秀吉の天下統一の烈風は、肥後の国にも吹き荒れた。理不尽な検地要請に始まった、隈部親永追討の火種は、やがて大きな炎となり、各地の城を焼き尽くした。多くの国衆たちは果て、追及を逃れたわずかの幸運な国人、家臣たちはいずれかへ行方知れずに消えるか、武人を捨て、僧、農民となるものもいたという。傲慢なまでの秀吉の走狗とされた佐々成政も、戦国の世に生きたがゆえの苦汁をなめたのである。
過去を振り返っても達成感はない。人生に行き詰まりを感じる初老の男に降ってわいた恋と仕事の成就だが…。
いま、都市を呼吸する。愛のかたちが、ひそかに変わり始めている!透きとおったリリシズムを湛える11の都市小説集。
私は誰?-主人公・里山伊波はときどき記憶が曖昧になる自分に怯えていた。彼女の住む町には、長年空き家の洋館が建っていた。周囲にそぐわない孤立したその建物に、伊波は強く惹かれた…。その洋館に伊波の憧れの存在である樽屋マサキが住み始めた。職業は小説家。中学一年生のときに初めて彼の小説を読み、伊波はその世界観に陶酔した。その館に導かれるように入り、机の上には新作の原稿がありその内容に驚愕する伊波…。不安定な世界観が交錯し、現実と虚構を彷徨うミステリアスな小説。
離婚、そこに残された男の葛藤と寂寥ー。表題作「黄昏のあとで」、他「喫茶店にて」「神戸行」を収録した著者渾身の作品集。第一回碧天文芸大賞出版化奨励作。
17年前別れた恋人道江の面影を胸に、越前岬へ向かった画家の佐伯城介が、寝台特急『北陸』の車中で出会った謎の女ー。翌日城介は、女が『トワイライトエクスプレス』のスイートで心中したことを知る。しかもその相手は、城介が道江と別れる原因を作った友人の郷原だった。事件を契機に道江と運命的な再会を果たした城介は、友人の不審な死と『北陸』で目撃した女の行動に疑問を抱き、真相追及に乗り出す。だが、その行く手に待ち受けていたのは衝撃の真実だった。
過ぎた日の追憶、老いを迎えての感慨…。人間を見据える目の確かさが光る12編。人生の年輪が紡がせた身辺エッセイ。
主人公の無頼な生き方の中に秘められた哀しみや、人間に対する限りない優しさを、繊細なタッチで描いた小説。昭和三十年代を描いた「少年時代」も収録。
いつの頃からか、何のためにか、不死の生命を得て、永遠の時を彷徨うアシエルとユーゴ。喜びも悲しみも、永劫の時に塗り込め、二人は共に生きるー。さて、一九九三年。アメリカ・イリノイ州・シカゴ。アシエルとユーゴは旅の途中、この街へ立ち寄った。おせっかいやきのユーゴが関わったのは、産みの母に虐待され、口もきけなくなった少女。ユーゴは彼女を助けようと、懸命の奔走をするが…。
霧深いエーランド島で、幼い少年が消えた。母ユリアをはじめ、残された家族は自分を責めながら生きてきたが、二十数年後の秋、すべてが一変する。少年が事件当時に履いていたはずの靴が、祖父の元船長イェルロフのもとに送られてきたのだ。急遽帰郷したユリアは、疎遠だったイェルロフとぶつかりながらも、愛しい子の行方をともに追う。長年の悲しみに正面から向き合おうと決めた父娘を待つ真実とは?スウェーデン推理作家アカデミー賞最優秀新人賞に加えて英国推理作家協会賞最優秀新人賞を受賞した傑作ミステリ。
本書は、核燃料サイクル施設の、破綻の現実を分析する。
ニューヨークで孤独な暮らしを営む女流画家のスウィーニーは、自分がひとりの男性に惹かれていることを突然意識した。相手は野性的な魅力に溢れた大富豪。だが、彼女には誰にも言えない秘密があった。それは一年前からさまざまな超常現象を体験するようになったことだ。しかもある夜、彼女は夢遊病にかかって一枚の絵を描く。そこに描かれていたのは、彼女が知らない間に発生した殺人事件の被害者の顔だった…。人気作家が贈る魅惑のロマンティック・サスペンス。
ユーナへの抑えられない想いを自覚するアシュート。しかし、彼女が消えてしまう日は間近に迫ってきていてー。身代わり聖女の王宮ファンタジー、最高潮第3巻。