札文島の砂浜に漂着したウォッカの空瓶。そのなかには、遠く海を隔てた恋人に呼びかける一人の女の想いが封じ込められていた。「アリランコゲロ、ノモカンダ…」哀切な歌の調べにいざなわれ、土俗信仰の息づく韓国の山へと向かう少女と、人に言えぬ過去を持つ老人。二人の行く手には、日本軍の朝鮮支配にさかのぼる、暗い悪意が待っていた。そして、一人の在日韓国人が殺され、大戦が生んだ悲劇が現代によみがえる。時間と国境を越えるすさまじい愛の物語。
地震の顔が見えてきた。断層はどのように動くのか、地震予知は可能か、被害を食い止めるには、など様々な角度から迫る研究の最前線。
深い教養と該博な知識、鋭い洞察力、洗練された文体で、日本の近代文学に独自の世界を築いた幸田露伴。親子二代に渡って親しく薫陶をうけた著者が、愛惜の念を込めて記す文豪の知られざる素顔、その思い出…。
数学者たちのエッセイ集。
日本列島を切り裂く無数の断層。ひとたび動けば、どんな厄災をもたらすかは、阪神大震災が証明した。日本人は、断層の網の目から逃れるすべがないのだろうか。気鋭の地震学者が説く最先端学説と最新モデル。
名門女子学園の理事長の娘が、かつての恋人の部屋で殺され、三角関係のもつれからの恨みの事件として早期解決かに見えたが、別の殺人事件との関連で捜査が揺れる。厳格を誇る学園内部に横たわる、愛と忍従と憎しみを孕む男と女の難事件はベテラン刑事の標的に。
銕仙会の会員になり、能を集中的に見て論ずる「芸術断想」をはじめ、歌舞伎、芝居、映画などの芸術論、物議をかもした映画『憂国』の製作過程を描いた「製作意図及び経過」、他にコクトー論を収める。芸術全般に対する、鋭く深い考察と愛情が三島文学の根底を流れる。
教会のタブー、世間のモラルを超えて、初めて表現手段を獲得していく歌姫たち。17〜19世紀の混迷するフランス、ヨーロッパ社会をたくましく、したたかに、軽やかに疾走する、音楽史の秘められた主役たちの姿。