今日のグローバル化の急速な進展は、私たちに国内外における新たな格差や差別の形成に、よりセンシティブな視点とその形成のメカニズムや解決の方向を解明する新たな概念や理論の構築を求めている。本書の狙いは、このような現状認識に立って、21世紀の社会学に必要不可欠な視角として「階級」「ジェンダー」「エスニシティ」の三つに焦点をあて、これらの概念が個々バラバラにではなく、そららがどう関連しあって個々人のアイデンティティや現実の生活が生み出されていくのか、そのプロセスにおいてそのように新たな差異化、分断化、差別化が生み出されていくのか、そのメカニズムを明らかにしようとするものである。
「統一」から十年以上を経たドイツにおいて、「ジェンダー・スタディーズ」のパラダイム転換が着実に進行している。「資本主義/社会主義」の二項対立構造と結びついた伝統的な「性差」理解の変容過程の中で、「表象」「身体」「パフォーマンス」といった新たな問題系に、英語圏の議論とは異なった視角から光が当てられようとしている。一八世紀にゲーテとロマン派が発見した「永遠に女性的なもの」をめぐる歴史的言説と、ポスト・モダン的なジェンダー理論の交差点を探っていく。
高等教育第一世代の女性の誇りと痛み。男性上位を前提とする伝統的性別役割と知の平等に立脚する高等教育との間の避け難い矛盾-米国史上初めて大学に学んだ女性たちは今日も引き続くこのアポリアに否応なしに直面し、その中でジェンダーに関する自覚的思考を深めた人たちであった。当時の一次史料を駆使した、わが国初のジェンダーの視点による大学史研究。
古今集と源氏物語をジェンダーの視点から分析し、中世以降の女性和歌懐紙作法の変遷を追い、近代小説における女性像の持つ意味に迫るー平安朝から明治期までの諸作品に新たな光をあてる五編を収録。
本書はフェミニスト地理学の代表的な欧米の論文を集めたアンソロジーである。論文の選定にあたっては、初学者にとってわかりやすいものを選んでいる。本書を通読することによって、フェミニスト地理学研究が多様かつ多彩な特色を持ち、従来の固定化された研究枠を打ち砕き、新たな理解へとわれわれを導くものであることを理解してもらえるだろう。
ジェンダーにかかわるあらゆる法的問題について、資料や図などを使い分かりやすく解説。注目を集めるジェンダー法律学のスタンダードテキスト。
本書は、1990年代のアジア、中東、アフリカ、ラテンアメリカ諸国、約30カ国の人口保健調査の最新データによる、女性の移動状況を提供している。本書は、アジア経済研究所の平成10年度研究会「途上国移動者の国際比較」の成果をもとに、これまで研究が進んでいなかった発展途上国の国内人口移動者について、特に、女性移動者の特性や移動要因に重点を置き、ジェンダーの視点に留意し、改訂したものである。本書で扱う人口保健調査は個人データであるため、各国人口センサスでは利用ができない移動背景に関する詳細な情報を有しており、本書は、国別・地域別の女性移動の状況や要因について、国際比較可能な形式でこれらの情報を提供している。
日本近世におけるジェンダーの特質とは何か。農村の「家」経営体の所有と経営に焦点をあて、家族労働をジェンダーの視点から分析。また、幕藩制国家の政治と権力の問題を、領主階級の女性の土地所有などから探り出す。
男女共同参画社会の実現に向けて多彩な事業を展開する“ムーブ”発自治体、女性センター関係者の必携書。
忙しく働く母親と、遊びに夢中の子どもが、別の時間を過ごすなかで見つけたことは。幼児・低学年向き。
男女共同参画社会基本法が制定され、実質的な男女平等の実現が政策課題になっている。しかし社会規範である制度は、性別分業意識でジェンダー化されていると言わざるを得ない。本書では、その諸制度をジェンダー問題解消の視点から検討し、そのあるべき姿を再構築するための提言を試みている。
ひとが女/男で“ある”ことは、そのひとのすべてを物語るわけではない。ジェンダーは、性、民族、人種、階層、地域などにまつわる言説と複雑に絡み合って構築されているからだ。本書は、ひとが女/男で“ある”ことの経験を理解し、この複雑に絡み合う言説を解きほぐす試みである。