体内時計に支配された生物リズムが示す適応のダイナミックス10の話題。
「創造都市」という新しい都市モデルは、芸術文化のもつ「創造性」を新産業や雇用の創出に役立て、ホームレスや環境問題の解決に生かし、都市を多面的に再生させる試みであり、EUが1985年から開始し、大きな成果を上げてきた「欧州文化都市(欧州文化首都)」の経験を総括するなかから生み出された都市モデルである。
都市や地域の経済的エンジンが大規模工場から、創造性あふれる企業や個人から構成される「創造産業」と「創造経済」にシフトし、芸術文化はそのための新たな社会的インフラストラクチュアと考えられる。
日本より一足早く製造業の衰退と空洞化に苦しんだ欧州において創造都市への取り組みが進んでいるのはこのような背景による。
もう一つのテーマである「社会包摂」とは「社会的排除を生みだす諸要因を取り除き、人々の社会参加を進め、他の人々との相互的な関係を回復あるいは形成すること」を指し社会的排除の対立概念であり、90年代後半よりEUにおける都市再生の目標の一つにも掲げられてきたものである。
「創造都市」も「社会包摂」も、新自由主義的改革による「福祉国家」の解体を乗り越えて、新しい分権的な福祉社会をめざす共通の土壌の上に位置する社会改革の試みである。
本書は、芸術文化のもつ創造力、とりわけ、社会的に排除された人々をエンパワーメントする力に着目しつつ創造都市論と社会包摂論を架橋し、世界的な都市再構築の流れのなかで、コミュニティの再生への胎動を描写するものであり、とりわけ、悩める大都市・大阪の再生に向け足元で進む社会実験に参与しつつ、分析を進めたものである。
1文化多様性と社会包摂に向かう創造都市
佐々木 雅幸
2都市の創造的縮小の時代ー人口減少、環境容量枯渇時代の「都市のかたち」
矢作 弘
3グローバル創造都市の文化ブランド戦略ー都市の包容力・バランス・俊敏性
岡野 浩
4日本の創造産業集積ー家庭用ビデオゲーム産業の集積利益
半澤 誠司
5成長するアジアの創造産業ー世界のエンタテイメント業界のグローバル化と再編
橋爪 紳也 杉浦 幹男
6アジアの都市政策における二つの包摂
瀬田 史彦
7大阪の長屋建築の伝統と保存活用ー豊崎プラザの実験
谷 直樹
8歴史的都心の再生ー船場再生の胎動
嘉名 光市 岡 伸一
9近世大坂の都市下層ー勧進宗教者の存在形態
塚田 孝
10社会包摂に向き合うアートマネジメントーボトムアップのガバナンス形成へ向けて
中川 眞
11社会包摂に向けた地域組織の取り組みとその可能性ー大阪・釜ヶ崎を事例として
原口 剛 西口 宗宏
12東アジア大都市の外国人労働者と民族関係
谷 富夫
13「都市への権利」とソーシャル・ミックスーフランスの住宅政策に学ぶ
檜谷 美恵子
14脱野宿とホームレス支援からみた都市の社会保障の再構築ー多様な社会参加の方法を創出するために
水内 俊雄
生物的・心理的・文化的に多様な世界の人びと。西洋文明から世界に広められた「民主主義」は、人間の多様性を十分に考慮しているだろうか?個人個人の尊厳を最優先にするためには、過半数による多数決・政党制を軸とする今日の「民主主義」のままでよいのだろうか。
かつて文法や単語に悩まされた古文も、今ならもっと楽しめそう。万葉集や古今集の世界から「説話」「日記文学」「物語」「軍記物語」「随筆文学」「俳詣紀行文」まで、日本の古典のエッセンスを紹介します。
LGTB等の人々、あるいはその家族・親族や関係者の相談に乗る弁護士のためのQ&A形式の対応マニュアル。裁判例、当事者の座談会、相談を受けた際のロールプレイング、相談窓口一覧、コラムなどの各項目も充実。
摂食障害の治療には確立されたプロトコールは存在せず治療が行き詰まるケースも多い。本書では、摂食障害の治療経験の豊富な執筆陣が23の症例を提示。神経性やせ症や回避・制限性食物摂取症など、多様な摂食障害症例を通して、個々の特性に合わせた対処法を学べる。ベストの結果が得られた症例だけでなく、治療に難渋した症例を主に紹介した。マニュアル本では得られない対応策が詰まった摂食障害症例の集大成。
生物多様性の喪失が懸念される中で、生物多様性を十分に説明できる理論はいまだに確立されてない。本書では、生物群集のすべての個体が中立であるという仮定の下、種分化と分散制限を組み込んだ群集動態モデルを構築し、生物多様性学(種数や相対種個体数の理論)と生物地理学(種の地理的分布の理論)を統一する。この統一中立理論によって、さまざまな時空間スケールの生物多様性について、検証可能な予測が提示される。
古代の王政復古を掲げて近代国家の仲間入りを図った日本では、記紀神話に民族のルーツを求めて大和民族という概念が創り出されるが、古代に遡る民族設定は大和に「まつろわぬ」人々とされた出雲、エミシ、クマソ等の民族も同時に生み出した。混合民族論が主流だった日本で、戦後単一民族論が拡がったのはなぜか。大和中心のNation Building(民族意識や国民の形成)を出雲、エミシ、クマソの視点から捉え直し、同質社会観で覆い隠された日本人内部の多様性を解き明かしながら、多元国家観に基づく民族意識の再構築を説く。
言語発達は単語から始まり、単語と単語がつなぎ合わさって電文体になっていく、といったこれまでの言語発達の常識をくつがえす、日本初の書。幼児は、これまで考えられてきたような一律の方法で言語を獲得していくわけではない。子どもによっていろいろな言語獲得ストラテジーがあるということを、種々の研究から立証し、なぜ言語発達にさまざまな方略があるのかについても解説している。
グローバル化し,競争が激化する中でも,なぜ日本の食品小売市場でグローバル小売企業は苦戦を強いられるのか。日本の食品スーパーがもつ地域多様性と現場の組織能力による強みを浮き彫りにし,今後の小売構造の行く末を指し示す力作。方法論の解説も充実。
序章 問題意識と本書の構成/第1章 日本の小売構造の特質と研究の系譜:マクロデータの整理と既存研究から見る日本の小売市場の特質/第2章 小売構造と消費市場の相互作用:食料品を扱う業態において市場集中度が高まらない理由の考察/第3章 小売市場内での小売業者間の競争:学習を伴う創造的競争はいかにして可能か/第4章 本書の分析視点と実証分析の課題・方法/第5章 顧客満足の規定因1:統計アプローチ/第6章 顧客満足の規定因2:集合論アプローチ/第6章補論 fsQCAの具体的手続き/第7章 小売組織内での知識創造:小売店頭の知識創造モデル(r─SECIモデル)/第8章 店頭従業員の進取的行動:現場での創造性とモチベーション/第9章 店頭従業員の能力獲得/終章 結論と展望
社会の変化に伴い、子どもたちの間にも多様性(ダイバーシティ)が広がる中、教師には個々の子どもや問題に丁寧にかかわり合い、対応していく力が求められている。本書では、これからの教師に必要な力として「学校臨床力」を提案、従来の生徒指導や進路指導、教育相談、特別支援教育をベースにしつつも、それらを超えていくための新たな視点や実践に役立つ知識を包括的かつコンパクトに提供する。教職を目指す人、現職教員必携の一冊。
目次
序論 学校臨床力とは
1章 学校臨床力1:父性と母性のバランス
2章 学校臨床力2:ポスト近代・ダイバーシティ
3章 学校臨床力3:経験を育むということ
Column 1 寄り道のススメ
第1部 児童生徒理解を深める
4章 現代社会を生きる子ども
5章 子どもの発達
6章 子どもの対人関係世界
7章 子どもと家庭
8章 子どもと学校
Column 2 遊びは大切か
第2部 児童生徒の成長を促す
9章 人間関係力
10章 集団づくり
11章 開発的アプローチ
12章 キャリア教育の必要性
13章 基礎的・汎用的能力
14章 学校ごとのキャリア教育
Column 3 解決志向でいこう
第3部 児童生徒の個性に応じた支援
15章 自己の発達
16章 自尊感情・自己肯定感、自己有用感、自己効力感
17章 発達障がいの理解
18章 自閉症スペクトラム
19章 学習障がい
20章 ADHD
21章 特別支援教育とは
22章 特別支援教育体制
Column 4 教師のペルソナ
第4部 児童生徒を取り巻く「問題」をとらえる
23章 問題をアセスメントする
〈問題の具体例〉
24章 携帯電話とネットトラブル
25章 いじめ
26章 不登校
27章 非行
28章 被虐待
29章 心身の不調
30章 場面緘黙
31章 性的マイノリティ
Column 5 子どもの成長と心の痛み
第5部 「問題」に取り組む
〈生徒指導の進め方〉
32章 生徒指導の3つの側面
33章 生徒指導の三機能
34章 毅然とした対応
35章 学級経営と学級崩壊
36章 生徒懲戒と体罰
〈教育相談の進め方〉
37章 教師モードとカウンセラーモード
38章 カウンセリング・心理療法の種類と技法
39章 意識と無意識
40章 心の働き:防衛機制
41章 保護者との連携・対応
42章 ケース会議の進め方
43章 チーム支援
44章 スクールカウンセラーの活用
45章 学校外の機関との連携
Column 6 人に「助けて」って言えますか?
第6部 教員としてどのように力を身につけていくか
46章 子どもとかかわる力
47章 保護者とかかわる力
48章 同僚とかかわる力
49章 社会とかかわる力
50章 教師のバーンアウト
51章 共感的理解とスーパーヴィジョン
52章 学校臨床力向上のための教師のトレーニング
文献
索引
あとがき
いっそうの女性の活躍のためには、旧来の性別役割分担意識の改革がなされ、男女が育児経験を共有できるようになることが重要である。働く場はそれを実現するために、多様で柔軟な働き方を用意し、その適正な評価・待遇を行うことが必要とされている。そして、子どもたちには人格形成の基礎を培う重要な時期にふさわしい環境が整備されることが望まれている。今後も産業構造の変化、グローバル化、技術革新などによって人々の生活や働き方は大きく変化していくだろう。女性がいっそう活躍できる環境作りは、大きく変化する社会にしなやかに対応する環境作りであり、多様な能力を活かす社会への進化に通じる。本書は、現状における人々の意識や働く場所の状況、保育ニーズの多様性を踏まえ、女性が活躍できる環境とその整備に必要なものを探った。
教育における選択の自由と機会の平等の調和点をリベラリズムの立場から具体的に提示する。