漢字の音訓や外国語のイメージを無理に組み合わせた“読めない”名前が増えたのはなぜか。変則的な読みの名前で日本語が変化していく可能性や、漢字と人名の歴史を探り、名づけと漢字の用い方を文化の問題として考える。
その死体は、三重の密室の最奥に立っていた。異様な形で凍りついたまま…。そのとき犬神館では、奇怪な“犬の儀式”が行われていた。密室のすべての戸に、ギロチンが仕込まれ、儀式の参加者は自分の首を賭けて、“人間鍵”となる。鍵を開けるには、殺さねばならない。究極の密室論理。これは三年前に発生した事件の再現なのか。犯人からの不敵な挑戦状なのか。瞠目のミステリー。
多くの資料と粉々たる論説,または多彩な俗説を整理し,最近特に進歩した芭蕉研究の成果をふまえて,従来にない正確さで,新しくまとめられた伝記。作品・作風の展開を述べ,その風雅,文芸の境地を解説するだけでなく,その生涯のあらゆる部面にわたって綿密な検討を遂げ,さらに死後の一章をも叙した芭蕉翁の全貌である。
テレビに演劇に小説に、日本中の人々から愛される義経。しかし一体どこまでが本当なのだろうか。本書は物語・伝説の類を一切省き、確実な史料だけによってその一生をたどり、素材としての正史を綴る。-はじめて描き出された真実の姿。波乱に満ちた悲喜の生涯と、源平・公武の葛藤とは、興味津々として胸に迫る。
後白河上皇は、平氏の盛衰を経て鎌倉幕府の確立期に至る激動期のなかで、院政という政治形態を背負って、「治天の君」としての生涯を送った人物だった。為政者集団のなかでの政治力学的構造を変化させた院政の担い手として、上皇は特に独裁的専制的立場を強化した存在である。本書は、その政治的軌跡の考察に主眼をおいて書かれた興味深い人物史。
戦国時代の100年間、北陸越前に君臨した朝倉氏が、信長の天下統一の中で滅亡していく様を明らかにする。関係史料を博捜し、義景の領国統治・信長との戦い、外交等の史実を探り、かつその人間性や教養をも究め、発掘調査による新知見を加えて描く。従来知られなかった一戦国大名の生涯を、総体的に把握した義景の本格的な伝記。
歌舞伎の狂言作者として、名人小団次をはじめ、いわゆる団・菊・左らの名優を対象に世話狂言・時代狂言・活歴劇・散切狂言・舞踊劇にわたり3万余種の作品をのこした黙阿弥は、江戸演劇の大問屋と評された。本書はその生涯・人物・主要作品の梗概を興趣深く語り、さながら近代日本演劇の鳥瞰図の観を呈する。歌舞伎研究必携の書である。
明治政府の殖産興業政策の推進者として知られる前田正名は、官を辞してからも「布衣の宰相」と称され、全国を隈なく行脚遊説し、輸出産業を主とする地方在来産業の育成・振興にその生涯を捧げ、近代日本経済史上に特異の光彩を放っている。本書は厖大な資料を駆使してその生涯と事蹟を克明に描いた力篇である。