言語能力の発達とは、人のこころの発達にほかならない。人は「ことば」に支えられて自己の世界を築き上げ、開かれた世界を知り、他者とのかかわりのなかで自己を確立していく。そして、他者とのかかわりは人間の文化の根本であり、そこで生きようとしてはじめて、私たちは物事を理解し「学ぶ」ことができる──。
どうすれば日本人に英語が「身につく」のか。母語の豊かな使い手となり、第二言語として英語を学ぶことの真の価値とは何か。バイリテラシー・第二言語習得を専門とする言語学者であり、日本・アメリカ・カナダ・オーストラリアで数多くのリテラシー教育プログラム開発に携わってきた著者による著述・講義録を全3章に再編。本書を通して語られる「ことば」と「学び」の本質が、いま求められる教育のかたちを明らかにする。
本書の第1章では、人間が言語を習得するための条件が、「前言語コミュニケーション」や「本物性」といった概念をもとに整理されている。また、「実践」を行う「共同体」に参加し、そこで生きていこうとする意志が、人間の「学び」にとって重要な意味をもつことが語られる。そして明らかになるのは、「ことば」は外界と闘って「獲得する」ものではなく、人と人とが共通世界をつくる共同行為としての「ことばの前のことば」から「生まれる」ものである、ということだ。
また、第2章では、日本人が想定すべき英語を使う能力に関しても、学校英語の変遷、「第二言語」の性質、言語を通して形成される知性、といった観点から光が当てられる。私たちは、母語を学ぶように「地球語としての英語」を学び、それを駆使することで、世界とコミュニケーションを行い、より深い意味の世界を生きてゆけるのである。そのためには、英語を通して「知を創造」する経験を、世界の人びとと共有しようと私たち自身が試みていかねばならない。
最終章では、「教養」が瓦解し、「知識」が体系性を失った現代社会において、「学び」が成立するために必要とされるものは何か、という問いが主題となる。すでに近代化型教育は終焉を迎え、子どもたちは大人の眼差しをかいくぐり、「他者」として歩みはじめているという指摘の重要性は、時を経ても失われるものではない。常に問い直されるべきは、教師や大人の抱く「モノローグ」的な教育観の閉鎖性と、私たち自身の価値観であろう。「学び」の成立する要件である、「出会い」と「対話(ダイヤローグ)」による学びの場と、共に追究し、学びあう関係の創出こそが、現代の教育に求められるものである。
本書は、グローバル教育研究会イーグルによる記念誌『新言語教育学』(2013年)を底本として制作された。刊行委員一同、本書が教育活動・社会活動に日々携わる諸氏の手元へと広く行き届き、その実践の一助となることを願ってやまない。
(『ことばが世界をひらく』刊行委員会)
言葉はなぜかわるのか。人間活動の所産であることはもちろんだが、巨視的にみれば、自然環境が重要である。なぜなら、気候の変動によって民族移動が起こり、それが言葉の変化をもたらし、ひいては現在の世界の言語分布にいたっているからだ。本書は、地理学の碩学が言語年代学の成果をふまえながら、気候と言語のダイナミックな関連性を一万年の人類史の中で実証するという野心的試みである。
例えば、日本語では「生」の意味として「黒」、韓国語では「青」が用いられる。日本=「目の黒いうち」/韓国=「目が真っ青に生きている」…近くて遠い、日本と韓国。物事の捉え方、生活・文化の違いをことばから探ってみる。
本書では、いかに人間が自由自在に世界を“カット&ペースト”しているか、また自由自在とはいいながら、背後にどれほどしっかりとした規則性があるかということを、人間の最も身近な身体から身の回りの空間、そしてその空間に位置するモノの切り分け方にしぼって、検証した。
小学校での英語教育導入や企業の英語公用語化の動きに代表されるように、国際語としての英語への関心や必要性はますます高まっている。本書は英語を中心とした外国語の学習と使用を題材に、言語心理学にまつわる概念や現象を解説し、二つの言語を使うこと、つまりバイリンガリズムについて考えながら、言語と認知の関係を解き明かす。
はじめに
序 章 バイリンガリズムと現代
1 国際化とバイリンガリズム
2 バイリンガルとは何か
3 本書の目的
第一章 日本と世界の二言語・多言語使用事情
1 多言語化する日本社会
2 二言語・多言語使用の国や地域
3 国際語としての英語
4 日本人の英語能力
第二章 バイリンガリズム、第二言語の認知的メカニズム
1 言語処理の仕組み
2 バイリンガルの言語処理プロセス
3 言語知識はどのように記憶されているのか──メンタル・レキシコンの話
4 バイリンガル・レキシコン・モデル
第三章 一つの言語を使っているとき、もう一つの言語プロセスは停止しているのか
1 バイリンガル・ストループ実験と視線計測実験
2 使っていない言語の制御
第四章 外国語副作用──認知資源の配分と外国語使用
1 認知システムとしての脳と記憶の仕組み
2 認知資源とは
3 L2言語処理と認知資源
4 第二言語の方が合理的な判断ができる?
第五章 脳機能から見たバイリンガルの言語処理
1 「脳の構造と機能」概論
2 脳機能から見る言語
3 FOXP2遺伝子
4 モノリンガルとバイリンガルの脳機能の違い
第六章 なぜ外国語を身につけるのは難しいのか──言語の臨界期と外国語習得
1 言語の臨界期
2 発音の臨界期と赤ちゃんの音声知覚能力の発達
3 母語と外国語の関係─対照分析仮説
第七章 外国語を話すと人が変わる?
1 虹の色は何色か──使う言語によってものの見方が変わる?
2 言語相対論とは──サピア=ウォーフ仮説
3 カテゴリー知覚
4 絶対方位感覚をもつ言語
5 文法的性(ジェンダー)
6 バイリンガルの場合
第八章 バイリンガルは頭がいい?
1 バイリンガルと知的能力
2 バイリンガルの優位性
3 バイリンガルに負の効果はないのか
4 小学校英語はプラスかマイナスか
おわりに
参考文献
外国語教育研究者に贈る知的興奮!バフチンの衝撃!!
第一部 初期論考、エッセイ集
第二部 『ことばと文化』以降の研究と足跡
ボアス以来の人類学、パースからヤコブソンへと展開してきた記号論を融合した社会記号論系言語人類学。「知」が断片と化したこの時代、ことばと社会、文化、歴史の学として体系性と包括性、全体性を求める、その反時代的な営みの可能性を明らかにする。
赤ちゃん語とサル語の百科全書。人間だけしか話さないと思われていた言葉を実はサルも話していることがわかった。
言語人類学の視座から第二言語教育の根幹ともいえる「言語とは何か」「能力とは何か」「学習とは何か」などといった問いに取り組み、それが第二言語教育の研究にいかなる理論的・実践的示唆をもたらし得るのかを明らかにする。
■「序論」より
本書は、第二言語の教育と学習を、コンテクストに根ざした言語使用(language use)という社会的実践として理解する新たな理論的視座──社会記号論系言語人類学を基盤とする「コミュニケーション論」──を提示し、その意義と可能性を示すことによって、第二言語の教育・学習に関する研究の新たな道筋を示すことを目的とするものである。本書の出発点には、近年の日本語教育研究に対する問題意識がある。したがって、本書における議論の多くは、第二言語としての日本語の教育・学習に関する問題を中心に展開されている。しかし、本書のねらいは、日本語という個別言語の教育・学習の問題にとどまるものではない。むしろ、そうした具体的な検討を通して、人が言語を教える/学ぶとはいかなることであるかを再考し、それを適切に理解するための新たな視点を提示することにある。
言語聴覚士のための音響学テキストの決定版!
●「音響学」「聴覚心理学」の基礎知識を、図表を用いてわかりやすく解説。
●サンプル音を提供し、視覚的理解に加えて聴覚的側面からも学習をサポート。
●章の概要、学習のねらい、確認チェックなどを設け、全体像を理解でき、能動的に学べる構成とした。
●言語聴覚士国家試験出題基準に対応。
【目次】
第1章 音の物理
第2章 純音と複合音
第3章 スペクトル
第4章 音声生成のための音響学基礎
第5章 音声生成における音源とフィルタ
第6章 音声のデジタル信号処理
第7章 日本語音声の音響特性1:分節的特徴
第8章 日本語音声の音響特性2:超分節的特徴
第9章 聴覚の構造と機能
第10章 聴覚フィルタとマスキング
第11章 音の大きさ
第12章 音の高さ
第13章 聴覚による環境理解
第14章 音声の知覚と認知
言語聴覚療法に必要な心理学的知識を1冊に!
●「認知・学習心理学」「心理測定法」「臨床心理学」「生涯発達心理学」を1冊にまとめ、言語聴覚士養成課程で学ぶべき心理学的知識を体系的に整理したテキスト。
●章の概要、学習のねらい、確認チェックなどを設け、全体像を理解でき、能動的に学べる構成とした。
●言語聴覚士学校養成所指定規則「心の働き」に対応。
●新しい診断基準であるDSM-5-TRに準拠。
【目次】
序章 心理学と言語聴覚学
第1章 認知・学習心理学
第2章 心理測定法
第3章 臨床心理学
第4章 生涯発達心理学
言語聴覚士の専門科目をはじめて学ぶ人のために!
●言語聴覚士がどのような専門職なのか、何が求められるのかといった基本的理解と、言語聴覚士に求められる基礎知識をわかりやすく簡潔にまとめた。
●言語聴覚士が関わる障害の種類と特徴、ライフステージに応じた臨床のポイントを解説し、障害を系統的に理解し、患者像をイメージできるよう解説。
●言語聴覚士国家試験出題基準に準拠。
【目次】
第1章 言語聴覚士とは
第2章 ことばの機能
第3章 ことばときこえのメカニズム
第4章 言語聴覚障害の評価・診断と介入
第5章 言語聴覚障害の種類
「学習・言語心理学」は,「学習心理学」と「言語心理学」の2つを併せた科目である。本書では,学習と言語に関する認知心理学の重要な事項を幅広く取り上げ,専門家養成のための専門科目としての内容と水準をもつようにし,最新の研究成果も含めた。「学習心理学」と「言語心理学」を統合的に捉えた最良のテキスト。
第1章 学習・言語心理学とは
楠見 孝
第2章 学習の基礎
嶋崎恒雄
第3章 技能学習と熟達化
楠見 孝
第4章 社会的学習
渡辺弥生
第5章 問題解決と学習の転移
鈴木宏昭
第6章 動機づけ
後藤崇志
第7章 言語の習得
小林春美
第8章 非言語的・前言語的コミュニケーション
西尾 新
第9章 言語使用と知識
久野雅樹
第10章 言語理解と産出
猪原敬介
第11章 言語と推論
服部雅史
第12章 言語,思考,文化
今井むつみ
言語聴覚士を目指す学生のための新しいテキスト
●口腔・顎・顔面の形態、機能を理解しながら、各部位の疾患についても学べるように多くの図表を収載。
●口腔に現れる症状・障害の特徴を理解し、歯科医学的な治療の概念、対応法を学ぶことができ、言語聴覚士の臨床にも有用な1冊。
●令和5年4月版の「言語聴覚士国家試験出題基準」に準拠し、中枢性疾患による口腔機能障害、加齢による口腔機能障害の章も設けた。
【目次】
序章 歯科概論
第1章 歯・口腔・顎・顔面の構造
第2章 歯・口腔・顎・顔面の機能
第3章 歯・口腔・顎・顔面の診察法
第4章 歯・歯周組織の疾患および歯科医学的処置
第5章 口腔・顎・顔面の疾患および歯科医学的処置
第6章 口腔ケア
第7章 口腔機能障害に対する歯科医学的対応
第8章 口腔機能発達不全症に対する歯科医学的対応
第9章 中枢性疾患(神経・筋疾患を含む)による口腔機能障害と歯科医学的対応
第10章 加齢による口腔機能障害と歯科医学的対応