ノーベル文学賞(1991年)受賞の白人女性作家として著名なナディン・ゴーディマが生涯を通じて追求し描き続けた、人種差別と男女差別と異文化交雑する南アフリカ社会の中に生きる女と男の姿を通して見えてくるものがある。
序章 ゴーディマの作品世界と南アフリカ社会:人種、ジェンダー、セクシュアリティが交差する国家と家族のポリティクス
第一章 『偽りの日々』における植民地支配者の娘の抵抗
第二章 『愛する機会』と『自然の変種』におけるアパルトヘイト政策と異人種間の愛と性
第三章 『バーガーの娘』における場所のポリティクスと主体性の問題
第四章 『マイ・サンズ・ストーリー』におけるカラードアイデンティティと南アフリカの文化変容の模索
第五章 新生南アフリカ国家と家族、女性、権力:ゴーディマのポストアパルトヘイト文学
終章 ゴーディマの作品世界と南アフリカ社会、国家、家族
参考文献
私たちは知らず知らず“国家”がつくる枠の中で生きている。“国家”が規定する境界を超えるとはどういうことか、多様な立場から真摯に論ずる。
序章 戦後日本の政治地理学・行政地理学
第1部 グローバル化をめぐる大都市圏郊外の議会と行政
第1章 グローバル化がもたらした郊外の都市合併ーー東京都旧田無市・保谷市
第2章 東京大都市圏郊外周辺部における最後の「開発型合併」--東京都あきる野市
第2部 米軍基地をめぐる大都市圏郊外の議会と行政
第3章 郊外の在日米軍基地所在都市における文化と政治ーー東京都福生市
第4章 騒音と補助金ーー郊外の「基地公害」をめぐる政治
第3部 大都市圏郊外の政治・行政をめぐる新しい論点ーー環境・ジェンダー
第5章 郊外の新ごみ処理場建設場所をめぐる「環境正義」--東京都小金井市
第6章 地下水をめぐる「ポリティカル・エコロジー」--山梨県北杜市白州町
第7章 40年にわたる郊外の女性運動からみえる市政と「ジェンダー」--旧田無市・保谷市の「どんぐり会」
一橋大学リレー講義「ジェンダーから世界を読む」
書籍化第4弾!
私的領域と切り捨てられてきたものを、
公的な議論の場に引きあげた第二派フェミニズム。
その意義を原点に立ち返って考える。
キャロル・ハニシュのエッセイタイトルにして、
第二派フェミニズム(1960-70年代)の運動を象徴する
スローガンとなった「個人的なことは政治的なこと」。
当時、そして現在の私たちに、
この言葉が意味するものとは何なのか?
ジェンダー、社会、そして個人の生き方との関わりを、
さまざまな角度から13人の研究者が検討する。
巻末には、
キャロル・ハニシュ「個人的なことは政治的なこと」
(ハニシュ本人による序文、訳者解題を付す)を収録。
グリム童話、民話、伝説、神話、演劇、映画、現代小説、都市伝説…。
巷間に伝わる「物語」には、なにが描き出されてきたのか。
民話の受容の歴史や様相、モティーフとその類型、さらにはそこに内包されるジェンダー観念やステレオタイプなど、「物語」の諸相とその連続性を、比較民話学や文献学・民俗学・社会学の手法から考察する。多彩なジャンルの「物語」を題材にして研究手法の新境地を探る。
はじめに 大野寿子
プロローグ
古い菩提樹の下ーグリム兄弟『子どもと家庭のメルヒェン集』の最初の数文について ハインツ・レレケ(横道誠 訳)
1 グリム童話を考える
神話と現実のはざまの「メルヒェンおばさん」像 ベルンハルト・ラウアー(橋木郁子 訳)
「白雪姫」と近親相姦 浜本隆志
巖谷小波とグリム童話ー「小雪姫」をめぐって 前田陽子
朝倉めぐみと中里研の世界ーグリム兄弟協会主催による日本人初のグリム童話展 沖島博美
2 グリム兄弟を考える
幕末にヤーコプ・グリムを訪問した日本人について 野口芳子
歴史を伝える〈もう一つの真実〉のメディアー近代批判としてのグリム兄弟の〈叙事ポエジー〉概念 村山功光
ロマニストとしてのヤーコプ・グリムー古スペイン語ロマンセへの関心 横道誠
3 モティーフの変遷と展開を考える
グリム兄弟、ゲーテ、コサン・ド・ペルスヴァルーアラビアンナイトと異文化理論 ルース・B・ボッティックハイマー(稲毛理津子/野口芳子 訳)
殺された子どもの行方ー昔話「継子と鳥」とATU720類話にみる〈あわい〉存在としての子ども 鵜野祐介
ジョージ・ピールの『老婆の昔話』におけるふたつのモチーフー死者の恩返しと井戸の中の頭 前原澄子
4 社会的役割と家族のかたちを考える
おとぎ話とフェミニズム童話 谷口秀子
「新しい女」とイギリス世紀末文学 玉井ショウ
女性のキャリアと金融リテラシーースミス・カレッジの金融教育からの示唆 西尾亜希子
父親像からみた『花木蘭』-叙事詩から演劇へ 中山文
ドイツの現代伝説における父親像と母親像 金城ハウプトマン朱美
5 表象文化とその連続性を考える
テレビ映画『ニーベルングの指環』-ニーベルンゲン伝説の現在の姿 齊藤公輔
怪物のうごめく海でー古代〜中世ヨーロッパにおける「ひとと水族の関係史」 溝井裕一
花と妖精のヨーロッパー挿絵が誘う「もうひとつの世界」 大野寿子
6 グリム研究者野口芳子について
ふたりのグリム研究者、ハインツ・レレケと野口芳子ー訳者解題 横道誠
「学び」がもたらす「笑顔」について 島田芽実
野口先生との思い出 中村早希
論評『グリム童話と魔女』に寄せて 下程息
エピローグ
野口芳子先生のご活躍を祈念して 竹原威滋
おわりに 大野寿子
「基盤の解体」を鍵語にしてフォークナー創設の架空の土地、
ヨクナパトーファを舞台にした
複雑かつ難解な代表作『響きと怒り』『八月の光』
『アブサロム、アブサロム!』『行け、モーセ』を読み解く!
南北戦争での敗北によってアメリカ南部で
劇的に引き起こされた〈人種・階級・ジェンダーの境界のゆらぎ〉
= 〈貴族階級の白人男性層という旧南部社会の基盤の解体〉を、
〈ストーリー〉の時間と空間の基盤を解体する技法により、それが
いかに強化されているのか、とスリリングな文学読解に本書は誘う。
第二部では、南部作家コーマック・マッカーシーや
映画作家クエンティン・タランティーノ、イニャリトゥ、アリアガ
へのフォークナーの影響、そして、横溝正史の小説を比較。
さらに、大橋健三郎がなぜフォークナー研究に至ったのかを
考察して、日本人がフォークナーを研究することの意味を探る!
序
第1部 ヨクナパトーファ小説における旧南部解体
第1章 虚飾からの覚醒ーー『響きと怒り』
第2章 旧南部への直視ーー『八月の光』
第3章 南部貴族の起源
ーー『アブサロム、アブサロム!』
第4章 南部貴族の重罪ーー『行け、モーセ』
第2部 フォークナー文学と現在/日本
第5章 フォークナーと現代アメリカ南部作家
ーーコーマック・マッカーシー
第6章 フォークナーと現代映画作家
ーークエンティン・タランティーノ、
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、
ギジェルモ・アリアガ
第7章 アメリカ南部と日本のジレンマ
ーー横溝正史
第8章 日本におけるアメリカ文学研究の確立
ーー大橋健三郎
女性解放を中心としたクラーラ・ツエトキーンの伝記であるだけではなく、クラーラが生きた時代の「歴史」における「個人」の役割を追求した。著者55年間にわたる研究の集大成である。
明治女性の書きことばから日本の性差を切り出す!
明治十八年『女学雑誌』が創刊され、多くの女性が論説文を執筆した。
漢字平仮名交じり文で書かれ、文体としては基本的に男性の論説文と同様な漢文訓読的要素を多く含んでいる。
本書では、読者の寄稿文のほか、
跡見花磎 荻野吟子 中島俊子 佐々木豊寿
清水紫琴 若松賤子 樋口一葉
の書きことばを初めて解析。
女性解放の先達とされながら、性役割容認という批判もある平塚らいてうの知られざる姿を解明。「ジェンダー・アイデンティティ」の確立を求めた思想と行動を、彼女の生きた時代と個性の葛藤のなかから描き出す。
はじめに/「父の近代」との葛藤(「近代日本」批判の論理/青春の彷徨ー「性としての自己」の模索)/デモクラシーとジェンダーの葛藤(『青鞜』と「社会」の接点ー平塚らいてうと生田長江を中心に/『青鞜』にみる「性の自己決定」)/「産む性」の社会構想と現実(平塚らいてうの国家観ー「母性保護論争」を中心に/平塚らいてうと新婦人協会ー「花柳病男子結婚制限法」運動を中心に)/「協同自治社会」の実践と挫折(平塚らいてうにおける「母性主義」の歴史的意義/平塚らいてうと宮沢賢治の「協同」思想)/「清算されるべき過去」とその克服(「個」と「国体」の間/平塚らいてうの「戦争責任」論をめぐって)/終章 平塚らいてうにおける「自然」と「社会」-その世界構想
キリスト教において、教会一致運動と訳されるエキュメニズム。その中心的な課題とは何か。
女性の按手の是非やセクシュアリティに関わる問題群は90年代以降の「エキュメニカルの冬」をもたらしたとされるが、そこではいかなる論争と実践が展開されてきたのか。多くの取り組みと議論を一次資料を通して丹念に辿る。
ジェンダー正義の視点から綴られた、これまでにない新たなエキュメニズムの歴史!
「コラム」ではエキュメニカル運動を理解するための基本概念を丁寧に解説する。
序 論
第1章 エキュメニカルの冬
第2章 信徒の参加
第3章 女性の参加
第4章 女性の按手
第5章 ヒューマンセクシュアリティ
第6章 ジェンダー正義
結 論
[コラム]
1 世界宣教会議(WMC)
2 国際宣教協議会(IMC)
3 生活と実践(Life and Work)
4 信仰と職制(Faith and Order)
5 世界教会協議会(WCC)の成立
6 ミッシオ・デイ(missio Dei)
性別移行し生きる道を模索し続ける人々の生活史
女(らしさ)/男(らしさ)という二元的かつ固定的な性のあり様にもとづく社会の様相に変革をもたらす当事者たちの可能性とは
日本における性同一性障害にもとづく社会問題化の様相およびその背景について明らかにし、また、ジェンダー形成の観点から、当事者たちが直面している困難が生じるプロセスや、その背後にある社会構造の問題を明らかにする。
はしがき
第1章 トランスジェンダーの社会問題化
第1節 用語ーートランスジェンダー・LGBT(Q+)・SOGI(ESC)
第2節 ラベリング理論と構築主義アプローチ
第3節 一九九〇年代後半から二〇一〇年代までの様相
第4節 社会問題化と〈中心ー周縁〉化
コラム1 りりぃの生活史ーー生い立ち
第2章
トランスジェンダーの生活史調査
第1節 トランスジェンダーの病理/脱病理化
第2節 調査の概要
第3節 3名の事例分析
第4節 当事者たちのリアリティ
コラム2 りりぃの生活史ーー性別越境と性風俗
第3章 トランスジェンダーの教育支援
第1節 教育支援とジェンダー形成
第2節 4名の事例分析
第3節 ジェンダー/セクシュアリティに関する意識
コラム3 りりぃの生活史ーー学びと研究
第4章 トランスジェンダーの二重生活
第1節 女装者論と理論的枠組み
第2節 2名の事例分析
第3節 女装者たちが直面する困難
コラム4 りりぃの生活史ーー海外渡航
第5章 トランスジェンダーのジェンダー形成
第1節 まとめーー主流となった社会問題化と当事者たちの困難再考
第2節 今後の展望ーー差別の客体から変革の主体へ
第3節 本書の意義と限界
あとがき
誰も他人と同じようには働けない。国家による生活統制を機に、主体化の作用が民衆に及ぶ状況を、戦時下、産業報国運動の展開過程に見る。また、人間を部品と化す規律化。それに抗する戦後社会運動の可能性を、生活協同組合と胎児性水俣病患者たちに着目し探る。
序 章 規律化の二面性と「普遍主義」
第1章 近代社会と公私の分離
──規律化・ジェンダー・「普遍主義」
第2章 戦時下の生活統制と産業報国運動の展開
──国家社会主義と規律化
第3章 1950年代における横浜生協の生活文化活動
──規律化に抗する「主婦」の運動
第4章 1970年代における胎児性水俣病患者の運動
──規律化されない身体と新しい共同性
終 章 主体性の回復と新しい共同性
「ケア」と「ジェンダー」の両概念の「定義」に正面からアプローチし、
福祉社会学を多様な視点と分析手法によって考察した意欲作。
本書は、編者である西下が名古屋市内にある金城学院大学に在職当時に指導した社会学専攻博士課程大学院生あるいは修士課程院生であったメンバー達と共同で執筆している。筆者は、30代前半から40代後半まで14年間在職しており、その間に指導した院生達である。ここ数年にわたる活発な議論を通じて本書は完成している。
本書は、幾つかの特色をもつ。まず第1に、本書のタイトルに入る「ケア」と「ジェンダー」の両概念についてそれぞれの「定義」に正面からアプローチしている点が挙げられる。具体的には、序章でケアとジェンダーに関する先行研究の定義を参照し、批判的に検討した上で筆者の暫定的な定義を提示している。第2に、これも本書のタイトルに入る「福祉社会学」の概念が、その定義において重層的であることを明らかにした点が挙げられる。つまり、福祉社会学は、第1に社会学の一分野である連字符社会学であり、第2にあるべき福祉社会を模索する学際的な科学であるという2層から構成される概念であると理解する。その考え方は、前職の大学で「福祉社会学科」を新設する際の基本的な枠組みとなった。第3に、具体的なトピックスとして各執筆者の研究キャリア上で選ばれた介護制度、子供の共同監護、女性労働、単身高齢者、路上生活者に焦点が当てられ実証的な分析が行われている。その際、国際比較の視点あるいは国内比較の視点、共時的視点、通時的視点といった様々な視点から多様な分析が展開された。第4に、本書は大学の学部、大学院の教科書として使われることを意識して執筆された。具体的には、多くの章で、章の最初に理論的な考察や理論的な背景の説明がなされ、その考察や説明を踏まえた「人々の語り」(質的データ)が多様な方法で事例分析されている。教科書としての分かりやすさが、十分に発揮されていると考える。意欲に満ちた本書が広く長く読まれることを期待したい。