ここに収められたものは、野良から、炭焼小屋から、戦場に駆りたてられ、尊い生命を失った農民兵士たちの便りの数々である。「国のため、君のため」というきびしい軍律のかげに、ふるさとをしのび、農作業を心配し、親はらからの身を気づかう真情が綴られたこれらの手紙は、あらためて戦争の悲惨さと恐しさを私たちに訴える。
敗戦から2年目、裸一貫になった松坂熊吾は、大阪の闇市で松坂商会の再起をはかるが、折も折、妻の房江に、諦めていた子宝が授かった。「お前が20歳になるまでは絶対に死なん」熊吾は伸仁を溺愛し、その一方で、この理不尽で我侭で好色な男の周辺には、幾多の波瀾が持ち上った。父と子、母と子の関係を軸に、個性的な人間たちの有為転変を力強い筆致で描く、著者畢生の大作第一部。
本書は、英国のブラッケン・ブックス社から刊行されるポスター・アート・シリーズを、日本語版で同時出版する1冊です。このシリーズは、装飾美術とデザインの大規模な絵画ライブラリーで、古代から現代20世紀に至る種々の原典からとってきたあらゆるテーマとスタイルを収めています。
「音楽広場」から生まれた大人も子どもも一緒に楽しめる歌に、大人気の絵本作家五味太郎さんが絵を描いた初の絵本ソングブック。日本中の子どもたちがうたう「世界中のこどもたちが」。
さんてつでんしゃではこぶ、きつねのたっきゅうびん。うみねこのたまご、ぶじに、みやこまではこべるでしょうか?幼児〜小学校向き。
パパは決心しました。一家で島にうつりすもうと。地図の上でみると、はえのふんにしかみえないけれど、そこは、パパにとっては一大王国だったのです。
戦国末期、瀬戸内海の村上水軍を率いて独立自存の勢力を誇っていた海賊の総大将・村上武吉。毛利一族などとの争いの末に獲得した徴税権と領土が、天下統一を狙う豊臣秀吉に奪われそうになった時、武吉はいかにして、それと戦ったのか。いかなる権力にも臣従することなく、己れの集団を守りぬいた武吉の生涯を通じ、時代の転換期における指導者のあり方を示唆した歴史小説。
空へ海へ…、ナディアの冒険がはじまる。NHKで大好評放映中。
ロングセラー「日本の野鳥〈全6巻〉」を1冊にまとめ、さらに28種をくわえて内容を一新。バードウォッチングに、家庭に、子どもから大人まで、だれにでも使いやすくした必携の書。子ども〜大人まで。
NHKテレビアニメの絵本化!ナディアの冒険は宇宙へ。物語、ついに完結!
一度目をかわしただけで恋におちた学生と少女が、歳月をへだてて、それぞれ外科医師と患者の貴婦人として手術室の中で再会し、愛に殉ずるー鏡花文学の原型をもっともよく示すこの「外科室」をはじめとする初期の代表作集。他に「義血侠血」(「滝の白糸」の原作)「夜行巡査」「琵琶伝」「化銀杏」「凱旋祭」を収録。
白い砂と蒼すぎる海の中で今、危機に瀕する珊瑚礁を憂える沖縄の女。嵐に荒れる夏の終りの北の海辺にふいに現われた酒場の女。南国のホテルで白い貝を手に踊る異国の女。そしてもう二度と見ることのできない青春の日の海でつむじ風のような恋をした少女…。潮の香りとともになつかしく浮かび上がる女たちの肖像。海と風と女の忘れ得ぬ物語。
小畑洋介、12歳。海洋生物学者の父、徹郎とフィジー諸島のパゴパゴ島に移り住んで3年になる。洋助はある朝、通学の途中、珊瑚礁の潮だまりにひとつの生命を発見した。“奇跡”との出会いだった。それは6000万年以上も昔に死に絶えたはずのプレシオザウルスの生まれたばかりの姿だったのである。しなやかな肢体と愛らしい黒い瞳を持ったその奇跡の生命は、洋助を見つめ、「COO」と歓喜の産声をあげた。こうして少年と幼い恐竜クーとのきらめく至福の日々がはじまった。だが平和は長くは続かなかった。第99回直木賞にかがやく、感動の冒険ファンタジー、待望の文庫化。
小説づくりの名工。端正緻密な小説世界。これこそ人生通の、大人の物語。日本人なら忘れがたい、愛惜さそう情趣のすべてがここにある。市井小説短篇。