巻頭特集「新版画」のすべて
「新版画」とは、江戸時代の浮世絵版画と同じように絵を描く絵師・版を彫る彫師・その版を摺る摺師の三者の共同作業によって制作された版画のことをいいます。
明治末期、日本には文明開化によって銅版画や石版画などの新しい印刷技術が輸入され、それまでの浮世絵版画はすっかり衰退してしまい、消滅の危機にありました。
それを惜しんだ浮世絵商・渡邊庄三郎は、自らが版元となり「浮世絵を継承し、現代の画家による現代の浮世絵」として新版画の制作に取り組み始めます。
渡邊は、洋画家や日本画家、さらには日本を訪れた外国人画家にまで声をかけ、今までにないない新しい時代の版画を生み出すことに尽力しました。
そのおかげで、新版画にはスティーブ・ジョブズも作品を求めたという橋口五葉の美人画にはじまり、吉田博、川瀬巴水や伊東深水、小原祥邨(古邨)、山村耕花や名取春仙など多くの画家たちによる名品が残されています。
何十版と版を摺り重ね、透明感を保ちつつも重厚な色彩で描かれるノスタルジックな日本の原風景。世相を反映した美人の姿。人相の特徴をリアリティある筆致で描いた役者絵。細部まで精緻に描かれた花鳥画。
本特集はこれら新版画の傑作を紹介しつつ、これまであまり知られていなかった新版画家や、外国人画家の作品も掲載しています。
タイトル通り、新版画の「すべて」を余すところなく紹介した決定版です。
文学、美術、音楽…。芸術に生きるのもラクじゃない!?苦難をものともせず、己の道をひた走る彼らをつき動かした、熱情とは?十代のキミへ。
特集「〈劇場〉の現在形ー「拡張」と「拡散」の間で」に対して3つの視点から渡邊守章、きたまり、宮沢章夫、黒瀬陽平、蔭山陽太、三浦基らが発言。他にアジアにおける演劇教育(平井愛子)をはじめ論考多数を収載。
神の似姿の表現を冒涜として禁じたイスラム教は、神の「みわざ」をこの世で表現するものとして、精妙な幾何学模様を選びとった。平面をシンメトリカルに分割し、複雑に織りなすデザインを作り出すことで、無限や森羅万象のゆるぎない中心という概念を豊かに作り出したのだ。そのあまりの複雑さにめまいするイスラムの幾何学模様だが、著者はいくつかの幾何学的原則を知っていれば、だれもがやすやすと描けることを明らかにする。
現代における美術の役割と意味ーー。美術作家、創造者となるには何が必要か!若い学生たちに人気の美術批評家が「現在」美術をどう生きるか?を問いかける。
ポスト・パンデミックの時代に
第一章 前提
一 本書の成り立ち
二 履歴書
三 私の研究/批評方法
第二章 覚悟
一 創造者の決意
(時空の超克/作品の本質と制作の根源。誰の為の制作、自分とは。/魔術と狂気/現代芸術の始まり/決意する/自己紹介の大切さ)
二 創造者の社会的役割と場所
(今と過去を知る。自己と他者を知る。/学問としての社会的地位/分類できない全ての事項/芸術の種類/職業としての社会的地位/価値の変動/財産/芸術、デザイン、広告の違い)
三 遮二無二制作する
(人が絵を描き、言葉を綴る理由/作品の内容=思想と技術/制作の欲求/制作の動機/自己の作品の「思想」を探る/言葉を綴ること/芸術の方法と学問について)
第三章 制作
一 優れた作品とは?
二 作品発表
(美術館の展覧会と展評/画廊/劇場、ダンススペース、クラシックホール)
三 今日に活動する創造者達
第四章 知る/学ぶ
一 現代を知る
(新世界秩序/新自由主義/新右派連合/悲観的な社会観/反共産主義/反「戦後民主主義」/「『改革』のレトリック」/「新世界秩序」と「新右派連合」まとめ/今道友信/佐伯啓思/オルテガ・イ・ガセット)
二 近代を知る
(近代の思想と技術と近代国家/近代の問題/相対性理論/相対性理論の芸術ー近藤樹里×近藤孝義/パウル・クレー/戦争とは何か/『地霊よ何処へ。』/リングアート/高橋眞司(未)/芸術と科学)
三 学ぶことの意義
(読書/E・カッシーラ/歴史を読む)
第五章 活動
一 発表することの意義
二 生活と制作
三 コラボレーションの不可能と可能性
(及川廣信とヒグマ春夫/現代芸術の死)
おわりに
フランス人画家ドニが旅した百年前のイタリアーー。
昔日と変わらない歴史的遺構を残しながらも再開発の波が街を少しずつ変化させ、ファシズム運動が不穏な高まりをみせていた百年前のイタリア。フランス人画家ドニはシチリア、ローマ、シエナ、フィレンツェ、ヴェネツィア、パドヴァ各地をめぐり、その旅を記録する中で、みずからの生きる時代の美術のゆくえを見定めていった。
刊行によせて 小佐野重利 5
シチリア島 一九二一年 19
ローマ 一九二一年 43
シエナとフィレンツエ 一九二一年 61
ヴェネツィアとパドヴァ 一九二二年 85
ローマ 一九二八〜一九三一年 111
フィレンツェ 一九三一年 147
芸術の中に生きる聖フランチェスコの精神 181
宗教美術における主題の重要性について 《エマオの晩餐》をめぐる論争 215
訳者あとがき 福島勲 255
人名索引 I
事項索引 V
図版一覧 VIII
平和学習への導入のための材料として、文学や芸術を提案します。平和を考えるための本の紹介や、芸術作品の創作、鑑賞、また音楽などを通して平和を考えてみよう。
絵画、彫刻、文学、建築などの作品においても、理論や批評の言説においても、多面的かつ国際的な拡がりをもつキュビスム。「幾何学」的表現の誕生・深化から、二度の世界大戦を経て、歴史的評価の確立へと至る曲折に満ちた展開を、美術と〈現実〉との関係を軸に描ききる。
序 章
第1部 幾何学による解剖・解体と「概念の現実」の誕生
第1章 キュビスムをめぐる言説
-レアリスムとの関係からの考察ー
1 プロト・キュビスムから分析的キュビスムまで
2 幾何学をめぐる言説と「概念の現実」
3 キュビスム以前の「現実」への問い
第2章 現実の解剖、解体
-分析的キュビスムへの展開ー
1 美術解剖学における図式と抽象
2 ピカソと美術解剖学ーー解剖学から「概念の現実」へ
3 ピュトー・グループにおける様式的展開
4 キュビスム作品における女性身体像
第1部結論
第2部 キュビスムの文法と詩学
第3章 芸術と詩的アナロジー
-総合的キュビスムの文法ー
1 二次元と三次元の対話
2 形態的なアナロジーから詩的なアナロジーへ
3 「キュビスム文学」と挿絵本
第4章 機械の詩学
-身体のメカニズムの探求からメカニックな身体へー
1 レジェとグリスにおける生物と無生物のアナロジー
2 デュシャン兄弟、クプカ、ピカビアにおける身体表現
3 ヴォーティシズムにおける「現実」と機械のイメージ
第2部結論
第3部 キュビスムと第一次世界大戦
第5章 前衛と前線
-大戦の「現実」と視覚芸術ー
1 前線の風景と従軍画家たち
2 前線の身体とキュビスム
第6章 古典主義とナショナリズム
-第一次世界大戦前後の芸術理論と実践ー
1 キュビスム理論におけるナショナリズムと第一次世界大戦
2 第一次世界大戦前後のピカソの古典主義
第3部結論
第4部 新たなる「秩序」へ向けて
第7章 秩序への回帰
-大戦間期の美術史モデルとかたちの「生命」-
1 キュビスムの歴史化と見出された「原理」
2 キュビスムの理論的な批判と普遍的な理論の追求
3 キュビスム以降の芸術における新たなる「現実」
第8章 キュビスムの形態学
-近代のユートピアと前衛芸術ー
1 キュビスム以降の芸術家たちと近代都市
2 ユートピアの創出、あるいはユートピアへの回帰
第4部結論
第5部 第二次世界大戦前後の政治社会とキュビスム
第9章 大戦の影と文化的地勢図
-展示・論争におけるキュビスムの位置づけー
1 1930年代のフランスにおける現代美術史研究と美術展示
2 レアリスム論争の背景と展開
3 第二次世界大戦下のキュビスム
第10章 キュビスムの生と死
-戦後の社会とフランス文化の復興ー
1 フランス文化の再建
2 サロン・デ・レアリテ・ヌーヴェル
第5部結論
終 章
1 見ることと知ることーー認識メカニズムの表現としてのキュビスム
2 理論と歴史ーーキュビスムと価値システムの構築
3 言葉とイメージーー諸現実の地層の再配置
あとがき
初出一覧
注
図版一覧
事項索引
人名索引
仏文要旨
仏文目次
19-20世紀転換期のウィーンで花開いた〈世紀末ウィーン〉と精神分析。価値観をゆるがす二つの文化が、近代化の進むこの中欧の都において同時に興ったのは、偶然ではない。
本書で俎上に載せられるのは、〈世紀末ウィーン〉を体現する芸術家の面々とその代表作である.クリムトの描く女性たちとヒステリーや神経衰弱の身体表象、分離派館(オルブリッヒ)とプルカースドルフ・サナトリウム(ホフマン)の白い建築と「近代生活からの避難所」、「芸術的な改良服」と「モードかスタイルか」の議論、造形における装飾(分離派)と無装飾(ロース)の論争とセクシュアリティ、ココシュカのアルマ人形と「投影」、クービンの夢と記憶「二次加工」--このように、芸術と精神医学の関係性が入念な資料読解のもとに跡づけられ、さらにその先へと考察がおしすすめられてゆく。
気鋭の美学研究者が、西洋美術史における〈モデルネ〉の分析に挑む、清新な世紀末ウィーン論。
転換期にはいつも、持たざる者の技術があらわれるーー
雑誌、マンガ、広告、テレビなど1970年代前後の複製文化を読みとき、
機知と抵抗の技術として今に甦らせる。
〈わるさ〉が語る、もうひとつの戦後日本文化史。
パロディ裁判、岡本太郎への疑問、ディスカバー・ジャパン論争、
コピーと芸術家のもつれあい、マンガと美術のすれちがい、石子順造の思想、
赤瀬川原平と器用人、そして「食人」の教え……。
美術と雑種的な視覚文化を混交させる展覧会を企画してきた
異色の学芸員による、ゆかいな複製文化論。
アウトかセーフかの呪縛からの解放のために。
すべての持たざる者たちのために。
硬直化した思考をときほぐす、笑える批評の登場!
不幸なる芸術
ファウルブックは存在しない(解題・不幸なる芸術)
1 コピー
コピーの何が怖いのか?
ゼログラフィック・ラヴ
ディスカバー、ディスカバー・ジャパン
すべては白昼夢のようにーー中平卓馬、エンツェンスベルガー、今野勉
植田正治にご用心ーー記念写真とは何か
2 パロディ
「パロディ、二重の声」のための口上
パロディ辞典(第二版)
未確認芸術形式パロディーーことのあらましと私見
オリジナリティと反復の満腹ーーパロディの時代としての一九七〇年代前後左右
二重の声を聞けーーいわゆるパロディ裁判から
パロディの定義、テクストの権利
3 キッチュ
「的世界」で考えたこと
石子順造小辞典
匿名の肉体にさわるにはーー石子順造的世界の手引き
石子順造的世界ーー脈打つ「ぶざまさ」を見据えて
石子順造と千円札裁判
「トリックス・アンド・ヴィジョン展ーー盗まれた眼」--一九六八年の交点と亀裂
4 悪
口上 歌が生まれるとき(祈祷師たちのマテリアリズム)
「岡本」と「タロー」は手をつなぐか
俗悪の栄えーー漫画と美術の微妙な関係
岡本太郎の《夜明け》と《森の掟》についての覚え書き
リキッド・キッドの超能力ーー篠原有司男(ギュウちゃん)の音声と修辞学
目が泳ぐーーいわさきちひろの絵で起こっていること
(有)赤瀬川原平概要
神農の教え
あとがき
原著『Understanding the value of arts & culture 』 The AHRC cultural value project
「なぜ芸術文化は必要なのか」「芸術文化がもたらす効果はどのように捉えられるのか」という問いに取り組んだイギリスの政府機関AHRC(芸術・人文学研究会議)〈文化的価値プロジェクト〉報告書(2018)の邦訳である。この研究は、実証的・科学的研究を扱っていながら、歴史的・哲学的に深い洞察に満ちており、国際的な反響を呼んだ。本書はブラジル、チェコ版に続く邦訳。
本書の試みの主要目標の第一は「文化的価値を形づくるさまざまな構成要素を明らかにすること」。そして第二にはこれらの「要素を評価するために用いる方法論とそのエビデンスを検討し、新たな方法論を開発する」というもの。特に「個人の内省」(自分自身や自分の人生についての理解を深めること、他者に対する共感を高めること、人間の経験や文化の多様性を理解すること等)と「変化の状況の生成」(コミュニティ・社会・経済レベルへの波及)に焦点があてられ、「体験」「生態系」「方法論」の3点をつないで、芸術文化の価値を包括的に論じる。
経済的インパクト、客観的エビデンス、学際的な戦略的研究を網羅、日本の旧来の研究と一線を画す研究者必読の成果である。
第1章 文化的価値論争の用語の再考
従来の文化の価値の議論は、参加者の体験やその効果を十分に考慮せず、いくつかの重要な有用性を見過ごしていた。
第2章 横断的テーマ
ポピュラー文化と高尚文化の区別がますます曖昧になり、場所や方法が多様化している。
第3章 個人の内省
文化的価値において鍵となるのは、芸術文化体験が個人に内省を促す力である。
第4章 市民的関与ー市民的主体性と市民活動への関与
芸術文化活動への参加が積極的な市民活動の促進につながるという主張について考える。
第5章 コミュニティ、再生、空間
創造産業、文化消費、クリエイティブ・クラス、コミュニティの間にある緊張関係を明らかにする。
第6章 経済ーインパクト、イノベーション、生態系
経済的インパクトは、芸術文化の推進者がその経済的重要性を主張する主要な手段となっている。
第7章 健康、老化、幸福感
長期の芸術文化活動への関与は、健康に実証可能な効果をもたらすのだろうか。
第8章 教育の中での芸術ー覚え書き
芸術教育が認知や行動の領域において、通常の教育より有意な効果を生むことが示されている。
第9章 方法論ー評価のエビデンス、データ、多様性
本書が参照する研究の多くに見られる高い研究水準は、 研究と評価の双方において規範とされなければならない。
おわりに
芸術文化の活動や関与は、経済や社会に多くの直接的、時には即時的な便益を生み出す。個人・社会・経済レベルでの実験やリスクをとる、個人・コミュニティ・社会の課題を安全で非直接的な方法で内省するなどの数多くの波及効果ももたらす。
レンブラント、フェルメール、ウォーホル、フリーダ……実証主義を超え、真実らしさを求めた映像が挑んだ、新たな芸術家の詩的真実に迫るスリリングな映画論。
文化・芸術と市場経済が出会ったとき、果たしてそこでは何が起こるのだろうか。市民の文化的生活の洗練化と芸術の堕落という結末が想定できるとしても、経済は本当に芸術を貶めることに繋がるのだろうかーーこの文化経済学の基本的で重要な問いをテーマに、経済学の基本的な考え方を振り返りながら、バロック期を起点にオペラ・バレエなどの芸術と経済が相補的な関係にあった歴史を辿る、文化経済学の魅力が詰まった講義録。
[目次]
はじめに
文化経済学講義録partI
文化経済学講義1 「バロック」という概念に関する予備的考察
文化経済学講義2 文化経済学の基本テーマと基本概念
文化経済学講義3 文化経済学のための市場理論と企業者論
文化経済学講義4 エジソンのフォノグラフと市場経済
文化経済学講義5 エジソンのフォノグラフと市場経済(2)
文化経済学講義録part2
文化経済学講義6 ルイ・ヴェロンの「パリ・オペラ座」改革とその顛末 その概要
文化経済学講義7 オペラの誕生についての考察
文化経済学講義8 王侯貴族とオペラ
文化経済学講義9 市民社会とオペラ
文化経済学講義10 ルイ・ヴェロンの経営戦略
文化経済学講義録part3
文化経済学講義11 オペラ《カルメン》の考察(1)
文化経済学講義12 オペラ《カルメン》の考察(2)
文化経済学講義13 文化企業者S.ディアギレフの仕事(1)ディアギレフのバレエ・リュスとは? その紹介、文化的インパクトについて
文化経済学講義14 文化企業者ディアギレフの仕事(2)具体的内容の紹介
文化経済学講義15 文化企業者ディアギレフの仕事(3)
1920年代から30年代、教育・哲学・芸術の専門家たちが連携し合う稀有な時代、世界を襲う大恐慌に生活物資が切り詰められるなか、教育哲学者デューイは、心を豊かにする芸術の必要を説く。
移動とアートの関係、模倣が創造に変わる節目とは?
ノーベル文学賞受賞者カズオ・イシグロ、V・S・ナイポールの作品世界に投錨し創造の航路をつぶさに描き出す。
創造と模倣の関係を幅広く問う論考。
アートは移動する。アーティストも移動する。
鑑賞者も移動する。
異文化の窓としての港、文学。
長崎でカズオ・イシグロ作品の記憶の残像に出会う。
作中人物たち、先行研究者たち、先行読者たちの記憶の残像。
空隙とためらい。
模倣とはまねること。あらゆる生活の場面に模倣はある。
模型、ミニチュア、根付、オブジェや絵画。
拡大、縮小、反復、翻案、転用、転換による創造。
オリジナルと複製芸術。パスティシュと「まがい物」。
イデアとミメーシス。ポストモダンと模倣社会。
画家・作家・音楽家を巡る映画から創造と模倣を見る。
レンブラント | フェルメール | ゴヤ | ターナー
マネとモリゾ | ルノワール | ゾラとセザンヌ | ロートレック
ジェイン・オースティン | ヴァージニア・ウルフ
パガニーニ | シーレとクリムト | ダリ
フリーダ・カーロとディエゴ・リヴェラ | 「THE FORGER」
ジャクソン・ポロック | カーウァイ三作。
V・S・ナイポール『模倣者たち』。
旧植民地の模倣と建国の創造、中心の発見。
弟シヴァ・ナイポールの模倣と創造。
イシグロ作品の成立の過程、そして創造。
第一章 アートと移動
第二章 イシグロのトポス
大阪から長崎へ、
そしてポストコロニアルへの旅
第三章 模倣から創造へ
第四章 創造への転換
画家・小説家・音楽家を巡る
映画を糸口に
第五章 創造と信頼
カズオ・イシグロの世界の成立
能動ー受動、主体ー客体という図式におさまらない芸術体験(作品の受容と制作)の内実を、「中動態」という言語の範疇を援用することで闡明した前著での議論を踏まえ、そこで残された課題、すなわち芸術という領域における他者との関わり、ひいては芸術制度の社会的成り立ちを考察。
ドイツ・ロマン派、芸術哲学研究の碩学ディーター・イェーニッヒ教授の最終講義。生命科学、哲学、芸術の間の関係を、種々の分野を越えて考察し、現代におよぶ、あるべき芸術のすがたを追求する。