黄土高原の小国曲沃の君主は、器宇壮大で、野心的な称であった。周王室が弱体化し、東方に斉が、南方に楚が力を伸ばし、天下の経営が変化する中で、したたかな称は本国翼を滅ぼして、晋を統一したが…。広漠たる大地にくり広げられる激しい戦闘、消長する幾多の国ぐに。躍動感溢れる長編歴史小説全三巻。
称の孫重耳は、翼攻めに大功をたてた。雄偉な体躯の心穏やかな公子で、狐氏から妻を娶り、その一族の厚い庇護を受けていた。称の死後晋の君主となった詭諸は、絶世の美女驪姫に溺れ、奸計に嵌まって重耳たち公子を殺そうと謀る。逃れ出た重耳と家臣たちの、辛酸の日々。晋の国内は大きく乱れて…。
晋の内乱が鎮静し、重耳の弟夷吾が素早く君主に納まったが、軽佻不徳に人心は集まらず、重耳の帰国が切望された。刺客の魔手を逃れながら、飢えと屈辱の、十九年一万里の流浪の末、ついに重耳は晋を再建し、やがて中国全土の覇者となった。-春秋随一の名君を描く、芸術選奨文部大臣賞受賞の名作。
「フランス料理の王様ポ・ト・フ」「食卓のおしゃべりとタブー」「うまいぶどう酒はいい女に似ている」など、フランス在住の著者が綴る美食の国の伝統の味。パリ生活の楽しいエピソードを交え、“暮らしの芸術”としての家庭料理の魅力を語りつくす。
“和製メッサー”と呼ばれた日本で唯一の液冷エンジン戦闘機・飛燕ー格闘性能を合わせもつ高速機として万能戦闘機の名を冠せられた傑作機。その美しい姿態に秘められた設計チームの苦悩と、実戦場での血と汗と涙の苦闘の数々を描き好性能を発揮することなく終末を迎えた悲しき生涯を捉えたノンフィクション。
うみキリンはうみにすんでいる。うみにすんでいるからうみキリン。うみにいるなんて、ちょっとへんなキリン。でも、うみのなかまはみーんなしっている。3・4歳児から。
危機のなかにあっても、常に泰然自若、しかも臨機応変、戦さ強者にして巧者の評価をほしいままにした“修羅場の指揮官”の素顔を浮き彫りにした話題作。沖縄海上特攻指揮官として砲煙弾雨の中、露天の戦艦「大和」防空指揮所で最後まで戦いつづけ、三千余の将兵と共に消えた提督の生涯を描く海軍名将伝。
九州の片田舎の貧農の家に生まれ、努力をかさねて海軍兵学校に入校、時代の荒波に呑まれ翻弄されつつも幾多の海戦に赴いた大海軍の異才が綴る帝国海軍こぼれ話ー昭和の平和の時から日華事変、そして空母「翔鶴」運用長として猛火と戦った太平洋戦争、戦後の時代へと到るまで海軍生活二十五年の秘話を語る。
防御力ゼロに等しい一式陸攻を駆って、日米攻防たけなわのソロモンの大空に出撃をくり返すこと二百余回ー。搭乗員の墓場といわれたラバウルで中隊長、小隊長、つぎつぎと戦死して、愛するペアもまた暗夜の海上に未帰還となり声なき死闘の中で万余の銃火をくぐりぬけ生還を果たした空の男の感動の空戦記。
日本人最初の世界一周と日露交渉。若宮丸の遭難と16人の数奇な運命、かれらを伴って通商を迫ったロシア使節レザノフ。この交渉を機に幕府は鎖国政策を確認し、無二念打払令にいたる。日露の史料を駆使して迫る幕末日本の実相。
タブッキの「インド夜想曲」、ヴェンダースの映画「リスボン物語」で紹介されたのをはじめ、ドゥルーズ、パスなど多くの知識人の高い評価を集めるポルトガルを代表する詩人の詩選集。
太平洋戦争を終結させ、日本の運命を決した“最後の戦い”の全貌ー米軍総兵力四十五万、たいする日本軍十万、両軍死力の限りをつくした九十日間にわたる未曾有の戦闘を描くノンフィクション。米国陸軍省が攻略戦に参加した記録班や日本側の資料を網羅して構築した“沖縄戦史”の決定版。図版・写真多数収載。
『君主論』で名高いマキァヴェッリ(1469-1527)が晩年に書いた歴史書。古代ローマ時代のフィレンツェの起源から1492年の大ロレンツォ・デ・メディチの死までが扱われる。各種年代記や歴史叙述等の史料を駆使し、ときにそれらに大胆かつ自由奔放な創作の手を加えて、彼一流の精彩に富む歴史像を作り上げた。新訳。
絶え間なく繰り広げられる複雑な権力闘争。苛烈な現実政治の現場に身を置いた著者が、メディチ家支配下の共和制フィレンツェに焦点をすえながら、波瀾に満ちたフィレンツェの歴史を具体的に叙述していく。叙述される出来事自体の面白さだけでなく、第一級の知性たるマキァヴェッリの歴史認識を知るうえでも興味はつきない。
本書は、水の質の形成に関与する多くの素過程を整理し、水質評価に関する情報を体系化し、水質学の基礎をなすものとしてまとめたものである。