2000年にデンマークのNGO(Stop the Violence)が、北欧最大級の音楽祭であるロスキレ・フェスティバルで始めた「人を貸し出す図書館」ヒューマンライブラリー。障害者、ホームレス、性的少数者など、社会のなかで偏見やスティグマを経験したことのある人々が「本」になり、一般「読者」と対話をするこの「図書館」は、世界中に広がり、現在では90カ国以上で開催されている。本書では、大学や団体をはじめとする国内外の多様な実践を紹介すると同時に、偏見の低減効果、ヒューマンライブラリーの運営がもたらす学習効果などに関する分析を行い、自己と他者の関係性の再構築、また、日常の生活空間と差異を再構築する場としてのヒューマンライブラリーの意義を論考する。
アメリカには自治体や教育委員会、大学などが運営する数多くの非営利放送局があり、草の根的に公共放送を発展させてきた歴史がある。その背景に何があるのかを探り、教育や社会問題に対してコミュニティレベルで取り組むアメリカ社会の特質を浮き彫りにする。
まえがき
第一章 放送の誕生
放送の起源
通信技術への期待
電気通信のはじまり
有線から無線へ
ハム・ムーブメント
ハム・ムーブメントとアメリカ海軍
教育機関によるラジオ放送
商業放送の原点
ネットワーク、スポンサー、ラジオ広告概念の誕生
NBCとCBSの誕生
第二章 アメリカ公共放送前史
放送の発展
放送のあり方
フーバーの放送政策失態と一九二七年無線法の成立
非営利教育ラジオ放送
教育放送推進組織の誕生
大きな政府か小さな政府か
教育放送に関する議論の衰退
第三章 アメリカ公共放送の誕生史
アメリカの公共放送誕生
テレビの普及とアメリカの放送産業
へノックと教育放送
へノックの経歴
へノックの連邦通信委員会委員就任に対する反応
へノックの描いた教育放送
教育放送枠チャンネルの確保
フォード財団と教育放送
フォード財団の理念
フォード財団の放送局への支援活動
教育放送ネットワークの構築
カーネギー教育テレビ検討委員会の提言
カーネギー教育テレビ検討委員会の公共放送像
一九六七年公共放送法の制定
第四章 アメリカ公共放送の不遇な成り立ち
アメリカの公共放送発展史
アメリカ放送産業の発展
公共放送法の制定後
リベラル・バイアスだ!
自主規制と表現の自由
財源の問題
アメリカ公共放送の現在
第五章 公共ラジオ放送とコミュニティ・ラジオの誕生
非営利公共ラジオ放送
シマリングと教育ラジオ放送
非営利教育ラジオ放送と公共放送
シマリングとコミュニティ・ラジオ
NPRの理念
NPRとシマリング
NPRのその後
パシフィカ・ラジオの誕生
ヒルの人生観
ヒルの考えたラジオ放送の役割
対話をする場の構築
パシフィカ・ラジオの発展
パシフィカ・ラジオとヒルの対立
ヒルの死後
シマリングとヒルが目指した人知の共有
第六章 もう一つの非営利放送
コミュニティ・ラジオ
PEGチャンネルとコミュニティ・メディア形成史
PEGチャンネル義務化
終章 未完の理想像
知識共有手段としての放送の誕生
市民の知識レベル底上げの手段としての教育放送
公共性の模索と公共放送の停滞
戦後の公共放送再興
あとがき
索引
日本における種子論議のオピニオンリーダーの一人である、龍谷大学経済学部教授・西川芳昭氏の編著書。1農家vs企業という単純な図式を超えた、種子をめぐる複雑な現実に光をあて、2日本だけでなくアジアの小農・家族農を対象に農家の生き方や言葉にならない感覚を重視し、3生物文化多様性の視点からタネとヒトとの持続的な関係を提言している。タネを播き育て次代に引き継いできた農家の現実・実感・思いから語る本書は、経済的、政治的な視点で語られがちな種子論議に一石を投じるものといえる。
【目次】
第1章 生物文化多様性の視点からタネとヒトとの関係の豊かさを研究するとは
第2章 タネを採るヒトはタネとどのような関係を築いているのか
第3章 地域品種の継承とその多様な意味ーー中山間集落の全農地通年調査から
第4章 農家の庭木果樹にみる民衆の生存・生活価値ーー無償労働にみる「いきいきと生きる」ことの意味
第5章 豊かな食は遺伝資源からーーワサビが教えてくれること
第6章 アジアの小農とタネとの関係1--ミャンマーの国民野菜CHINBAUNG(チンバオ)のタネをめぐる仕組み
第7章 アジアの小農とタネとの関係2--ネパールにおけるソバとカラシナの調査からみえてきたもの
第8章 東アジアの種子管理組織とそのメカニズムの特性とは何かーー日韓台の政府系ジーンバンクと非営利組織の活動から
第9章 「支配」の観点から捉えた大手種苗会社と農業者の関係性
第10章 “人類共通の遺産”としての種子に関する国際社会の努力と利害関係者の協力に向けて
第11章 種子を共的世界に取り戻すことは可能かーーコモン化(commoning)の視点から
第12章 ヒトとタネの多層的関係を基盤とした農の営みの持続を目指して
■編著者
西川芳昭 龍谷大学経済学部教授
■著者(執筆順)
宇根 豊 百姓・農と自然の研究所代表
小林邦彦 総合地球環境学研究所研究員
河合史子 総合地球環境学研究所研究員(非常勤)
広田 勲 岐阜大学応用生物科学部助教
大和田興 茨城県農業総合センター農業研究所研究員
山根京子 岐阜大学応用生物科学部准教授
長嶋麻美 東京農業大学博士課程修了(農学博士)
渡邉和男 筑波大学生命環境系教授
河瀬眞琴 東京農業大学農学部教授
Ohm Mar Saw 元農業・畜産・灌漑省(ミャンマー連邦共和国)農業研究局バイオテクノロジー・植物遺伝資源・植物保護部主席研究員
入江憲治 東京農業大学国際食料情報学部教授
冨吉満之 久留米大学経済学部准教授
Bimal Dulal NPO法人ラブグリーンジャパン・プログラムオフィサー
吉田雅之 農業・元ネパール派遣青年海外協力隊員
坂本清彦 龍谷大学社会学部准教授
岡田ちから 特許業務法人秀和特許事務所弁理士
田村典江 総合地球環境学研究所上級研究員
今、ダイバーシティ(多様性)が企業、社会において重要なキーワードになっている。多様な人々が共に生きるインクルーシブ社会を実現するために必要な教育、それがインクルーシブ教育である。ただ、日本では、インクルーシブ教育=障害児教育という捉え方をされがちである。しかし、多様性といったとき、障害者だけではない。子どもたちが、社会に共生する他者や他の文化を受け入れながら、人間らしく生きるという尊厳をもった人間性を、経験の中で英知と共に獲得していくことが、インクルーシブ教育の最終的な到達目標となる。多様な人々を包み込む、これからの教育の進むべき方向性を考える。
【主な内容】
第1章 インクルージョンとは?
第2章 インクルージョンの四つの局面とインクルーシブ教育
第3章 これからのインクルーシブ教育の方向性と課題
変容する社会のなかで、北欧諸国の介護は市場化がもたらす課題にどのように向き合っているのか。日本の介護労働の実態は北欧諸国とどのように異なり、どのようにあるべきか。
グローバル化、新自由主義的政策の流れのなかで、普遍的給付を原則としてきた北欧諸国の高齢者介護は市場化と多様化の向きを強めている。スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、それぞれの社会情勢や歴史、政策方針を背景にして変化する「介護サービス」の最新動向を、北欧諸国の介護研究の第一人者との共同研究から分析する。また、日本の介護労働は北欧と比較してどのような状況にあるのか、大規模な比較調査から明らかにする。
はじめに 社会の変容と高齢者介護ー国際比較、介護現場の視点から
第1部 NORDCARE調査からみた北欧諸国と日本の高齢者介護
第1章 「施設」と「在宅介護」の境界線ー介護労働者の日常からみえるもの
第2章 スウェーデンと日本の介護労働者の実像ーホームヘルパーと施設職員の属性を中心に
第3章 日本とデンマークの介護労働環境ー介護労働者のストレスとその背景
第4章 仕事の裁量とやりがいーWærnessの「ケアの合理性」概念に焦点をあてて
第5章 スウェーデンの認知症ケアにおける認知症看護師の役割ーヴェクショー市の事例をもとに
第2部 北欧諸国の高齢者介護の今ー市場化動向とその多様性
第6章 北欧4カ国における高齢者介護の市場化とその特徴
第7章 スウェーデンにおける高齢者介護の市場化ー競争、選択、より厳格な規制の要請
第8章 デンマークにおける高齢者介護の市場化ー自由選択、質の向上と効率化の追求
第9章 ノルウェーにおける高齢者介護の市場化ー背景とトレンド、それに対する抵抗
はじめに
序 性のあり方の多様性
第1部 日常生活の安心と生活保障
同性パートナーシップの公的承認
同性による法律婚の可能性
トランスジェンダーがおかれている社会の現状と課題
政治の現場から
第2部 平等な社会へ向けて
当事者の抱える事情と相談対応
教育現場で性的マイノリティについて考える必要性
企業研修
当事者の家族と友人をつなぐ
第3部 世界は今
性的自己決定権と性別変更要件の緩和
同性カップルによる家族形成と法制度の変容
国際人権法における性の多様性
おわりに
脈々と連なる遺伝子の川を縦糸に、多様に枝分かれした生き物たちの関わり合いを横糸に、実験室とフィールドワークの出会いが織りなす知のタペストリー。動物学・植物学・生物物理学など、対象も手法も異なる多彩な研究の結びつきから浮かび上がってくる生物界の全体像を鮮やかに描き出す。
★この書籍の小売店頭価格は、2,500円+税です。
持続可能な地域社会づくりを意識したエネルギー自立政策で先進的な取り組みを進めるオーストリアに注目。小規模の自治体が多数存在するオーストリアでは、それぞれの地域が風土や自然、産業・文化に合わせた独自のエネルギー政策を立案し、それを全面的に支える仕組みがいくつも存在する。また、草の根で楽しみながら進める市民の文化がある。今号では、その具体的なシステムと事例を紹介し、日本への示唆を考えます。
目次
特集
1 巻頭言「オーストリアの先進性に学ぶ」的場信敬
Part 1:エネルギー自立の最前線
「草の根によるエネルギーの大改革」滝川 薫
「農山村の地域発展とエネルギー自立」久保田 学
「都市におけるエネルギー自立」木原浩貴
「林業・木材産業・バイオマスエネルギー」渕上佑樹
「生活の質を向上させる省エネ対策」上園昌武+上園由起
Part 2:持続可能な地域づくりを支える仕組み
「自治体の気候エネルギー政策を支える仕組み」豊田陽介
「オーストリアの中間支援組織」平岡俊一
「エネルギー事業の担い手とローカル経済圏」手塚智子
「農山村振興のためのボトムアップ政策」石倉 研
「2040年脱炭素を目指す政策とエネルギーシフト」歌川 学
ミニ連載
平家納経を考える4 厳王品 恵美千鶴子
ヴィンテージ・アナログの世界 レコード・レーベルの黄金期25 高荷洋一
連載
動物たちの文化誌31 疫病と動物たち 早川篤
欧州グリーンインパクト7 フランスのパーマカルチャー 遠藤浩子
1970年代、荒れ狂う若者たちを撮り続けたカメラマンの秘蔵写真が今甦る。
環境問題に対して、メディアの果たす役割は極めて大きいにもかかわらず、その実態について整理・分析した研究は少ない。本書は、そのような状況に鑑み、環境問題とメディアの関係について、様々な角度から検討を加える。
進む老朽化と増え続ける空き家問題。
少子高齢社会の現代、集合住宅の価値を高め、安心して暮らすために必要なことは何か。
団地再生の最新の取り組みをハードとソフトの両面から、海外と併せ合計46の事例を豊富な写真・図版と共にオールカラーで解説。
本書は団地再生とまちづくりを、そして持続可能な社会の実現するためのシリーズ最新刊。
全5巻完結・オールカラー
安すぎるバナナほど、高くつく。熱帯雨林破壊につながる「因果関係のネットワーク」を描き出す。生物多様性保全のためのポリティカル・エコロジー入門。
シリーズ最新刊。道徳授業の「質的転換」が必要な今,子どもたちの心に響くオリジナルの道徳授業を提案します。喫緊の今日的課題である「多様性の尊重」や「SDGs」に視点に置いた授業も取り上げています。