本書は、現代英語の強勢とリズムについて、変異(ヴァリエーション)を出発点として音楽との接点を切り口に、英語の好韻律性を探る第I部と、英語と日本語の分節音と韻律構造が通時的に変化してきた過程を考察し、音韻変化の法則を発見する第II部からなる。いずれも、言語の変異と変化という視点から、分析対象とする現象を音韻理論がどう扱ってきたかを概観し、2人の著者の研究成果を紹介しながら今後の展開の方向性を示す。
第I部 変異から探る英語の好韻律性
第1章 進行中の音変化と背後にある仕組み
第2章 英語のリズム再考
第3章 英語のリズムと好韻律性
第4章 言語と音楽の接点から探る英語の好韻律性
第II部 音韻変化の法則性と最適性理論
第5章 英語の音韻変化
第6章 日本語の音韻変化
第7章 音韻変化の法則性
本書は意味変化における体系性について、これまでの比喩や文法化などの観点ではなく、歴史語用論と談話分析の観点から論じている点が斬新的である。データは日本語と英語の一千年以上にわたる広範なコーパスにもとづく。原著者の提示する「推論喚起論」は「意味は、話し手や書き手が聞き手や読み手とやり取りする中から起こる」ことを示している。原著者の注に加えて訳者注を設け、原著の言語学用語を分かりやすく解説した。
現代中国語はSVO言語でありながら前置詞句が述語に前置される。この状況は世界の言語にほとんど類例を見ないという。本書はこの語順の謎に言語類型論の視点から挑んだ。
諸言語のアスペクト現象が通時的経糸のどこに位置し、共時的横糸においていかなる平衡状態を示しているか、また動詞の語彙的意味との相関性、テンス・タクシスとの関わりなどを詳細に分析する。本書によるアスペクト・カテゴリーの基本枠組み、緻密な考察は、アスペクト研究の流れを決定づけたと言われる。1984年の発表以来、現在まで、多くの論者によって引用されてきた現代アスペクト研究史における金字塔の全訳。
まえがき
第1章 アスペクト論の基本概念
A. アスペクトとアスペクチュアリティの一般的な意味的定義ーアスペクト、テンス、タクシス(таксис – taxis)
B. アスペクトとその他のアスペクチュアリティの諸要素との区別ーアスペクト、アスペクチュアリティ・クラス(аспектуальные классы)とその下位クラス
C. いくつかのアスペクト対立について
D. パーフェクトの意味とその進化
第2章 スラヴ諸語における完了体/不完了体カテゴリー
第1節 現代ロシア標準語におけるアスペクトと動詞の語彙的意味
第2節 アスペクト・パラダイムにおける機能面での完全性と形態的規則性
第3節 個別的なアスペクト意味と完了体と不完了体の対立のタイプ
A. アスペクトにおける反義性とアスペクトの中心的意味
B. アスペクトにおける同義性と周辺的なアスペクト意味
C. アスペクト対立の中立化
第4節 完了体/不完了体の意味を担うアスペクト語幹
第5節 ブルガリア語アスペクト・テンス・システムにおける特質
第6節 完了体/不完了体カテゴリーの発生
第3章 スラヴ諸語におけるインパーフェクトとアオリスト
第1節 古代ロシア文章語におけるperfective インパーフェクト
A. 複数回perfective意味(кратно-перфективное зн)
B. モーダルな意味
C. 見せかけの場合
D. 結論
第2節 現代ブルガリア語におけるアオリストとインパーフェクト
A. 完了体アオリストと不完了体インパーフェクト
B. 不完了体アオリスト
C. 完了体インパーフェクト
D. 結論
第3節 語りのテクスト構造とスラヴ語動詞の過去時制体系の類型論
A. 文学作品の語りにおけるテンス・アスペクト構造
B. スラヴ諸語の過去時制体系と語りにおけるその機能の3タイプ
第4章 非スラヴ諸語のアスペクト論と対照言語学的アスペクト論の諸問題
第1節 ゴート語の動詞が表す動作の限界性/非限界性カテゴリー
第2節 所有パーフェクトの起源について
第3節 ゲルマン諸語、ロマンス諸語、スラヴ諸語の単純過去形消失に向けて
マスロフ著『アスペクト論』によせて
参考文献
日本語文献
事項索引
言語索引
音韻論・形態論・語彙論の領域に切り込む
本書は、言語学の全分野に目を配った、小粒ながらもup-to-dateな知見を盛り込んだテキストであり、間違いなく、第一級の言語学入門書である。同時に、平明な英語で書かれ、例証される項目や例文も、ほとんどが英語から採られているという意味で、英語学概論の教科書としても格好のものとなっている。
本書は、私たちがコミュニケーションを行う背景にはどんな仕組みがあるのかという問いについて、一緒に考えていくために書かれたものである。