「男は仕事、女は家庭」-男/女の差異を本質的なものとみなす社会は、いかにしてつくられたのだろうか。伝統的に、製織労働の担い手が女性であった日本と、男性であったドイツ。両社会において、それらの労働にはどのような意味づけが行われ、また繊維工業の近代化はどのような道程を辿ったのか。そして、労働の近代化は、社会政策・保険制度の形成とあいまって、人びとの家族観や職業意識にいかなる変容をもたらしたのか。「労働のジェンダー化」という観点から、近代史研究に新たな視座を拓く。
ジェンダー論の多角的広がりを問う初学者のための包括的ガイドブック。文学・芸術・医学・政治学…におけるジェンダーとは。歴史・理論・諸学とのかかわりを総合的に考察。ジェンダー・フリーな社会・学問のあり方を探る。
女性史・女性学の成果。「女らしさ」をはじめ、文化として形づくられた女性像を問い直し、男性中心の思考法を再検討する。新しい女性像を確立するために。
ゲーテは女性になりかわって、その内面を代弁したり、女性を素晴らしい存在だと見なしていたわけではない。自分を語るための器として用いたにすぎない。それは空であるほどたくさん盛ることができる。器である女性が自ら語り出したり、自己主張することはゲーテにとって望ましくなかった。女性の視点からゲーテを読み直す。また18世紀から19世紀の女性小説を丹念に読み、男性社会規範の中でもがいた彼女たちの姿をうかびあがらせる。
ジェンダー理論の達成をふまえ、歴史的資料を縦横に駆使し、法と歴史学・社会学の学際的架橋をめざす。
第1部「ジェンダー秩序と法秩序」で方法論的・歴史的枠組を示し、第2部「近代的ジェンダー・バイアスの生成」でヨーロッパ近代秩序としての「公私二元構成」の問題点に、姦淫罪、嬰児殺、読書協会を例に鋭く切り込み、第3部「法秩序のなかの家族と生殖」で「親密圏」への国家と法の関与を指摘する。
はしがき
第1部 「ジェンダー秩序」と法秩序
第1章 「ジェンダー研究」の展開と「ジェンダー法学」の成立
第1節 「ジェンダー法史学」の意義と目的
第2節 「ジェンダー法学」の成立と「ジェンダー法史学」
第2章 「ジェンダー秩序」の2類型
第1節 「ジェンダー秩序」の類型化仮説
第2節 「キリスト教的=身分制社会型」ジェンダー秩序と「公私二元的=市民社会型」ジェンダー秩序
第2部 近代的ジェンダー・バイアスの生成
第3章 ヨーロッパ近代の公私二元構成
第1節 「公」と「私」--概念の変遷
第2節 「公/私」関係の歴史と展望
第4章 「法と道徳の分離」にみるジェンダー・バイアスーー姦淫罪とその廃止
第1節 「風俗犯罪」と姦淫罪
第2節 近世バイエルンの姦淫罪
第3節 姦淫罪の廃止と「性の二重基準」の確立
第5章 「人道主義」のジェンダー・バイアスーー嬰児殺論をめぐって
第1節 嬰児殺論の位相
第2節 啓蒙期の嬰児殺言説
第3節 「人道主義」の勝利とジェンダー
第6章 「公共圏」のジェンダー・バイアスーー啓蒙期の読書協会
第1節 「公共圏」としての啓蒙空間
第2節 男たちの「公共圏」
第3節 コミュニケーションのジェンダー・バイアス
第3部 法秩序のなかの家族と生殖
第7章 法秩序としての「近代家族」
第1節 近代家族法システム
第2節 「近代家族」論争と近代的家父長制
第8章 「逸脱者」としての「未婚の母」と「婚外子」
第1節 婚外子法制の現状
第2節 前近代ヨーロッパにおける婚外子法制の展開
第3節 「未婚の母」の変化ーー啓蒙期法典編纂
第4節 19世紀前半のプロイセン婚外子法改革とジェンダー
第9章 「家族の保護」と「子の保護」の競合ーーワイマール〜ナチス期の婚外子法改革論
第1節 ドイツ民法典婚外子法
第2節 ワイマール〜ナチス期の婚外子法改革論
第10章 生殖管理のジェンダー・バイアスーーナチス優生政策と断種法
第1節 ナチス優生学の歴史的位相
第2節 ナチス優生法制の背景と比較
第3節 ナチス断種法の手続と実態
主要文献目録
あとがき
索引
ジェンダー法学は、既存の法律学をこれまでにない視座から批判し、既存の法制度や学問の領域にたって、性別による社会的不平等を是正しようと試みる。女性の普遍性、男性の特殊性の事実に目を向け女性の視点と経験が生かされることが、真の男女共同参画社会実現の第一歩である。新しい学問領域であるジェンダー視点から法学を学ぶ最新のテキスト。法改正と社会の動向をキャッチした充実の第2版。
我われが日々呼吸する時代の「空気」、ジェンダーとメディアの成分を分析し、季節=時代の変わり目を測定する、男女共同参画社会および9・11以降のジャーナリズム批評。
本書は「ジェンダー研究が拓く地平」と題されているが、その意図は「ジェンダーの視点に立って、森羅万象に接近する場合、現実が新たにどのように見えてくるのか」を開拓的に検証しようとするものである。
1960年代末以降の「第二派フェミニズム」と呼ばれる世界規模での女性解放思想は、その理論的枠組みにおいても、対象とする専門領域においても多様な流れを生み出したが、ジェンダーという共通の概念を発見した。そして、1980年代、1990年代以降の市場経済化の進展とグローバリゼーションのもとでは、ジェンダーを分析軸にすえた新たな知の枠組みが模索されている。本書は、主流派を構成する新古典派経済学の理論、さらにリベラリズムの思想をジェンダーの視点から理論的に検討し、同時に、市場主義化がもたらす新たなジェンダー問題を家族・社会政策、開発経済学、社会思想、人類学などの諸領域から問い返すことで、社会・経済の変動を理論的、実証的かつ歴史的にとらえる方法を提示する。