兄・頼朝に追われ、非業の死を遂げた源義経。悲劇のヒーローの最期のあっけなさは、名将といわれるにしては不可解なものだった。一方、大陸のヒーロー成吉思汗。彼も、成人し、出世するまでの生い立ちは謎に満ちている。病床の神津恭介は、義経=成吉思汗という大胆な仮説を証明すべく、一人二役の大トリックに挑む。歴史の空白を埋める著者渾身の傑作推理。
韓国人の帝国陸軍中将。フィリピン戦犯裁判で、一言の弁明もせず絞首台に上った武人の清冽な生涯。
本書は、「近思録」の完訳です。「近思録」は、朱熹と呂祖謙によって編集され、西暦1176年に刊行された書物で、朱子学の入門書として長く広く用いられました。「近思録」には、四人の儒学者、周濂渓、張横渠、程明道、程伊川の言葉が厳選されて収録されています。四人は、それまでの儒学を刷新して、新しい儒学(宋学)を始めた人物です。朱熹は、その四人の思想を受け継ぎ、集大成して、儒学史上最高の哲学体系を作り上げました。それがいわゆる「朱子学」です。朱子学は、世間で思われているような「封建道徳」などではなく、簡単に言うなら、人の心を健全に育成し、世の中をよりよくしていくことを目指すヒューマニスティックな哲学です。
『字統』『字訓』『字通』の著者が自らの学問人生を綴った「私の履歴書」と、時空を逍遙遊する11の対話。
兄・頼朝に追われ奥州に非業の死を遂げたはずの源義経が、モンゴルに渡って成吉思汗となった?-病に倒れた神津恭介の入院生活の退屈しのぎにと、友人・松下研三が提示した謎は、天才探偵の頭脳を刺激した!邪説としてしりぞけられてきた問題に、一つ一つ検証を重ね、論理的説明を加えていく神津の大胆な推理が導き出す歴史の真相とは?純然たるロジックで展開される歴史ミステリーの傑作。
言葉がひとりでに踊り出す。一瞬のひらめき、ふと気づいた真実。キャッチーなフレーズ、フローチャート化した自分と世界との関係。みずみずしい感性が言葉の表現を拓くエッセイ集。
わが国小児医学界の第一人者である著者が、50年余の歩みをとおして見つめた、子どもの心とからだ。
補給が途絶えるなかで、自国民だけでなく多数の捕虜を管理するという任務は困難を極めた。癒しがたい悲劇を生んだBC級の戦犯裁判は、どう進められたのだろうか。膨大な裁判史料を読みときながら、“武人の矜持”に支えられた道徳律と、実態には関わりなく厳密な確認と証明を求めるアメリカの“リーガル・マインド”との相克をたどり、“文明の衝突”の犠牲となった洪中将の最期を描く。
あなたの思い出、買います、預かります。思い出を質草にする「思出館忘七草」盲目の若き店主・亜星と下宿人・聖也のもとを訪れる多くの客たち…返却期限は厳守。そして同じものは二度と、貸さないー。第22回新風舎出版賞フィクション部門奨励賞受賞作。
時間商人トキタは、とある都会の片隅で不老不死の時間を売っているー。トキタと契約すれば、顧客は「10年間限定の不老不死」を手にすることができる。トキタ自身も不老不死で、助手カナタとともに永らく時間商人を営み続けていた。そんなトキタに時間盗賊暗躍の一報が届く。人間の寿命を軽々と奪う、時間盗賊の次なる狙いはトキタの寿命だった!カナタの姉、ハルカの協力のもとで自衛につとめるトキタだが、均衡はあっさり破られる。カナタ誘拐という、最悪の形で。人質交換の条件を前にしたトキタの選択はー。