社会とその基底をなす教育を貫く「隠れたメカニズム」-現階級社会を正当化するイデオロギーの発出とそれに照応した人間と文化の再生産は、今なお日々繰り返されている。男女の非対称性、高校教育の階層構造等、今日の日本における「欺瞞の構造」を明確に摘出した、新たな現代国家・社会批判の書。
個人が選び取るライフコース、その交錯点としての現代家族。ライフコースを縦軸にしたジェンダーの視点による現代家族社会学入門。自立した個人に対応する福祉とシティズンシップのあり方を個人・家族・社会の関係から考える新しい家族へのアプローチ。
現代福祉国家の諸制度-賃金、税制、社会保障制度等に組み込まれた女性の自律を阻む不平等要因を、諸福祉国家の比較研究に基づき鋭利に摘出するとともに、その背景をなす男女役割分業思想が今なお強固な日本において、国際条約や諸国家の前進的成果を足掛かりに、独自の視角からジェンダー平等を推進する、新たな戦略構築の基盤を追求した、著者の遺著。
日本福祉国家のあり方を比較の観点から精査することが、本書の狙いであり、さらに90年代なかば以降の動向を踏まえて今後の進路が展望される。
本書が出版されたときにインドで最初、多くの批評家たちは著者が現代のインド社会の暗い面を映し出していると批評した。しかし著者はそうは思わなかった。イギリスで本書が出版されてから数カ月たったときに、インド政府は二〇〇一年の国勢調査を発表した。それまでにも男女の人口比率は大きくなっていたが、さらに多くの女性が死亡していた。全国的な統計によると、現在、インドでは男性人口よりも女性人口が六七〇〇万人ほど少ない。インドにいる活動家の友人たちはだんだんと大きな問題になっている女の新生児殺しは、小さい家族を唱道する政府の政策によってさらに悪化していると言う。伝統的・歴史的な理由で息子が好まれることが社会に深く浸透し、その結果、すぐに女児を中絶したり、殺したりする。さらに、ダウリーの要求が増大し、村人までが都市化し、娘を持つ親の負担や犠牲は増す一方である。私たちみんなが知っているように変化は非常にゆっくりしたものである。インドで、道のりは長い。前途は長いし、途中でたくさんの落とし穴があるかもしれない。しかし、歴史は途中で突然に劇的に予期しない変化が起ることを何度も示してきた。その意味で、あらゆることに可能性がある。
家父長としての父親像か、妻の対等なパートナーとしての父親像か。職業人・国民としての社会的達成か、家族からしか得られない精神的充足か。近代家族の形成によって生じた“父親のジレンマ”を、新たに掘り起こした「良夫賢父」論や性差を否定する一条忠衛の父性論などによって浮き彫りにする。そして産業化/国民国家化において展開される、男性と権力との結びつき方をめぐるダイナミックなヘゲモニー闘争を、男性/女性のエージェンシーの対立と共謀として読み解く。
「男性中心、上からの開発政策」から「女性による下からの開発」へ。「階級」と「ジェンダー」の二重の差別に苦しんできた女性に、「労働者」としての自分を発見させ、女性の主体化をうながした自営女性協会「SEWA」。そこでのフィールドワークから見えてくる女性のエンパワメントとその葛藤。
1990年代以降、ジェンダーに関わる新たな法が次々に成立した。しかし、介護や育児、ドメスティック・バイオレンス、福祉労働など、多くの女性に負わされてきた「女性の抱える困難」は、政策によって本当に解決したのだろうか。社会福祉基礎構造改革により転換期を迎えている社会福祉を、ジェンダーの視点で再検討する。
恵まれた経済条件、異文化中での子育ての軛、さらに日本人小社会特有の「保守的ジェンダー観」などの重積の中、女性自立の最先端国にありながら「伝統的主婦役割」を志向していた在米駐在員の意識は、ここ10年で一変した。昨今新たな装いで回帰してきた「専業主婦神話」「母親神話」に風穴を開け、女性問題に一石を投じる、著者積年の考察と実証的研究。
空想的な創造でありながら、同時に現実社会と対峙し批評するファンタジーという世界。作品を成立させるしくみである「男装の麗人」「戦う女性」「家族」を軸に、現実のジェンダー関係やセクシュアリティにとってのオルタナティブを読み解く。
男女共同参画社会基本法や、草の根女性組織の台頭-女性の政治参画の進展は、政治にジェンダー複眼の視座を組み入れ、新しい男女共生の政治文化を生み出す。本書はその背景にある、戦前から今日に至るまでの、女性たちの運動の歴史を明らかにする。市川房枝や環境運動家、生活者ネットワーク、女性官僚などの取組みに焦点を当て、日本の女性たちが切り拓いてきた政治展望を描き出す。
女性に対する暴力をどのように克服するかが社会全体としての喫緊の課題となっているが、本叢書の1では、ドメスティック・バイオレンス、セクシャルハラスメント、ストーカーの被害の廃絶をめざした法制度の検討を行っている。
制度化された「労働」の批判。家事労働からセックスワークまで、労働のなかの“女/男”をジェンダーの視点から分析する制度・言説・表象の政治学。