中小企業において、経営者家族の労働と報酬がどのような性質を持つものなのか。本書では、織物業の事例を通じて今まであまり論じられてこなかった中小企業経営者層の労働・生活を、制度と歴史、分業、報酬、主観的世界の側面から検討する。そのフレキシブルな労働の実像に着目し、ジェンダーの視点を取り入れた新たな社会理解のモデルを提起する。
序 章 経営者家族はどのように働いてきたのか
1 中小企業における経営者家族の労働への着目
2 小規模企業の重みと家族の比重
3 生きられた経験から中小工場制の成り立ちを探る
補 論 家族従業者の定義
第1章 織物業とその経営者世帯の構造
1 戦後の絹人絹織物業が抱えた経営環境
2 量産型織物業における分業
3 織物業を営む経営体の構造
4 労働力の構成からみる家族の比重
第2章 織物業を営む家族の働き方
1 経営者の家族は何をしていたのか
2 経営者家族が行う仕事の具体的な様相
3 多様な妻の働き方と役割ーー家族経営のなかの女性
4 家族の柔軟な労働と妻が果たす大きな役割
第3章 家族に対する報酬の配分とその行方
1 家族労働に対する金銭的報酬
2 戦後税制における家族労働の扱い
3 家族従業者に対する報酬付与の過程
4 支払われた報酬の行方ーー報酬の回収・指示・自己抑制
5 回収されていく報酬
補 論 事業を営む家族の老齢年金と高齢期の生活保障
第4章 男性経営者の世界とその帰結
1 男性たちにとっての関心事とその背景
2 男性経営者たちにとっての家族と責務ーー親・きょうだい・子ども
3 男性経営者たちにとっての事業ーーその思いと夢
4 家族的責任と一生をかけた仕事への思いの帰結
第5章 妻たちの労働観と再生産領域における役割
1 女性たちの労働の実像
2 妻たちの職歴と職業観
3 再生産領域に関わる労働の調整
4 彼女たちの労働・生活観
第6章 事業に対する妻の思いと責務
1 妻は事業をどう捉えていたのか
2 事業経営における妻の位置の違い
3 経営者家族の一員としての自負
4 どう捉えようと働かざるを得ないーー家族であることの社会的効果
5 工場を支えた妻たち
終 章 事業を営む人々の側に立って社会を見る
1 経営者家族が社会のなかで果した役割
2 経営者家族が稼ぎ出したものの行方
3 21世紀の労働分析に求められるもの
引用文献
あとがき
資 料 編 【東北・北陸調査地における聞き取り調査票】
人名・事項索引
イギリス帝国が海を隔てた植民地下の帝国臣民および被支配民に与えた影響を考察する。政治・外交史というこれまでの植民地史のアプローチを超えて、ジェンダーやマイノリティ問題などにも言及しており、多文化社会のイギリスを考える上で重要な本となろう。
初版への序文
第二版への序文
日本語版への序文
目次
地図
第1章 王国の統合
第2章 奴隷、商人、商業
第3章 「新世界」への入植
第4章 アメリカ合衆国独立以降
第5章 インドにおけるイギリス
第6章 グローバルな成長
第7章 帝国を支配すること
第8章 支配されるということ
第9章 ジェンダーとセクシャリティ
第10章 イギリス帝国への抵抗
第11章 脱植民地化
謝辞
訳者のあとがき
年表
索引
今までになかった『判断力批判』入門!
近年の再検討事項でもあるジェンダーの視点を取り入れつつ、「難解」と評判のカント美学を理解しやすいように解説。
はじめに
第一章 無関心性:快の感情の分析(その一)
第二章 主観的な普遍性:快の感情の分析(その二)
第三章 目的のない合目的性:快の感情の分析(その三)
第四章 範例的な必然性:快の感情の分析(その四)
第五章 三つの原理と正当化:快の感情の正当化
おわりに
太宰治の恋愛と情死の報道、情熱の女=柳原白蓮、松井須磨子の道ならぬ恋、ミッチー・ブームを経て隆盛を極める女性週刊誌、そこに躍る女性のスキャンダル……。女性をスキャンダルの渦に巻き込み、身体や生を物語化して消費の対象にする構造を解き明かす。
凡例
はじめに
第1部 スキャンダルを描く──〈太宰治〉の周縁
第1章 「斜陽」のざわめく周縁──〈太田静子〉のイメージ化
1 太宰治「斜陽」と太田静子『斜陽日記』
2 〈「斜陽」のモデル〉という言説
3 広告としての『斜陽日記』
4 〈書く女〉の商品価値
5 「文学少女」とテクスチュアル・ハラスメント
6 〈太田静子〉というイメージ
第2章 こぼれ落ちる声──太田治子『手記』と映画『斜陽のおもかげ』
1 生み出される痕跡
2 『手記』と『斜陽のおもかげ』
3 母はどのように描かれたか
4 こぼれ落ちる声
第3章 「情死」の物語──マス(大衆)メディア上に構築された〈情死〉のその後
1 「情死報道」と作家イメージ
2 選び取られた〈物語〉
3 「情死」を描く──小島政二郎「山崎富栄」と田辺聖子「実名連載小説」
4 神話化する作家と山崎富栄の〈物語〉
第2部 スキャンダルを連載する──〈女〉を語る
第4章 「禁じられた恋」のゆくえ──女性週刊誌「ヤングレディ」に掲載された「実名連載小説」をめぐって
1 女性週刊誌という「夢」
2 「ヤングレディ」と「実名連載小説 禁じられた恋に生きた女たち」
3 「禁じられた恋」のゆくえ──「女流作家」たちが内面化したもの
4 女性週刊誌という「夢」?
第5章 「情死」はいかに語られたか──「ドキュメント情死・選ばれた女」をめぐって
1 文学を語る女性週刊誌
2 「ドキュメント情死・選ばれた女」
3 「いま」・ここの出来事として
4 「選ばれた女」たち
第6章 女性週刊誌で「ヒロイン」を語るということ──石垣綾子「近代史の名ヒロイン」を考える
1 女性週刊誌「微笑」の誕生
2 石垣綾子「近代史の名ヒロイン」
3 写真から立ちのぼる「ヒロイン」の姿
4 「自伝」を読むという行為
終 章 〈女〉を語る場
1 「明治百年」と女性週刊誌
2 女性週刊誌のその後
3 ミソジニーの現場
初出一覧
おわりに
ライフコース研究の金字塔『大恐慌の子どもたち』の著者グレン・エルダーらが別のデータを用いてまとめた、20世紀を通貫してアメリカ人の人生を追跡した縦断調査分析の成果。20世紀初頭生まれの人々の人生経験と社会変動を重ね合わせた貴重な記録である。
光の世紀の「才女」たち。ニュートンを語る女神と化学革命の女神。ジェンダーの視点が科学史に新たな息吹を吹き込む。
物語論・言語行為論の視点を用いつつ、「花ごもり」から「われから」にいたる作品をとりあげ、女性への差別が日常的であった明治時代にあっておどろくほど現代的なジェンダー意識をそなえていた一葉文学の謎にせまる。
女たちはたくさんの仕事をこなしてきた。バリの女たちの日常が、日本の女たちの現在を照らし出す。交響する民族誌。
自然科学を女子の手に!
〈偉大な科学者にして良妻賢母〉伝説を打ち破り、巧みな筆で描き出す真実のキュリー夫人とその時代。結婚と死別、家族と戦争、アカデミーとの闘い、不倫事件、放射能の栄光と悲惨ーー、彼女が直面したのはすべて現代の問題だ。
ジェンダーについての理解が急速に深まりつつある現在、日本語学の視点から、どのような知見が提供できるだろうか。男ことば・女ことばとはなんだったのか。実際の言語行動とジェンダーの関係はどのように分析・解釈されるのか。地域言語・歴史的言語を含めた言語実態の観察をベースに、日本語のジェンダー研究をアップデートする一冊。
執筆者:石川慎一郎、遠藤織枝、荻野綱男、尾崎喜光、加藤大鶴、上林葵、金水敏、小磯花絵、甲田直美、佐竹久仁子、高木千恵、田中牧郎、日高水穂、三宅和子、森山卓郎、森山由紀子、森勇太
はじめに
第1部 「女ことば」「男ことば」とジェンダー
第1章 〈女ことば〉文末詞の規範化ー明治中期から昭和前期 佐竹久仁子
第2章 ジェンダーに関わるステレオタイプ的な表現の文法論的・文体論的検討 森山卓郎
第3章 ことばが肉体を越えるとき 金水 敏
第4章 寿岳章子 ジェンダーの視点による女のことば研究の先駆者 遠藤織枝
第2部 現代日常会話とジェンダー
第5章 埋め込まれる声ー話法とジェンダー 甲田直美
第6章 コーパス基盤型性差研究の方法論ー男女大学生の会話に見る性差をめぐって 石川慎一郎
第7章 終助詞に見られる男女差の実態とその経年変化ー『昭和話し言葉コーパス』『日本語日常会話コーパス』 を活用して 小磯花絵
第8章 聞き手に対する敬語行動の男女差 荻野綱男
第9章 LINEの中のジェンダーー若者の言語意識と実態 三宅和子
第3部 地域言語とジェンダー
第10章 方言使用地域における文末表現と自称詞の男女差の今ー岡山市と鶴岡市の場合 尾崎喜光
第11章 高知県幡多方言の呼称のバリエーションと性差ー高年層話者の談話を資料として 高木千恵
第12章 ジェンダーの視点からみた大阪若年層の言語実践ー文法項目を対象に 上林 葵
第13章 親族語彙の変容から見る地域社会のジェンダー観とその再構築 日高水穂
第4部 古典語とジェンダー
第14章 平安貴族の言葉遣いにおける傾向的性差ー「な〜そ」の用法の歴史社会語用論的解釈の試み 森山由紀子
第15章 『今昔物語集』における「女」と「男」の非対称性 田中牧郎
第16章 近世後期洒落本から考えることばの性差ー自立的機能語を中心に 森 勇太
編者・執筆者紹介
1930年代と50年代、それは人々が主体性に目覚め、闘争や自己表現を集団で企てた時代だったーー戦争文学から綴方運動、女性運動、原水爆言説を議論の対象にして、多様な表象行為を実践する人々のありようを解きほぐし、〈民衆〉の今日的な可能性に迫る。
はじめに
第1部 一九三八年、拡張する文学ーー周縁の発見と包摂
第1章 「民族」の〈歴史性〉と「民衆」の〈普遍性〉--島木健作『生活の探求』、火野葦平『麦と兵隊』
1 「民衆」「大衆」へのまなざし
2 「民衆」の称揚が意味するもの
3 「農民」ないし「民衆」の表象ーー島木健作『生活の探求』
4 「民族」の境界を越えてーー火野葦平『麦と兵隊』
5 「文学」への期待
第2章 周縁を表象する書き手たちーー豊田正子『綴方教室』、火野葦平『麦と兵隊』
1 『綴方教室』ブーム
2 綴方の文体規範と書き手像
3 火野葦平『麦と兵隊』の語り
4 ジャンルを超える価値
5 拡張する文学
第3章 「少女」たちの語りのゆくえーー太宰治「女生徒」「千代女」とその周辺
1 鑑賞すべき「生地のよさ」
2 「何心なく」書くことーー太宰治「千代女」
3 「女生徒」のセクシュアリティ
4 太宰治の「青春」と「少女」たちの語りのゆくえ
第2部 一九五〇年代、綴る/語る女たちーー発話の政治性あるいはマジョリティ形成とアイデンティティ
第4章 「人民文学」と〈書くこと〉--階級的視点と国民文学論
1 「人民文学」という雑誌
2 「勤労者」の文学
3 労働者階級は何を(傍点2字)書きうるのか
4 「国民文学」をめぐって
5 どのように(傍点5字)書くべきなのか
第5章 「私」を綴る「人びと」--一九五〇年代における「綴方」
1 「綴方」をめぐって
2 江口江一「母の死とその後」
3 意識へのまなざしーー一九五〇年代の言説空間
4 表象される「なかまたち」
5 無色な「大衆」の登場
第6章 泣く「女」たちーー「平和」の語りとジェンダー
1 『二十四の瞳』と日本教職員組合婦人部
2 模索される「女教師」像ーー第一回婦人教員研究協議会とジェンダー
3 報告から語りへーー『扉をひらくもの』と『母と女教師と』
4 〈愛〉と〈無力〉--映画『二十四の瞳』
5 「涙」の力
第7章 〈未来〉の諸相ーー原水爆禁止署名運動とジェンダー
1 原水爆禁止署名運動
2 女性表象と未来志向
3 破綻する時間の物語ーー大田洋子『夕凪の街と人とーー一九五三年の実態』
4 〈未来〉は誰のものか
5 〈未来〉の諸相
終章 〈無色〉な主体のゆくえーー「声」の承認をめぐって
初出一覧
おわりに
日本社会で長期間にわたって居住している高学歴移民女性について、包括的な「ライフコース」の視点からその経験と現状を明らかにし、そこからみえてきた問題の解決策を探る。従来の移民女性像を超え、多様な生き方を描き出す移民研究・ジェンダー研究の最新成果。
この本は、2013年11月16、17日に開催した日中韓女性史国際シンポジウム「女性史・ジェンダー史からみる東アジアの歴史像」の諸報告と、2014年3月22日開催の総合女性史学会大会「女性史・ジェンダー史からみる東アジアの歴史像ー女性史の新たな可能性を求めて」における諸報告を再構成し、1冊にまとめたものです。
人間精神の自由と平等を標榜し、
19世紀アメリカ・ルネッサンス期を代表する思想家、
ラルフ・ウォルドー・エマソン(1803-82)。
「自己信頼」を信条に個人主義を貫くエマソンは、
アメリカ社会発展のシンボルとされ、
社会改革者としての側面は見過ごされてきた。
「自己信頼」にもとづく個人主義と、社会に対する責務で
葛藤するエマソンは、自然科学、とくに進化論をとおして、
自身の改革思想を形成していく。
本書では、主に進化、人種、ジェンダーの視座から、
エマソンの社会改革思想を包括的に検証し、
さらに、奴隷制廃止運動と女性解放運動といった、
当時の社会改革運動とエマソンの関わりを詳述、
社会改革者としてのエマソンを再評価する。
また、エマソンの家庭、
マーガレット・フラーやヘンリー・D・ソローとの交友関係にも
焦点をあて、思想の実践も考察する。
目次内容
序章
第1章 自然科学と進化にみる思想の原点
1 自己信頼と社会改革観
2 自然科学への関心ーー「対応の思想」と信仰の確立
3 進化思想と楽観主義ーー神意の象徴としての上昇螺旋運動
第2章 エマソンと奴隷制
1 社会への責務と正義感ーー個人と社会の狭間で
2 奴隷制問題と人種観を巡って
3 奴隷制廃止運動への参加
第3章 エマソンと女性の権利
1 女性解放運動への関わりーー理想の女性像との葛藤
2 「女性について」(1855)にみる女性観
3 思想の変化ーー1869年の講演から
第4章 家庭におけるエマソンと思想の実践
1 夫婦の関係と結婚観
2 愛と友情ーーフラーやソローとの交友関係を中心に
3 妻リディアンと「真の女性らしさ」
終章
SDGsの前身であるMDGsの達成において、ラオスは保健、教育、ジェンダー平等の分野でどのように成果をあげたのか。ラオ族、カム族、モン族の村での調査を踏まえ、国家の政策実施能力を補完するラオス女性同盟の役割を中心に目標達成のメカニズムを明らかにする。