「ポストモダン派」マルクス経済学者たちの知の越境と経済学の新地平。
大英帝国の女性たちは、19世紀後半、フェミニズムを追い風に中・高等教育を獲得し教師となって、男子進学校と同等レベルの、女性による女子教育という領域を切り開いた。さらに植民地拡張の時流に乗って、単身オーストラリアやアフリカなどへ渡っていく。2つの大戦期までの女教師たちの姿を追いながら、彼女たちが女子教育にかけた夢、その光と影を浮き彫りにする。
バイオテクノロジー開発に人を駆り立てるものは何か。再生医療・生殖技術・脳科学など、今日の先端医療や生命科学への熱狂は、20世紀の医学史・生命科学史の数々の悪夢を思い起こさせる。哲学、宗教学、社会学、科学史、生命科学などの先鋭的な研究者が、非倫理的医学研究とその正当化の歴史、今日的意義を討究したアクチュアルな研究書。グローバルなバイオテクノロジー開発競争の下、過去から学ぶべき医学研究の倫理とは。
シュルレアリスムの巨星マックス・エルンストとともに過ごした30余年。女流画家ドロテア・タニングが自ら語る、二人の愛と芸術。
ソビエトで生まれ、パリで画家、デザイナーとして活躍したソニア・ドローネ。夫・ロベールを取り巻く画家、詩人たちとの華やかな交流。ソニアの膨大な日記をもとにした書き下ろし。
美術における政治性、特にフェミニズムの視点から捉えた鋭い論評で美術史界の流れを変えた気鋭の美術評論家リンダ・ノックリンの、19世紀絵画についての私激的論文集。
古いケルト族の神話と民話、魔女伝説に魅せられて特異なイメージを表現する画家レオノーラ・キャリントン。インタヴューをまじえた。
妊娠や出産、育児は決して「自然の営み」ではない。育児負担の歪みがもたらす少子社会、出産の医療化の果ての産科医不足、テクノロジーが揺るがす生命観・家族観、生殖や再生産労働の商品化がひろげるグローバルな格差。フェミニズムの試金石でもありつづける〈母性〉=近代の性と生殖をめぐる危機の現在を見渡す論集。
客観性,合理性,価値中立性,真理など科学の中心的概念から科学と権力の共謀関係を問う。グローバルなレベルで社会正義と民主主義に反するプロジェクトを推し進める近代西洋科学への論争の書。フェミニズム,ポストコロニアリズムの立場から現代社会と科学の関係を批判的に考察してきた科学哲学者,ハーディングの本邦初訳。
日本語版への序文
はじめに
謝辞
序章 科学と不平等ーー論争を呼ぶ問題
論争となっている問題
専門用語についての挑戦
第1部 科学的研究の社会
1章 人種と科学について考える
科学は人種差別主義なのか
人種差別的な科学実践の擁護
科学の世界ーー人種、文化、帝国
結論ーー人種差別への抵抗が担うラディカルな役割
2章 他人が我々を見ているように、自分自身を見つめる
--ポストコロニアル科学論
「妖精ジニーが我々に与えてくれる贈り物は……」
自然科学は多文化的なものなのか
近代科学は他にもあるのか
3章 両目を開けてーー科学の世界
1つの地球、多くの科学?
南側諸国を出発点とするプロジェクト
北側を出発点とするプロジェクト
4章 北側のフェミニスト科学論ーー新たな挑戦と機会
北側におけるフェミニスト科学技術論
5章 差別的な科学認識論と科学哲学
スタンドポイント研究ーーその方法論的性質
科学実践はどのようにして文化化された自然をつくり出すのか
事物がいかに科学を悩ませるかーー行為遂行的な科学実践
実践に焦点を当てたフェミニスト科学哲学の重要性
6章 啓蒙思想の周縁に位置するフェミニスト科学技術論
フェミニズムと南側のポストコロニアル科学技術論
GESDにおけるフェミニスト固有のテーマ
結論
第2部 真理、相対主義、そして、科学の政治的無意識
7章 西洋科学の政治的無意識
外在的対内在的な民主主義の問題
科学にとっての民主的な理想
科学の統合というテーマーー1つの世界、1つの真理、1つの科学?
統合という理想のコスト
反民主的理想と民主的理想
近代西洋科学の政治的無意識を再考する
8章 科学において真理の主張は意味をなさないのか
初期の懐疑的立場ーークワイン、デュエム、ポパー、クーン、ファイヤアーベント
最近の分析
なぜすべての科学が「民族科学」でなければならないのか
知者はひとり?
意味をなさない真理の理想
9章 相対主義の脅威はパニックに値するのか
単一の基準に対する挑戦への3つの反応
誤った2つの仮定
近代主義者の夢を過去のものにするーーポスト実証主義のアプローチの1つ
絶対主義と相対主義を捨てる
訳者あとがき
注
文献
索引
本書は、「政治」をどのように考えるかという問題を、政治学の知見を踏まえて真剣に扱うことにより、「政治」をめぐるフェミニズムの理論的考察に新しい知見を提示する。公/私の境界線、国家・社会・家族の関係、「男性のケア」などへの注目を通して、政治学の中心問題に「フェミニズム」をすえるとともに、「女性問題」ではないジェンダー平等を展望する。
「母」「主婦」…「女」役割の固定化の構造を解読し、解放をめざしてきた女性学のメインテーマ、性役割研究。共働きの増大や非婚・少子化の進むいま、雇用やケアをめぐって、性別役割分業が再編成されているー70〜80年代から現在まで蓄積された研究成果が、この社会のジェンダー力学をより鮮明に浮き彫りにする。フェミニズムの根本課題は、まだ大きい。
女性の政治・経済参画は先進国中で依然低く、男女賃金格差も突出する日本。女をあらかじめ劣位に置く権力ーとくに雇用や社会政策など生活を決定する多様な権力の分析は、問題の発見と理論化、実証分析の蓄積へと、フェミニズムの運動/研究の両方の実践が切り開いた。その軌跡と現在の位置を指し示す格好の文献を紹介。
社会構築主義のインパクト、多様性の承認。バックラッシュと新自由主義、「女性の貧困化」。社会理論がその方向性を見定めがたく彷徨する間に、ひとびとの身体・生命はグローバルな取引の激流に投げ出された。フェミニズムは近代リベラリズムの何を乗り越えるのか。ジェンダーの壁を越えた承認と再分配の理論構築へ、丹念に積み重ねられた論考を紹介。