浅井家の姫と生まれながら、心ならずも、父母を討ち滅ぼした敵将・豊臣秀吉の側室になった淀の方。苛酷な運命に、ただ従うほかなかった淀君も、「せめて、浅井の血をひく秀頼を天下の主に」と、強大な徳川家康を相手に、己れの意地を張り通す。-“豊臣家を滅亡に追いこんだ悪女”という従来の見方を覆し、新しい角度から戦国を生きた女の実像に迫る長編歴史小説。
花の公達、平ノ重衡。平家一門の興亡のなかで、最後の御大将と呼ばれ戦い散った若き武将の光と影。
「殿。いまこそ鼎足の一端を担う時が来ました」。知将、諸葛・字孔明を得た劉備は、曹操の南征の企てを壮絶な“赤壁の戦い”で一夜にして打ち破る。天下三分の夜明けの訪れだ。曹操、孫権、そして劉備。最後に覇者となるのは誰か。従来の不可解な謎を解明して、かつ抜群の読みやすさで名将たちに学ぶ。蜀を得るまでの猛将・関羽の奮闘を描く激闘篇。
龍馬の新政府構想による選挙で、徳川慶喜を退け、西郷政権が誕生。これに反発した旧徳川家臣の憤懣は内乱へ向かった。その後、欧米列強、ロシア、清の内政干渉が強まり、岩倉具視の後を受け、急遽、総理となった龍馬は事態打開に奔走する。そのとき、清国の砲弾が…。龍馬の思い描く日本は実現できるのか。新しい視点で描くもう一つの歴史物語、完結編。
井上靖はなぜ、『風林火山』を歴史小説と呼ばなかったのか。山本周五郎は、『さぶ』にどんな思いを込めたのか。藤沢周平の運命を変えた「転機」とは。似て非なる「ふたつの文学」のおもしろさ。名作の比較分析からはじまる、思いがけぬ知的発見の数々。「碩学の産業人」と呼ばれた著者による、最新文学論。
慶応四年、鳥羽伏見の戦いに敗れた十五代将軍徳川慶喜が江戸へ逃げ帰って来た。慶喜追討令が出され、江戸へ向かって官軍が進発しようとしている。このままでは、江戸が火の海に包まれる。慶喜から朝廷との仲立ちを頼まれた皇女和宮の密命を受けた大奥上臈・土御門藤子は、一路京へ向かうが…。
豊家子飼いの福島、黒田らを率いて、上杉討伐の軍旅に立った家康に、三成挙兵の報が届く。揺れる小山評定は、家康の深謀によって制せられ、東軍は反転、南下西上した。待ち受ける西軍は、毛利を大将に、その数、十万。圧倒的有利な地の利を構えて、いま、東軍を関ヶ原に迎えた!数百人もの登場人物の熱い息吹が聞こえてくる、瞠目感涙の歴史巨編、堂々の完結編。
半生を西域に捧げた後漢の人・班超の苦難に満ちた道と孤独な魂の彷徨を追った「異域の人」、留学僧・行賀の在唐三十一年の軌跡と、入唐した日本人のさまざまな生の選択を描いた「僧行賀の涙」、謀反へと明智光秀を導く心の闇に巣くった亡者に迫る「幽鬼」など、歴史小説の名作八篇を収録。時代の激動を生きぬいた人間の姿を比類なき語りの力で描破する井上文学の魅力溢れる一冊。
前田利家の死により天下は徳川家康の野望に晒された。石田三成の挙兵ー関ケ原決戦も家康の天下取りを確定させたにすぎない。前田家は家康から和戦を迫られるが、当主利長は生母芳春院を人質に出し、百万石の社稷を保つ。以降、彼は大坂の秀頼を見守り、嗣子利常の成長を期しつつ、文化立国をめざす。ときに柳生衆が暗躍するが、中条流富田越後が迎え撃つ。
諏訪、村上、小笠原の諸豪を逐い、宿敵上杉謙信と川中島で激突した信玄は、信濃を手中に収めるや、一転、怒濤の如く駿河・遠江に侵入、これも制圧した。武田騎馬軍団を率い、戦国の世に君臨した名将を描く。
ほつれた柄の組紐、錆びた鍔、剥げた鞘、しかし刀身は不気味なまでに冴えわたる-。この一振りの無銘剣は、携えた者に強烈な自信と気力を与え、刀身一閃、必ずや血煙が舞う。幕末、大老井伊直弼が斃れた桜田門では「臆病者」と侮られた小河原秀之丞の手にあり、奮迅の活躍を…。続く坂下門外の変では、単身江戸城から斬り込んだ小姓名取克之助の血刀となる。さらに妖剣は、勤皇佐幕の血風吹き荒ぶ京の都は新選組の隊士に渡り…。人から人へと流転の無銘剣は、それを手にする者に数奇の運命を与え続ける。動乱の幕末を舞台に、歴史小説に新境地を拓いた森村誠一、渾身の力作。
無銘剣の兄弟剣を所持する十四代将軍徳川家茂は、怨みをのんで大坂城に没した。家茂の遺志を継いだ小姓小笠原刑馬は、無銘剣の行方を辿る旅の途につくが…。その無銘剣は血を求めて、赤報隊相楽総三の憤死に立ち合い、堺事件ではフランス軍将校の拳銃と対決。さらに余命幾許もない沖田総司の腰間に…。無銘剣を手にした沖田が、一刀両断を狙う生涯最強の敵とは誰か?戊辰戦争、宮古湾海戦、箱館戦争、佐賀の乱、そしてクライマックスの西南戦争-。幕末維新期のすべての重大事件にかかわった無銘剣はどこへ往くのか…。森村誠一、畢生の大作ここに完結。
鋭い切れ味を誇る、強靱な湾刀は、いつ、どこで造られたのか。日本刀剣史上最大の謎を大胆に推理する。戦況膠着、前九年の役、源義家が放つ起死回生の秘策。若き刀工・雄安の密命とは。
マルコ・ポーロ自筆の「もうひとつの東方見聞録」を、著者は手に入れた。なんと、マルコは日本に足を踏み入れていたのだ。モンゴル帝国皇帝・フビライのスパイとして…。だが、真の目的は日蓮に会うことだった。“カマクラ”でマルコが見たものは、日蓮との会見は、そして“蒙古襲来”で果たした役割とはー『薔薇の名前』に匹敵する壮大な歴史小説。
絶対優勢と見えた朝鮮戦役も、膠着状態から次第に退却を余儀なくされていた。そして、思いもかけぬ母・大政所の死。あれこれと悩み多い秀吉のもとで、献身的に世話をする新しい愛妾・なべ。秀吉はいつしかなべの優しさに強く魅かれていく。そんなとき、淀君懐妊の知らせが届した。だが、世間には、「もしかしたら、太閤の子ではないのかもー」という黒い噂が流れる。
群雄割拠の戦国時代。都では、管領細川氏の臣下であった三好長慶が、守役松永久秀の巧妙な知略に援けられ、ついに将軍を凌ぐ実力者となる。だが、「いずれはその権力も全て我がものに」と、久秀は密かに機会を窺っていたー。織田・豊臣に先立って、一時期、天下を掌握した三好長慶の波乱の生涯と、戦国の世を彩るしたたかな人間たちの生きざまを描く、一大歴史巨編。
吉田松陰門下である高杉晋作は、諸外国からの圧迫を目のあたりにして、日本の危機を痛感する。そこで彼は、長州藩の海軍力増大を目指し、身分にかかわらない「有志」による奇兵隊を結成した。討幕派の中心となって奮闘する晋作だが、肺結核を患い、志半ばにして斃れる…。激動期、明治維新に尽くした救世主・高杉晋作の、波瀾の生涯を描く、傑作伝記小説。
桃園で結義し、大志を誓いあった関羽、張飛、劉備の三人に次々と死が襲う!劉備の死に際し後事を託され、ついに登場した孔明は“出師之表”を遺書代わりに書き、魏を滅ぼすべく全知を傾けて乾坤一擲の大勝負に出た…。三国興亡百年の戦いはいよいよ終焉の時をむかえる。綺羅星のごとく登場する英雄豪傑たちを描き、心を捕らえて離さぬ明解三国志の完結編。
「信長には何人も女がいたんだ」と言うと、ほとんどの人が、疑わしそうな顔をする。しかし信長には男女合わせて23人の子がいたのである。女性は、7人か8人かいたが、とりわけ愛し合った女性がいた。その女性吉乃が、産後の肥立ちが悪く29歳で死ぬと、信長が一晩中、泣き明かし、小牧山城の望楼から、墓の方角を望んでは涙ぐんでいた。
-会いたい、吾郎さん。デザイナーとして見事にデビューを果たし、中西財閥の総帥・中西圭一郎の支援を得てファッションショーを大成功させた響結花は、そうつぶやいた。数年前、水島吾郎は北方ソ連領の日本群島人民共和国に亡命し、今は影の艦隊に参加している。朝鮮戦争はさらに激化し、国内では日米安保条約締結阻止の気運がますます高まるばかりである。もう二度と会えないかもしれない、と悲嘆にくれて空を見上げた同じ頃、吾郎は朝鮮半島の東海岸沖での新日本海軍との激しい攻防戦の渦中におり…。