●自分は大丈夫だ、やれるんだという気持ち。自分は案外イケているじゃないか、という自信。それが自己愛だ。恥はそれが侵害され、圧し潰された時の感情として理解できる。それは深刻なトラウマ、すなわち「自己愛トラウマ」体験を引き起こすのである。ではその自己愛トラウマを引き起こす加害者は誰なのだろうか? 多くの場合、加害者の存在はあいまいである。しかしそうであっても、自己愛トラウマを被った人の傷の大きさは変らない。そしてそこから新たな怒りや加害行為を生むこともある。いま日本ではさまざまな問題が起きている。それらを理解するうえで、この自己愛トラウマやあいまいな加害者という概念を切り口として提唱する。
●目次
まえがき
序章 恥と「自己愛トラウマ」
恥の問題は格段に興味深い/これほど大事な恥の感情なのに/恥による傷つきはトラウマである/見られることはトラウマか、願望か?
第1部 「自己愛トラウマ」と現代人の怒り
第1章 怒りと「自己愛トラウマ」
人の怒る仕組みーー怒りの二重構造/二次的感情としての怒り/健全な自己愛、病的な自己愛/一次的な感情としての怒り/他
第2章 アスペルガー障害の怒りと「自己愛トラウマ」
「怒りは抑圧され、暴発する」という常識/「怒りの暴発モデル」は精神分析が起源である/「抑圧 - 発散モデル」は日常体験により近い/他
第3章 凶悪犯罪と「自己愛トラウマ」--秋葉原事件を読み解く
はじめに/KTの診断は何か?/KTに見られる怒りの特質ーーアスペルガー障害の「自己愛トラウマ」/KTを「自己愛トラウマ」から救えたのか?
第4章 「モンスター化現象」とトラウマ
モンスターたちを未熟とする論拠/モンスター化を社会現象としてとらえる/クレーマー社会は、被クレーマー社会、被トラウマ社会でもある/他
第2部 いじめとうつと「自己愛トラウマ」
第5章 いじめと「自己愛トラウマ」
いじめを生む「排除の力学」/「排除の力学」への文化の影響/日本の均一性こそが、いじめによる自己愛トラウマを生む/他
第6章 「現代型うつ病」と職場でのトラウマ
果たして「現代型」、「新型」のうつなのか?/いっそ、うつ病と考えないほうがいい/結局決め手は自殺率であるーー張賢徳医師の見解/他
第3部文化装置としての恥
第7章 トラウマ回避のための「無限連鎖型」コミュニケーション
日本人にとっての恥の意味ーー出発点としてのベネディクト/ベネディクトヘの賛否両論/日本社会における罪の意識/他
第8章 学校教育とは「自己愛トラウマ」の伝達だろうか?
対人体験は苦痛でもある/恥は一種の学習装置ではないか?/恥の装置と仲間への忠誠心/他
第9章 災害トラウマを乗り越える --津波ごっこと癒し
津波ごっことアートセラピー/一見常識的な介入がトラウマ的になる? いわゆる「CISD」の問題/トラウマと思うからトラウマになる?/他
第4部 トラウマとセクシュアリティーー見られることをめぐって
第10章 「見るなの禁止」とセクシュアリティ
「見るなの禁止」は誘惑を意図したものか?/文化の装置としての「見るなの禁止」は「粋(いき)」にも通じる/他
第11章 恥と慎みをめぐるある対話
■解説
私が診察室で出会う、会社に行けなくなった患者さんのかなりの部分が、上司とのやり取りでトラウマを背負っている。ひどく暴言を吐かれたり、夜中近くまで詰問されたり、仕事の「無茶ぶり」をされたり。それらはかなり深刻な自己愛トラウマの原因となっている。その結果として抑うつ気分や倦怠感が生じ、仕事に対する意欲を失い、欠勤がちになって医師のもとを訪れる。医師の多くは、「それはがんばりが足りないからだ」「あなたの弱さだ」とはねつけるが、一部は診断を下す。その場合はまずはうつを考える。もちろんそのような患者の多くは抑うつ症状を持っている。しかし同時に会社での仕事の環境に対する不安を抱いている。これは漠然とした不安というよりは、上司や同僚とのかかわりによって体験されたトラウマに基づくもので、職場に戻ることを考えたり、それを思い出させるような状況に遭遇した時に不安に襲われるのだ。トラウマとは不思議なもので、その当座はさほどインパクトを持たなくても、その場を離れてしまうと逆に恐怖感が増すことがある。休職になった後は、それまで毎日通っていた職場に行くこと自体に強烈な不安がともなうことがある。離婚した後前夫(前妻)に対して、その後にさらに恐怖感が増大していき、その持ち物にさえ触れられなくなる、ということもよくある。このような状況を考えると、実は「現代型うつ」における症状のかなりの部分を説明できる。なぜ休職中はうつが改善するのか。なぜ夕方五時以降は元気を取り戻すのか。それは彼らの示す症状が、うつというよりは不安、さらにはある特定の状況に対する恐怖症だからなのだ。(「第6章」より)
本書では、トラウマとジェンダーが重なる問題として、対人的なトラウマ、それも親密な関係における長期反復的なトラウマであるドメスティック・バイオレンスや性暴力、児童虐待の事例を数多く取り上げ、議論しているが、これらは社会的にも対応に危急を要するテーマでもある。臨床にすぐ役立つ、ジェンダー・センシティブなアプローチの要点を提示し、さらに、臨床現場にトラウマとジェンダーの視点をとり入れることで、具体的にクライエントの何を見、どのような働きかけをし、どんなことに気を配るかを事例検討で明らかにしている。
第1部 性非行の理解と治療教育
1 「触りたい、のぞきたい」と思ってしまうあなたへ
2 「性非行」に対応する大人たちに知っておいてほしいこと
3 性問題行動および性非行への対応の基本
第2部 非行少年の回復の現場から見えてきたこと
4 子どもを犯罪の被害者にも加害者にもしないために
5 少年犯罪、その鏡に映るいくつものこと
6 愛着・暴力・セクシュアリティ
7 児童自立支援施設について思うこと──心理教育プログラムの導入を通して
第3部 性犯罪・性暴力の理解と介入
8 性犯罪と嘘
9 性暴力行動の評価と介入
第4部 犯罪行動を変えるために
10 アセスメントからケースフォーミュレーション
11 犯罪者はどんな人たちか?
12 加害行動変化のための治療教育
13 治療共同体による薬物依存離脱プログラム──ある官民協働刑務所の試み
14 トラウマティック・ストレスからみた犯罪行動──その理解と治療教育
おわりに
初出一覧
今こそ性の学びをすべての人へ
子ども・青年・学生はもとより、大人・市民の間からも性について学習する機会を求める声が切実に上がっています。2016年に本書を発刊してから、「LGBT(性的マイノリティ)」への社会・学校等せの周知がすすみ、性の多様性のとらえ方が大きく変化しました。この変化を、私たちは性自認や性的指向のちがいを超えた「ジェンダー・セクシュアリティの平等」という観点から、「人間の性をどう見るか」という新しい人間観につながる課題として受け止め、刑法や法律の改定、最新のデータを取り入れ、この改訂新版を編みました。次の時代を生きる人びとへのメッセージの意味も込めて本書を刊行いたします。(著者一同)
一人ひとりが健康を守り納得いく医療を受け、社会や環境をよりよく変えていくために必要な見方・考え方・行動・スキルのすべてがこの1冊に。大学生を中心に幅広い読者を想定した読みやすくわかりやすい定評の健康読本。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)を見据えて改訂!
主要目次
1 健康に生きるとは、健康に生きる力、社会的健康とは
第1章 生涯発達と健康、社会、生き方
第2章 健康に生きる力
2 健康のために何をするか、何が健康を阻害するか
第3章 食と健康
第4章 身体、身体活動、睡眠と健康
第5章 薬品、薬物と健康
第6章 心と体の病気、口腔保健と医療・健康サービス
3 健康に生きていく場、健康を阻害する場
第7章 生活の場<大学、職場、家庭、地域>と健康
第8章 国境を越える人の移動と健康
第9章 環境・自然災害と健康
4 生き方の多様性と選択
第10章 セックス、ジェンダー、セクシュアリティと健康
第11章 病・障害の体験
第12章 老いること、死にゆくこと
第13章 先端医療と医療に関わる社会のルール
5 市民として社会制度を使う、変える
第14章 健康、医療と福祉を支える社会のしくみ
パンツを穿いた“好色なサル”は、20万年にわたって、どのような“性生活”を送ってきたか?今後、人類のSexはどう進化するのか?本書は、進化生物学・心理学、人類学などの専門分野の知見をもとに、人類20万年史における性の進化をたどり、現在の私たちの性と欲望のあり方の謎に迫った「性の進化論」である。米国で『キンゼイ・レポート』以来と言われる“大論争”を巻き起こし、世界21か国で翻訳出版されている。
性機能不全(性機能障害)に対する治療やカウンセリングについて、現場の第一線で臨床や実践にあたる専門家が解説。心理的療法を中心に、身体的診断や治療、各ライフステージにおけるセクシュアリティ、パートナーとの関係性や社会性まで考慮し、性の喜びをサポートできるセックス・セラピーを目指す。実用的な問診票フォーマットも収載されている。最新のセックス・セラピーを詳しく知りたい人におすすめの一冊。
本書は、日々の臨床実践を重ねた精神科医が、精神療法に関心をもっている、あるいは、その研修を始めたばかりの心理学部学生や大学院生、臨床研修医、精神科専門医を目指すひとたちへ向けて、〈効果的な〉精神科面接のための力動精神医学の視点を論じた1冊である。
「第?部 精神科医の視点」では、「適応障害(適応反応症)」「ボーダーラインパターン(境界性パーソナリティ障害)」「解離症とヒステリー」の概念と診断や治療を概説し、性ホルモンの影響に絞った女性のこころとからだの特徴や、医療面接で求められているコミュニケーション技能とそのトレーニング方法を概説する。
「第?部 精神科臨床と精神分析的精神療法」では、構造化された時間をとって行う精神療法の治療者でもあり、一般外来診療で短時間の診療を行う立場から薬物療法と精神療法をめぐる話題や、女性のセクシュアリティと精神分析的精神療法について論述し、また精神分析的精神療法を背景にもつ治療者が短時間の精神科外来診療の中で、どのような心的態度と視座を重視して診療を行っているかについて述べる。さらに、精神分析理論における精神力動論を概説し、その現代的な意義、精神分析と力動精神医学との関係についても論じる。
まえがき
序章 私が受けた精神療法の研修
第1部 精神科医の視点
第1章 適応障害(適応反応症)の診断と治療
第2章 ボーダーラインパターン(境界性パーソナリティ障害)の診断と治療
第3章 解離症とヒステリー
第4章 女性のこころとからだーー性ホルモンとの関連に着目してーー
第5章 医療面接と精神療法
第2部 精神科臨床と精神分析的精神療法
第1章 薬物療法医の精神療法
第2章 女性のセクシュアリティと精神分析的精神療法
第3章 力動的な精神科臨床
第4章 精神分析的な精神力動論
第5章 適応的な退行と自己
あとがきに代えてーー精神療法という密室の外で
●コラム
●成人看護学を学ぶ基盤として、「成人とは何か」を明確にし、看護の対象としての成人を理解する看護学独自の視点を示しました。
●生活者、大人としての成人の役割、健康問題を理解し、部位別看護・臓器別看護・系統別看護の考え方を整理したうえで、生活者としての成人をアセスメントするガイドを提示しています。
●成人への看護に有用な7つの概念を取り上げ、どのように用いるのか、事例を通して具体的に学びます。
●『健康危機状況/セルフケアの再獲得』『セルフマネジメント』と一貫性のある内容とし、成人看護学を体系立てて学べます。
●成人看護学の学習の助けになる序章や、働く大人の生活に関して仕事とその他の活動に関わる内容について解説した8章「ワーク・ライフと健康障害」、コラム「発達障害」などを新設しています。
機能的健康パターンの枠組みの解説から、アセスメントと看護診断、診断推論の実際へと理解が深まる構成。さまざまな臨床場面に応じたアセスメントの進め方、看護診断の導き方など、教育・臨床に生かせる解説。巻末付録として、実践に役立つアセスメント指針、看護記録例、フィジカル・アセスメントなどを収載。
セクシュアル・マイノリティとは、同性愛、両性愛、性同一性障害など、典型的なセクシュアリティとは異なるセクシュアリティのあり方を示す人々のことをいう。セクシュアリティのありようが少数派であるがゆえに、偏見にさらされ、生きづらさを抱えることも多いため、セクシュアル・マイノリティの人たちの心理的支援へのニーズは、顕在化しにくいが多大にある。人口の数%程度を占めるといわれる彼・彼女らに、臨床の場においてもそうとは知らずに出会う可能性、もしくは出会っている可能性は大きい。多様なセクシュアリティを示す人々を理解し、受け止め、支えるための1冊。
日常生活ケアの中でもきめ細かいアプローチが求められる「尿失禁ケア」「便失禁ケア」において、疾患の病態・治療を踏まえた上での適切なケア方法を詳述。問診のとり方、排尿日誌のつけ方、アセスメントの仕方、自立支援の方法など、看護師が日常的に行うケアの具体策を現場目線で解説
ひとつのことばが「女の問題」を超え、女と男のかかわりを、文化の作用を表してゆく。アメリカ人ジャーナリストが性差別を表す日本語に見た、日本語の中の女と、内なる日本文化。美人、ブス、姦しい、女子大生、お嬢様、奥さん、水子、お袋、男女雇用機会均等法、女流、OL、処女、未亡人、ナイスミディなど80頃目を収録。