心の哲学者サールによる心と言語の関係を扱った関連研究『言語行為』『表現と意味』に続く第3作。言語のもつ表象能力は心の志向性に由来し、この志向性はそもそも心的状態そのものに内在しているとの立場から、「意味」の問題の研究を通じて志向性概念を論じ、最後は「心身問題」にまで論究する。この志向性の概念が、はたして人間による「理解」と機械による「理解」との決定的違いになりうるか否か、心の哲学とAI(人工知能)論とが脱構築を試みるための試金石ともいえる書である。
他言語との対比で浮かびあがる日本語の特質とは?多様に結合する助詞の視点から、日本語文法を再構築し、さらに連歌・俳諧、「天声人語」、文学作品などを題材に、日本の言語文化の基底をさぐる。
本書は1991年に発足した同志社大学人文科学研究所の共同研究である「多民族社会における異文化交流と社会構造の変容に関する研究-カナダ・ハワイの場合」のハワイに関する研究成果である。多文化社会における民族集団の社会・文化変容の位相を明らかにすることによって、異なる民族の共生に必要な諸問題を提示する。
言語の形式的な分析とコミュニケーション理論の橋渡しとなる領域で活躍した、現代哲学の知られざる巨人。
アクセント、トーン(声調)、イントネーション、…どの言語も何らかの形で持っている「音調」とは何なのか。日本語諸方言に加え、朝鮮語、中国語など東アジア諸言語の共時的な音調体系をも探る中で、日本語にも「語声調」方言があることなど、類型論的な広い視点からの研究成果を明らかにする。語構成や文構造と音調との関係など、ヒトの言語のもつ音調の本質を明らかにし、日本語アクセントについても、新たな光を当てる好著。
「危機に曝された言語」である先住民族言語のために言語学者はなにができるのか。この重い課題を背負ってシベリヤを訪ね、研究調査を続ける著者が投げかける21世紀に向けてのメッセージ。シベリヤの先住民族の社会と言語文化を描き出して、アイヌ語復興の戦略を暗示しようと意図した言語学論集。
ますます発展を続ける言語学。その対象は何か、いかなる方法で分析しうるか、この問いに対してR.A.ハドスン他、気鋭17名の英語学・言語学者が、さまざまな立場からの解答を示した意欲的な論集。
中国語の敬語は、そのルーツをたどれば、かなり古い時代にまでさかのぼることができる。しかし、2千年以上脈々と続いてきた伝統的な敬語現象について、専門的な研究書もなく、言語学の立場による考察も充分に行われてはいない。本研究は、伝統的な中国語の敬語現象に対して包括的な考察をしたものである。
どんな構文も、私たちの「ものの見方」を反映している。所有格構文、分詞構文、have構文を取り上げて、使用上適格/不適格となる境界を緻密に検討。表現と結びついた人間の事態把握の構造に迫る。
未開の新領域を拓く雄大な言語史研究。能格言語と活格言語と主格言語の起源、インド・ヨーロッパ語における文法的な生と性の成り立ち、日本語を含むアジア太平洋諸語の同系性、そしてシュメール語とエラム語の驚くべき系譜が斬新な方法で論じられる。
「独立」以来、「国民」が使いこなせない旧宗主国の言語を「国家公用語」としているセネガル。公共性を担保する言語のない、「曖昧な多言語主義」状況をつくりだす国際機関、巨大NGOの「援助という名の介入」。人々の言語生活の実態調査から、その問題点を明らかにするとともに、言語的多様性と社会的共同性がいかにして両立しうるかをさぐっていく。
「複合動詞と複雑述語」に関する特集論文3篇、一般の研究論文5篇、研究ノート(Notes&Discussion)1篇、合計9篇の論文を収録。加えて、「チュートリアル」という部門を設け、語彙概念構造(LCS)とクオリア構造(別名、特質構造)の基本的な考え方を分かりやすく解説。
世界の文字はどのように生まれ、発達してきたのか。古代文字から現代の文字まで歴史上に現れた全ての文字を網羅し、わかりやすく解説。発生の由来と変遷、読み方・運用・文例、伝播と影響などを詳述し、数字や記号、便利な付録も充実。1200点の鮮明な図版でわかる、読んで、見て楽しい文字の大図鑑。不朽のロングセラーに待望の普及版誕生。
戦後の香港社会において19世紀以来のコロニアルな状態から私たちの見ている現代社会へと変質する転換期が、それぞれの分野に相前後しながら存在した。本書所収の各論は「読み・書き」という言語活動の対象・所産もしくは関係する媒体や社会現象を切り口として、転換期あるいは転換期が存在した可能性を論じる。この現代社会への転換期は「現代香港のイメージ」の形成とも深い関わりを有しているため、転換期を論じることは現代香港のイメージの形成を問うことにもつながる。その意味で、本書は従来の香港像に対する再考をもその目的として有している。