社会進化論と優生思想、民族主義と人種主義、身体の国民化とジェンダー…。近代世界が非対称的ながら等しく直面したこれらの問題群を、中国はどう経験し、自らの近代を彫琢していったのか。梁啓超、譚祠同、章炳麟らの思想家、女性教育家、科学者、「纒足」廃止論者などのテキストを、広い視野のもとに縦横に読み解き、中国の近代を描き出す。
在日タイ女性に焦点を当て、日ータイの越境的な家族関係、それぞれの社会・制度に埋め込まれたジェンダー規範による、高齢期に向けた選択における制約と、彼女たちが抱える脆弱性を明らかにする。高齢期を迎えるニューカマーの実相に迫った嚆矢となる研究成果。
まえがき
序章 在日タイ女性の高齢期ーー「国際移動の女性化」の帰結として
1.本書の目的と調査対象者
2.壮年期と高齢期の準備期間とは
3.高齢期に備える在日タイ女性の選択
4.研究方法と調査対象者
5.先行研究から考える、在日タイ女性の高齢期
6.本書の構成
第1章 在日タイ女性のトランスナショナルなライフコースとその背景
1.在日タイ女性の来日の複合的な背景
2.在日タイ女性を取り巻く法と福祉制度に埋め込まれたジェンダー規範
3.年金制度とジェンダー格差
4.在日タイ女性の高齢化
5.日本における高齢者への社会保障と在日タイ女性
6.送出国タイの30年の変化
第2章 在日タイ女性の高齢期をめぐる諸要素と分析概念
1.在日タイ女性の高齢期の準備に影響する諸要素
2.在日タイ女性の複合的な背景と分析概念
第3章 感情的紐帯と経済的紐帯の分かちがたさーータイと日本、娘・妻・母親という役割
1.「日本人の妻」役割によって支えられるタイの娘役割と母役割
2.「日本的」ジェンダー規範に沿う母親役割とタイの家族
3.小括
第4章 高齢期の準備ーー日タイの家族の感情的紐帯と経済的紐帯の維持と選択
1.ひとり親としての日本での子育てと、タイの親のための本帰国
2.日本での再婚と人身取引に関与したタイの母親
3.ひとり親としてケアする者からケアされる者へ
4.小括
第5章 壮年期の経済的脆弱性と高齢期の社会保障
1.社会保障制度のポータビリティと在留資格による「ケアされる権利」の制約
2.高齢期の社会保障の脆弱性と「ケアされる権利」
3.小括
第6章 エスニック・グループがもつ感情的紐帯の機能ーー包摂と相対的剥奪感による排除
1.一様に描くことができないエスニック・グループ
2.身寄りのない在日タイ女性の看取りーーエスニック・グループの感情的紐帯とタイ寺院
3.単身在日タイ女性の高齢期を支えるのは誰か
4.エスニック・グループの中に埋め込まれたジェンダー規範と相対的剥奪感
5.小括
第7章 社会的資源としての自治体窓口やNGOと相対的剥奪感の緩和
1.自治体窓口担当者との感情的紐帯
2.NGO支援者たちとのつながりと相対的剥奪感の緩和
3.小括
終章 国境を挟む高齢期の準備に潜む脆弱性
1.タイと日本、そして壮年期から高齢期へーー選択と制約の中に生きる在日タイ女性
2.結論ーートランスナショナルなライフコースの中にある脆弱性
3.本書の限界と今後の課題について
あとがき
別表
参考文献
索引
避難所、仮設住宅、復興行政など復興に関わるあらゆる場面で女性たちの声がかき消されてしまっている。女性の声はなぜ聴かれないのか。災害・復興におけるジェンダーについて考える。
欧米には見られない独特なジャンルである「少女小説」。明治末期から現在までの少女小説の物語構造を代表的な作品やジュニア小説・コバルト文庫、マンガ、ラノベを素材に読み解いて、時代ごとに変わる“少女像”や少年/少女の分割線の変容をあぶり出す。そして、明治末から百年間にわたり受容されてきた少女小説がはらむジェンダーの問題系を解明する。
市民主権による平和構築の必要性を訴えるとともにジェンダー平等実現のための課題と展望について熱く語った待望の講演録。代理母・クォータ制・平和的生存権など最新の問題に憲法から切り込む渾身のメッセージ。
ビューティー・サロンは「女らしさ」を読み解く絶好のスポット。身体・ジェンダー・健康をめぐる利用客の多彩な関心と、美容という労働の位置と経験を鮮やかに浮かび上がらせ、新たなフェミニスト思想の地平を拓く。
ベル・フックスのアメリカ黒人現代アート批評、待望の邦訳。白人至上主義的・資本主義的・家父長制による排他的な視覚の政治学が深く浸潤する現代アートとその批評、システムの内部にメスを入れ、真の黒人の美学を開示する。
女たちはたくさんの仕事をこなしてきた。バリの女たちの日常が、日本の女たちの現在を照らし出す。交響する民族誌。
ときに人々を魅惑し、ときに宗教的・倫理的な観点から可視化を規制される乳房は、隠蔽されながらも性的な消費の対象になり、時代や社会によって「エロス」「卑猥」「母性」などのさまざまな価値観と結び付けられてきた。社会状況の変革や価値観の揺らぎなどの「時代の危機」に乳房イメージが生産・消費される契機を読み取り、ヨーロッパ中世、近世イタリア、戦中・戦後の日本映画、ピンクリボンキャンペーンなど、古今東西の乳房イメージと社会との関係を明らかにする。それらを通じて、女性の身体そのものから乖離している乳房イメージと、それに密接に絡み合うジェンダーの力学を解明する乳房文化論。
「ジェンダーに関わる多領域をカバーする」「女性の人生の節目を取り上げる」「最新の法律等の情報を盛り込む」ことを基本方針として、女性をめぐる現代社会における問題について、映画やマンガ等を用いながら分かりやすく解説。改訂版では、LGBTや奨学金問題等の近年関心が高まっているテーマに関する解説も新たに掲載。また、2017年施行の改正男女雇用機会均等法、2018年施行の改正介護保険法等の最新の法令改正にも対応。
織工として定収入を得る人から、彼女たちの家事を代行して稼ぐ人まで、戦間期にイギリスの女性の働き方や暮らしは一気に多様化する。理論と実証研究の統合を目指した意欲的なオーラル・ヒストリー。一九二〇年代以降にイングランド北西部、ランカシャーで就労していた女性の経験について、一九九〇年代初頭に実施した調査をまとめたもの。
子育ては『わくわく』『つらい』『不安』?多様化する育児雑誌が映し出す子育ての現在。子育てをめぐることばの束(言説)を分析し日常に浸透する密かな統制を読み解く。育児メディア研究の最前線。
1980年代から現在に至るまで活躍する女性作家たちの小説を、結婚制度とそれにまつわる社会状況を照合しながら多角的に考察する。
凡例
序 章
第一節 「結婚小説」の解体
第二節 近代文学研究における「家族」(一)-家庭の崩壊と女性表現の批判性
第三節 近代文学研究における「家族」(二)-家族の「多様化」という評価
第四節 近代文学研究における「家族」(三)-「家族」概念の操作
第五節 本書の研究方法と目的
第六節 本書の構成と概要
注
第一部 結婚の境界線を探ること
第一章 労働と結婚を繫ぐものー山本文緒・絲山秋子の女性表象からー
第一節 均等法以後ー篠田節子『女たちのジハード』が残したもの
第二節 ゲームの裏切りー山本文緒「囚われ人のジレンマ」
第三節 「無意味さ」としての女性身体ー絲山秋子「勤労感謝の日」
第四節 均等法が残したもの
注
第二章 暴力からの脱出/他者への接近ー津村記久子「地下鉄の叙事詩」論ー
第一節 公的領域としての鉄道内空間
第二節 新自由主義の内面化
第三節 暴力の空間
第四節 満員電車という環境下のジェンダー
第五節 公共空間における偶発的なすれ違い
注
第二部 異性愛主義の延命
第三章 結婚をめぐる争いー笙野頼子『説教師カニバットと百人の危ない美女』論ー
第一節 文体と物語内容
第二節 「怒り」の居場所
第三節 「愛」と「不公正」の狭間
第四節 もう一つの争い
第五節 生活を共にする「猫」
注
第四章 教化される感覚ー多和田葉子「犬婿入り」論ー
第一節 「郊外文学」の系譜
第二節 国立市の歴史をめぐって
第三節 伝播する犬婿伝承
第四節 忘却された感触
注
第五章 包囲される/衝突する女性同性愛ー松浦理英子『ナチュラル・ウーマン』における欲望と関係性ー
第一節 「女性同性愛」表象の分析にまつわる困難
第二節 婚姻制度の牽制
第三節 白と赤の衝突
第四節 欲望と関係性の差異をめぐって
第五節 「完璧な眺め」を見下ろすなかで
注
第三部 選択肢としての結婚/まとわりつく結婚
第六章 親族関係という「蜘蛛の巣」-金原ひとみ作品の二人組と結婚ー
第一節 金原作品における「結婚」の機能
第二節 「不妊」の行方
第三節 「母」になる/させられるということ
第四節 子供の「親」とは誰なのか?
注
第七章 「不幸」な結婚が意味するものー鹿島田真希「冥土めぐり」論ー
第一節 結婚の「新たなモデル」?
第二節 「冥土めぐり」の快楽
第三節 「母殺し」の方法と脱出の構図
第四節 飼い慣らされる「不幸」
注
第八章 「家族」を作らないという選択ー姫野カオルコの介護作品を中心にー
第一節 「介護の社会化」の後に
第二節 滑川までの「三時間」
第三節 赤江朋子の家族構成
第四節 鶯小屋からの親密性
注
終章
第一節 各章の要点
第二節 偶発的な親密性を取り込むこと
注
後記
1980年代以降の生活保障システムを詳細なデータを基に跡づけ分析し,日本の社会・経済の脆弱性を照らしだす。特に貧困や地域格差など偏ったお金の流れ,個々人の「生きにくさ」がジェンダーと深く関わっていることを明らかにする。迫力ある著者待望の書。
序 論 危機や災害に脆い社会
第1章 所得の格差・動態にかんするデータ─ミクロとマクロ
第2章 生活保障システムというアプローチ
第3章 福祉レジーム論をふりかえる
第4章 生活保障システムの3類型と日本
第5章 「失われた20年」のガバナンスの推移
第6章 「失われた20年」の始まり─1990年代のガバニング
第7章 小泉改革とはなんだったか─2000年代のガバニング
第8章 生活保障システムの比較ガバナンス─2000年代の日本の座標
終 章 グッド・ガバナンスに向けて
いま激動する社会に最適なかたちを模索して試行錯誤する日本の家族。進化心理学、文化心理学など新たな視点をも統合した、新しい家族心理学。
男女ともにワーク・ライフ・バランスを実現するためのカギとは?一人ひとり異なる生きた個人の内面の声と、働き方やジェンダー規範という社会の構造的な問題とを、生涯発達心理学の視点から結びつける。