幽霊屋敷と呼ばれる古い西洋館に、たった一人で越してきた謎の女性。後藤由紀子というその美女と偶然知り合ったことから、ぼくは彼女をめぐる不思議な事件に巻き込まれていった…。思春期の少年が抱く憧れと恐れを鮮やかに描いた傑作中篇「美女の青い影」、気高い精神をもち、非行グループの凄まじい暴力にも決して屈しない少年、犬神明…。名作・ウルフガイシリーズの原型「悪徳学園」、新任の女教師が平和な高校を恐怖に陥れる殺戮の嵐「魔女の標的」など、情念の作家・平井和正の学園SFアンソロジー全七篇。
48歳にして、ジャズのトリコになってしまった植草さん。その経緯をいきいきと描いた名篇「モダン・ジャズを聴いた600時間」をはじめ、コラージュ、漫画、現代美術などにかんする、胸躍るエッセイ群。
年二回開催されるマンガファンの祭典・コミックマーケット。数十万の人出で賑わうその会場でサークル「大きなお茶屋さん」のメンバーが次々と殺された。推理小説のファンクラブ「大きなお茶屋さん」では、美少女戦士が活躍するSFミステリ「ルナティック・ドリーム」の完結を前にして、各人が予想した結末をまとめた同人誌「月に願いを」を発行していたが、殺人鬼“影”は、大胆にも、その中に殺人予告状を挿入していたのである。その正体は何者なのか、動機は。狂気にいろどられた惨劇は、やがて意外な展開をみせはじめるが…。すべての謎をとくカギは、「月に願いを」に収められた7つの短篇ミステリに隠されている。同人誌をまるごと一冊挿入するという異色の構成で読者に挑戦する、新鋭の書下し「超」本格ミステリ。
マニエリスムとは何か。それは危機の時代の文化である。世界調和と秩序の理念が支配した15世紀は、黄金のルネサンスを生み出した。だが、その根本を支えてきたキリスト教的世界像が崩れ、古き中世が解体する16世紀は、秩序と均衡の美学を喪失する。不安と葛藤と矛盾の中で16世紀人は「危機の芸術様式」を創造する。古典主義的価値をもつ美術史により退廃と衰退のレッテルを貼られてきたこの時代の芸術の創造に光を当て、現代におけるマニエリスムの復権を試みた先駆的な書。
本書は、フロイトは芸術を理解していないという、『テル・ケル』派の批判に対して、フロイトの芸術論を擁護するという立場から書かれている。
耽美、妖艶、華麗、絢爛、ファン待望のロマンティック・ミステリ最新傑作集。誘拐殺人犯の正体は僕の恋人なのか。
昼間の間だけ、老人を預かる新商売「託老所」とは。こみあげる可笑しさと、人生の恐さが交錯する傑作。日本推理作家協会賞受賞作。
光学装置と絵画の結婚。失われた板絵の謎を解き明かし、遠近法の祖ブルネレスキの創作の秘密に迫る新仮説。
賢治思想の宝庫。羅須地人協会時代の講義用草稿「農民芸術概論」をはじめ、手帳・ノート・メモ等、賢治の思想的営為を集成。
借金で首が回らなくなった人たちの耳元に、悪魔が囁きかける…。某一流企業の課長だった坂本勝の場合、バブルの崩壊によって多額の借金を抱え、ほとんど破産寸前の状態であった。なにもかも失い、身動きがとれなくなった坂本の前に、ある日悪魔が現れた。彼らのいう通りにすれば、借金を完済して、おつりがくるというのである。保険システムの盲点を突いた完全犯罪とも思える巧妙きわまる詐欺事件に、はたして突破口はあるのか。腕利き保険調査員・小野智彦と、恐るべき頭脳集団との壮絶な知恵くらべの決着は。
ルーマニアのトランシルバニア地方に隠れ住み、恐怖の黒ミサを行う邪教集団とは。現代の吸血鬼の恐怖を描く表題作「吸血の祭典」、ローマの都で権勢を誇ったボルジア家は、毒薬を用いるのを得意としていた…色欲と権力欲にとり憑かれた一族の骨肉相喰む争いを描いた「ボルジア家の毒薬」等、本格ミステリの巨匠が、古今東西の実話に材をとった、異色の怪奇犯罪小説集。単行本未収録作品を含む全18篇を一挙に収録、江戸川乱歩が絶賛した歴史推理の傑作「ロンドン塔の判官」を加えた決定版。
動物としてのヒトが人間になりかかったとき、なにが起こっていたのだろう。ヒトはいつから独自の「人間らしさ」を獲得していったのか。二足歩行から、脳の増大、そして言語生活や芸術活動まで、それぞれの進化の過程にそれぞれのストーリーがある。古人類学の第一人者が骨からたどる人類のルーツ。
深夜の怪談会の帰り、タクシーの中で私を襲った事件とは。人間の皮膚に卵を生み付ける「くすね蜘蛛」の恐怖を描いた表題作をはじめ、三浦朱門とともに、熱海の宿で悪夢の一夜を過ごす体験談「三つの幽霊」、先祖の遺品を蒐めることにとりつかれた男の末路「憑かれた人」など、ユーモラスな語り口を駆使しながら、読者を恐怖の世界に案内する周作恐怖譚・全21話。世評高い傑作短編集『蜘蛛』を完全収録、さらに現在の文庫では手に入らない幻の作品も多数加えて再編集した、遠藤周作怪奇小説の決定版。
戦前は門外不出とされた合気道の技と精神を、植芝盛平開祖自身が監修し、現道主・植芝吉祥丸道場長(当時)が執筆した合気道最初の記念碑的出版が本書である。歴史的事実に変化はあっても、本書が説く合気道の妙術と神髄は今も新しく、男女壮幼・世界の愛好者150万といわれる現代の武道・合気道の原点を示している。絶版後40年、多数の熱望に応える完全復刻版。
山田風太郎の生んだ唯一の名探偵が、新宿のボロアパート・チンプン館に住む酔いどれ医者・荊木歓喜先生である。その面倒見の良さと抜群の推理力で、ヤクザやパンパンのみならず、警察からも一目おかれるこの怪人物は、心ならずも奇怪な事件に巻きこまれ、哀しい真相を解き明かす羽目になるー。忍法帖で山田風太郎を知る読者には意外かも知れないが、本書は、戦後の混乱期を背景に、山田風太郎でなければ考えつかない奇抜なトリックを縦横無尽に駆使した、不可能興味横溢の本格ミステリ集なのである!単行本未収録作を含む全8篇!山田風太郎全著作リストを併録。
名アンソロジストとして数々の怪奇小説集を編纂してきた鮎川哲也と、本格ミステリ作家としての作風とは対照的に、熱狂的な怪奇幻想小説のマニアである芦辺拓の二人が、自信を持って選び抜いた幻の怪奇探偵小説傑作集!染色体を改良して食用蛙の巨大化を計る老科学者の、隠された恐るべき企みとは?マッド・サイエンティストテーマの怪作「人喰い蝦蟇」や、戦時中に海の藻屑と消えたはずの妻が、魚の姿になって夜ごと夢枕に現れる鷲尾三郎の名作「魚臭」の他、鮎川哲也自身の珍しい怪獣小説「怪虫」を特別収録。