本書では、個人の「生殖的な役割と社会的な役割との間にある絆が弱まってきているにも関わらず」両性の差異が発生・持続し、両性の行動に作用する現実を問題とし、この現実へ、個人の生得的な生物的事実を考慮しつつ、個人が生活していく社会的な文脈を重視し、ジェンダーからのアプローチを試みている。
「生まれる」から「死ぬ」までの身近なできごとを問いなおし、そこにひそむ「性差」の圧力を浮かび上がらせる。ジェンダーの視点による斬新な社会学のテクスト。
日本の近代は両性関係についてどんな社会を創り出したのか!「一夫一婦制」の帰趨に焦点を合わせて、皇室典範・刑法・民法の成立過程と公娼制の再編過程を追究し、同時に新聞投書欄に男女関係の理念と現実、その変貌を見るー近代社会論に新しい境地を拓く労作。
本書は、シンポジウムを出発点とし、民主教育研究所・両性の平等委員会との共同討議をした後、ジェンダーと教育グループの数回にわたる検討の上で作成したものです。
アジア諸国での経済発展による社会の大きな変動をジェンダーの視点で捉える論文集。
男女の生物学的性を1つの社会的位置として考えた場合、その位置に付随した社会的役割がジェンダー(gender)である。本書は、ジェンダーと個人の関係について考えたもので、中でも、個人がジェンダーに関して社会化されることによって、その個人の自己概念がどのように規定され、また、ジェンダーに関する自己概念は、役割達成感、役割行動に、どのように機能するのかに的を絞った。
権力はいかに言説のかたちをとって身体・精神・欲望を形成するのか。女と男の弁別が身体の自然に根ざすとする本質論的前提を根底的にくつがえしセクシュアリティ研究の方向を決定づけるフェミニズム・現代思想の最重要書。
変貌する地域社会における新たな家族と「家」文化の現在。
仏教はもともと性差別が根強いといわれる。しかし、人間としての目覚めを説いた釈尊の教えは、性差別を肯定しているのだろうか。また日本仏教の祖師たちは、どう説いたのか。女性仏教者の視点から性差別の現状を見つめ、仏教の再生へ向けてそのあり方を論じる。
神々の手によって毎年、性転換が行なわれるトバー入江。人々は20歳で『最終性選択』を行なうまでに、どちらの性を選ぶか決めるのだ。今年、少年フリンは選択を前に悩んでいた。男か、女か?そして『最終性選択』前夜、彼の前に現われた謎の他所者は、男でも女でもない『中性』だった!入江には騒動が巻き起こり、フリンは彼の運命を大きく変える冒険に乗りだすことになる。俊英のユニークな発想が冴えわたる傑作SF。
年に一度の『最終性選択』前夜、入江に現われた『中性』は、昔この地を追放された人物だった。この帰還が入江にひきおこした動揺は、ついに殺人へと発展する。他所者とともに犯人の調査を進めるうち、フリンは自らの信念を揺るがすような問いに直面することになる。神々とはいったい何者なのか?答を求めて『最終性選択』の神殿にむかった彼を待ちうけていたのはあまりにも衝撃的な事件だった…謎と波瀾の冒険SF。
現代人の心を侵すコミュニケーション不信/渇望症の原因を、自我の深部に存在するジェンダーに求め、ハーバーマスとフェミニズムを融合させることでその枠組みを根底から解体しようと試みる。隣人を理解するための実践的社会理論。
はじめに
プロローグ
第1章 現代システム社会のコミュニケーション
1 コミュニケーションと近代社会
2 コミュニケーションの社会構築力
3 コミュニケーションと欲望
第2章 ジェンダー・フリーのポリティクス
1 ジェンダーの周囲
2 ジェンダー・アイデンティティ
3 ジェンダー・フリーの公理
第3章 主体の発生論
1 フロイトの主体発生論
2 ウィニコットの「心理的実体としての母親──乳児」
3 ベンジャミンの「主体としての母親」
4 チョドローと「母親の欲望」
第4章 主体化の力学
1 主体化の力場
2 主体化の力場としてのコミュニケーション
3 近代のファルス
第5章 セクシュアリティの解放
1 解放の思想としての近代
2 セクシュアリティ解放のプロジェクト
3 フーコーの〈ビオ・ポリティック〉
4 ギデンズの〈ライフ・ポリティクス〉
5 「セクシュアリティ」を超えて
第6章 フェミニズムと女性解放
1 女性解放のプロジェクト
2 女性解放のパラダイム
3 女性解放のダイナミズム
4 新たなプロジェクトの創出に向けて
第7章 フェミニズムとポストモダニズム
1 ポストモダン・フェミニズムの近代批判
2 ポストモダン・フェミニズム論争
3 合理主義と相対主義
4 近代の内と外の狭間で
第8章 ポスト・ジェンダー社会のコミュニケーション
1 自由
2 相互理解
3 愛というコミュニケーション──愛の社会理論構築へ向けて
エピローグ
おわりに
参考文献
本書は、一般教育の講義「ジェンダー論」のテキストブックとして編集したものである。これまで編者らの大学で女性学を担当してもらった人を中心に、個別のテーマ・問題について、どんな議論が展開され、どんな論点が深められなければならないかを書いてもらった。さまざまなテーマを私たちの日常生活にそくしてできるだけ具体的に考えることができるように心がけた。
女はやさしく、男は強い。このような男女差に対する意識はなぜ生まれ、どのようにして人びとの心のなかに定着するのか。人はいったん思いこむと、それに従って人を観察したり、ふさわしいようにふるまったりする。その思いこみ-ステレオタイプをキーワードに、法や制度を整えても、なぜ伝統的な性別分業社会は、人びとの意識の上からなくならないのかを、社会心理学の立場からときあかす。
性同一性障害者の性転換手術やセクハラをはじめセクシュアリティに関するさまざまな事柄が、これからの社会問題としてさらに深く問い直されている。本書は、アンドロジニー概念およびその測定尺度BSRIの提唱者であり、ジェンダーの心理学的研究の指導的理論家である著者が、人間社会の過去そして将来におけるジェンダーのありようをジェンダー・フリー社会の構築をその基に据え考察する。人間の認知のあり方のなかに潜む問題性を、その機能である「生物学至上主義」「男性中心主義」「ジェンダー両極化」の3つの“レンズ”として指摘し、個人がいかにジェンダー化されていくのかについて“文化化されたレンズ”理論へと展開していくとともに、現実的・実践的な問題にも言及していく。全米出版社協会による1993年度心理学部門the Best New Bookの栄誉に輝く書の訳出。
本書の焦点は、セックスと政治経済の特定の関係、つまり、労働における性的分業である。それは社会の中で、性を基準としてどのように仕事が割り振られるかということである。性的分業は、単に仕事の区分だけではなく、男女に与えられる価値、地位、権力の差異でもある。それは経済的な分類であり、政治的な区分でもある。本書は、性的分業を社会生活の多様な局面や、都市や地方、家族や政府、資産取引、商業、テクノロジーというさまざまな形態において検討している。特に注意が向けられているのは、フィリピン女性の経験である。
本書は、編集方針を新たにした日本家族心理学会年報の第4冊目の特集号である。『ジェンダーの病ー気づかれぬ家族病理』として、総論2編に続いて5編のジェンダー事例の研究を掲載している。第二特集テーマ『心の危機ーライフサイクルにおける転換点』は本学会の1999年大会の主要なシンポジウムのテーマである。