誰も他人と同じようには働けない。人間を部品と化す規律化。それに抗する可能性を、戦後の「主婦」や「障がい者」の運動に探る。労働とは何か、ジェンダーの視点で問い直す。
冷戦体制下、人と自然のありようをテクノロジーが根底から変化させ、食と農の営みが土から遊離した。機械化・化学化と複雑に絡み合う各国の農業政策によって失われた農村の姿と翻弄される人々の経験は、戦後日本の変貌を映す鏡である。工業化ばかりが語られがちな戦後史に、農民の近代科学受容の経験と農村女性が担った役割の変化をグローバルな視点から描く。
スタール夫人やバルザック、ゾラの文学に現われる、逸脱者としての女と男。ときに「宿命の女」「ヴィーナス」と呼ばれた彼女/彼らは何者なのか? ダヴィッドやドラクロワ、モローらの絵画・彫像のイメージから文学作品を読み解くことで、近代におけるジェンダー規範を照射する。
摂食障害の経験をもつ女性の感情や気持に耳をかたむけ、その言葉を通して、女性と性をとりまく問題群を明るみに出す。
日本以上のペースで少子高齢化が進む韓国は、「雇用許可制」を導入し、非熟練外国人労働者を正式に受け入れる政策転換に踏み切った。その労働政策、語学教育、結婚移民などの話題を現地取材で掘り下げ、問題が山積する日本の外国人政策に示唆を与える必読書。
第一次世界大戦、言葉も肌の色も異なる人々が世界中からヨーロッパ戦線に集まった。るつぼの中、語られることなく歴史から抜け落ちていった女性たち、黒人兵たち、「原住民」労働者たち、そして遺体がさらされたままの無名の人々。記憶からも追憶からも置き去りにされたー砲撃がかき消した人々の声に耳を澄ます、戦場の社会史。
太宰治・山崎富栄・太田静子をめぐる恋愛と情死の報道、「情熱の女」=柳原白蓮、松井須磨子の道ならぬ恋、“ミッチー・ブーム”を経て隆盛を極める女性週刊誌、そこに躍る女性のスキャンダル…。男性作家と恋愛関係にあった女性や作家、女優といった“女たち”は、なぜスキャンダルをその身にまとうようになるのか。またそれらをめぐる報道は、女性たちの生や身体、あるいは死をどう物語化していくのか。女性をスキャンダルの渦に巻き込み、そこにとどめ、消費の対象にしていく構造を明らかにする。
ジェンダー平等をめぐる教育現場での錯綜は男子になにをもたらすか。
男子の学力不振、厄介者の男子、「男らしさ」の市場価値の下落……
男のあり方をめぐるパラドックスに迫る。「男性優位社会」日本における 男の生きづらさ とは。
第1章 男子問題の時代? -男子をめぐる論争の展開と構図ー
第2章 男性支配のパラドックス -男の生きづらさ再考ー
第3章 下落する「男らしさ」の市場価値 -産業構造の変化と男性支配の再編ー
第4章 ジェンダーの正義をめぐるポリティクス -保守・平等・自由ー
第5章 個性尊重のジレンマ -〈男女平等教育〉の実践事例からー
第6章 分けるか混ぜるか -別学と性別特性をめぐる言説の錯綜的展開ー
第7章 男子研究の方法論的展開 -「ジェンダーと教育」研究のさらなる可能性ー
この本は、2013年11月16、17日に開催した日中韓女性史国際シンポジウム「女性史・ジェンダー史からみる東アジアの歴史像」の諸報告と、2014年3月22日開催の総合女性史学会大会「女性史・ジェンダー史からみる東アジアの歴史像ー女性史の新たな可能性を求めて」における諸報告を再構成し、1冊にまとめたものです。
光の世紀の「才女」たち。ニュートンを語る女神と化学革命の女神。ジェンダーの視点が科学史に新たな息吹を吹き込む。
1930年代と50年代、それは人々が主体性に目覚め、闘争や自己表現を集団で企てた時代だったー戦争文学から綴方運動、女性運動、原水爆言説を議論の対象にして、民衆・農民・兵士・女・プロレタリアという人々を括るカテゴリーがもつ意味や、それを自らのものとして引き受けて多様な表象行為を企てる人々のありようをジェンダーやアイデンティティなどの視点から解きほぐし、“民衆”の今日的な可能性に迫る。
中小企業において、経営者家族の労働と報酬がどのような性質を持つものなのか。本書では、織物業の事例を通じて今まであまり論じられてこなかった中小企業経営者層の労働・生活を、制度と歴史、分業、報酬、主観的世界の側面から検討する。そのフレキシブルな労働の実像に着目し、ジェンダーの視点を取り入れた新たな社会理解のモデルを提起する。
物語論・言語行為論の視点を用いつつ、「花ごもり」から「われから」にいたる作品をとりあげ、女性への差別が日常的であった明治時代にあっておどろくほど現代的なジェンダー意識をそなえていた一葉文学の謎にせまる。
“偉大な科学者にて良妻賢母”伝説を打ち破り、巧みな筆で描き出す真実のキュリー夫人とその時代。結婚と死別、家族と戦争、アカデミーとの闘い、不倫事件、放射能の栄光と悲惨ー、彼女が直面したのはすべて現代の問題だ。自然科学を女子の手に!
SDGsの前身であるMDGsの達成において、ラオスは保健、教育、ジェンダー平等の分野でどのように成果をあげたのか。ラオ族、カム族、モン族の村での調査を踏まえ、国家の政策実施能力を補完するラオス女性同盟の役割を中心に目標達成のメカニズムを明らかにする。
不安定な現代社会,わが子の将来を憂う親たちの心は揺れている。「やりたいことをさせてあげたい」「自立してほしい」「女の子だから近くにいてほしい」……。ジェンダー,経済,地域の違いによって中間層の親たちがとる子育て戦略・実践はどう変化するのか。
第I部 地域と格差社会
第1章 親の教育行動と地域差
第2章 公教育に対する親の意識の地域差ーー公立学校教育改革の進行と「脱出」意欲の変容
第3章 進学に向けての地域格差とジェンダー格差ーー背景にあるケア役割への期待
第II部 ジェンダーという格差
第4章 女性の就業選択ーー母親の就業経歴を中心に
第5章 教育する父親の意識と実践
第6章 家族の実践とジェンダーの構築
第III部 子育てする親の戦略
第7章 子どもの「主体的進路選択」と親のかかわり
第8章 個人化する社会と親の教育期待
終章 子育ては変わるのかーー格差社会を越える子ども観・子育て観を考える
人間精神の自由と平等を標榜し、19世紀アメリカ・ルネッサンス期を代表する思想家、ラルフ・ウォルドー・エマソン(1803〜82)。自己信頼にもとづく個人主義と、社会に対する責務ー。奴隷制廃止運動と女性解放運動等、社会改革運動との関わりを詳述、進化、人種、ジェンダーの視座から、社会改革者としてのエマソンを再評価する。エマソンの家庭、フラーやソローとの交友関係にも焦点をあて、思想の実践も考察する。