第二次大戦直後、両親に連れられて日本の中央部の山あいの小さな地域に住むようになったアイルランド人の少年の実話。今は祖父となったその少年は、若い頃の幸せで楽しかった思い出を思い起こします。宣教師の子どもだった著者がいま孫たちに語る日本の思い出・旅の思い出。
山のうえで、星空のてっぺんで、無音の孤独のなかでー。美しくも険しい山々を、一歩一歩踏みしめて綴った、若き青春の日の詩。
この拙作は、在日ベトナム人として、こよなく愛する我が祖国日本の一公民として、そしてこよなく愛する我が町の一町民にして町内会の一役員として著述した著作であり、日本の地方自治・地域政策・住民参画に貢献する志を以て出版した著作であります。 諺に「小事は大事」とあるように、国家という大よりもまずは地域という小を、社会という大よりもまずは個人という小を、誠に確りと改善していく、この小の積み重ねこそが、大の改善へと繋がっていく、拙作はこの信念を以て完成された哲学書であり、そして祖国を愛しては憂いる日本人の皆様方の良心に良識、愛郷心に愛国心、求知心に向学心の奥底に誠に届くことを、切実に願って止みません。
歴史の歪曲を糺す
1970年7.7華青闘告発の直後の山村(梁)政明の自死につづく川口大三郎虐殺事件と「早稲田解放闘争」、各大学で執られるようになった支配構造とは何か。全共闘後期から2015年SEALDs、さらに現在と未来の社会運動をめぐり数々の問題を剔抉する。
樋田毅のノンフィクション『彼は早稲田で死んだ』、それを原案とするドキュメンタリー映画、代島治彦監督『ゲバルトの杜』は、歴史を歪曲し、真実から目を背けている。
われわれは、記憶し、闘争し、最後まで忘却を拒否する、まつろわぬ者どもである。
巻頭言
本書は何から始まり、何をめざしているか? 絓秀実・花咲政之輔
第1部 シンポジウム
映画『ゲバルトの杜』徹底批判
大野左紀子・河原省吾・菅 孝行・
照山もみじ(金子亜由美)・絓 秀実・花咲政之輔
第2部 政治の表象/表象の政治
記憶の修正・歴史の偽造ー映画『ゲバルトの杜』への心象を起点に 菅 孝行
「川口君事件」をいかに「語る」か 照山もみじ(金子亜由美)
誰のための鎮魂なのかーー川口大三郎事件と早大解放闘争は終わらない 河原省吾
暴力への想像力 大野左紀子
川口君追悼とは真逆の虐殺者免罪映画 水谷保孝
樋田毅『彼は早稲田で死んだ』を鼻つまみにし、歴史のくずかごへ 前田年昭
「絶望」と隣り合う「希望」とは如何なる謂か?--代島治彦『ゲバ杜』とその言説・徹底批判 絓 秀実
昂揚会・原理・早稲田リンクスーー奥島「改革」後の早大管理監視体制 花咲政之輔
鼎談 虐殺者の側に立つ映画 亀田 博・絓秀実・花咲政之輔
第3部 全共闘晩期
「六八年」をめぐる個人的な抵抗 稲川方人
早稲田は誰に住みよいか 津村 喬
梁政明の死 津村 喬
山村(梁)政明の闘争と抵抗 小泉義之
なんとなく、カクマルーー「暴力批判論」のために 長濱一眞
内ゲバとアソシエーション 吉永剛志
新左翼とは何だったかー一九六九年の未完の階級構成をめぐって マニュエル・ヤン
天皇制の「永遠」と内ゲバの「終焉」 絓 秀実
関連年表
日本資本主義論争をへて、小林秀雄、中村光夫、吉本隆明、柄谷行人らの文学史観をつらぬく「天皇制」の問題。
公共性/市民社会論、「新しい社会運動」、文学、映画、アート……
さまざまな「運動」は、なぜかくも資本主義に屈してしまうのか。
排外主義が跋扈する現在、これまでの思想・言説を根底から洗い直し、闘争のあらたな座標軸を描く。
日本文芸批評に伏在する「天皇制」をめぐる問題を剔出する表題作(新稿)、
市民社会派に内在する「暴力」の問題をあぶり出す論考(新稿)のほか、23篇のポレミックな論考を所収。
第1部 天皇制の隠語
天皇制の隠語ーー日本資本主義論争と文学
暴力の「起源」--村上一郎と市民社会派マルクス主義
第2部 市民社会の変奏
幻想・文化・政治ーー今なお不可視化されている「下部構造」について
資本の自由/労働の亡霊
市民社会とイソノミア
「プレカリアート」の食
世界資本主義下のベーシック・インカム
第3部 文学の争異
フィクションの「真実」はどこにあるかーーキャラクター小説と1968年
陳腐な「悪【ワル】」について
下流文学論序説
フォルマリズムは政治を回避できるかーー書評・渡部直己『日本小説技術史』
断固とした詩的決断主義を宣言したロマン的イロニーの書ーー福田和也『日本の家郷』解説
女たちの欲望と「大逆」--書評・福田和也『現代人は救われ得るか』
「沢山」からゼロへのフェティシズム的転回ーー小川洋子小論
「私小説から風俗小説へ」とは何か?--角田光代小論
アヴァンギャルドと社会主義リアリズムの狭間でーー蔵原惟人の可能性
「『敗北』の文学」の結論ーー追悼 宮本顕治
中上健次とともにーー追悼 荒岱介
第4部 感覚の政治学
百年の孤独を生きる、現代の「危険な才能」--つかこうへい/神代辰巳/中上健次とショーケン
映画とあること、革命家であることーー太陽肛門スパパーン『映画「ラザロ」オリジナルサウンドトラック』解説
退けられた「中国人」の表象ーー大島渚監督『アジアの曙』
「いざ、生きめやも」とはなにかーー宮崎駿監督『風立ちぬ』
万国博覧会と癌(cancer)--大阪から愛知への芸術=資本主義の変容
「太陽の塔」を廃炉せよ
迸る一夏の甘い夢ーー
マルメラは小さな箱をみつけた
カンザスには古い河があったろう、そこで
箱の中身は仔犬の魂だった
父は仔犬を見ると必ず「のらくろ」と呼んでいた…
おまえはヘミングウェイを知っているか
僕は16歳で知った、ジョン・ウェインの親戚だ
マルメラもその頃知った
マルメラマルメラと教室で騒いでいたが
そいつがマラルメだと気づいて
どうでもよくなった、そんなへんな名前のやつは
カンザス、カンザス、唾の詩、詩の唾…
アレフのよだれが詩集『SUMMERTIME』からSの文字を消した
以後『アマータイム』と呼ばれるサタンの書には緑色の血が染みつくことになる
トッゲ・ド! ストゴド!
(栞=寄稿:稲川方人、著者解題)
私はタイポグラフィックな紙面構成を徹底すべく、テクストの最終的な構築に躍起になった。
見開き二頁。この単位で、詩形式の音楽的かつ視覚的な構図を整える。
活字の大きさを極端に変えてみる。
大きな文字と小さな文字が混在する頁上に、傍線、見せ消しといった手作業の痕跡が入る。
テクストが興奮しているのが判った。
ーー「著者解題」より
詩の生成、詩人の誕生ーー
小説家志望の青年が詩を書きはじめるまでを綴った「あるゴダール伝」。
元タクシードライバーの詩人で、かつてはテロリスト志望だったと思しき男が、
PCモニター上に現れた宇宙公務員の質問に答えていく「詩人調査」。
詩とは何か、詩人とは何か、そして詩人にとって詩とは何かを描く2篇。
(栞=寄稿:金井美恵子、著者解題)
では、『海を見に行け』は不発弾だったのか。
それはまだわからない。
ひょっとしたら、それを偶然手にした一人一人の読者の内部で、すでに小爆発を起していたかも知れない。
そして彼自身や彼の友人や恋人を海に連れていったかも。
しかし、その程度の爆発で権田さんが満足するはずもない。
20年後の今でも、『海を見に行け』は東京の古本屋の暗がりで大爆発の時を待っているはずだ。
ーー「あるゴダール伝」
わたしはね、東京では結局、一度も海を見ていないんです。
不思議ですよね。
海は近くにあるはずなのに、うんと遠い気がしていました。
ですから『海を見に行け』という詩集には、
便所に流したニョロニョロが下水を渡って海に出るというイメージが色濃くあったかも知れない。
あるいは神田川に棄てた『チェーホフ爆弾』がどんぶらこと流れて
海まで運ばれていくイメージとか。
ーー「詩人調査」
※「詩人調査」は文芸評論家・斎藤美奈子さんが朝日新聞で、2010年小説ベスト3の一作として選んだ作品です。
あるゴダール伝
詩人調査
なだれゆく散文的崩壊の危機に抗いながら
その瀬戸際で紡ぎだすポリフォニックな抒情。
2006年度萩原朔太郎賞受賞以後の到達点。
「瞬間の前衛」たちによる横断結合を!
抑圧的な権力、支配システムのもとで人々はいかに結集し、蜂起するのか。
全共闘、明治維新、おかげまいり、横巾の乱、文化大革命、ロシア革命、ナチズムなど
古今東西の事象と資料を渉猟し、
群衆、都市文化、組織、情報、戦争、身体、所作/作風などあらゆる側面から考証、
「名もなき人々による革命」の論理を極限まで追究する。
1 横議横行論
2 群衆は増殖する
3 レーニンと組織戦略
4 ゲッベルスの大衆操作
5 仮面と変身ーー サブカルチュアの政治経済学のためのノート
6 異化する身体の経験ーー 全共闘世代について
7 差別について何を語りうるか
8 横議横行論(続)
あとがき
解説 一九六八年 持続と転形 酒井隆史
世界的な反乱の時代を象徴する出来事、「68年5月」。
50年代末のアルジェリア独立戦争から、21世紀のオルタ・グローバリゼーション運動に至る半世紀のなかで、この反乱はいかに用意され、語られてきたか。
フランス現代思想と社会運動を俯瞰しつつ、膨大な資料を渉猟して描かれる「革命」のその後(アフターライフ)。
はじめに
第1章 ポリスによる歴史
社会学とポリス 棍棒 アルジェリア人のフランス
第2章 さまざまな形態、さまざまな実践
専門化批判 「ベトナムはわれらが工場内に! 」 虎穴に入る 表象の幻想
第3章 違う窓に同じ顔
報復と審判 反第三世界主義と人権 テレビ哲学者たち
第4章 コンセンサスが打ち消したもの
日本語版補遺 いまを操ること
アメリカナイズされるフランスの「五月」 イスラエルというフィルター
資本制国家を撃て!
ロシア革命の変節、スペイン革命の敗北、そして1968年の持続と転形ーー
革命の歴史をふまえて展開される、
生き方としての「アナーキー」ではなく、
国家廃絶をめざす革命思想としての「アナキズム」。
「戦後最年少イデオローグ」として名を馳せた旧版に、
1968年闘争期におけるアナキズム運動の総括文書「無政府主義」などを増補した
戦後日本アナキズム思想の極北。
第1部
存在 国家を撃つテロルの地平
歴史 歴史のなかの〈生〉と〈死〉
超人 ネチャーエフ
暴力 歴史における巨視と微視
第2部
国家 無政府主義革命の黙示録
序 アナキズムへの確執
第1章 総論・視座ーー未踏領域へ
第2章 国家廃棄ーー共同体の指標
第3章 組織論ーー黙示録の共同体
第4章 世界革命綱領の視座
付章
内戦 ロシアの背理と革命の逆説
軍隊 不可能性のインタナショナル
第3部
時間 〈国家性時間〉と都市
犯罪 犯罪者と革命家の十字路
肉体 時間の仮構とその所有
あとがき
新版補遺
反アナキズム論序説ーー唯一的革命の神話と構造
無政府主義
解説
“癖”に昂まった原理 松田政男
〈観念〉の力 山本光久
ランシエール自身によるランシエールーー
世界で最も注目される思想家が、みずからの思想を平易なことばで語るロング・インタビュー。
2012 年までの全著作の自著解説。
「分け前なき者」の分け前をめぐる政治思想と、映画や文学、アートなど「感覚的なものの分割」をめぐる美学思想は、いかに形成され、いかに分けられないものとなったか。
ランシエール思想、待望の入門書。
はじめに
第1章 生成過程
幼年時代と青年時代 / 高師時代の教育 / 『資本論を読む』 / 共産党路線との関係 / 六八年五月、ヴァンセンヌ、プロレタリア左派 / 分岐 / 『プロレタリアの夜』のなかで / 方法の誕生: 読み書きの仕方 / ミシェル・フーコー / 『論理的反乱』と「五月」の退潮 / 映画、左翼フィクション、民衆の記憶
第2章 いくつもの線
相続と特異性 / 反体系的体系性 / 空間の優先、時間の再考 / 過剰あるいは出来事 / シーンをどう定義するか / 発話による主体化 / 能力あるいは可能性 / 美学革命か民主主義革命か / 哲学的エクリチュールと普通の言説 / 効果としての哲学 / 残りはあなたのもの / 思考の笑い
第3章 閾
脱神秘化あるいは脱構築 / コンセンサスと愚鈍 / 支配を払いのける / 無意識を位置づける / 象徴秩序の平等な喪失 / プロレタリアの過去と現在 / 平等/ 不平等 / 〈共〉の動的編成 / 脱アイデンティティと主体化 / 政治と制度 / 社会の場所 / 新しさと歴史性 / イメージの散乱はもう一つの芸術体制であるか / ポピュラーカルチャー
第4章 現在
可能なものの地図作成 / 現在の姿、「ポリス」のあり方 / 切断、革命、反乱 / 新たなインターナショナリズム? / 移住する身体、苦しむ身体 / 人間、人間でないもの: 政治的エコロジーについて / 脱現実化した世界: どのように情報を得るか? / 三面記事、ありふれた生、調査 / 不安定で庶民的な生の技法 / 感覚的なものの分割と現代アート / 社会主義の未来 / 政治経済学 / インタビューと対話
非時間性=「革命」の水脈
シュンペーター、シュトラウス、ラクラウーー
「イノベーション」や「アントレプレナー」、
新保守主義と政治哲学、
そしてラディカル・デモクラシーで知られる
一見相容れない3人の思想を
根源的に捉えぬいた果てに立ち現れる未知の相貌。
はじめに
第0章 台詞がなかったペルセースのために
●第1部 シュンペーター
第1章 シュンペーターの終末論
第2章 資本化と政治的威信
第3章 新結合をめぐってーーイノベーションとその主体に関するいくつかの考察
●間奏 ラクラウ
第4章 回帰する人民ーーポピュリズムと民主主義の狭間で
●第2部 シュトラウス
第5章 末人たちの共和主義ーーレオ・シュトラウスと“政治哲学”
第6章 闘う聖人
反資本主義、反差別、日中・日韓、核/原子力・フェミニズム、生政治、装置的権力、戦争状態、身体所作の戦術、都市的権力/民衆闘争…“いま”のすべてを規定する日本の「68年」、その思想的到達点が40年の歳月を超え、ふたたび政治の季節に原点として甦るー「瞬間の前衛」たちの横断結合によって「根底的な世界変革」を行うために。
世界を震撼させた組織は何を主張していたか
「バーダー=マインホーフ」グループとしても知られる第1世代のドイツ赤軍(RAF)。
反帝国主義、反資本主義を掲げ、国家や米軍、企業などへの武装闘争をくり広げながらも、市民から広範に支持され、「人民の海を泳ぐ」ことができたのはなぜか。
かれらの思想を明らかにすべく、公表された文書やビラを集成(日本版は全3巻)。第1巻は、60年代後半の組織結成にいたる前史から、72年「黒い九月」によるミュンヒェン・オリンピック闘争に関する声明までを収録。
前書き
前史に関する覚書
序論 一九七〇年から一九七二年
赤軍の建設ーアンドレーアス・バーダー解放に関する声明
都市ゲリラ構想
西ヨーロッパの武装闘争について
人民に奉仕するー都市ゲリラと階級闘争
〔五月攻勢〕
フランクフルト・アム・マイン米陸軍指令部への攻撃
アウクスブルクおよびミュンヒェンにおける攻撃
カールスルーエにおける連邦裁判所判事ブッデンベルクへの攻撃
ハンブルク・シュプリンガー社屋への爆弾攻撃
ハイデルベルク・アメリカ陸軍欧州司令部への爆弾攻撃
フランクフルト赤色救援会ティーチインの録音テープ記録
ミュンヒェン・オリンピックでの《黒い九月》の行動ー反帝国主義闘争の戦略について
訳者あとがき
略号一覧
RAF関連年表