神戸支店に転勤することになった葉村省吾は、兄夫婦にある調査を依頼された。彼らの父は、辛亥革命の際に革命資金を拐帯したとされているが、その汚名をはらしてほしいというのである。父の記憶がほとんどない省吾は、あまり気乗りがしなかったが、病床の兄のたっての頼みとあって事件の調査を開始する。怪しい影に命を狙われながら、二転、三転、ようやくたどりついた驚愕の真相とは?風光明媚なみなと町を舞台に展開する、謎また謎の本格推理。
世界各地にのこる巨石文明の遺跡。10年ぶりにばったり出会った友人が、私に語った、その驚るべき実体とは?日本SF史上に燦然と輝く名作「石の血脈」の外伝「赤い酒場を訪れたまえ」、段ボールの一生を一人称で描く異色作「ボール箱」、単行本未収録作「フィックス」「嘆き鳥」等、絶妙の語りで読者を異次元の世界に誘う、半村怪奇SFの集大成。ほかに、方言を駆使した傑作怪談集「能登怪異譚」シリーズ全篇など、19篇のふしぎ小説を収める。
「遠いなぁ…」ロマン豊かに描く老教師の望郷の想い、ノスタルジィに満ちた表題作「座敷ぼっこ」をはじめ、下水道に生きる白い猫たちと、怪物バクーとの命がけの死闘「群猫」、人格を持ったロボット車との切ない別れを、軽妙なタッチで描く「お紺昇天」など、初期の名作から、近年の著者自信作「夢の検閲官」、さらに単行本未収録の最新作「家族場面」まで、全作品から厳選したセンチメンタルSF・全25篇。筒井康隆の、詩情あふれる傑作を集大成した異色の短篇集。
商用の途中で立ち寄ったP国で、久しぶりに訪ねた友人は、独裁者に反抗して亡命した後だった。しかも、独裁政権は反抗分子を徹底的に弾圧しているというのだ…。異郷での恐怖を描いた表題作「七色の海」の他、心を蝕む静かな狂気を抽出して筒井康隆や生島治郎らの絶賛を浴びた名作中の名作「長い暗い冬」、奇妙な味のオムニバス「蒼ざめた日曜日」等、全14篇。呵責ない筆致で暴く、人間心理の異常性。単行本未収録の秀作2篇を含む、曽野綾子の心理サスペンス&恐怖ミステリ傑作集。
年に1回、上野の美術館で開催されていた読売アンデパンダン展。それは、出品料さえ払えば誰でも出品できる無審査の展覧会で、1960年代には絵の具とガラクタと青年たちの肉体と頭脳とが灼熱した坩堝だった。当時、出品作家でもあった著者が、目撃者として、作品や読売アンデパンダンで培養されつつあった不確定性の芸術〈ハプニング〉について描く。
少女マンガ『ローウェルの密室』の作中で密室殺人事件が発生。『コミケ殺人事件』の著者が、前代未聞の密室トリックで読者に挑戦する二次元本格推理・書下し800枚。休みのある日、真っ暗な森に迷い込んだ恵と保理は、不思議な老人の手で、少女マンガ『ローウェル城の密室』の世界に送りこまれ、マンガの登場人物・メグとホーリーになってしまう。蛮族が跋扈し、奇怪な風習に支配されたその世界で、密室殺人事件が発生した。二次元世界での殺人を描き、史上最年少の十六歳で江戸川乱歩賞最終候補に残った幻の超本格推理ついに登場。
鼻と陰茎の位置が逆転してしまった男の悲喜劇をユーモラスに描く「陰茎人」、愛する妻の死を目前にした科学者が行う奇怪な実験「人間華」、ふりそそぐ放射能雨の恐怖を描いた日本SFの先駆的作品「二十世紀ノア」など、山田風太郎が、その奔放な想像力を縦横無尽に駆使して語る現代の怪談・全15篇。幻の怪奇探偵小説集『怪談部屋』の7篇を完全収録、さらに初刊行以来の収録となる問題作「うんこ殺人」や、ファン待望の単行本未収録作品2篇などを含む奇想小説の傑作8篇も併せて収めた、山田風太郎の怪奇小説全作品集。
星影龍三は丸の内にオフィスを構える貿易商だが、推理力・洞察力に優れ、素人探偵として幾つもの事件を解決してきた。今日も彼は、愛用のパイプ・ヴァージン・ブライアを片手に、田所警部の持ち込んでくる数々の難事件に、明察神のごとき推理を披露するのである!『青い密室』は、犯人当ての傑作「薔薇荘殺人事件」をはじめ、「悪魔はここに」、「朱の絶筆」等、読者への挑戦を挾んだ遊戯性豊かな作品を中心に構成!他に、雪の上の足跡トリックに新機軸を打ち出した「白い密室」等、謎解きミステリの楽しさを満喫させる全8篇。
初登場時には女学生だった仁木悦子も、結婚して浅田悦子と名前が変わり、今では二児の母親となっている。しかし、持ち前の好奇心はまったく衰えておらず、子供達の協力を得て様々な事件に挑むのである。本書には、浅田悦子探偵譚を中心に、久々の兄妹共演作品「虹の立つ村」、後期の傑作「青い香炉」を含む全8篇を収録!巻末には付録として単行本未収録の犯人当て「月夜の時計」を特別収録、さらに貴重なエッセイと著作リストを加えて、仁木ミステリの魅力を余すところなく伝える、ファン必携の愛蔵版。
三六億年前から連なる〈生命の歴史〉のまっただなかに、「私」は誕生し死滅する。「からだのかたち」はいかにつくられ、「脳と心」はどのように関係するのか。また、「言葉」はどのように獲得されるのか。「芸術」と「科学」の営みの意味とは何か。そして、「死」をいかに迎え、神に何を「祈る」のか。生命科学の立場から、唯一無二のかけがえのない「私」という存在の意味を問う-「はるかなる旅」がいま始まる。
ホラーを知り尽くした著者が、自信をもっておくる本格的怪奇小説の決定版!とにかく怖い!怪奇実話作家のもとに持ちこまれた一冊の日記帳。赤い羽根を極端に恐れる男の記録に隠された驚愕の真実とは?切れ味するどい第一章「赤い羽根の記憶」から、幽霊屋敷パターンに新機軸をうちだす第三章「黒い家」、今までの登場人物が総登場して百物語をくりひろげる最終章「百鬼譚の夜」まで、奇想と企みに満ちた恐怖の迷宮の中で、怪奇小説ならではの醍醐味をたっぷりと味わっていただきます。
文学作品や音楽・絵画は、なぜ私たちを魅了してやまないのだろうか?美の成立根拠を人間的主観の心の在り方のうちに求める、これまでの「近代主観主義的美学」では、芸術を十全に理解することはできない。生と世界内存在の真実が開示される場こそが芸術作品であり、その輝き(シャイネン)と現出(エルシャイネン)の結果が美(シェーン)となるのではないのか。アリストテレスの『詩学』から始めて、ニーチェ、ハイデッガー、ガダマーへと至る「存在論的美学」の太い系譜を辿り、また翻って、美を希求する人間の動機を探るべくフロイト、ユングを検討し、カント、ショーペンハウアーの芸術論、人間論、情念論を存在論をもって再評価する。
20世紀に発表された建築・都市に関する主要な書物・論文から100件を選び、各テクストの内容を紹介しつつ批評的にレヴューを行なう。これらは「西洋近代建築」、「西洋現代建築」、「日本近代建築」、「日本現代建築」、「建築史」、「批評」、「都市」、「芸術」、「文学」、「思想」という10のカテゴリーによって整理されている。
激しい感情表出、死とエロスの、霊と肉の、赤裸々な相剋を伝える緊張と孤独-。北欧のムンク、スイスのホードラーを先達とし、ドイツの土壌に開花した表現主義の運動。カンディンスキー、クレーを育む現代絵画のひそかな間道としての表現主義芸術を照射する。
天才芸術家であり最先端の思想家であった岡本太郎。彼を支え、ともに過ごした50年間。そこで培われた愛、その本質。いま求められている究極の恋愛論。
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