なぜ宇宙は人々を惹きつけてやまないのか?
宇宙とは何かという,この世の中でももっとも根源的な部類に属する問題に取り組む宇宙論の研究は,現在,目覚ましい発展を遂げているさなかにある。その原動力となっているのは,宇宙観測の飛躍的な拡大である。これにより,宇宙論は単なる思索の対象から定量的な実証科学へと変貌を遂げた。
宇宙の大規模構造は,宇宙空間に広がる数億光年?数十億光年にもおよぶ大きな構造である。ビッグバンから始まる宇宙の歴史の中で,大規模構造がどのように形成されてきたかを探ることは,この宇宙そのものの起源を探ることに直結している。宇宙の大規模構造を用いた宇宙論の研究は,将来的にも最も期待される手法のひとつとされ,大規模な観測計画が世界中で立案されている。
本書の目的は,宇宙の大規模構造を用いた宇宙論の研究を解説することにある。最初に,現代宇宙論の現状や,いま研究されている未解決問題を概観し,同時に宇宙論の研究に用いられる基礎的な物理の原理を解説する。そして,宇宙の大規模構造の進化を記述するための理論的基礎を解説する。さらに,大規模構造形成における理論的な最前線の紹介として,摂動論的手法に基づいた最近の理論的進展を解説する。
前半の章では基礎的なレベルから始めて,後半の章では多少高度な話題についても触れている。宇宙論の現状や研究の雰囲気をある程度詳しく概観するのにも適している。
第1章 はじめに
1.1 宇宙論の疑問
1.2 宇宙観の広がりと現代宇宙論
1.3 宇宙のダークな側面
1.4 単純性と真実性のはざま
1.5 精密宇宙論
1.6 宇宙の大規模構造
1.7 大規模構造と宇宙論
第2章 一様等方宇宙
2.1 宇宙原理とロバートソン・ウォーカー計量
2.2 赤方偏移と共動距離
2.3 一様等方宇宙のアインシュタイン方程式
2.4 宇宙論パラメータとフリードマン方程式
2.5 光度距離と角径距離
2.6 ダークエネルギー
第3章 密度ゆらぎの進化
3.1 宇宙の構造形成
3.2 流体方程式と密度ゆらぎ
3.3 線形近似とジーンズ不安定性
3.4 バリオン音響振動
3.5 密度ゆらぎの線形成長
3.6 非線形摂動論
3.7 球対称密度ゆらぎ
第4章 密度ゆらぎの統計と観測量
4.1 宇宙論における統計量の重要性
4.2 キュムラント展開定理
4.3 モーメントとキュムラントの母関数
4.4 多変数ガウス分布
4.5 密度ゆらぎのパワースペクトル
4.6 線形パワースペクトル
4.7 初期非ガウス性
4.8 天体のバイアス
4.9 赤方偏移空間変形
4.10 大規模構造とバリオン音響振動
4.11 ハローの形成と質量関数
第5章 大規模構造と非線形摂動論
5.1 構造形成における非線形性
5.2 標準摂動論による非線形パワースペクトル
5.3 摂動展開の図形的表現
5.4 摂動論におけるバイアス効果
5.5 摂動論における赤方偏移空間変形効果
5.6 ラグランジュ的摂動論
第6章 統合摂動論の基礎
6.1 ラグランジュ的摂動論と観測量
6.2 ラグランジュ描像バイアスと摂動論
6.3 ラグランジュ的摂動論における赤方偏移空間変形
6.4 多点伝播関数
6.5 変位ベクトルの頂点部分和
6.6 バイアスの頂点部分和とくり込まれたバイアス関数
6.7 統合摂動論における図形対応規則のまとめ
第7章 統合摂動論の応用
7.1 ハローに対するくり込まれたバイアス関数のモデル
7.2 1 ループ近似の準非線形パワースペクトル
7.3 質量のパワースペクトルと相関関数
7.4 ハローのパワースペクトルと相関関数
7.5 初期非ガウス性によるスケール依存バイアス
第8章 おわりに
8.1 宇宙の構造を観察する
8.2 次世代の大規模構造観測
8.3 未知の領域を探る
8.4 宇宙全体の理解を目指して
はじめに
序章 環境ガバナンスはいかに論じられてきたか:行政とNGO のパートナーシップの理念と実態
1 パートナーシップをめぐる動向
2 環境ガバナンス,パートナーシップの理念と実態
3 本書の問いと構成
4 NGO・NPO の捉え方とセクターの区分
第1部 環境政策史・分析視角/方法:分析のために
第1章 パートナーシップの環境政策史
1 市民セクターに向けた環境行政のまなざし
2 資料と時期区分
3 協働・市民参加の萌芽期
4 施策形成期とパートナーシップ
5 選択的確立期と政策決定への参加
6 協働・市民参加の意義とは?
第2章 連携形成条件の分析視角
1 パートナーシップの分析に向けて
2 環境政策過程論の諸アプローチ
3 戦略的連携論の分析視角
4 事例研究の方法
第2部 外来種オオクチバス等の規制・駆除:ローカルな政策提言活動
第3章 NGO-漁業者団体ー行政間の連携が形成されるまで
1 オオクチバス等をめぐる社会的論争
2 組織フレームの分析枠組
3 論争過程の概要
4 第1 期におけるフレームのすれ違い
5 第2 期におけるフレームの一致
6 連携はいかにして可能になったか?
第4章 ローカルなNGOの展開と政策実施体制
1 規制・駆除の政策的成果
2 ローカルな環境NGOの展開
3 外来生物法の政策実施体制
4 不十分な体制の解消に向けて
第3部 生物多様性条約第10 回締約国会議:グローバルな政策提言活動
第5章 NGOのネットワーク組織における連携戦略と運動内的な帰結
1 締約国会議という政治的機会
2 運動組織間の連携
3 NGOネットワーク組織の分析
4 包摂戦略の帰結
第6章 行政ーNGO 間の連携形成をめぐる比較分析
1 日本政府に向けた政策提言
2 比較分析のための分析枠組
3 政策分野ごとの政策提言過程
4 政策分野間の比較分析
5 連携形成条件の選択性
第7章 連携の持続と政策実施体制
1 締約国会議以降の状況
2 質的比較分析によるNGOグループの特徴
3 NGOによる事業展開
4 国連生物多様性の10年の政策実施体制
5 NGO の事業に依存した体制
終章 本書の知見と環境ガバナンスに向けた問題提起
1 事例研究のまとめ
2 他者変革性の発揮を阻む選択性
3 政策実施体制の丸投げ
4 政策的成果の乏しさと循環構造
5 今後の課題
文 献
資 料
おわりに
事項索引
人名索引
地球誕生からヒトが生まれるまで、生物の試行錯誤が面白くてたまらない!豊富なイラストと親しみやすい語り口調で、生き物の歴史が楽しく身に付く。
レインボー(虹)は多様性を表す象徴です。関連絵本を興味に沿って選べるように、「ジェンダー」「性教育・多様な家族」「LGBTQ」「子どもをとりまく問題」等に分類して232冊を紹介します。
はじめに
第一章 「レインボーブックガイド」ダイジェスト
自分らしく、あなたらしく
多様な性・多様な家族
子どもとりまく さまざまな問題
未来につなぐ
絵本から見る それぞれの気づき
より深く考えるために
第二章 自分らしく、あなたらしく
女の子たちに
男の子たちに
ジェンダーの視点で
より深く考えるために
第三章 多様な性・多様な家族
多様な性(LGBTQ+)
さまざまなパートナー
多様な家族
性教育
より深く考えるために
第四章 子どもをとりまく さまざまな問題
戦争と子どもたち
SDGsを考える
ハンディキャップをかかえて
いじめ・暴力・虐待
子どもの権利の視点から
より深く考えるために
第五章 未来につなぐ
大人のモデルに出会う
生き方に学ぶ
歴史をつなげる
より深く考えるために
第六章 絵本から見る それぞれの気づき
より深く考えるために
おわりに
索引 巻末
共感覚の基本的特徴や神経機構を解説、また色字共感覚者へのインタビューを収録。「共感覚とは何か」を理解する上で必読の書。
本書は、代表的な現象である色字共感覚を中心に、共感覚とはどのような現象であって、また何ではないのかを示す心理学研究および脳科学研究の成果を詳解する。特に、多種多様な文字を使用するという点で特徴的な日本人の色字共感覚者は国際的にも注目されている。各共感覚者の日常生活とのかかわりなどの調査結果も合わせて掲載した。
はじめに
第1章 共感覚とは何か
1.1 共感覚の基本的特徴
1.2 共感覚の時間的安定性の測定
1.3 共感覚とは何ではないか
1.4 共感覚を持つのはどのような人か
1.5 共感覚を持つことの損得
1.6 共感覚を科学的に研究することの意義
第2章 色字共感覚
2.1 色字共感覚をめぐる研究領域
2.2 色字共感覚を持つようになる原因
2.3 文字の共感覚色を経験する際に生じる処理
2.4 誘因刺激と励起感覚の対応関係
2.5 色字共感覚と他の認知処理との関係
2.6 共感覚者と非共感覚者の関係
第3章 日本人の色字共感覚
3.1 日本人色字共感覚者に対する実験方法
3.2 日本人色字共感覚者18名の個別結果
3.3 日本人色字共感覚者の個別結果のまとめ
第4章 色字共感覚以外の共感覚
4.1 共感覚の種類と出現確率
4.2 空間系列共感覚
4.3 ミラータッチ共感覚
4.4 色聴共感覚
4.5 序数擬人化
4.6 多重共感覚
第5章 共感覚の神経機構
5.1 共感覚の神経機構に関する仮説
5.2 共感覚の神経機構:機能的側面
5.3 共感覚の神経機構:構造的側面
5.4 共感覚とは直接関係しない処理における共感覚者の神経科学的特性
5.5 共感覚者を「作る」試み
5.6 共感覚の「素質(disposition)」
第6章 感覚間協応と共感覚
6.1 感覚間協応とは
6.2 感覚間協応の研究例と研究手法
6.3 感覚間協応の分類
6.4 感覚間協応のメカニズムをめぐる議論
6.5 感覚間協応がもたらす効果
6.6 感覚間協応と共感覚の関係
おわりに
引用文献
索引
現代のアメリカ外交の展開を、冷戦史をふまえて体系的に解説する。ヨーロッパ、中東、中国、台湾、朝鮮半島に対するアメリカ外交を分析し、激変する21世紀の国際政治、国際関係を読み解く。
イチゴ属の生活史の多様性を明らかにするため、国内外の山野を歩き調べた研究ノート。
新幼稚園教育要領では、子どもの「体験の多様性と関連性」が重視され新たに記述された。「体験の多様性と関連性」とは何か。その意味と保育の在り方の理論を、現場の保育者と各専門領域の研究者が多数の保育実践の分析を通して論じた最新の実践研究書。
関東平野本来の自然である常緑広葉樹の森。その姿を今日に残す国立科学博物館附属自然教育園に生息する動植物や菌類の多様性、そして無機的環境を説明する。
ダイバーシティは、解決すべき「問題」ではなく、活かすべき「強み」。長年にわたり組織のダイバーシティ推進を支援してきた著者が伝える、ダイバーシティの本質的な意義とその重要性。
本書は、エルサレムのヘブライ大学農学部で行なわれた「作物の進化について」の講義を元にして書いたものである。近年は、作物と野生種の交配を意識的に行なうようになり、各種の遺伝資源が作出されている。栽培のもとでの進化の大きな要因の一つに遺伝的浮動があり、経済的に重要視されない形質、つまりDNAマーカーなどの多様性は、野生種に比較して栽培種には少ない。栽培のもとでの進化は、人と自然の成せる業であり、作物ごとに進化の特徴がみられる。ある作物は、植物学上の「科」の一員にすぎず、多くの作物がそれぞれの「科」に属し、それらが人類に豊かな食料資源を提供している。ある作物は、発祥の地域を中心とした小さな領域で、またある作物は広い地域で順化(栽培化)され広く拡散している。人とかかわる利用の面でも、ある作物は一つの目的のために、またある作物は多様な目的により開発され利用されている。進化・改良の過程では、あるものは形態的・生理的に激しい変化を受けたものもあれば、いまだに祖先種とあまり変わらないものもある。本書では、このような栽培に伴う植物進化の主要な側面を、7章に分け記述している。
本書は昆虫類のすさまじいまでの減少とその要因を指摘し、田舎の里山を保全するための現実的な方策を鋭く述べる。その一方で、日本の自然を守るため外来生物を排斥せよとの「原理主義者」に首を傾げ、また、人為的な関与は必要と直言する。 メディアと政治のコトバと化した「生物多様性」擁護・懐疑両派の怪しげな言説を問いただし、イキモノと日本各地の自然環境の実像について興味深い事実を数多く紹介しながら、自然を守る本当の手だてを述べる著者の視野はきわめて広い。 その筆さばきが全編を貫いた本書は、自然、環境、生物多様性を考えるうえで、さまざまな視点を読者に提供するであろう。「自然には自然の理屈があり、人間のコントロールが及ばないことの方が多いのだ。無理にコントロールしようとしても、コストばかりかかってロクなことになはならない」と本書は説き、よりましな認識について説得的に提示していく。