フランス革命以降、人権への強い関心の潮流は止まらず、世界は今最もリベラル化していると言える。とはいえ、さらに男性に変化が求められる近年は、フェミニズムの視点抜きで、国や企業の成長は語れない。世界標準に遅れ、その分、伸びシロたっぷりの日本が知るべき「男女同権」の歴史とは? 米国で家族法を学び、自身も後発で目覚めた著者が、熱狂と変革のフェミニズム史を大解剖。ウルストンクラフト、ボーヴォワール、マッキノン、与謝野晶子など、主要フェミニスト五十余人を軸に、思想の誕生とその展開を鷲掴みした画期的な入門書。
就活・婚活、非正規雇用、貧困、ハラスメント、#MeToo……
現在の社会が見ないようにしてきた問題を、さらには、それと闘うはずのフェミニズム理論や社会運動からすらこぼれ落ちてきたものを拾い集めて、つぶやき続けるーー〈私〉が、そして〈あなた〉が「なかったこと」にされないために。
「弱さ」と共にある、これからのフェミニズムのかたち。
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【目次】
はじめに ぼそぼそ声のフェミニズム
1 〈私〉から出発し、女性の貧困を見据えること
1 ないものとされてきた女性たち
2 教える/教わる「女性の問題」
3 シューカツを巡る〈大人〉の欲望のまなざし
4 取り散らかった「私の部屋」から出発する
2 女性を分かつもの
5 労働の「他女」/アカデミックなフェミニズムの「他女」として叫ぶこと
6 “偽装”婚活迷走レポート
7 「愚かさ」「弱さ」の尊重
3 新しい「運動」へ
8 「自立」に風穴を開けるために
9 「気持ち悪い」男・「気持ち悪い」出来事
10 真空地帯としての社会運動
11 「私も」(MeToo)を支えるもの
あとがき
中国に女権主義(フェミニズム)ブームがやってきた。「なぜこの社会は不公正で不条理なのか」。自らの境遇に不満を募らせる女性たちの問いに、女権主義が答えを与えたからだ。「天の半分を支える」といわれてきた中国の女性だが、建国以来、中国共産党最高指導部にその姿はない。改革開放政策は男女格差を広げ、出産や結婚から女性は遠ざかる。女性への暴力や人身売買の報道もあとを絶たない。女権主義を手に入れた女性たちに対し、政権は神経をとがらせる。MeToo運動の最中に現地取材をした中国特派員が見た、抵抗と弾圧の最前線。
女性にはどんな権利が必要? 「女の仕事」はどう生まれた? 多様で複雑なフェミニズムの論点を、多様で複雑なまま、でもわかりやすく伝えます。
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帯テキストを入力ください(任意) *改行可 *内容の重複注意
なぜいつも男子がリーダーなのか
女性もバリバリ働くべき?
家事にお金を払ったら?
なぜ天才と言われる女性は少ないのか
整形っていけないこと?
性描写はやめるべきか
ーー実は、フェミニストの意見は分かれます
対立も矛盾もそのまま理解し、前に進むための超入門!
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第一章 支配
第二章 権利
第三章 仕事
第四章 女らしさ
第五章 セックス
第六章 文化
第七章 断層線と未来
フェミニズムの大きな潮流を捉える
「いかなる社会や集団においても、あらかじめ定められたモデルなどは存在せず、女性の解放を訴える声は複数ある。その道のりは、一度きりの出来事で決まるようなものではない」(「日本語版まえがき」より)。
本書は、フェミニズムの歴史を世界規模で捉え、その多様性と発展を探究する。フランス革命期から現代に至るまでを三つの時代に分け、結婚、教育、参政権、生殖の自己決定権などのテーマを中心に、フェミニズム運動の進展とその背景を分析する。また、国際的な連帯や植民地主義などとの関係を描き、ブラック・フェミニズムやラディカル・フェミニズムの台頭も取り上げる。特にフランスにおいては、フェミニズムが国家形成や市民社会との関わりを深め、独自の歴史を築いてきた経緯を詳述する。
フェミニズム史を包括的に理解するための一冊。
[目次]
日本語版まえがき
序章 グローバルなアプローチ
第一章 男女平等の主張と女性の解放(一七八九年〜一八六〇年)
1 人権(男性の権利)と女性の権利
-アメリカおよびフランスの革命の潮流
2 フェミニズムと初期社会主義
3 改革派フェミニズム
第二章 国際化の時代(一八六〇年〜一九四五年)
1 ナショナルおよび国境横断的な集合的ダイナミズム
2 平等のための闘い
3 新しい女性たちと解放
第三章 男女平等と女性解放のために(一九四五年〜二〇二〇年)
1 改革派フェミニズムの連続性
2 フェミニズム運動のラディカルな刷新(一九六〇年〜一九八〇年)
3 フェミニズムの拡散と多様化(一九八〇年〜二〇二〇年)
結論
謝辞
訳者あとがき
参考文献
いまよみがえる、マルクス主義×フェミニズム
「日常化した女性差別へ抗う理論を必要とする人たちへ。
日本における売買春廃止論(アボリショニズム)の決定版の書!」(藤田孝典)
▼広がった格差の中で女性への差別と暴力を構造的にとらえながら、ネオリベラリズムがもたらした女性搾取のための詭弁「セックスワーク論」を正面から批判し、資本主義と男性支配という現代の二つの支配的な社会システムの悪辣さを白日のもとにさらす。
「本書はきわめて論争的な内容となっている。マルクス主義もフェミニズムも無数の論争を通じて自己を鍛えていった。両者をテーマとする本書が論争的でないわけがない。本書の立場に対立する人々、とりわけセックスワーク論を信奉する人々にとっては、本書は唾棄すべきものでしかないだろう。(中略)多くの敵対的諸関係に引き裂かれたこの社会において、誰かの憎悪と攻撃を受けることなくして、論争的テーマで何か意味のあることを語ることはできない」(「序文」より)
男女平等をうたいながら、性差別的な言葉や行為に満ちた学校空間。差別と抑圧を超え、自己を解放する力をもたらすために教育に何ができるのか? 性差別の再生産を止め、既存の権力関係に変化をもたらそうとする新しいフェミニズム教育論!
[目次]
序章
第1章 フェミニズムとフェミニズム教育
1 権力をめぐるフェミニズムの考え方
2 構造としての権力関係への対応の仕方
3 女性学の誕生とその教育実践
4 フェミニズト・ペダゴジーによる権力関係への対応と失敗
5 権力関係の構造を変えるには
第2章 ポストフェミニズムにおける女性の主体性
1 頭のなかの得体のしれない力
2 ポストフェミニズム
3 ポストフェミニズムと新自由主義の共鳴
4 ポストフェミニズムの主体性
5 「作者とは何か」
第3章 学校教育のなかの二重基準と二重意識
1 学校がもたらす二重基準
2 二重基準への対応
3 W・E・B・デュボイスの論じた黒人の「二重意識」
4 学校現場の女性たちの二重意識
5 ハラスメントの構造ーー二重基準のあらわれ、そして二重意識を生み出すもの
6 バックラッシュと性差別ーー変化への抵抗
7 どちらの自己を養うのか
第4章 性差別はそこにあるのに、私たちはみんな見えなくさせられている
1 男子は落ちこぼれていない
2 リベラル・フェミニズムの教育研究
3 「男とか女とかことさら取り立てない」という学校文化
4 フェミニズムの意識を持つ教師
5 女子生徒たちの「抵抗」とポストフェミニズムとのつながり
第5章 困難な「セーフ・スペース」づくり
1 意識化
2 「習慣」の力
3 セーフ・スペース
4 権力が聞きたいことを繰り返す
5 女の語りは疑われる
第6章 情動のフェミニズム教育
1 身体を通じたコミュニケーション
2 エロスと情動
3 情動が伝わる教室環境
4 予測不可能なことを教室にもたらす情動
5 情動のコミュニケーションを習慣化する
終章
男性特権にいかに向き合うか、「弱者男性」論は差別的か、自らの「痛み」を消さない男性学はあるかーー。
著者が近年さまざまな媒体で発表した、フェミニズムやトランスジェンダー、そしてメンズリブなどジェンダーに関わる重要な考察を一冊にまとめた、著者初の男性学批評集。
加害と疎外が複雑に絡み合う「男性問題」のジレンマを、丁寧に解きほぐす一冊。
◆目次◆
はじめにーーこれからの男性解放批評のために
【1】
男が男を省みるーー加害性と疎外の複雑なねじれ
「痛み」を消さない男性学を
男性特権にいかに向き合うか
澁谷知美+清田隆之編『どうして男はそうなんだろうか会議』を読む
【2】
私の性被害
村上春樹『女のいない男たち』を読む
村上春樹『街とその不確かな壁』を読む
「真の弱者は男性」「女性をあてがえ」--ネットで盛り上がる「弱者男性」論は差別的か?
インセルとは誰か?
批評と男性性ーー男性解放批評に向けて
渡部直己『子規的病牀批評序説』を読む
松浦理英子と男性解放批評
魯迅と暗黒男性批評
トランスジェンダー/フェミニズム/メンズリブーー『笙野頼子発禁小説集』に寄せて
日本的男性性とアパシーーー交差的な対抗運動のために
【3】
男性解放批評とは何か?--終わりに代えて
あとがき
◆著者略歴◆
杉田俊介 (すぎた しゅんすけ)
1975年生まれ。批評家。『フリーターにとって「自由」とは何か』(人文書院)でデビュー。以後、文芸評論や労働・貧困問題について著述。著書に『非モテの品格』『マジョリティ男性にとってまっとうさとは何か』(ともに集英社新書)、『男がつらい!』(ワニブックス)、『宮崎駿論』(NHKブックス)、『糖尿病の哲学』(作品社)など多数。差別問題を考える雑誌『対抗言論』(法政大学出版局)では編集委員を務める。
“生きづらさ”と向き合う 「現代女性文学」を読み解く
ジェンダーの非対称性、承認されないセクシュアリティの孤独、経済的格差の深刻化
による対立や分断など、わたしたちは多くの“生きづらさ”に直面している。
「女性作家」たちは、その作品世界から、〈いま〉を生き抜く道を探る。
笙野頼子・川上未映子・小川洋子・角田光代・金原ひとみ・江國香織・
松浦理英子・群ようこ・中島京子・若竹千佐子・谷崎由依・須賀敦子・柳美里・
高山羽根子・高木佳子・美智子皇后・永井愛・村夏子・森崎和江・多和田葉子・女性短歌・女性詩
1 ────越境・攪乱するジェンダー/セクシュアリティ
2────変容する家族とケアの倫理
3────紡がれる記憶/記憶の継承
4────短歌・演劇表現から探る現代
〈やわらかいフェミニズム〉を考える
フェミニズムはどうなっているの? という問いかけがある。
フェミニズムの掲げた「反差別」「反性差別」「反暴力」「平等」「平和」を降ろすつもりはない。でも反教条的、反原理的、反強制的なフェミニズムを目指したい。
多くの段落を「?」にしたのは、正解はないと思うから。私の主張する〈やわらかいフェミニズム〉とはそういうもの。
自分との対話を始めてほしい。あなたのいるその場で何から始めようとやめようと自分の裁量で行ってください。
私たちは何が違っているのか、わからなければ話し合う。YES or NOでなく、想像力を働かせて支え合える関係を築きたい。時間は必要だろう。でも恐れずにそれを望みたい。
フェミニズムという言葉は知っているが、ちょっと距離を置いてきたとか、なんか厳しそうと、逡巡・疑問視している人にこそ手に取っていただきたい。
(はじめにより 河野貴代美)
はじめに(河野貴代美)
第1章 モザイク模様のフェミニズム(荒木菜穂)
第2章 差別する/差別されるという個人的体験
1 自分の物語から(河野和代)
2 在日朝鮮人三世という存在(高秀美)
3 差別について(河野貴代美)
第3章 次世代との交流におけるフェミニズム
1 インタビュー 子どもには自分の人生を生きてほしい(小川真知子)
2 インタビュー フェミニストも子育ては試行錯誤(加藤伊都子)
3 アメリカで起きていること(ゴードン美枝)
第4章 少女マンガに描かれたシスターフッド(小川真知子)
第5章 自由に、闊達に、謙虚に生きる
1 私が私になることと対男性との関係(河野和代)
2 女性たちはどのようにしてフェミニズムと出会うのか(加藤伊都子)
3 出会いを求めて(河野貴代美)
第6章 やわらかいフェミニズムの体験 執筆者座談会
終わりに(河野貴代美)
アートとフェミニズムは少なくない人びとからよく見えなくなっていて、その実態がよくわからなくなっている。いわば、アートとフェミニズムは入門したくてもできない「みんなのものではないもの」になっているのが実情だ。もともと、「みんなのもの」になろうとするエネルギーを持っているアートとフェミニズム。理解の断絶が進む現在の状況に風穴を開けるにはーー。フェミニズムを使ってアートを読み解く、あたらしい試み。
カルチュラル・スタディーズとフェミニズムの出会い
ふたりの思想家がポール・ギルロイの仲介のもと1996年のロンドンで対話した。フェミニズムとカルチュラル・スタディーズそれぞれの隆盛を担い、世界的知識人となったベル・フックスとスチュアート・ホール。ともに黒人のアカデミシャンでありながら、来歴と経験を大きく異にし世代も違う男女は、深く共感しながらも時に鋭く言葉を交わす。ジェンダー、人種、家父長制、アイデンティティ・ポリティクスなど、20世紀後半の社会状況を踏まえた議論の数々と、それらに自らの人生を重ねた繊細な語りは、四半世紀の時を超えて新鮮な発見とアクチュアリティをもたらす。
「フェミニズムは政治についての女たちの考え方を変えた以上に、わたしの政治についての考え方を変えてしまった。」(ホール)
「場所を失うという感覚こそが、まさにフェミニズムに関して多くの男たちが恐れ続けていることなんですよ。ものの見方においてはっきりとした変化が求められているのは、性差別という観点から自身に染みついた考え方を解体するプロセスなのです。」(フックス)
序文 ポール・ギルロイ
はじめに ベル・フックス
一 フェミニズムとの出会い
二 家父長制と人種
三 戯れ、死、病
四 アイデンティティ・ポリティクス、あるいは自己を語ることの不可能性
五 男らしさと不安
六 フェミニズムと連帯の可能性
訳者あとがき
人名索引
一冊の本に何度でも出会い直し、人生の糧にできる我々はなんて幸福なんだろう。──松田青子(作家)「私はフェミニストじゃないけど」って前置きにイラっとする人は全員読もう──小川たまか(ライター)育児のため新聞記者の夢を諦め、ライターとして働くステファニーは、果てしなく続く家事と育児と仕事に追われ、閉塞的な日々を過ごす。
境界を越え出ていくこと、それこそが自由の実践としての教育だ。ブラック・フェミニストが自らの経験をもとに語る、新たな教育への提言。解説 坂下史子===肌の色、ジェンダー、階級といった差異を前にして、すべての人に開かれた「学びの共同体」をつくることはできるか。まず自分自身を批判的にみつめ、変えるための教育はいかにして可能か。ブラック・フェミニストの大学教師であるベル・フックスが自らの経験をもとに、学生と教師の双方に語りかける。教室での性差別や人種差別にどう対処するか、異なる経験をいかに語り合うか、学ぶことの歓びと不安……。フレイレの批判的教育学やフェミニズムの教育思想、黒人教師の教育実践を導きに語る本書は、様々な境界を越え出る「自由の実践としての教育」のためのヒントに満ちている。 ===教室をどう変える?肌の色、ジェンダー、階級の囲いを破るために。ベル・フックスが教師と学生に語った名著。===【目次】はじめに1 関与の教育2 価値観に革命をー多様な文化を尊重するために3 変化を恐れないー多様な文化のなかで教える4 パウロ・フレイレ5 解放の実践としての理論6 本質主義と経験7 姉妹の手をとってーフェミニストの連帯8 フェミニスト的に考えるーいま教室で9 フェミニストの学究生活ー黒人研究者として10 教えの共同体をめざしてーある対話11 言葉ー新しい世界と、そして新しい言葉を12 教室の内なる階段を見据える13 教育過程とエロス、エロティシズム14 エクスタシーーとめどなき教えと学び新版訳者あとがき解説 ベル・フックスを学び直すこと(坂下史子)
はじめに1 関与の教育2 価値観に革命をー多様な文化を尊重するために3 変化を恐れないー多様な文化のなかで教える4 パウロ・フレイレ5 解放の実践としての理論6 本質主義と経験7 姉妹の手をとってーフェミニストの連帯8 フェミニスト的に考えるーいま教室で9 フェミニストの学究生活ー黒人研究者として10 教えの共同体をめざしてーある対話11 言葉ー新しい世界と、そして新しい言葉を12 教室の内なる階段を見据える13 教育過程とエロス、エロティシズム14 エクスタシーーとめどなき教えと学び新版訳者あとがき解説 ベル・フックスを学び直すこと(坂下史子)
フェミニズムは長らくジェンダー正義を追求してきたが、そこにはしばしば対立も伴った。私たち一人ひとりは、この歴史にいかなる「使い道」を見出すべきか。普遍的な定義に依拠しないフェミニズムズの探求へと誘う、グローバル・ヒストリーの新たな挑戦。
はじめに
フェミニズムの「時」
なぜグローバル?
理論、アクティビズム、そして使い道
第1章 夢
レディランドとハーランド
偉大な愛
ユートピアの実現
夢の限界
差異を夢見て
第2章 アイディアーー考え・概念・思想
女性、理性そして美徳
家父長制
「トルコ・コンプレックス」
男女(Nannü)
女性の解放と家父長制
「二重の危険」
家父長制と男性運動
第3章 空間
労働の空間
市場
フェミニズムのビジネス
礼拝の空間
自立の空間
第4章 物
フェミニズムのブランド化
フェミニストの身体
アフリカの代替策
抵抗と「世界を作る」物
第5章 ルックーー装い・外見
美、ファッション、政治
合理的な衣服と異端のファッション
解放の装い
服装の規制
反体制的な自己装飾と階級がもたらす緊張
スカートをはいた男性
ヒジャビスタたち
ベール、ナショナリズム、そして植民地へのまなざし
第6章 感情
フェミニストの怒り
愛情
母性
世界的なネットワーク
第7章 行動
石の主張
闘争性と形を変えた暴力
ストライキ
ピケ
身体と裸
第8章 歌
女性参政権運動の音楽
ゴスペル、ブルース、そして人種排斥
音楽産業と「女性文化」
ハミングでの威嚇
ライオットガール
国際女性デーと国家フェミニズム
おわりにーーグローバル・フェミニズムズ
包摂と排除
過去は使えるか
次は?
謝辞
解題[井野瀬久美惠]
さらなる読書のために
註
事項索引
人名索引
図版リスト
ベストセラー『82年生まれ、キム・ジヨン』のチョ・ナムジュによる、夫と別れたママ友同士の愛と連帯を描いた「離婚の妖精」をはじめ、人気作家一二名の短編小説が勢揃い!「韓国・フェミニズム・日本」というお題の元に寄稿された、日本&韓国文学の最前線がわかる豪華アンソロジー。
女性が劣位に置かれている状況を変えてきた女性のなかには、品行方正ではない者がいた。危険な思想に傾く者も、暴力に訴える者さえもいた。
たとえばキャロライン・ノートン。19世紀に困難な離婚裁判を戦い抜いて貴重な前例をつくった人物だが、「女性は生まれながらにして男性に劣る」と書き残した。たとえばサフラジェットたち。女性の参政権獲得に欠かせない存在だったが、放火や爆破などのテロ行為に及ぶこともあった。たとえばマリー・ストープス。避妊の普及に尽力し多産に悩む多くの女性を救った彼女は、優生思想への関心を隠さなかった。
しかしだからといって、その功績をなかったことにしてはいけない。逆に功績があるからといって、問題をなかったことにしてはいけない。歴史は、長所も短所もある一人ひとりの人間が、身近な不合理を少しずつ変えることでつくられてきた。
「むずかしい女性」たちがつくってきたこうした歴史の複雑さを、イギリス気鋭のジャーナリスト、ヘレン・ルイスが余すことなく本書のなかに描き出す。イギリス女性史と現代社会の出来事とを自在に往還してあぶり出される問題は、女性だけではなく社会全体の問題であることが見えてくる。社会の不合理や理不尽に立ち向かうための、あたらしいフェミニズム史。
序章 語られてこなかった歴史
第一章 離婚
第二章 参政権
第三章 セックス
第四章 スポーツ
第五章 仕事
第六章 安全
第七章 恋愛
第八章 教育
第九章 時間
第十章 中絶
第十一章 むずかしい女性でいる権利
エピローグ むずかしい女性のためのマニフェスト
謝辞
参考文献
索引
身体性に結び付けられた「女らしさ」ゆえにケアを担わされてきた女性たちは、自身の経験を語る言葉を奪われ、言葉を発したとしても傾聴に値しないお喋りとして扱われてきた。男性の論理で構築された社会のなかで、女性たちが自らの言葉で、自らの経験から編み出したフェミニズムの政治思想、ケアの倫理を第一人者が詳説する。
序 章 ケアの必要に溢れる社会で
第1章 ケアの倫理の原点へ
1 第二波フェミニズム運動の前史
2 第二波フェミニズムの二つの流れーーリベラルかラディカルか
3 家父長制の再発見と公私二元論批判
4 家父長制批判に対する反論
5 マルクス主義との対決
第2章 ケアの倫理とは何かーー『もうひとつの声で』を読み直す
1 女性学の広がり
2 七〇年代のバックラッシュ
3 ギリガン『もうひとつの声でーー心理学の理論とケアの倫理』を読む
第3章 ケアの倫理の確立ーーフェミニストたちの探求
1 『もうひとつの声で』はいかに読まれたのか
2 ケアの倫理研究へ
3 ケア「対」正義なのか?
第4章 ケアをするのは誰かーー新しい人間像・社会観の模索
1 オルタナティヴな正義論/道徳理論へ
2 ケアとは何をすることなのか?--母性主義からの解放
3 性的家族からの解放
第5章 誰も取り残されない社会へーーケアから始めるオルタナティヴな政治思想
1 新しい人間・社会・世界ーー依存と脆弱性/傷つけられやすさから始める倫理と政治
2 ケアする民主主義ーー自己責任論との対決
3 ケアする平和論ーー安全保障論との対決
4 気候正義とケアーー生産中心主義との対決
終 章 コロナ・パンデミックの後を生きるーーケアから始める民主主義
1 コロナ・パンデミックという経験からーーつながりあうケア
2 ケアに満ちた民主主義へーー〈わたしたち〉への呼びかけ
あとがき
参考文献
1