精神医学的対応が混乱していた1980年代から性的マイノリティの心の問題に取り組んできた先駆者が、LGBTに対する正しい理解への道を切り開く一方で、性的問題行動に対する治療中心の対応の必要性を説く。30年余にわたりLGBTや性嗜好障碍者の内面の苦悩に向き合ってきた臨床家による多角的考察。
身近な例から性別による抑圧や問題性をつき、売買春、子育て、主婦優遇策などの難問をわかりやすくときほぐす。
「よりよい性の商品化を」「フェミニズムは女のものか」など、挑発的・根源的な発言で注目されている著者が、ジェンダー、セクシュアリティ、男性差別、子育て、主婦優遇政策について、楽しくわかりやすく縦横無尽に語りおろす。チビとダイエット、バストとハゲ、男女のおごりの力学、不倫・性道徳など身近なはっとする例をひいて性別による抑圧や問題性を突く。とくに、性の商品化については、この難問をタブー視せずに自由に議論しようと提唱。ポルノ、売買春、性労働、性犯罪にかかわる課題を一つ一つ明らかにしていく。単に禁止したり規制するだけでなく、多様な性の規範の共有を許すルールづくりを提言。
はしがき
1 お笑いジェンダー論
1 ジェンダーとはーー「男はこうだ、女はこうだ」
2 主婦はいつ生まれたのか
3 家事の男女比較と日本の地域差
4 ひどい「男性差別」--男女共同参画社会は男にとっても楽な社会だ
5 主婦という制度は曲がり角ーー配偶者控除は必要か
2 ジェンダー随笑録
1 メッセージ 男から
2 世間のからくり
3 子育ては愉快だ
4 男女共同参画社会時代のフェミニズム
3 セックスワーク論ーー売春は禁止できない
1 何を何のために論じるのか
2 非公然性の原則
3 性=人格
4 性差別批判
5 資本主義批判
6 近代社会の構造として
7 現場の問題・性犯罪
8 道徳主義的アプローチをこえて
9 自己決定を妨げるものーー強制と抵抗
10 自己決定が成立する条件
11 性の意味づけの変化
12 性的弱者
13 自己決定にもとづく棲み分けーー性規範による規制から手続きへ
14 われわれにできること
4 主婦保護撤廃論
脱・専業主婦時代の家族政策ーー家族の戦後体制を越えて
はじめにーー新しい政策のセットへ
1 家族の戦後体制と専業主婦保護
2 専業主婦の階層的位置
3 保護撤廃の方向性
4 高齢社会と新たなライフスタイル
主婦の階層的位置
1 比較における主婦の位置
2 日本における主婦の位置
3 主婦の保護をはずす方向へ
あとがき
文 献
初出一覧
本書では、トラウマとジェンダーが重なる問題として、対人的なトラウマ、それも親密な関係における長期反復的なトラウマであるドメスティック・バイオレンスや性暴力、児童虐待の事例を数多く取り上げ、議論しているが、これらは社会的にも対応に危急を要するテーマでもある。臨床にすぐ役立つ、ジェンダー・センシティブなアプローチの要点を提示し、さらに、臨床現場にトラウマとジェンダーの視点をとり入れることで、具体的にクライエントの何を見、どのような働きかけをし、どんなことに気を配るかを事例検討で明らかにしている。
骨折りや苦心が適度に分担され、同僚や家族に認められ、順当に報われること、そして労働の場と生活の糧が保障されること。人間が生きていくうえで欠くことのできないこれらの課題を、社会科学の観点から追究し、学問と暮らしが接する面を広げ、ジェンダー・バイアスのない新たな承認と包摂のあり方をめざす、経済学、社会政策、労働法学、社会学、政治学の試み。
暴力・国家・ジェンダーのいくつかにフックをかけ、ルソー、アダム・スミス、J.S.ミル、ケインズというイギリス政治経済学の泰斗、19世紀ロシアのチェルヌイシェフスキー、バークとモーゲンソー、アガンベンを読み解く。暴力のコントロールや平和構築、生のあり方に迫る思想史・現代思想研究を核にして、神奈川県相模原市における女性の公民館活動を追った現代日本政治史研究、現代フランス政治に執政制度論から接近し、ポピュリズムの制度的背景を探る比較政治研究を加えた論稿集。グローバル化が進み、暴力への恐れが市民社会とデモクラシーに打撃を与え、不寛容がおおう世界を考え、生き抜くために立ち返るべき思想と実践に迫る。
第1章 ルソー的視座から見た1792年8月10日の革命 -国王の拒否権と民衆の直接行動をめぐってー
第2章 チェルヌィシェフスキーと小説『何をなすべきか』 -「革命的民主主義者」の女性論ー
第3章 アダム・スミス,J.S.ミル,J.M.ケインズにおける人間の幸福論と国家論 -イギリスの政治経済学説と国家ー
第4章 エドマンド・バークを読むモーゲンソー
第5章 アガンベンにおける国家
第6章 選挙の同期化による「コアビタシオン」回避と第五共和制 -半大統領制とデモクラシーー
第7章 相模原市県立高校設置促進運動にみる一断面 -婦人学習グループと河津市政の連携ー
拡張的変革を続けるジェンダー・スタディーズ!フェミニズムと女性学をふくむ多領域の学を、50のキーコンセプトで読み解く。
二元的なジェンダー制度をもつ主流文化に対抗するクィア芸術家ボーンスタインの精神と肉体の履歴。
ジェンダー二元論の規範の中で、“女”や“男”の身体はどのように生き、抵抗してきただろうか。生物学的宿命論もバトラー流の幻想論も拒否して“女”の身体にこだわる。
女性は古来、その身体性、また、身分や階層などに由来する多元的な差別の対象とされ、社会進出を阻まれてきた。歴史的に構築された強固な「壁」は、今日もなおあらゆる分野に屹立し、男女共同参画社会の形成を阻害している。その「壁」の本質を法学、政治学、経済学、社会学、行政学などの視点から検証し、「壁」を超えてジェンダー平等を実現するための課題と処方箋を示す。
かっこよく見える事柄の裏を読んでみよう。ファッション、テレビドラマ、恋愛、結婚…この世は、ジェンダーという“お約束”で成り立っている。
産む/産まないを決める“エコノミー”とは何か?中・韓・日の調査によるジェンダー分析。新自由主義化する東アジアの経済とジェンダー意識の変化を実証経済学の視点から数量的に調査し、加速する少子化の新たなる背景を読み解く。
生殖技術や終末期医療の進展により、身体の自己決定の重要性が増している。しかし今日、その多くは、個人の決断を超えた、患者と医者、家族と本人を取り巻く複雑な社会関係・権力関係のなかで行われる。自己決定にかかわる現場の論理を、著者が行ったインタビューの結果も交えながら、ジェンダーの視点から丁寧に掘り下げる。
刑事司法は性暴力加害者をどのように扱ってきたのか。連続レイプ事件加害者への長期間にわたる接見や往復書簡、裁判分析等により、性暴力加害者の経験に肉薄。強姦加害者の責任を問う法のあり方をジェンダーの視点から検証し、性暴力加害者の責任を問う法のあり方を提言する。
女性は生まれつき異常という先入観。男性より数学能力に劣り,月経前症候群という病人にされ,更年期には女でなくなる。「科学」の名のもとに定説とされ、社会的な女性の不平等を招いた神話の数々。フェミニストとして、科学者として、それら性差研究にひそむ偏見と誤謬を冷静に指摘し、混沌に満ちた性差の科学に新たな指摘を提示する。
現代産業社会の要請する男らしさ・女らしさ、日本文化固有の「男」「女」の世界、そして諸個人の人間としての個性。この複相的な様態は、現在どのように編制され、かつての歴史の中での「男・女」と、どのように同質でかつ違っているのだろうか。複雑で多様なジェンダー研究に心的世界からせまり、実際生活と学問的認識のありかたに重大な再考をうながす。