常生活の安心と生活保障
同性パートナーシップの公的承認
同性による法律婚の可能性
トランスジェンダーがおかれている社会の現状と課題
政治の現場から
第2部 平等な社会へ向けて
当事者の抱える事情と相談対応
教育現場で性的マイノリティについて考える必要性
企業研修
当事者の家族と友人をつなぐ
第3部 世界は今
性的自己決定権と性別変更要件の緩和
同性カップルによる家族形成と法制度の変容
国際人権法における性の多様性
おわりに
脈々と連なる遺伝子の川を縦糸に、多様に枝分かれした生き物たちの関わり合いを横糸に、実験室とフィールドワークの出会いが織りなす知のタペストリー。動物学・植物学・生物物理学など、対象も手法も異なる多彩な研究の結びつきから浮かび上がってくる生物界の全体像を鮮やかに描き出す。
1970年代、荒れ狂う若者たちを撮り続けたカメラマンの秘蔵写真が今甦る。
★この書籍の小売店頭価格は、2,500円+税です。
持続可能な地域社会づくりを意識したエネルギー自立政策で先進的な取り組みを進めるオーストリアに注目。小規模の自治体が多数存在するオーストリアでは、それぞれの地域が風土や自然、産業・文化に合わせた独自のエネルギー政策を立案し、それを全面的に支える仕組みがいくつも存在する。また、草の根で楽しみながら進める市民の文化がある。今号では、その具体的なシステムと事例を紹介し、日本への示唆を考えます。
目次
特集
1 巻頭言「オーストリアの先進性に学ぶ」的場信敬
Part 1:エネルギー自立の最前線
「草の根によるエネルギーの大改革」滝川 薫
「農山村の地域発展とエネルギー自立」久保田 学
「都市におけるエネルギー自立」木原浩貴
「林業・木材産業・バイオマスエネルギー」渕上佑樹
「生活の質を向上させる省エネ対策」上園昌武+上園由起
Part 2:持続可能な地域づくりを支える仕組み
「自治体の気候エネルギー政策を支える仕組み」豊田陽介
「オーストリアの中間支援組織」平岡俊一
「エネルギー事業の担い手とローカル経済圏」手塚智子
「農山村振興のためのボトムアップ政策」石倉 研
「2040年脱炭素を目指す政策とエネルギーシフト」歌川 学
ミニ連載
平家納経を考える4 厳王品 恵美千鶴子
ヴィンテージ・アナログの世界 レコード・レーベルの黄金期25 高荷洋一
連載
動物たちの文化誌31 疫病と動物たち 早川篤
欧州グリーンインパクト7 フランスのパーマカルチャー 遠藤浩子
環境問題に対して、メディアの果たす役割は極めて大きいにもかかわらず、その実態について整理・分析した研究は少ない。本書は、そのような状況に鑑み、環境問題とメディアの関係について、様々な角度から検討を加える。