アフリカの民間信仰を源流とし、19世紀にハイチのヴードゥー教の「生ける死者」となった「ゾンビ」。
1932年にアメリカ映画で吸血鬼に次ぐモンスターとして登場後は、またたくまにスクリーンを席捲し、やがては社会のさまざまな事象を代弁し、刻印できる便利な「表象/隠喩」として定着した。理性も知性ももたず人を襲い、嚙まれた者も同類になっていく──
本書はこうしたゾンビのあり方に、この世/主体/資本主義/人種/ジェンダーの枠組みから逃避する道の可能性を見出す。
多彩な現代思想の手法を駆使して、現代社会でゾンビ表象が担う意味をあぶりだした知的冒険の書。
プロローグ:ゾンビを待ちながら
第1章:この世からの緊急避難
1──観客がゾンビを産み出した
2──アメリカ=ゾンビ
3──鏡としてのゾンビ
4──災害多幸症
第2章:主体からの緊急避難
1──解放としてのゾンビ身体
2──意味から碇を上げる
3──どちらでもあり、どちらでもない
4──ゼットピア
第3章:資本主義からの緊急避難
1──反専有の魔術
2──資本主義が/とゾンビ
3──2000年代のゾンビ
第4章:人種からの緊急避難
1──白いゾンビの出現
2──黒人の変容
3──ハイパーホワイトの登場
4──オリエンタル・ゾンビ
5──ゾンビ王オバマ
第5章:性からの緊急避難
1──ゾンベイビー
2──セクシャル・ゾンビ・ナンバー・ワン
3──ロマンチック・ゾンビ
4──リキッド・モダニティとゾンビ
第6章:緊急避難口から振り返る
1──「それじゃあ、ゾンビになってみよう」
2──映像を見るということ
エピローグ:真正ゾンビのほうへ
河田嗣郎の男女平等思想は、男女同権の立場から、当時女子教育の主流であった「良妻賢母主義」教育を批判し、女性の自立と母性の保護をともに論ずるものであった。本書は、河田の残した膨大な著書・論文・記事を精査し、その思想が現代のジェンダー論につながる先駆性を持っていたことを明らかにする。
第1章 河田嗣郎の生涯と研究活動
第2章 家族制度論における女性解放の論点
第3章 性別特性教育論の超克──「良妻賢母主義」批判と公民教育
第4章 性別と社会構築性──「天然的な区別」と「社会的な区別」
第5章 社会政策論における男女平等の論理
終 章 河田嗣郎の男女平等思想の歴史的意義
日本以上のペースで少子高齢化が進む韓国は、「雇用許可制」を導入し、非熟練外国人労働者を正式に受け入れる政策転換に踏み切った。その労働政策、語学教育、結婚移民などの話題を現地取材で掘り下げ、問題が山積する日本の外国人政策に示唆を与える必読書。
本書は、日本における「科学としての政治学」の軌跡をたどる。
学会を創設し、行動論を徐々に受容する一方、マルクス主義の成果を一部摂取しながら、時代とともに変貌していく様子を描く。
その歴史を丸山眞男、升味準之輔、京極純一、『レヴァイアサン』グループ、佐藤誠三郎などの研究成果を踏まえながら論じる。
さらに、政治改革、ジェンダー研究、実験政治学など具体的な論点も照らし、その見取り図を示す。
今までになかった『判断力批判』入門!
近年の再検討事項でもあるジェンダーの視点を取り入れつつ、「難解」と評判のカント美学を理解しやすいように解説。
はじめに
第一章 無関心性:快の感情の分析(その一)
第二章 主観的な普遍性:快の感情の分析(その二)
第三章 目的のない合目的性:快の感情の分析(その三)
第四章 範例的な必然性:快の感情の分析(その四)
第五章 三つの原理と正当化:快の感情の正当化
おわりに
他者のない愛を営むナルシスト、他者の非存在を生きる独我論者、オカルト・輪廻転生・宗教などのブームの背景にある神秘主義の興隆。超母権文明の到来の中で、エロスは迷宮化し、自我は溶解し、アモルファス化する…。世紀末の男性論をリードしてきた心理学者が、新たなる他者論と世界観の心理学を構想しつつ世に問う、最も先鋭的な文明の書。
長時間労働、過労死、社畜、経済摩擦…。繰り返し指摘されてきた、日本の企業中心社会が作り出す歪み。だが、従来の議論ではある問題がー女性と男性が直面する〈現実〉の違いがー忘れられてはいなかっただろうか。「ジェンダー(性別)関係」をキーワードに、あらたな角度から現代日本の構造と動態をとらえる刺激的な試み。
世界の男女平等趨勢に照らして、不公正と言うべき日本の労働・生活・政策のジェンダー・バイアス。日独比較を通して変革のために何が必要かを説く。
映画と文学からのアプローチ。アメリカの現在の文化情勢を文学的な立場から概観する。たんなる文学研究から文化研究へと視野を広げることで、多元文化主義にもとづく「アメリカの近代」の姿が、その矛盾とともに浮かび上がる。
ヴェトナム系アメリカ人の女性の眼で、アジア・アフリカの「周縁性」を解体するー詩的に、そして分析的に。ドキュメンタリー映画論ほか、挑戦的な批評。
教育現場に自信と誇りを取り戻すことはできるだろうか。偏見にみちた短大のイメージを壊し、学生と教員の本音を引き出す。
家族単位から個人単位へ。差別的な社会秩序の変革を目標に、われわれの常識、法律・福祉など具体的諸制度を考察する。男女両性にとっての解放論。
芸術作品として鑑賞されてきた日本の絵画をもう一度見なおしてみよう。美しくあるいはエロチックに描かれたたくさんの女性像がある。これら女性像はどういう状況の下で描かれたのか。平安時代から近代まで、絵画に描かれた女性像をとりあげ、時代や社会が女性に何を求めていたのか、女と男の関係はどうなっていたのか、その隠されたメッセージを読み解く。新しい美術史入門。
いま『女性として生きる』とは?「女らしさ」を再生産する文化的装置と社会心理を徹底的に解明し、女性が真にエンパワメントする条件を追求する入魂の労作。