人間がものを考えたり、互いに意志を伝えたりするとき、その媒介となるのはことばである。しかしながらコミュニケーションに際しては、往々にして相互の誤解や行きちがいが起こりがちである。ことばを使う上で大事なことは表現内容を論理的に整えることである。本書は、ことばで考えることのいちばん中核にある「理づめ」の世界を、分析哲学の権威が平易な文章で説き明かす、刮目の論理学入門書。
1 正しく考える
2 ものの名まえ
3 論理のことば
4 「すべて」と「ある」
5 機械じかけと論理
6 「たしからしい」ということ
7 意味のあいまいさ
留学中に故郷の島国が消滅してしまった女性Hirukoは、大陸で生き抜くため、独自の言語〈パンスカ〉をつくり出した。Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会う。彼女はクヌートと共に、この世界のどこかにいるはずの、自分と同じ母語を話す者を捜す旅に出るーー。誰もが移民になり得る時代、言語を手がかりに人と出会い、言葉のきらめきを発見していく彼女たちの越境譚。
留学中に故郷の島国が消滅してしまった女性Hirukoは、ヨーロッパ大陸で生き抜くため、独自の言語〈パンスカ〉をつくり出した。Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会う。彼女はクヌートと共に、この世界のどこかにいるはずの、自分と同じ母語を話す者を捜す旅に出るーー。
誰もが移民になりえる時代に、言語を手がかりに人と出会い、言葉のきらめきを発見していく彼女たちの越境譚。
本書は、『現語学1』が対象とした歴史・比較言語学、一般言語学を除く共時言語学を扱い、とくに言語をそれ以外の文化要素と結びつけて解明しようとする、開放系の言語学の展開を概観している。第1部の文献解題では各分野の要(かなめ)をなす49書を批判的に解説する。第2部の文献目録は約1900点の文献目録からなり、主なものには簡潔な解説を付け、また、巻末の雑誌文献類の書誌にはURLも付してあるのでより詳しい情報を望むものには便利である。
人気まんが『SPY×FAMILY』のキャラクターと楽しく学べる
「SPY×FAMILYワークブックシリーズ」第1弾!
〈本書の特長〉
●新学習指導要領に対応。小学校英語の準備にピッタリ!
●二次元コードで発音が聞ける! 注目の音声学習法「フォニックス」も導入。
●アルファベットから英単語、日常生活で使えるフレーズまで、楽しく覚えられる!
●アーニャたちと迷路やぬりえ、点つなぎなどのミッションをクリアしながら、
自然と英語が身につく。
●人気キャラクターたちのかわいいSPY×FAMILYシールつき。
全てのミッションをクリアしたらステラ(星)シールも貼れる!
〈もくじ〉
この本のつかいかた
アーニャといっしょに英語を学ぼう!
A・B・C/a・b・c
D・E・F/d・e・f
G・H・I/g・h・i
J・K・L/j・k・l
M・N/m・n
O・P・Q/o・p・q
R・S・T/r・s・t
U・V・W/u・v・w
X・Y・Z/x・y・z
A〜Z/a〜zのまとめ
食べもの・のみもの
どうぶつ
色
数字
みのまわりのもの
みにつけるもの・おやつ
気持ち・じょうたい
たてもの
あいさつ
自分の名前を書こう
〈この本を作った人〉
キャラクター原作/遠藤達哉(『SPY×FAMILY』)
イラスト/ペキォ
監修/佐藤久美子(玉川大学名誉教授)
専門は言語心理学・英語教育。乳幼児の言語獲得・発達を研究し、その研究成果や知見に基づく英語教育を提案している。NHKラジオ「基礎英語」の講師を長年務め、また、NHK Eテレ「えいごであそぼ」の総合指導ほか、多くの教育委員会や小学校にて英語研修講師として講演を行う。
尊敬語・謙譲語・丁寧語など、敬語の高度な発達は日本語の大きな特質だといわれているが、それらを適切に使いこなせる人は意外に少ない。本書は、言語学的分析をもとに敬語の仕組みをわかりやすく解きほぐし、豊富な用例によって使用法の様々を解説、さらに敬語システムの現代的変化をも展望する。日本語の急所というべき、複雑多岐にわたる敬語表現のすべてがこの1冊でわかる、現代人必携の書。
●1 ことばを使い分ける
1 ことばを使い分けるーー待遇表現
2 待遇表現のタイプ
3 使い分けに関係する諸ファクター
4 〈待遇表現の使用〉のモデル
5 どのような表現が待遇表現として/待遇表現的に使われるか
●2 敬語のあらまし
1 敬語とは
2 日本語の敬語の特色
3 敬語の種類
4 敬語の仕組みの捉え方ーー〈語形〉〈機能〉〈適用〉の3つの観点
●3 敬語の仕組みと使い方ーーその1 いわゆる尊敬語
1 尊敬語のあらまし
2 「……(ら)れる」 と「お/ご〜になる」
3 「なさる」「--なさる」と「お/ご〜なさる」
4 「くださる」「いただく(謙譲語)」と「……てくださる/いただく」「お/ご〜くださる/いただく」
5 動詞についてのその他の尊敬語
6 名詞・形容詞などについての尊敬語
●4 敬語の仕組みと使い方ーーその2 いわゆる謙譲語
1 謙譲語のあらまし
2 「お/ご〜する」と「お/ご〜申し上げる」(ともに謙譲語A)
3 「いたす」「--いたす」(謙譲語B)と「お/ご〜いたす」(A・Bの中間種)
4 「申し上げる」(A)と「申す」(B)/「存じ上げる」(A)と「存じる」(B)/「伺う」(A)と「まいる」(B)/「おる」(B)
5 「さしあげる」(謙譲語A)と「あげる」(謙譲語A/美化語)
6 その他の謙譲語
●5 敬語の仕組みと使い方ーーその3 いわゆる丁寧語
●6 敬語の仕組みと使い方ーーその4 全体に関すること
1 敬語の種類のまとめ
2 「お/ご」のいろいろ
3 敬語の組み合わせ(承接)
4 敬語の誤りのタイプ
●7 敬語の変化・誤り・将来をめぐって
1 現在進行中の変化ーー「お/ご〜される」の定着化など
2 敬語の変化の大きな流れ
3 敬語の変化の流れから将来を読む
4 誤りをどう受け止めるか
5 敬語システムの危機(?)--「お/ご〜する」の尊敬語化
6 敬語史(言語史)における現代の特殊性@##
ヨーロッパ中心主義、英語帝国主義の欺瞞を明晰に論じ、返す刀で、日本人のコンプレックスをあざやかに削ぎ落とす、エッセイの名手による英語論。著者自身が留学時代はじめ研究者生活のなかで味わった英語にまつわる理不尽や、自らのコンプレックスの根底を、名調子で読ませる、言語文化論エッセイ。
「英語コンプレックスを抱くのは「間違い」のようだ、というかすかな呟きがからだの奥底から聞こえてくるとすれば、本書での私の意図はさしあたり達せられたと言っていいであろう」(本書より)
ヨーロッパ中心主義、英語帝国主義の欺瞞を明晰に論じ、返す刀で、日本人のコンプレックスをあざやかに削ぎ落とす、エッセイの名手による英語論。
著者自身が留学時代はじめ研究者生活のなかで味わった英語にまつわる理不尽や、自らのコンプレックスの根底を、名調子で読ませる、言語文化論エッセイ。
まえがき
第一章 英語コンプレックスとは何か
第二章 英語コンプレックス状況の変化
第三章 私の英語コンプレックスの変化
第四章 英語コンプレックスの自然治癒
あとがき
世界に開かれた、唯一の扉。日本の近代はここから始まった!ベストセラー『赤い楯』から23年。精緻な歴史調査のメスが、江戸時代を生きた天才・俊才・奇才の業績を掘り起こす。「明治維新=近代化」史観を覆す、画期的大作!
日本を代表する国語学者の代表作「口語篇」(1950年)と「文語篇」(1954年)を1冊に収録した初の文庫版。
ヨーロッパの言語学に依拠した明治以降の国語学に抗して独自の体系を築いた稀代の学者・時枝誠記(1900-67年)。人間の心の中で起きる言語の働きに注目し、言語を実体的な対象として捉えることを拒む時枝は、文の構成要素となってそれに対応する意味を生み出す「詞」と、それを心の中で生きさせる働きそのものである「辞」を区別する。そして、「辞」が「詞」を包含し、そのまとまりがより大きなまとまりに包含されていく「入れ子構造」を基本に据え、「言語過程説」と呼ばれる独自の理論を築き上げた。
言語過程説は『国語学原論』(1941年)として発表されたが、この一般理論は具体的な日本語を説明できなければ、単なる理論で終わってしまう。だから、時枝は口語と文語のそれぞれについて、文法の詳細な解説を形にする必要があった。それこそが、本書にほかならない。
「時枝文法」の全容を明らかにした本書は、日本語に潜む文法の実相を、広い読者に向けて、全力で説き明かそうとした渾身の作であり、日本語について考える上で避けて通ることのできない不滅の古典である。読みやすさに配慮して旧字体は新字体に変えつつも、かな遣いについては時枝自身が望んだ「旧かな遣い」を保持した本文庫版を、前田英樹氏による情熱あふれる「解説」とともに味読する喜び。
【本書の内容】
[口語篇]
はしがき
第一章 総 論
第二章 語 論
第三章 文 論
第四章 文章論
[文語篇]
はしがき
第一章 総 論
第二章 語 論
第三章 文 論
第四章 文章論
注意すべき動詞活用例
解 説(前田英樹)
[口語篇]
はしがき
第一章 総 論
一 日本文法学の由来とその目的
二 文法学の対象
三 言語の本質と言語に於ける単位的なもの(一)
四 言語の本質と言語に於ける単位的なもの(二)
五 文法用語
六 用言の活用と五十音図及び現代かなづかい
第二章 語 論
一 総 説
二 語の分類ーー詞と辞
三 詞
四 辞
第三章 文 論
一 総 説
二 詞と辞との意味的関係
三 句と入子型構造(一)
四 句と入子型構造(二)
五 用言に於ける陳述の表現
六 文の成分と格
第四章 文章論
一 総 説
二 文の集合と文章
三 文章の構造
四 文章の成分
五 文章論と語論との開係
六 その他の諸問題
[文語篇]
はしがき
第一章 総 論
一 『日本文法文語篇』の目的
二 口語・文語及び口語法・文語法
三 文語法の研究史と文語の系譜
四 文語文法における語の認定
第二章 語 論
一 詞
二 辞
第三章 文 論
一 国語における用言の無主格性
二 文の構造
三 文における格
四 活用形の用法
第四章 文章論
一 文章論の課題
二 連歌俳諧における附句による文章の展開
三 散文中における韻文の意義と機能
四 文章における冒頭文の意義とその展開
五 文章の展開と接続詞
六 感動詞の文章における意義
注意すべき動詞活用例
解 説(前田英樹)
英語圏の国々では現代哲学の主流であり続ける分析哲学。しかし、日本ではその存在感は薄い。その現状が「限りなく号泣状態に近いくらい悲しい」と嘆く著者による、渾身の入門書。「ある」とはどういうこと? 「知っている」とは? 「心」とは? 「物」とは? 分析という「理屈」を武器に、そしてユーモアを隠し味に、哲学的思考へとあなたをいざなう快著! (講談社選書メチエ)
現代哲学への最良の入門書、登場! 欧米では現代哲学の主潮流をなす分析哲学。その考え方の魅力を、専門用語を使わず、あくまでも日常的な話題に題材をとりながら、あますところなく語った快著。
第1章 分析哲学をしよう
第2章 「ある」とはどういうことか
第3章 「知っている」とはどういうことか
第4章 「言っていること」とは何か
第5章 心あるもの
第6章 「かもしれなかった」とはどういうことか
第7章 「同じもの」とはどういうことか
第8章 心ふたたび
第9章 「物」とは何か
第10章 数とは何か
「スタンダード」とは本来は標準語のことである。しかし、「標準語」というと、たいていは、明治以降の「標準語」を思い浮かべるだろう。現在、アナウンサーがしゃべっている言葉、東京山の手の言葉などと言われるあの言葉だ。
ところが、本書では、江戸期以来、一貫して「話し言葉の標準形態」つまり「標準語」があったと考えている。これを、一般にイメージされる「標準語」と区別して「標準形(ルビ:スタンダード)」と呼ぼう。
書き言葉にも、標準形があった。これも、歴史をたどれば、室町時代までさかのぼる。
書き言葉を書く際の表記にも、標準形はあった。
これも、明治維新と供に成立したものではない。いわゆる、仮名遣いの問題である。
時折言われるように、歴史的仮名遣いは正しいのだろうか。
いや、江戸期には、もっと多様で柔軟な表記を許すスタンダードがあった。
このようにして、「スタンダード」と言うことを軸として、本書は話し言葉、書き言葉、仮名遣いの歴史に分け入っていく。
豊饒な言葉の世界を堪能してください。
人間社会の構築やコミュニケーション行為における意思や情報の伝達と秘匿の必要性から発生し、時代や社会の変遷とともに発展、進化しつづけた暗号。そこには数千年におよぶ人類の叡智がこめられているーー。世界や日本のさまざまな暗号の実際と理論、そして歴史的な変遷を、豊富な具体的な例を掲げ平易かつ簡潔に網羅した〈日本暗号学〉不朽の古典!
まえがき
第一章 暗号について
第二章 知らないコトバを使用する方法
第三章 特殊な暗号(暗号らしくない暗号)
第四章 量的にみた文字言語の特徴
第五章 一般的な暗号(暗号らしい暗号)
第六章 乱数と暗号
第七章 漢字と暗号
第八章 機械暗号
第九章 ミッドウェー海戦とD暗号の解読
第十章 暗号戦争
付表・暗号形式の分類
参考文献
あとがき
「メディアはメッセージ」「グローバル・ヴィレッジ」「空間と時間の消滅」などインパクトの強い言葉で1960年代を席巻したマクルーハン。
「文明批評家」「未来学者」「メディア社会学者」「ポップカルチャーの哲学者」「インターネット時代の預言者」「コミュニケーション理論家」など、さまざまな呼称で輪郭づけられたトロント大学英文学者マーシャル・マクルーハンの正体と思想の中身は、本当のところ何だったのか。
エリザベス朝文学を出発点とする個人研究史は、メタファーが持つ人間的思考の本質の探究へ、さらに狭いアカデミズム世界を超え出て技術・社会・文化の問題へと射程を広げてゆく。そこで焦点化されてくるのは人間の思考・行為を方向づけている「メディア」の偉力であった。
メディアとは単なる媒体ではない。印刷・電信・電話・テレビはもちろん、衣服も住宅も貨幣も、道具も兵器も、あらゆる人工物がメディアであってそれは人間の拡張をもたらすこと、また究極のメディアは言語であってそれは人間を整形し、知のかたちを変形しうることを見通すに到ったのである。
古今東西の事象に精通し博覧強記をもって知られたマクルーハン。また「論」を立てること、論理的文章を練り上げることを忌避したマクルーハン。アルファベットの発明がやがて文字・概念重視、視覚優位の西洋思想を築き上げていったことへの警鐘、そのアンチテーゼとしての聴触覚重視「口誦」文化復権への主張。難解と言われる著書と研究の射程を見抜き、計り知れない現代的意味の重さを読み解く。
第1章 マクルーハン旋風とは何だったのか
第2章 文学研究から世界の読み取りへ
第3章 レトリックとは思考方法の問題である
第4章 メディアとは言語であり隠喩(メタファー)である
第5章 カトリシズムとレトリックの知
第6章 知の抗争史としてのメディア論
第7章 口誦の知者=ソフィスト・マクルーハン
Fun with Katakana
ファン ウィズ カタカナ
ことばのおもしろさをビジュアルで表現したシリーズ。アイウエオで始まるカタカナ世界が絵の力をかりて広がっていきます。
※この本に掲載されている国旗は2011年10月現在、日本が承認している国家と、国際連合が正式に国家として承認している国をあわせた196か国のものです。
カタカナによるアクセント表記は、『講談社ハウディ英和辞典』に準拠しています。
動物もコミュニケーションを行うが、物語を語れるのは人間だけである。「物語」とは、人間の言語活動に特徴的かつ本質的なものである。では、ここでいう「物語」とはいったい何かーー。フランス構造主義の物語論を中心に、その理論を紹介しつつ、カフカ、田山花袋、マルケスから、「シン・ゴジラ」「エヴァンゲリオン」「この世界の片隅に」まで、具体的なテクストを分析し、物語そのものの構造を論じ、設計図を明らかにしていく。
私たちは常に、物語に囲まれて生きている。小説や漫画などのフィクションが「物語」なのはもちろん、著者によれば、スポーツ中継や日々のニュース、歴史叙述も「物語」だという。では、ここでいう「物語」とは何か。どういう性質をもつものなのかーー。これを論じてきた理論が物語論(ナラトロジー)である。
動物もコミュニケーションを行えるが、物語を語れるのは人間だけである。その意味では、物語とは、人間の言語活動に特徴的かつ本質的なものである。しかし、「物語」というと、これまでは往々にして、作者の意図や作品の社会的背景、歴史的意味の解釈にのみ、力点がおかれていた。本書でいう「物語論」はそうではなく、言語学や文体論を用いながら、物語そのものの構造を論じ、設計図を分析していく。
第一部では、フランス構造主義の物語論を中心に、その理論を紹介し、第二部では、カフカ、田山花袋、ボルヘスから、「シン・ゴジラ」「エヴァンゲリオン」「この世界の片隅に」まで、具体的なテクストを分析し、私たちの現実認識が、物語の仕方によっていることを明らかにしていく。
はじめにーー「物語論」とは何を論じるのか
第一章 「物語」の形態学
第二章 物語に流れる「時間」
第三章 視点と語り手
第四章 日本語の言語習慣
第五章 ノンフィクションは「物語」か
第六章 物語論への批判
第七章 「おもしろい展開」の法則
第八章 叙述のスピードと文体
第九章 登場人物の内と外
第十章 さまざまな語りの構造
第十一章 「物語」のこれから
おわりにーー人間だけが物語る
本書は、近年ますます注目されるフランスのユダヤ系哲学者エマニュエル・レヴィナス(1906-95年)の思想を正面から考察し、批判的に継承することを企てた意欲作である。
著者自身が「愚直にレヴィナスの中心的問題の批判的論究を試みた」と言うとおり、本書でなされているのはレヴィナスの2冊の主著『全体性と無限』(1961年)と『存在とは別様に、あるいは存在することの彼方へ』(『存在の彼方へ』)(1974年)を丹念に読み解き、その考察を厳密に検討する、という当たり前の営為である。そこで問われるのは「他者が「絶対の他」であると共に私に対し無制限に責任を求めるものだというが、それは具体的にはどういうことを意味しており、またそれが事象において確認できるものか」、そして「彼のこのような極端な責任理解が、レヴィナス個人の倫理的立場の表明にとどまらず、われわれの倫理の分析としてどういう意味をもつのか」、「彼が力点を置く言語の問題において現れる他者と無制限の責任を求める他者との間に矛盾はないのか」という本質的な点にほかならない。
第一の主著『全体性と無限』を厳しく批判する論文「暴力と形而上学」(1964年)を発表したジャック・デリダ(1930-2004年)の議論をも検討しつつ、「他者」をいかにして言語化するか、という問題をめぐって第二の主著『存在の彼方へ』への転回がなされた意味は何かが考察される。第一の主著に胚胎していた問題を、第二の主著は克服しえたのかーー著者は、レヴィナスが十分に突きつめずに終わった問題を「ケア」の理論を用いて発展させ、批判的な継承を試みる。この企てを通じて、レヴィナスの思想は今日を生きる私たちにとって生きた意味をもつようになる。
本書の原本が刊行されてから現在までの20年間に、レヴィナスの主要著作はほぼすべて日本語訳され、『全体性と無限』についても新訳がなされるようになった。進展する研究状況の中でも、本書は常に参照されるべき準拠点として、すでに「古典」の地位を確立したと言える。学術文庫として生まれ変わったことで、本書は輝きを放ち続けることだろう。
[本書の内容]
第I部 「顔」と形而上学──『全体性と無限』
第一章 「顔」──輪郭の描写
第二章 「選 び」
第三章 「同」と「他」
第四章 デリダの批判──「暴力と形而上学」
第五章 「教え」──倫理と学
第六章 「他」の言表──デリダの批判再び
第II部 方法の先鋭化──『存在の彼方へ』
第七章 「他」を語ることの困難──『存在の彼方へ』に向けて
第八章 絶対他把握の方法的問題
第九章 「感受性」と「語ること」
第十章 「顔」から「正義」へ
第十一章 レヴィナスへの批判と顔の倫理学の可能性