バルザックはフェミニスト、それともアンチ・フェミニスト?同時代の女性作家の作品との比較検討により、文学の豊かさの総体に迫る。
第一部 女性作家を読むバルザック
第一章 バルザック『毬打つ猫の店』とソフィー・ゲー『アナトール』--男性画家に描かれる女性像
第二章 ソフィー・ゲー『レオニー・ド・モンブルーズ』とバルザックーー女性登場人物の類似点と相違点
第二部 バルザックを読む女性作家
第三章 バルザック『アデュー』とジラルダン夫人『ポンタンジュ侯爵』--男女反転のアイロニー
第四章 カロリーヌ・マルブティ『危うい地位』とバルザックーー文壇のタブーに挑戦する女性作家
第三部 古典を読むバルザックと女性作家
第五章 バルザック『田舎ミューズ』とソフィー・ゲー『エレノール』--コンスタン『アドルフ』をどう書き換えるか
少子化、高齢化の進行するなかでのジェンダー問題。労働・福祉・家族の各領域における新しい政策と理論の動向。
少子高齢化・個人化・グローバル化・「格差社会」のなかで、家族はどう変わったか。結婚、子育て、介護や働き方から現代社会がみえてくる。
「女の子だから、お手伝いして」「男の子なんだから、すぐに泣かないの」……。「男も女も関係ない」とふだんは思っていたりするのに、ついうっかり、こんな言葉を子どもに言ってしまった。あるいは、自分自身が子どもだったころ、そんなふうに言われて、モヤモヤした。そんな経験はありませんか?
本書は、子どもにかかわる大人が、自らのなかにあるジェンダー・ステレオタイプ、すなわち、性別にかんする固定観念や先入観に気づき、それを無意識に次世代に引き継いでしまわないために、子どもとどのように向き合っていけばよいかを10の提案にしてまとめたものです。
著者のセシリエさんは、デンマークで20年以上、ジェンダー平等の啓発に取り組み、研修や教材作りにたずさわってきました。デンマークといえば、民主的で幸福度の高い国として知られていますが、じつはジェンダーギャップ指数は29位。北欧5カ国のなかでは最下位です。120位の日本と比べれば、はるかに上位ですが、ジェンダー・ステレオタイプが根強く残っている社会なのだとセシリエさんはいいます。
たとえば、デンマークの学校には「男の子会議」「女の子会議」といって、子どもたちを性別でわけて話し合いの場をもつことがあります。性別でわける合理的な理由はみあたらないのに、不自然だと声をあげる人は少なく、定着しています。その原因についてセシリエさんは、ジェンダー・ステレオタイプが社会の文化に根付き、日常に溶け込んでしまっているからだと指摘します。そのほか、男の子のおこづかいのほうが女の子よりも多かったり、男の子のほうが速く走ることができる、と教師が決めつけてしまったり……。デンマークでもこんなことがあるのか、と思う事例がいろいろ。
なぜジェンダー・ステレオタイプの根強い社会を変えていかなければならないのか。それは、性別にまつわるステレオタイプは「こうあるべき」という規範となって、人々の行動や考え方をしばるからです。その枠からはずれてしまうと、自分はどこかおかしいのではないか、と感じたり、自尊心が傷ついたりして、その結果、その子がもっているはずの可能性を十分にのばすことができなかったり、夢をあきらめなければならなかったりすることもあるかもしれません。
そのような事態を招かないためには、大人自身がジェンダー・ステレオタイプから自由になって、子どもたちとかかわることが大切なのです。それはまた、性別や性的指向、性表現にかかわらず、すべての人々の存在を認め、等しく価値ある存在として受けいれていくジェンダー平等な社会の実現につながっていきます。
さあ、あなたもさっそく取り組んでみませんか? 子ども一人ひとりがおたがいの違いを認め合い、自分らしく生きられるように。
共生のための想像力
尊厳を踏みにじられた他者をケアして連帯する一方、感情の激発や煽動が危惧されもする昨今、「共感」は時代を理解するキーワードとなった。しかし、この感性は現代に始まったのではなく、18世紀の「感受性」文化にその萌芽を宿していたーーロマン主義文学、道徳哲学、ジェンダーをめぐる言説を通して、「共感」の可能性から、その矛盾と限界までを探る!
序論 21世紀から感受性文化と感情史を辿る 小川公代
第1部 感情史と現代
第1章 他者への共感ーー惑星的見地から感受性文学を考える 小川公代
第2章 怒りは道徳的に正しいか?--ヌスバウムと感情の現代哲学 河野哲也
第3章 歴史学と文学のはざま?--感受性文学を手がかりに感情史を考える 森田直子
第2部 感受性の思想と文化
第4章 市民社会と宗教ーーヒュームの『自然宗教をめぐる対話』 大河内昌
第5章 ヒュームの共感論・再訪ーー共感とは受動的で主観的な感情伝染か 犬塚元
第6章 ポウプ、コラルドー、そしてルソーーー『新エロイーズ』における感受性の諸相 井上櫻子
第7章 愛情の偽装ーー『娘たちへの父親の遺産』とウルストンクラフト 川津雅江
第8章 感受性の居場所ーーオースティンの初期作品から『分別と多感』へ 土井良子
第3部 感受性の誤認と帝国
第9章 恐怖の感染、恐怖の消費ーー超常現象と公共圏形成 原田範行
第10章 感受性の洗練と誤認ーーエッジワースとオースティンの描く「共感」の帝国 吉野由利
第11章 「共感」の矛盾と限界ーー『ジェイン・エア』における感情の問題 大石和欣
あとがき 吉野由利
ジェンダーから見たメディアの落とし穴を見抜き、不平等・非寛容・差別に抗するためのジェンダーフリーという見方を提示する。
開発支援が対象とする「世帯」とは何か?いかにして女性のエンパワーメントを促すのか?
JICAの派遣専門家として、ナイジェリア北部イスラーム圏の伝統を実践するハウサ社会で活動した筆者が、ジェンダー役割が不均衡な世帯における意思決定の諸相を分析し、開発援助の可能性を考察する。
はじめに
序論
第1章 女性対象の収入向上活動は効果があるのか?
第2章 世帯内意思決定をめぐる研究動向
第3章 ナイジェリア北部における調査の概要
第4章 女性が収入を得ると、世帯内意思決定力は向上するのか?
第5章 世帯内では何をめぐって意思決定が行われるのか?
第6章 どのような女性が世帯内で意思決定に関わりやすいのか?
結論
おわりに
イスラーム社会における女性解放の歴史を古代から1990年代まで包括的に論じた旧版は、1992年に出版されるや、中東だけでなく世界のフェミニズムに大きな衝撃を与えた。その後エジプトでは革命が起き、ヴェールをまとう人が徐々に増えている。本書は旧版から30年間の社会の変化や研究動向を論じた「増補版に寄せて」と解説を加え、表記の一部に改訂を施した。本書のメッセージをより深く理解する助けとなるに違いない。
増補版に寄せて:キーシャ・アリー
謝辞
序文
第一部 イスラーム以前の中東
第一章 メソポタミア
第二章 地中海地域の中東世界
第二部 基礎となる言説
第三章 女性とイスラームの勃興
第四章 過渡期
第五章 入念な言説構築
第六章 中世イスラーム
第三部 新たな言説
第七章 社会的変化と知的変化
第八章 ヴェールに関する言説
第九章 最初のフェミニスト
第十章 さまざまな声
第十一章 未来に向けての闘い
結論
訳者あとがき:林正雄
解説:後藤絵美
原註
索引
〈ジェンダー〉というタームは、もともと半陰陽事例の管理というきわめて特殊な文脈において誕生したものだった。本書は、もっとも周縁化されてきた人々の尊厳と人間性を取り戻すために、このタームの生みの親であるJ・マネー以降、諸学問分野においてジェンダーが存在論的な概念として生産され再生産されてきた歴史的コンテクストをたどり、今日のジェンダー論議に一石を投じる。
生殖技術をめぐる「生殖・技術・言論」の三層とジェンダーとの錯綜した関連を解きほぐす。漂流する「女性の自己決定権」はどこへ向かおうとするのか。
「ジェンダー」を学ぶ初学者を念頭においた入門書。
『変化する社会と人間の問題ー学校教育・ジェンダー・アイデンティティ』(2009)の大幅な改訂版。
「ジェンダーの問題は構成される」という観点から、読者に「気づき」を促し、同時に最新のジェンダー研究と傾向をわかりやすく解説・問題提起した。
個性ある「ジェンダーの視点」を学べるテキスト。
【執筆者】望月 重信,春日 清孝,原 史子
はじめに
序章 人間形成の社会的基礎
はじめに
1 人間形成を考える基本的枠組みとその問題構成
2 人間形成の社会的基礎の「自明の前提」とその問題性
第1章 ジェンダー論の地平を拓くージェンダーと教育の可能性を探るー
はじめに
1 ジェンダー研究の水準と教育実践
2 近年のジェンダー研究から学ぶ
3 フェミニズムとジェンダーの関係
4 ジェンダー論構築の可能性ーまとめに代えてー
第2章 ジェンダーと教育(社会化)-ダブルバインドと実践性ー
はじめに
1 性的社会化からジェンダー社会化
2 ジェンダー形成のメカニズム
3 隠れたカリキュラムの功罪と課題
4 「ジェンダーと教育」の課題ーまとめ
第3章 家族と福祉
はじめに
1 家族と家族の福祉的機能をめぐって
2 家族内での女性の福祉機能の強調
3 子育て家族の困難
4 これからの家族への支援のあり方とは
第4章 コミュニティとメディアー関係性の再構築のためにー
はじめに 生きる場と関係の再構成
1 メディアとジェンダー
2 コミュニティとネットワーク
3 ネットワークと関係性の再編
4 ネットワークの重層性と関係性
第5章 「自立・共生」を超えてージェンダー論的展開可能性の検討ー
はじめにー自立と共生を問う理由と意味ー
1 強いられる自立ー自立の批判的検討
2 共生の困難
3 「自立・共生」を越えて
4 自己=他者を生きるー関係性の再構築とセンシティブ
第6章 就業とライフコース
はじめに
1 性別役割分担意識と就業継続の実態
2 日本における「貧困の女性化」の現状
3 就労継続のために必要な制度的課題
終章 「ジェンダー教育」の方法をめぐる基礎
はじめに
1 性役割にみる二元論
2 近代社会における個人の二元主義
3 ジェンダー問題の研究の基礎
4 課題
付章 ジェンダー関連の講義で良く出会うFAQ-リアクションペーパーを通して
あとがき
多様な属性をもった文化的・社会的存在として男女をとらえ、男女の心理学的事象にかかわる真実をジェンダーの視点から客観的、多面的、体系的に明らかにすることをめざした書。ジェンダー研究は、個人としての男性と女性のあり方および両者の関係のメカニズムについて幅広く学際的に研究する科学であり、心理学だけではなく、多くの分野に新しい視座を提供している。本書は、斯学の絶好の解説書といえる。
女性やLGBTQの写真家、現代美術作家たちはどのように社会と対峙したか。学芸員として、日本の美術界におけるジェンダー表現を世に問い続けたパイオニアである著者のテキストをまとめ、大好評を得た『ジェンダー写真論 1991-2017』(2018年刊)が、新テキストを大幅に加えてリニューアル。アーティスト・長島有里枝と女性アーティストの状況について振り返る記念碑的な語り下ろし対談「なぜ、私たちは出会えなかったのか。」他、新たな論考や自らの身体の痛みと美術界への本音を綴るエッセイ他大充実の増補版。
軍隊を維持するために「性的慰安」は本当に必要なものなのか?敗戦後の連合軍(米軍)による占領下、女性たちは「守るべき女性」と「犠牲にしてもよい女性」とに分断され、双方が「成功した占領」のために利用された。本書は日本とアメリカの合作による「慰安所」システムや基地周辺の売買春の実態、地域住民の対応や売春女性の実像分析により、日本占領をジェンダー視点から問い直し、「軍隊と性暴力」の問題を根本から考える。
序 章 日本占領から「軍隊と性」を考える
第1章 占領軍「慰安所」(RAA・特殊慰安施設)の開設と展開
第2章 日米合作による性政策
第3章 米軍基地売買春と地域ー1950年代の御殿場を中心にー
第4章 占領と売春防止法
第5章 売春取締地方条例ー静岡県の場合ー
第6章 「婦人保護台帳」にみる売春女性たちの姿ー神奈川県婦人相談所の記録からー
終 章 女性たちの出会い直しのために
身近にあるけれど気づきにくい“ジェンダー”。おもちゃ、物語、エイジング、精神疾患、デートDV、母娘関係、キャリア・デザイン、家事、結婚…様々なトピックスについて実習をとおして学ぶ。
日本の性別分業意識が途上国から女性の人身取引を引き寄せ、世界貿易機関の協定が途上国の女性のエイズ被害を深刻化させる。ジェンダー格差に根差す複合的な不公正は、地球の持続性にとって最大の脅威である。より公正なグローバル・コミュニティの構築に向けて、経済学、政治学、文化人類学、社会学、国際関係論、国際法学が扉を開く。