あの雨の日を忘れられない。入谷友紀の自慢の店『水華茶荘』は中国茶専門のカフェだ。客足は少ないけれど、好きなものばかりを揃えた店は居心地がいい。ある雨の日、客もいない店でお気に入りの中国茶を淹れたところにひとりの客が訪れた。精悍な顔立ちのスーツを着た青年、長谷部だ。どうやら長谷部は入谷のことを知っているようで…それから、雨の日になると現れる長谷部と親しくなるうちに、入谷は自分の気持ちが友情ではないことに気付きはじめてー恋に臆病なふたりの不器用な恋の物語。
泥鰌売りをして細々と独り身の生計を立てている岩三郎は、篠突く雨に打たれて長屋の木戸門にもたれかかる若い女を助ける。だが、事情を問う彼にお菊と名乗る女は、何も聞かずここに置いてほしいと懇願するばかり。やがて二人の暮らしぶりが長屋の噂になり始めたころ、岩三郎は思わぬ事実を知らされるー。傑作時代小説、シリーズ第十三集。
京都に出奔した弱小武家茶道「坂東巴流」家元Jr.の友衛遊馬。お茶が嫌いなはずだったのに、宗家巴流の先生・志乃の家に寄宿し、お茶菓子作りが趣味の坊主・不穏や公家装束を着こなす高校教師・今出川幸麿など、怪しげな茶人たちとの交流は増すばかり。そうこうするうち、宗家巴流の後継問題に、あれよあれよと巻き込まれ…。大好評青春娯楽小説、感涙の大団円へ。
さあいこう嵐をこえてあたらしいわたしに出会うためにー“雨音のきこえる”大人気シリーズ、待望の第3弾!
日本幻想文学の最高峰「雨月物語」と妖怪画の第一人者が奇跡の邂逅を果たした記念碑的作品集が、完全復刻版で遂に甦るー。高精細印刷で肉筆の墨痕、漂う妖気まで再現!
過保護な幼馴染みの拓己と水神さまのシロに世話を焼かれながらの京都・伏見暮らしも早や半年。高校二年生になったひろは進路に悩んでいた。そんなある日、親友である陶子の様子がいつもと違うことにひろは気づく。快活な親友に元気のない理由、それは…?光眩しい初夏から盛夏の京都を彩る、花鳥猫。水にまつわるあやかし事鎮め、じんわり優しい3つの夏物語。
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の第1コンサートマスターを長年つとめたのち、日本に移り住み、旺盛な演奏活動と後進の育成に後半生を捧げた不世出の音楽家ゲルハルト・ボッセ(1922-2012)。その音楽人生を、彼自身の言葉を描線として紡ぎ出す。心の奥深くに余韻を残す珠玉の回想録。
暗黒のソロモン海上で日米の水上艦同士が演じた砲雷撃戦のドラマを刻々と変化をとげる水雷戦隊の航跡とともに見事に描いた傑作海戦記。わずか二百名が乗艦する白露型駆逐艦「五月雨」の開戦時からマリアナ沖海戦後の座礁離艦に至るまでを艦橋配置に勤務する若き兵曹が綴り、駆逐艦乗員の汗と涙の暮らしを伝える。
沈黙が砂のように私を埋めつくすだろうースペイン山奥の廃村で、降りつもる死の予兆を前に男は独り身をひそめる。一人また一人と去り行く村人たち、朽ちゆく家屋、そしてあらゆるものの喪失が、圧倒的な孤独と閉塞の詩情を描き出し、「奇蹟的な美しさ」と評された表題作に加え、地方を舞台に忘れ去られた者たちの哀しみを描いた短篇「遮断機のない踏切」「不滅の小説」の訳し下し二篇を収録した文庫オリジナル。
ドシャドシャとおおぜいが駆けだしているかのような、すごい雨がふってきたので、ダヤンはあわてて駆けだしました。ところが、その雨をよろこんでいる小さな緑色のかえるがいるのです。そんなに雨がすきなら雨の木曜パーティにおいでよ、とダヤンは誘います。…ダヤンとなかよしの仲間たちの楽しいパーティへようこそ。
二匹の猫の世話を条件に叔母のマンションに引っ越したぼくは、ある雨の夜、部屋で女性の声を聞いた。「わたしは幽霊です」と言う彼女は、自分を殺した人を捜してほしいという。戸惑いながらも、真相究明に乗り出したぼくは、いつしか、雨の日にしか現れない彼女に恋をしていた。そして、すべての謎が明かされたときー奇跡の恋を描いた感動のラブストーリー『雨恋』が、装いも新たに!
「過去をやり直すことはできない。それでも、もしもーそう望む人の想いは存在する。たとえ記録には残らなくても」若き准教授、椥辻霖雨は犯罪を専門に研究する社会学者だ。霊の見える不登校児・姫子と共に居候する叔父の家に、一人の客人がやってきた。彼は妻殺しの罪で十年弱の刑期を終え出所してきたばかりだという。何かを感じ取った姫子は、事件を再調査するため霖雨に協力を求めるが…。裁かれ、償われた十年の月日ーそこには壮絶な孤独と、切ない真実が隠されていた。京都が舞台のクライムミステリー。
帝政ドラゴニアー飛竜が舞い、真っ白な淡雪のように美しくも悲しい四花雨が降る空。種々の悪魔が暗い翳を落とすこの国で、大悪魔の“顔狩”によって一夜にして故郷も家族も自分の顔さえ…奪われた少女騎士フィアは仇敵に復讐を誓う。双子の兄が受継ぐはずだった竜骨剣を背に、当代最強の竜騎士ヴァルと共にフィアは大悪魔を討伐し自分自身を取り戻す夏追いの旅へ!
奏の高校には「雨の日に相合傘で校門を通ったふたりは結ばれる」というジンクスがある。クラスメイトの凱斗にずっと片想いしていた奏は、凱斗に相合傘に誘われることを夢見ていた。だけど、ある女生徒の自殺の後、凱斗から「お前とは付き合えない」と告げられてしまう。傷つく奏だけど、凱斗は辛すぎる秘密を抱えていて…?おたがい想い合っているのに結ばれない、切ない恋に大号泣!!
日の出観光商事に勤める崎は鴬谷のラブホテル「雨月」へ突然左遷されるが、クサるわけでもなく淡々と清掃係に従事していた。社長の愛人と情事を重ねるものの、そこにも熱はない。ある日、ゴルフ場勤務時代の友人・沢口に頼まれ、風変わりな女を泊めたことから、「雨月」の禁忌が露わになりはじめ…。官能、ホラー、サスペンス!芥川賞作家が描く妖しい世界。
雪が降り、風が吹き、雨が打つから人生は輝く。読売新聞連載の人気エッセイ「仙台だより」待望の単行本化。54歳で東北大学大学院入学、同大相撲部監督就任、大病に倒れるも克服、そして3.11-。