現代中国語はSVO言語でありながら前置詞句が述語に前置される。この状況は世界の言語にほとんど類例を見ないという。本書はこの語順の謎に言語類型論の視点から挑んだ。
諸言語のアスペクト現象が通時的経糸のどこに位置し、共時的横糸においていかなる平衡状態を示しているか、また動詞の語彙的意味との相関性、テンス・タクシスとの関わりなどを詳細に分析する。本書によるアスペクト・カテゴリーの基本枠組み、緻密な考察は、アスペクト研究の流れを決定づけたと言われる。1984年の発表以来、現在まで、多くの論者によって引用されてきた現代アスペクト研究史における金字塔の全訳。
まえがき
第1章 アスペクト論の基本概念
A. アスペクトとアスペクチュアリティの一般的な意味的定義ーアスペクト、テンス、タクシス(таксис – taxis)
B. アスペクトとその他のアスペクチュアリティの諸要素との区別ーアスペクト、アスペクチュアリティ・クラス(аспектуальные классы)とその下位クラス
C. いくつかのアスペクト対立について
D. パーフェクトの意味とその進化
第2章 スラヴ諸語における完了体/不完了体カテゴリー
第1節 現代ロシア標準語におけるアスペクトと動詞の語彙的意味
第2節 アスペクト・パラダイムにおける機能面での完全性と形態的規則性
第3節 個別的なアスペクト意味と完了体と不完了体の対立のタイプ
A. アスペクトにおける反義性とアスペクトの中心的意味
B. アスペクトにおける同義性と周辺的なアスペクト意味
C. アスペクト対立の中立化
第4節 完了体/不完了体の意味を担うアスペクト語幹
第5節 ブルガリア語アスペクト・テンス・システムにおける特質
第6節 完了体/不完了体カテゴリーの発生
第3章 スラヴ諸語におけるインパーフェクトとアオリスト
第1節 古代ロシア文章語におけるperfective インパーフェクト
A. 複数回perfective意味(кратно-перфективное зн)
B. モーダルな意味
C. 見せかけの場合
D. 結論
第2節 現代ブルガリア語におけるアオリストとインパーフェクト
A. 完了体アオリストと不完了体インパーフェクト
B. 不完了体アオリスト
C. 完了体インパーフェクト
D. 結論
第3節 語りのテクスト構造とスラヴ語動詞の過去時制体系の類型論
A. 文学作品の語りにおけるテンス・アスペクト構造
B. スラヴ諸語の過去時制体系と語りにおけるその機能の3タイプ
第4章 非スラヴ諸語のアスペクト論と対照言語学的アスペクト論の諸問題
第1節 ゴート語の動詞が表す動作の限界性/非限界性カテゴリー
第2節 所有パーフェクトの起源について
第3節 ゲルマン諸語、ロマンス諸語、スラヴ諸語の単純過去形消失に向けて
マスロフ著『アスペクト論』によせて
参考文献
日本語文献
事項索引
言語索引
名詞句の分布と移動の性質に説明を与えるラベル付け理論と種々の局所性を統一的に捉えるフェイズ理論は、極小主義統語論の中核をなす。本書は、この2つの下位理論を背景とともに概説した上で、日英語の相違をも説明しうる形に発展させることを試みる。特に、自由語順、多重主語、多様な名詞修飾節、項省略、広範な適正束縛効果など、日本語に特徴的な現象を取り上げて、極小主義アプローチに基づく分析を提示する。
第1章 序
第2章 句構造とX'理論
第3章 名詞句の分布と移動現象
第4章 Chomskyのラベル付け理論
第5章 日本語における{XP, YP}構造のラベル付け
第6章 ラベル付けによる日本語分析の帰結と課題
第7章 フェイズ理論と局所性
第8章 フェイズの定義再考
第9章 日本語の分析に対する帰結
第10章 結論
本書は、私たちがコミュニケーションを行う背景にはどんな仕組みがあるのかという問いについて、一緒に考えていくために書かれたものである。
言語表現を用いる時、その表す意味が何であるかは、他の表現との関係や、その表現から推論を経て示唆される意図、その使用される場面や状況との関連性など様々な要因が絡み合って決定される。本書は言語使用における意味を中心に、意味論、語用論、構文文法、認知文法、言語人類学、社会言語学といった多岐にわたる分野の研究の流れを概観し、その最新の発展についての知見を得ることのできる、コンパクトに濃縮された一冊である。
形態論の研究史と現代の多様な形態理論を概観し、言語学における各形態論研究の位置を確認した後、英語と日本語で具体的トピックを解説する。英語では名詞化における、動名詞、事象的派生名詞、指示的派生名詞の機能的な区分と各種形態との間の対応づけを議論する。日本語では、屈折、派生、動詞活用、各品詞の複合語、並列表現、擬音語・擬態語について、問題点を整理する。さらに項構造、語彙概念構造、生成語彙論も扱う。
本書は、言語学の全分野に目を配った、小粒ながらもup-to-dateな知見を盛り込んだテキストであり、間違いなく、第一級の言語学入門書である。同時に、平明な英語で書かれ、例証される項目や例文も、ほとんどが英語から採られているという意味で、英語学概論の教科書としても格好のものとなっている。
言語研究の最前線において英語の統語分析に主要な関心が向けられていた一時期の後、最近10年間は、広範な諸言語からのデータを使った言語類型論および言語普遍性の諸問題に対する関心が著しく増大した。この枠組みの中で非常に多くの研究がなされてきたにもかかわらず、今日まで、言語学の学生のためにこのアプローチの主要な特徴を総合的に扱おうとした一般的な概説書はなかった。そのため、まったくの初歩の段階から、個別のテーマに関して論文の形で専門家の書いた文献を見るしかなかったのである。そこで、本書の目的は、この隔たりを埋め、上級の大学生および大学院生に対して、言語類型論および言語普遍性に対する現在の主要なアプローチの概観を、この方法による成果を例証(および一部の危険性に関して警告も)しながら、与えようとすることにある。