近年、保健活動はヘルスプロモーションに見られるように、地域住民の思い(主観性)を重視する方向へと発展している。一方、福祉活動においてもノーマライゼーションは対象者の思い(自立性)の重視が基本である。ここに地域保健福祉という理念の根拠がある。とはいえ、地域保健福祉の実践はさまざまな要素が絡み合う複雑な活動であり、そう簡単に割り切れるものではない。本書で提起したのは、複雑な事象を無理に単純化してしまう誤りをおかさないための分析法である。その意味で、地域の保健福祉の従事者が日頃の貴重な体験を客観化し、分析し、表現することに役立つものと考える。また、本書で述べた地域保健活動の展開は「生活者としての多様性を持つ個人と地域社会(コミュニティ)をつなぐ」という今日的な課題に寄与するものでもある。保健・福祉・医療にかかわる人のための基本書。
最前線の研究を著者自身の学問人生とともに語り、「多様性と共存」の時代を支える知の背骨を育てる、現代の博物誌。第8巻は、飛ばない虫オサムシがいかにして多様な種に分化していったのかを解き明かす。
本書はカナダの連邦制度の構成原理やメカニズムを多角的に分析したものである。カナダにおいては一九六〇年代以降、ケベック州におけるフランス系カナダ人によるケベック・ナショナリズムや分離主義が高まり、これに対応する連邦政府の動き、そして憲法改正論議など今もゴールのみえない試行錯誤が展開されている。そこで本書では、カナダの連邦制度がどのような原理で作動しているのか、他国との比較の観点もまじえ、また具体例をあげつつ検討した。
知れば知るほど奥深く、IQや偏差値などではけして測れぬ知の世界。幼児の知から数学者の知、動物の知からコンピュータの知、そして人間の証しとしての言語の知まで、その豊かな広がり、複雑で精妙なしくみと働き。知の最先端を行く9人の碩学が説く。
性を決定するものとは何か?ゲイやレズビアン、女らしさ/男らしさという規範、性同一性障害、男でも女でもない第三の性=インターセックス-「男-女」という二元論を超えた身体とジェンダーと性のありようについてセクシュアルマイノリティの当事者たちと研究者がわかりやすく講義して、性の自己決定の可能性を探る。
「年越し派遣村」は非正規労働とワーキングプアとが背中合わせにあることを明らかにした。同じ深刻な「貧困問題」を抱える韓国などとの比較を通じて、多様な労働者を包み込む社会制度の確立のための道を、豊富なデータと取材から探究する。
年間4万種の生物が地球上から絶滅している。北極から南極まで世界各地を取材した生物ジャーナリストが、人間による環境破壊とその人間との共存に苦悩する野生動物たちの実像に迫る。
19世紀後半から20世紀前半にかけて、ケンブリッジで展開された市場社会論=資本主義を総合的に検討し、今日の世界的経済危機も見据えながら新しい経済学のあり方に挑む。
序 (平井俊顕)
第1部 体系的構想と学的闘い
第1章 シジウィック──実践哲学としての倫理学・経済学・政治学 (中井大介)
第2章 マーシャル──「人間の成長」と経済発展 (西岡幹雄)
第3章 フォクスウェルとカニンガム──「歴史主義」による内部的抵抗 (門脇覚)
第2部 資本主義と国際システム
第4章 ピグー──資本主義と民主主義 (本郷亮)
第5章 ホートリー──未刊の著『正しい政策』考 (平井俊顕)
第6章 ケインズ──帝国の防衛と国際システムの設計 (平井俊顕)
第3部 産業と2大階級
第7章 マグレガーとロバートソン──産業統治論 (下平裕之)
第8章 レイトン──労働者論 (近藤真司)
第9章 ラヴィントン──企業家の規範 (小峯敦)
第4部 影響と対抗
第10章 ムーアとその周辺──哲学的影響 (桑原光一郎)
第11章 ドッブとスラッファ──マルクス・古典派体系の再燃 (塚本恭章)
第12章 ロビンズ・サークル ──自由主義陣営からの反撃 (木村雄一)
第13章 制度派とケンブリッジの経済学者──2つの「学派」を結ぶもの (佐藤方宣)
終 章 ケンブリッジの市場社会論 ──展望的描写 (平井俊顕)
索 引
アメリカ・イギリス型市場経済対ドイツ・日本型市場経済の二項対立からは見えてこない「資本主義の多様性(ヴァラエティ・オブ・キャピタリズム)」を解明する。来るべき時代の労使関係論。