自分はすでに難破船か、骸骨か。それでもなお試練の故郷で文学者が探し求める自我の新しい船出。現実と想像のあわいに明晰な幻視者・小川国夫が眼をそそぐ。
「タジェナ山脈だ…」数々の苦難を乗り越えて、カイルロッドは遂にタジェナに辿り着いた。出会った人々の面影がカイルロッドの脳裏をよぎる。いよいよムルトを倒し、ルナンの都を救うのだ。雪に覆われたタジェナを登って行くカイルロッドたち。彼らを、化物たちは執拗に攻撃してくる。そんな化物を毛散らしたカイルロッドの前に、途中の街で出会ったヴァランチーヌが現われた。「どうしてもムルトを倒すというのね」その声にあるのは敵意や殺意ではなく、深い悲しみだった…。急転直下のシリーズ第6弾。カイルロッドよ、まばゆく輝き、闇を討て。
女性ガラス工芸作家との激しい愛…。美しいほどエゴイスティックにすべてを犠牲にする、都市に生きる大人たちの恋愛小説。
いま、脚光を浴びつつある、労働・社会保障分野の法的トラブルの相談・解決を担う、社会保険労務士。最先端の社労士の業務について、市民の味方としての正義感あふれる著者の活動から、オリジナルな書画・書式も折り込み、四話のドキュメントとして描き出す。
元警察官で探偵事務所を開業する橋本のところに、奇妙な位頼が舞い込んだ。廃線となった広尾線幸福駅の切符を買い、駅の壁に絵馬をかけて来い欲しい、というのだ。切符を届けに位頼人の部屋に入った橋本を待っていたのは、飛び散る血痕と、事件を捜査している十津川警部だった。表題作他4編の傑作短編集。
燦然と輝く名著「大映テレビの研究」の竹内義和、最強のテレビ論。つまらないテレビが俄然面白くなるエッセンシャル視聴テクニック。
4人の女性の苦しみと悲しみの物語を修辞批評学を駆使して展開し、この悲劇の情景を再現して現代の私たちに悔改めを迫る。
本書は縄文人の無垢な愛との合体を熱望し続ける詩人・宗左近の祈りの物語である。美事な人生観・宇宙観の織りなす生命讃歌のエッセイ集。
開戦前夜のキナ臭さが漂う上海港に降りたった、日本育ちの中国人・竜宗好。亡父の遺志を継ぎ生命を賭けて日本軍と闘うためである。竜の秘宝と、ゲリラ戦で闘う彼の秘略に探りをいれる日本軍。そのなかに東洋のマタ・ハリとよばれた女スパイ、川島芳子がいた。敵・味方にわかれ、志をもって闘う者たちの数奇な巡りあいー勝敗は、いずれに。硝煙がたちこめるなか、愛と涙の流血の闘争がはじまった…。