啓蒙期の科学は解剖学的な差異と精神性を関連させ、男女は身体的のみならず能力や性格においても本質的に異なるというジェンダー観を成立させた。このジェンダー観は、近代社会の形成にあたって規定的な力として作用し、人びとの居場所や役割、行動規範を定めるとともに、政治・経済・社会のさまざまな制度のなかに組み込まれていく。本書では、知の専門化、参政権運動、協会活動、母性福祉、社会保険、戦争という歴史事例をとりあげ、ジェンダーの構築と変容の過程、構造をつくりだす力としてのジェンダーの作用、そしてヨーロッパの女たち、男たちが近代のジェンダー化された社会をどう生きたのかを描きだす。ヨーロッパ諸国における女性史とジェンダー史をめぐる動向も合わせて考察。
「女らしさ」「男らしさ」にとらわれていませんか?ジェンダーの視点でみた、法律、言語、心理学、国際政治、マーケティング、高齢者問題、NGO、NPO。
大学におけるキャリア支援は近年ますます重要性を増している。
本書は、キャリア支援の歴史分析とともに、16年間4度にわたる大学生の意識調査から、
学生のライフコース展望・意識を分析。
特に、女子学生の特徴をつかんだジェンダー分析は示唆に富み、
今後のキャリア支援へのジェンダー視点導入の重要性を説く。
学生のライフコース・キャリアをいかに支えていくか。大学運営に必読の書。
序 章 大学のキャリア支援に必要な視点とは何か
第1章 戦後日本の大学におけるキャリア支援の歴史的展開
第2章 女子学生に対するキャリア支援の歴史的展開
第3章 大学生調査:実証分析の方法と理論の検討
第4章 女子学生の「女性性」意識に関する実証的研究ーライフコース展望,
入学難易度との関連に注目して
第5章 伝統的なジェンダー観を支持する女子学生の特性
第6章 女子学生の家庭志向は高まっているのか
第7章 男子学生は将来のパートナーにどのような生き方を望んでいるのか
第8章 現代大学生のキャリアとジェンダーー女子学生と男子学生の意識の関係性の分析
終 章 有効なキャリア支援への示唆ージェンダーの視点の重要性
結婚して21年目、3人の息子を育てた「婦婦」が「新しい家族の形」を国に問題提起した!
母性天皇論から女帝問題まで、フェミニズムからの天皇制論。
2000年代以降、K-POPや韓流ドラマなどといった東アジア発の大衆文化が世界を席巻している。新たな東アジアのメディア状況、ジェンダー状況と、そこから生まれてきた大衆文化のカルチャー状況を総合的に提示する論集。
京都学派の思想家たちの思索において、「ジェンダー」の問題はあまり重要視されていない。西田幾多郎、田辺元、西谷啓治の著作には、「女性」や「女性的なるもの」の姿はほとんど現れず、一方で、彼らの私生活における女性との関わり方は、倫理的に問題があった場合も見受けられた。
そのため、京都学派の思想をジェンダーの観点から批判的に評価する必要があり、これは京都学派の思想から家父長制的な男性中心的な側面と、逆に、それらをを批判する新しい視点を提供しうる側面を区別することを意味する。本書では「方法としてのジェンダー」を提唱し、京都学派の概念的限界を批判的に分析しつつ、その思想の解放的可能性を明らかにすることを目指す論考集。
装画 まつしたゆうり
1920年代から1950年代に中国共産党によって土地法が制定され、中国の農村女性は土地所有権を獲得した。しかし、その後の中国の高度成長の過程で、農村の女性たちは土地の権利を次第に喪失していき、権利の侵害現象は「農稼女問題」と名付けられるようになった。
中国農村女性の農地をめぐる権利の侵害「農嫁女問題」はなぜ高度成長期に発生したのか。ジェンダー秩序の再編は資本蓄積の中でどんな役割を果たしたのか。本書は「農嫁女問題」の発生原因を歴史、政治経済の2つの側面から分析するとともに、農嫁女の抵抗運動についても実地調査をもとに紹介する。
序章 問題の所在と本書の目的
1 研究背景
2 本書の構成
3 先行研究
4 理論的枠組み
5 研究手法
第1部 農嫁女問題の歴史分析
第1章 平均主義、フェミニズム、土地権
1 概況
2 平均主義と土地権
3 フェミニズムと土地権
4 小結
第2章 近代中国女性の土地権の変遷
1 はじめに
2 井崗山土地革命期と中華ソビエト政権時期(1928〜1934年)
3 日中戦争期(1937〜1945年)
4 国共内戦期(1946〜1949年)
5 建国直後(1950〜1952年)
6 初級、高級農業生産合作社時期と人民公社期(1951〜1978年)
7 改革開放の初期(1978〜1983年)
8 小括
第2部 農嫁女問題の政治経済学的分析
第3章 改革開放以降の農村女性土地問題に関する報道ーー『中国婦女報』(1984〜2010年)を中心に
1 はじめに
2 農村女性土地問題をめぐるフレーム分析についての研究
3 研究の方法
4 『中国婦女報』における農村女性土地問題報道(1984〜1986年)
5 農家生産請負制における女性の合法的な権益擁護に関する連載(1999年)
6 「出嫁女」の土地権益に関する連載(2010年)
7 小括
第4章 女性への略奪を赦免された国家介入型資本主義ーー婦女聯の農嫁女問題に対する認識・対応
1 はじめに
2 婦女聯の創設と改革
3 婦女の合法的権益の擁護者(1978〜1992年)
4 婦女聯主導の「開発とジェンダー論」(1992〜1998年)
5 夫方居住婚の伝統づくりへ(1998〜2007年)
6 農村土地請負経営権登記の推進役(2008年〜)
7 小括
第5章「農嫁女問題」とはーー現代中国における進行中の本源的蓄積
1 はじめに
2 農嫁女問題の発端
3 農嫁女問題の全国化
4 農嫁女問題と一人っ子政策
5 小括
第3部 農嫁女たちの抵抗運動
第6章 現代中国土地開発における農嫁女と彼女らの抵抗運動ーー河北省A村を事例に
1 はじめに
2 A村
3 A村土地開発による農村女性の農地をめぐる権利の侵害
4 A村女性の抵抗運動の開始と展開
6 小括
第7章 社会主義法治への探索ーー民間法律援助組織と農嫁女の連帯を中心に
1 はじめに
2 民間女性法律組織と農嫁女との連帯に対する認識
3 北京衆沢女性法律相談サービスセンター
4 中山大学女性とジェンダー研究センター法律支援部
5 X民間法律組織
6 小括
第8章 終章
1 本書を振り返って
2 現代中国の継続的な本源蓄積
3 今後の課題
参考文献/資料/索引/あとがき
「家」-身の置き所か?社会的纏足か?中国の長い歴史の中で、常に誰かの母・娘・妻・姑・寡婦であった女性たち、あるいは「誰か」の束縛から逃れようとした女性たちが、家という枠組みとどう関わり、どう生きたかを探る。
これからの「ジェンダー研究/教育」に向けて──
創立15周年を迎えた
早稲田大学ジェンダー研究所による
「ジェンダー研究/教育」の成果。
文学、表象・メディア、歴史、法・社会等、
各専門領域の「ジェンダー研究の展開」と、
教育実践をもとにした「ジェンダー教育のあり方」。
ジェンダーの視点に立つ専門領域による研究と、
教育実践の成果による計24編の論考を収載。
ジェンダーを学ぶ際の思考の展開を支え、
今後の「ジェンダー教育」に新たな視座を与える。
有島武郎『或る女』にジェンダー批評の可能性を問う。大胆に、細心に。
強い・弱い、いじめる・いじめられるという関係をこえて、友だちとつながりあえる道があるはず。幼児・低学年向き。
女学校教育がいかにして近代的なジェンダー秩序を形成し、あるべき男女のあり方として伝えたのか。地域の近代化過程における「学校」「生徒(家庭)」「メディア」の三者のダイナミズムに注目しながら、旧城下町和歌山市の公立名門高等女学校(県立和歌山高等女学校:通称和高女)の事例により実証的に解明する。
大日本帝国「臣民」/日本国憲法下の「国民」概念及び植民地教育に現れた民族・階級・ジェンダーの関係性、また「慰安婦」制度・公娼制度に現れた女性の身体とその言説に現れた民族・階級・ジェンダーの関係性、さらに1990年代の「慰安婦」問題解決運動を取りまく日本社会や韓国社会に現れた継続する植民地主義とジェンダーの関係性を分析したものである。
SDGsを実現を目指して、まず課題を「知る」ことから始め、さらに課題の背景を深く「わかる(理解する)」、
そして課題を解決するために人々に「伝える」ことを通して社会変革に向けて行動する教育(学び)のための
全4巻シリーズ第1弾。
【執筆者】
阿部 治、朝岡幸彦、浅井春夫、栗林知絵子、西村和代、定森 徹、栗本知子、林 美帆、萩原なつ子、
佐野敦子、原田英典、中村大輔、野田 恵
巻頭対談 SDGsが求める学び
序 章 知る・わかる・伝えるSDGsとは
第1章 貧困をなくそう
実践 地域の子どもを地域で見守り育てる
第2章 飢餓をゼロに
実践 持続可能な生き方のための菜園教育
第3章 すべての人に健康と福祉を
実践 公害の経験からSDGsを学ぶ
第4章 ジェンダー平等を実現しよう
実践 男女共同参画推進と目標5の達成
第5章 安全な水とトイレを世界中に
実践 安全な水を守る実践
終 章 SDGsの教育
十九世紀後半、ポーランドに生まれながら、船乗りとして世界各地を旅した経験を元に、異国を舞台とした多くの海洋小説や、冒険小説の伝統をくむ小説、政治小説を書いたイギリスの現代作家ジョウゼフ・コンラッドは、長い間、男の世界を描いた「男らしい」作家と見なされてきた。そしてこのことと関連して、女性をあまり描かない、あるいは十分に描けないミソジニスト(女嫌い)の作家と見なされ、その性差別主義が指摘されてきた。前著『コンラッドの小説における女性像』(一九九九年)で述べたように、このような見方は、アルバート・ゲラードやトマス・モーザ、バーナード・メイヤーらによって、一九五〇年代から一九六〇年代に確立した。そしてこのような見方は、作品世界だけではなく、女性との関係にも向けられ、伝記的側面とも繋がっている。しかしながら、コンラッドは本当に「男の世界」だけを描き、称揚した作家であっただろうか。また、自らとは異なる性である女性を、十分に人物造型することができなかっただろうか。女性は、その作品世界で単に周縁的な存在に過ぎないだろうか。コンラッドは、性差別主義者であったのだろうか。本書は、このような素朴な疑問に発している。
作家の生い立ちや経験、19世紀末のイギリス社会におけるジェンダー観の変化などに着目した多面的な切り口で作中人物たちの声を分析し、従来の解釈に鋭い疑問を投げかける一冊。
はじめに
第一章 『オールメイヤーの阿呆宮』-- オールメイヤー夫人像に見る人種とジェンダー 第二章 『島の除け者』-- アイサ像に見る人種とジェンダー 第三章 『闇の奥』(一) -- 男の夢の挫折 第四章 『闇の奥』(二)--「男同士の絆」の危うさ 第五章 『闇の奥』(三)--「女性排除」の問題をめぐって 第六章 『ロード・ジム』-- 英雄的夢を求めて 第七章 『密偵』--「家庭の天使」から「ニュー・ウーマン」へ 第八章 『西欧人の眼に』-- ナタリア像に見る女性の偶像化 第九章 コンラッドの小説に見る女性の偶像化ーー その背景をめぐって 第十章 コンラッドの女性戦略ーー『西欧人の眼に』から『チャンス』へ 第十一章 『チャンス』(一)-- ファイン夫人像に見るフェミニストの肖像 第十二章 『チャンス』(二)-- マーロウのミソジニスティックな言説についての問題 第十三章 『勝利』-- 「男らしさ」の理想と現実
参考文献 索引