『恐怖城(ホワイト・ゾンビ)』『私はゾンビと歩いた!』から、ジョージ・A・ロメロを経て『バイオハザード』『ワールド・ウォー・Z』まで、ヴードゥー呪術、噛みつき、ウィルス感染など、多様な原因で人間ならざるものへと変化し、およそ100年にもわたり増殖し続けるゾンビと作品の数々。恐怖の対象として類を見ないその存在に託されたものは何か。本書では、ゾンビの歴史を通覧し、おもに植民地主義、ジェンダー、ポストヒューマニズムの視点から重要作に映るものを仔細に分析する。アガンベンの生権力論を援用し、ゾンビに現代および近未来の人間像をみる力作。
「だが現在、または近い未来において、人間に「似ているにすぎないもの」として作り出されたゾンビの方に、人間が「似て」くるだろう。」(本書より)
◎目次
序章
第一章 『恐怖城(ホワイト・ゾンビ)』とゾンビの誕生
1 『ホワイト・ゾンビ』とアメリカ
2 「ゾンビ」発生前夜
3 ゾンビの分裂と人種表象
4 『ホワイト・ゾンビ』における目線の交差
第二章 『私はゾンビと歩いた!』と呪われた人形
1 ハリウッドをさまようヴードゥーの人形
2 分裂したヒロイン
3 重なり合うゾンビと人形
4 代理の身体
第三章 近代におけるゾンビーーグロテスクなものか「人に似たもの」か
1 隣のゾンビ
2 奴隷から隣人の表現へ
3 ロメロにおけるゾンビの多様性
4 『死霊のえじき』以降のゾンビたち
5 感染と発症の間ーー「モダン・ゾンビ」から「走るゾンビ」へ
第四章 ゾンビ映画におけるヒロインと女ゾンビ
1 ゾンビの性別
2 『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』におけるヒロイン
3 ゾンビ映画における女とロメロ作品における男
4 『28日後…』、『28週後…』における眼差しと感染
第五章 『ワールド・ウォー・Z』における新しいゾンビ
1 目潰しとポストヒューマンなゾンビ
2 『ワールド・ウォー・Z』における身体を持たないゾンビ
3 ポストヒューマニズム
4 「剝き出しの生」としてのゾンビ
5 生き延びる身体と免疫
終章
あとがき
参考文献
索引
▼変わりゆく女性の生き方から、夫婦と親子の未来を読み解く
『結婚と家族に関する国際比較調査(JGGS)』の大規模パネルデータを基に、進学、就業から結婚、出産、育児、そして介護まで広範なライフステージに焦点を当て、日本社会の変容と少子化の深因を描き出す。
近代になって女性の労働力はいかにして市場に投入されたのか。本書は電話交換が技術発展により、男性から女性の仕事へ変わっていく過程を日独比較から捉える。男と女の仕事の棲み分けを作り上げた社会の一側面を解き明かす。
日本の女たちが長く秘めてきた飢えや渇望を、『女坂』、「妖」など一連の、古典を媒介とするポリフォニックな小説群として浮上させ、戦後女性文学の金字塔を打ち立てた作家円地文子をジェンダーの視点から問い直す。
「フラジリティ(感性)」・「表象」・「言説」・「自然」
“個”が差異を超越できる“世界“を見据え、実在する人間社会のジェンダーや美学を繊維な表現で紡ぐ。
秦 辰也(近畿大学国際学部教授・シャンティ国際ボランティア会副会長)
第1部 フラジリティ(感性)と身体
第 1 章 フラジリティ(感性)の身体的次元
1 - フェミニズム認識論に向けて
2 - コンシャスネス・レイジング(CR)の流れ
3 - ウーマン・リブと身体への問い
4 - 自助と互助のあわい
5 - ヒューマニズムと実存
第 2 章 演劇セラピーとエンパワーメントータイー日移住女性たちの経験からー
は じ め に
1 - 日本へ働きにいかなければならなかった
2 - わたしたちは女性だから
3 - 自分たちの「ホーム(居場所)」
4 - 経験は詩になりうる
お わ り に -エンパワーメントの意味ー
第 3 章 フラジリティ(感性)の主体形成
1 - エンパワーメントに向けて
2 - 主体形成の被傷性
3 - ラディカル・デモクラシーの行方
4 - 経験のアポリア
第2部 フラジリティ(感性)と表象
第 4 章 別の身体になることーエヴァ・ヘッセの空間性と自己意識ー
は じ め に
1 - 人が見るフレームを覗く
2 - リアルを感じる
3 - 非物質性の空間
4 - 自己とイメージの物質性 -愚かさに宿る夢ー
お わ り に
第 5 章 フラジリティ(感性)の表象的次元
1 - 性的差異と普遍的なもの
2 - 感性の分有
3 - 翻訳可能性
4 - 詩学と悲劇的なもの
第3部 イメージと象徴
第 6 章 従軍慰安婦を表現する平和の少女像の象徴様式 -エルンスト・カッシーラーの神話的思考に照らし合わせてー
は じ め に
1 -『表現の不自由展・その後』をめぐる攻防
2 - モニカ・メイヤーのインスタレーションに通底するもの
3 -「従軍慰安婦」を象徴するということ
4 - 個人的な体験と視覚表現
5 -「慰安婦」をめぐる公的言説の環境
お わ り に
第 7 章 象徴様式の哲学
1 - 道徳的イメージをめぐって
2 - シンボルを操る動物
3 - 神話とフラジリティ(感性)
4 - 生と精神
第4部 「自然」とジェンダーの交錯
第 8 章 呼吸するコミュニティ・アートー植物的生物としての私たちー
は じ め に
1 - コミュニティセンターとしての会館
2 - 空間の広がり
3 - 社会とのつながり
お わ り に
第 9 章 ファブリック製品とジェンダーに配慮した生産ーフェアトレードの試みを通じてー
は じ め に
1 - フェアトレードと国際協力
2 - ソーシャル・ビジネス
3 - 布の象徴作用
4 - オルタナティブな構造のあり様
お わ り に
男女をめぐるさまざまな意識が変わりはじめた七〇年代。歌謡曲もまた日本の音楽史のなかで、劇的に変化した時期だった。時代の空気に敏感に反応する流行歌には、男女の姿が徹底的に描きだされている。理想の恋愛像や親子像、既成の「男らしさ、女らしさ」とそれに代わる新しい価値観…。歌謡曲という大衆芸術は、今日にいかなる遺産を残したのか。阿久悠、松本隆、阿木燿子らの詩、ピンク・レディー、桑田佳祐、太田裕美らの歌を丹念に読みとき、男女間の変遷を掘りおこしていく。文学や社会学の領域をも超え、七〇年代を俯瞰する文化論としても読むことができるダイナミックな試み。
伝統的な社会規範や家族観などがいまだ根強く残る現代日本において、家族をめぐる実態やその変容を分析し、展望や課題を明らかにする研究書。研究者と実務家らが協働して、ジェンダー・セクシュアリティ・子どもの視点から現行法制度の課題を考察し、その再構築の必要性を提起する。
序章 家族と法制度の変容 (二宮 周平)
==1部 家族のリアルを問い直す==
◆1 現代日本と家族のリアル
1章 新自由主義以降の家族規範の変容とグローバル資本主義の展開 (海妻 径子)
-フェミニズムの新潮流
2章 子育て支援と家族主義 (松木 洋人)
-子どものケアをめぐる論理を書き換える
3章 男の介護を通して見る「ケアとは何か」 (平山 亮)
4章 若者の結婚言説にみる結婚観の〈変質〉と親密性の変容 (永田 夏来)
5章 ステップファミリー (野沢 慎司)
-複数世帯を横断するネットワーク家族の可能性と法制度の再構築
コラム1 子ども視点の面会交流支援 (光本 歩)
◆2 セクシュアリティの多様性と家族の変容
6章 異性愛を前提とする家族概念をはみ出す同性パートナーシップ制度 (風間 孝)
-ケアの視点からみた渋谷区と世田谷区における制度化
7章 セクシュアルマイノリティの家族形成 (杉山 麻里子)
8章 トランスジェンダーが子どもをもつこと (小門 穂)
-性別変更と生殖医療
コラム2 「GID法律上も父になりたい裁判」 (山下 敏雅)
==2部 法制度の再構築を考える==
◆1 ジェンダーと原理論・法構造
1章 「近代家族」を超える (三成 美保)
-21世紀ジェンダー平等社会へ
2章 家族と民主主義(田村 哲樹)
3章 憲法・人権からみたジェンダーおよび親密圏 (齊藤 笑美子)
4章 暴力とジェンダー (矢野 恵美)
-性犯罪、DV、セクハラを中心に
◆2 セクシュアリティ・子どもからの法制度の再構築
5章 セクシュアルマイノリティに関する国際社会の議論の到達点と課題 (谷口 洋幸)
6章 子どもの権利保障 (大江 洋)
-親子法制の見直し
7章 子ども虐待対応に関する現行法の問題点と改正私案 (山田 不二子)
8章 子どもの権利向上の視点からの「家族」支援法制の考察 (鈴木 秀洋)
-地域ネットワーク再構築と里親制度推進を中心に
終章 血縁・婚姻から意思へ (二宮 周平)
-家族の法制度の再構築
フェミニズム、クィア理論、批判的人種理論ーー〈社会正義〉の御旗の下、急激な変異と暴走が続くポストモダニズム。「第二のソーカル事件」でその杜撰な実態を暴き、全米に論争を巻き起こした著者コンビが、現代社会を破壊し続ける〈理論〉の正体を解明する!
本書では日本の今の現状を「企業中心・ライフスタイル管理型家父長制」と定義するところから、この90年代末を生きる日本社会の女性の現実をとらえ、日本のフェミニズムが主婦フェミニズムといわれてきたその限界を超える女性学の方向を考える。
元始、女性は太陽であったのか。人類の歴史を書き変える性考古学の快著ついに登場!日本はもちろん世界の考古・古代史家が置き去りにしてきたジェンダーの視点から新しい先史・古代史像を構築しようとする画期的な試み!考古・歴史ファン、女性読者、必読。
本書は、1970年代以降のマレーシアの経済発展における労働力構造の変化を分析の対象とし、いくつかのケース・スタディをもって、マレーシアの労働市場のセグメンテーション(分断)の構造を示したものである。
女性学を学ぶ人々、教える人々のための実践的なハンドブック。キーワード解説、女性学関連年表、婦人会館・女性センターリスト、事項索引付き。
本書は、第2次世界大戦後50年余を経過した現時点で、女性研究者をとりまく環境に関して、ライフコース分析を加味して分析・評価しようという意図をもつ。さらに学問研究活動そのものと女性研究者の環境との関連性を重視しつつ、女性のみならず男女を対象にした調査結果を分析し、特に日本の学問全般におけるジェンダー要因の考察を試みるものである。さらに、セクシュアル・ハラスメント、非常勤講師問題にも注目した点が、従来の女性研究を対象とする研究と異なる特色であるといえよう。