太宰治の恋愛と情死の報道、情熱の女=柳原白蓮、松井須磨子の道ならぬ恋、ミッチー・ブームを経て隆盛を極める女性週刊誌、そこに躍る女性のスキャンダル……。女性をスキャンダルの渦に巻き込み、身体や生を物語化して消費の対象にする構造を解き明かす。
凡例
はじめに
第1部 スキャンダルを描く──〈太宰治〉の周縁
第1章 「斜陽」のざわめく周縁──〈太田静子〉のイメージ化
1 太宰治「斜陽」と太田静子『斜陽日記』
2 〈「斜陽」のモデル〉という言説
3 広告としての『斜陽日記』
4 〈書く女〉の商品価値
5 「文学少女」とテクスチュアル・ハラスメント
6 〈太田静子〉というイメージ
第2章 こぼれ落ちる声──太田治子『手記』と映画『斜陽のおもかげ』
1 生み出される痕跡
2 『手記』と『斜陽のおもかげ』
3 母はどのように描かれたか
4 こぼれ落ちる声
第3章 「情死」の物語──マス(大衆)メディア上に構築された〈情死〉のその後
1 「情死報道」と作家イメージ
2 選び取られた〈物語〉
3 「情死」を描く──小島政二郎「山崎富栄」と田辺聖子「実名連載小説」
4 神話化する作家と山崎富栄の〈物語〉
第2部 スキャンダルを連載する──〈女〉を語る
第4章 「禁じられた恋」のゆくえ──女性週刊誌「ヤングレディ」に掲載された「実名連載小説」をめぐって
1 女性週刊誌という「夢」
2 「ヤングレディ」と「実名連載小説 禁じられた恋に生きた女たち」
3 「禁じられた恋」のゆくえ──「女流作家」たちが内面化したもの
4 女性週刊誌という「夢」?
第5章 「情死」はいかに語られたか──「ドキュメント情死・選ばれた女」をめぐって
1 文学を語る女性週刊誌
2 「ドキュメント情死・選ばれた女」
3 「いま」・ここの出来事として
4 「選ばれた女」たち
第6章 女性週刊誌で「ヒロイン」を語るということ──石垣綾子「近代史の名ヒロイン」を考える
1 女性週刊誌「微笑」の誕生
2 石垣綾子「近代史の名ヒロイン」
3 写真から立ちのぼる「ヒロイン」の姿
4 「自伝」を読むという行為
終 章 〈女〉を語る場
1 「明治百年」と女性週刊誌
2 女性週刊誌のその後
3 ミソジニーの現場
初出一覧
おわりに
光の世紀の「才女」たち。ニュートンを語る女神と化学革命の女神。ジェンダーの視点が科学史に新たな息吹を吹き込む。
物語論・言語行為論の視点を用いつつ、「花ごもり」から「われから」にいたる作品をとりあげ、女性への差別が日常的であった明治時代にあっておどろくほど現代的なジェンダー意識をそなえていた一葉文学の謎にせまる。
イギリス帝国が海を隔てた植民地下の帝国臣民および被支配民に与えた影響を考察する。政治・外交史というこれまでの植民地史のアプローチを超えて、ジェンダーやマイノリティ問題などにも言及しており、多文化社会のイギリスを考える上で重要な本となろう。
初版への序文
第二版への序文
日本語版への序文
目次
地図
第1章 王国の統合
第2章 奴隷、商人、商業
第3章 「新世界」への入植
第4章 アメリカ合衆国独立以降
第5章 インドにおけるイギリス
第6章 グローバルな成長
第7章 帝国を支配すること
第8章 支配されるということ
第9章 ジェンダーとセクシャリティ
第10章 イギリス帝国への抵抗
第11章 脱植民地化
謝辞
訳者のあとがき
年表
索引
自然科学を女子の手に!
〈偉大な科学者にして良妻賢母〉伝説を打ち破り、巧みな筆で描き出す真実のキュリー夫人とその時代。結婚と死別、家族と戦争、アカデミーとの闘い、不倫事件、放射能の栄光と悲惨ーー、彼女が直面したのはすべて現代の問題だ。
この本は、2013年11月16、17日に開催した日中韓女性史国際シンポジウム「女性史・ジェンダー史からみる東アジアの歴史像」の諸報告と、2014年3月22日開催の総合女性史学会大会「女性史・ジェンダー史からみる東アジアの歴史像ー女性史の新たな可能性を求めて」における諸報告を再構成し、1冊にまとめたものです。
日本社会で長期間にわたって居住している高学歴移民女性について、包括的な「ライフコース」の視点からその経験と現状を明らかにし、そこからみえてきた問題の解決策を探る。従来の移民女性像を超え、多様な生き方を描き出す移民研究・ジェンダー研究の最新成果。
1930年代と50年代、それは人々が主体性に目覚め、闘争や自己表現を集団で企てた時代だったーー戦争文学から綴方運動、女性運動、原水爆言説を議論の対象にして、多様な表象行為を実践する人々のありようを解きほぐし、〈民衆〉の今日的な可能性に迫る。
はじめに
第1部 一九三八年、拡張する文学ーー周縁の発見と包摂
第1章 「民族」の〈歴史性〉と「民衆」の〈普遍性〉--島木健作『生活の探求』、火野葦平『麦と兵隊』
1 「民衆」「大衆」へのまなざし
2 「民衆」の称揚が意味するもの
3 「農民」ないし「民衆」の表象ーー島木健作『生活の探求』
4 「民族」の境界を越えてーー火野葦平『麦と兵隊』
5 「文学」への期待
第2章 周縁を表象する書き手たちーー豊田正子『綴方教室』、火野葦平『麦と兵隊』
1 『綴方教室』ブーム
2 綴方の文体規範と書き手像
3 火野葦平『麦と兵隊』の語り
4 ジャンルを超える価値
5 拡張する文学
第3章 「少女」たちの語りのゆくえーー太宰治「女生徒」「千代女」とその周辺
1 鑑賞すべき「生地のよさ」
2 「何心なく」書くことーー太宰治「千代女」
3 「女生徒」のセクシュアリティ
4 太宰治の「青春」と「少女」たちの語りのゆくえ
第2部 一九五〇年代、綴る/語る女たちーー発話の政治性あるいはマジョリティ形成とアイデンティティ
第4章 「人民文学」と〈書くこと〉--階級的視点と国民文学論
1 「人民文学」という雑誌
2 「勤労者」の文学
3 労働者階級は何を(傍点2字)書きうるのか
4 「国民文学」をめぐって
5 どのように(傍点5字)書くべきなのか
第5章 「私」を綴る「人びと」--一九五〇年代における「綴方」
1 「綴方」をめぐって
2 江口江一「母の死とその後」
3 意識へのまなざしーー一九五〇年代の言説空間
4 表象される「なかまたち」
5 無色な「大衆」の登場
第6章 泣く「女」たちーー「平和」の語りとジェンダー
1 『二十四の瞳』と日本教職員組合婦人部
2 模索される「女教師」像ーー第一回婦人教員研究協議会とジェンダー
3 報告から語りへーー『扉をひらくもの』と『母と女教師と』
4 〈愛〉と〈無力〉--映画『二十四の瞳』
5 「涙」の力
第7章 〈未来〉の諸相ーー原水爆禁止署名運動とジェンダー
1 原水爆禁止署名運動
2 女性表象と未来志向
3 破綻する時間の物語ーー大田洋子『夕凪の街と人とーー一九五三年の実態』
4 〈未来〉は誰のものか
5 〈未来〉の諸相
終章 〈無色〉な主体のゆくえーー「声」の承認をめぐって
初出一覧
おわりに
近年、ジェンダーを論じる際には、旧来の男女二元論を超えるようになってきている。本書は現代社会に生きる「ノンバイナリー」(性自認が男女の二枠に当てはまらない人)たち30人の率直な語りを集め、ジェンダーとは何かという問いに真正面から向き合う。
人間精神の自由と平等を標榜し、
19世紀アメリカ・ルネッサンス期を代表する思想家、
ラルフ・ウォルドー・エマソン(1803-82)。
「自己信頼」を信条に個人主義を貫くエマソンは、
アメリカ社会発展のシンボルとされ、
社会改革者としての側面は見過ごされてきた。
「自己信頼」にもとづく個人主義と、社会に対する責務で
葛藤するエマソンは、自然科学、とくに進化論をとおして、
自身の改革思想を形成していく。
本書では、主に進化、人種、ジェンダーの視座から、
エマソンの社会改革思想を包括的に検証し、
さらに、奴隷制廃止運動と女性解放運動といった、
当時の社会改革運動とエマソンの関わりを詳述、
社会改革者としてのエマソンを再評価する。
また、エマソンの家庭、
マーガレット・フラーやヘンリー・D・ソローとの交友関係にも
焦点をあて、思想の実践も考察する。
目次内容
序章
第1章 自然科学と進化にみる思想の原点
1 自己信頼と社会改革観
2 自然科学への関心ーー「対応の思想」と信仰の確立
3 進化思想と楽観主義ーー神意の象徴としての上昇螺旋運動
第2章 エマソンと奴隷制
1 社会への責務と正義感ーー個人と社会の狭間で
2 奴隷制問題と人種観を巡って
3 奴隷制廃止運動への参加
第3章 エマソンと女性の権利
1 女性解放運動への関わりーー理想の女性像との葛藤
2 「女性について」(1855)にみる女性観
3 思想の変化ーー1869年の講演から
第4章 家庭におけるエマソンと思想の実践
1 夫婦の関係と結婚観
2 愛と友情ーーフラーやソローとの交友関係を中心に
3 妻リディアンと「真の女性らしさ」
終章
SDGsの前身であるMDGsの達成において、ラオスは保健、教育、ジェンダー平等の分野でどのように成果をあげたのか。ラオ族、カム族、モン族の村での調査を踏まえ、国家の政策実施能力を補完するラオス女性同盟の役割を中心に目標達成のメカニズムを明らかにする。
不安定な現代社会,わが子の将来を憂う親たちの心は揺れている。「やりたいことをさせてあげたい」「自立してほしい」「女の子だから近くにいてほしい」……。ジェンダー,経済,地域の違いによって中間層の親たちがとる子育て戦略・実践はどう変化するのか。
第I部 地域と格差社会
第1章 親の教育行動と地域差
第2章 公教育に対する親の意識の地域差ーー公立学校教育改革の進行と「脱出」意欲の変容
第3章 進学に向けての地域格差とジェンダー格差ーー背景にあるケア役割への期待
第II部 ジェンダーという格差
第4章 女性の就業選択ーー母親の就業経歴を中心に
第5章 教育する父親の意識と実践
第6章 家族の実践とジェンダーの構築
第III部 子育てする親の戦略
第7章 子どもの「主体的進路選択」と親のかかわり
第8章 個人化する社会と親の教育期待
終章 子育ては変わるのかーー格差社会を越える子ども観・子育て観を考える
避難所、仮設住宅、復興行政など復興に関わるあらゆる場面で女性たちの声がかき消されてしまっている。女性の声はなぜ聴かれないのか。災害・復興におけるジェンダーについて考える。
市民主権による平和構築の必要性を訴えるとともにジェンダー平等実現のための課題と展望について熱く語った待望の講演録。代理母・クォータ制・平和的生存権など最新の問題に憲法から切り込む渾身のメッセージ。