南極のアメリカ観測基地からの連絡が途絶えた。現地に急行した救助隊は、無残に老衰死した4人を発見する。深くきざまれたしわ。肝斑。抜け落ちた白髪。白濁した眼球。36歳だった科学者が、5日間で90歳の老人へと激変していた。北極の英仏基地、シベリアのロシア基地でも同様な事態が発生。奇病の原因は未知の細菌か?あるいは新型の生物兵器か?巨匠が挑む近未来サスペンス。
ラシオの店は、いつも兵隊でにぎわっていた。花が咲き、歌声が流れていた戦地での恋。
大戦下フランス南西部のうるわしき田園地方。夢見る18歳のシャンタルは伯爵家の当主と結婚するが失敗、失意の日々を過ごしている。そんな彼女を慰める伯爵家次男インテノア。やがて二人の間にめばえた愛は、成就することなく戦火に引き裂かれてしまう。シャンタルは迷いながらも再婚、アメリカへ渡った。そして、脚本家として成功したシャンタルのもとに運命の日がおとずれた…。
1:春
2:夏
3:秋
4:冬
5:うたをうたってあげたい
6:その角を曲がって
シェルビー・ジェイコブズは、大牧場主の娘としてなに不自由なく育ったが、父が借金を残したまま亡くなったため、屋敷を手放さなければならなくなった。競売人たちがジェイコブズ屋敷に押しよせた日、いまは古ぼけたアパートにひとりぼっちで住んでいる彼女のもとに、かつての婚約者ジャスティン・バレンジャーが訪ねてきた。使い古しのソファ、傷だらけのテーブル。ドレッサーなどどこにもない。「こんなひどいところで暮らしているなんて…」ジャスティンの冷ややかなまなざしに、シェルビーは思わず身震いした。6年前のわたしのことを、まだ許してくれないのね…。
十年前、十八歳のダニエルと二十一歳のバイロンは結婚した。貧しかったが、夢のような生活だった。少なくとも初めのうちは…。やがて身ごもった子供をダニエルが流産してしまったときから、二人の結婚は急速に破局に向かいはじめた。結局、バイロンと別れてよかったのだと、今でも彼女は思っている。子供のたくさんいる明るい家庭を築きたいという彼の夢を、私はかなえてあげられなかったのだから。その後、ダニエルは再婚した。しかし、その夫も事故で亡くなった。そんなとき、ダニエルはバイロンと偶然に再会した。今や一流建築家となり、しかもいまだに独身を通している彼と。彼女が未亡人であると知ったバイロンは、苺とシャンペンを持って家を訪ねてきた。ロマンチックなデートを演出して、口説くつもり?でも、わたしにはあなたともう一度結婚できないわけがあるのよ。
激しい吐き気とものすごい頭痛で目を覚ましたエリーズは、うつろな気分で部屋の中を見まわした。カーテンのすき間からもれる目差しに照らされ、敷きつめられたじゅうたんと豪華な家具がかろうじて見える。ここはどこだろう…。エリーズは不安にかられながら、はっきりしない頭で記憶をたどっていった。きのうの夜は確か双子の姉エリンの結婚式に出席したはずだ。ということは、ここはラスベガスだわ。意識がはっきりしないもどかしさにいらだちながら、寝辺りを打つ。そのとき彼女の足先になにか温かいものがふれた。「やっとお目覚めのようだな」聞き覚えのある鋭い声が彼女の耳に飛びこんできた。エリーズの勤める会社の社長、サム・ローフォードの声だ。どうして彼が同じベッドにいるの?あわてふためいて飛び起きようとするエリーズだったが…。