あのひとのようになりたい。そんな憧れを胸に抱いて絵描きになったイラストレーター・永田萠が綴るいわさきちひろの絵を描く心。
ハワイ・ホノルルのダイアモンドヘッドの教会を買収した日本の不動産会社社長が教会の玄関に吊るされ、死体で発見された。近くの別荘に住む日本人女性が水死、日本からの不動産投資ツアーの一行も事件に巻き込まれる。オアフ島、カウアイ島、ハワイ島を舞台に、サスペンスに富んだ長篇社会派ミステリー。
怒涛を越えて異国の地を踏んだ少年・万次郎。烈風吹き荒れる幕末に、彼が夢見たものは。波瀾の生涯を書下ろし。
亡き母の名を新聞でみつけた真琴は、母の生家、丹生家を訪ねた。そこで遭遇した奇妙な出来事。それがきっかけで、丹生家に家庭教師として入った真琴は、一柳という男に出逢い、次第に惹かれていく…。母の過去を追う真琴ー。暗くて深い迷宮への扉を開けてしまう。丹生家の秘密、そして座敷牢でみつけた“虹彦”とはー。愛されたい気持ちが人の心の中に魔性を創りだす。ダークホラー小説。
くらしの協同を求めて50年、生協・消費者運動とともに生きた歴史の証人が語る人・事、そして平和・エコロジー。21世紀へ向けて、著者が一貫して訴え続けるクリーンエネルギー・環境対策等、エコロジー社会実現のための具体的提案を掲載。
太古の氷河の名残である深い入り江と針葉樹の森のほとりにある小さな町を、わたしは「虹の橋づめ」と呼んでいる。そこには金の壷が埋められているそうな。その壺を掘り出そうと、わたしは歩きつづけ、ときどき立ちどまって虹を見上げるが…。あえかな人生の一刻を絶妙の筆致で綴るエッセイ集。
「気に入らねえな」ナイジェル“キッド”バレステラ。職業、バウンサー。環境破壊と天変地異によって国家が崩壊したこの22世紀において、カネが支払われるのならあらゆる依頼を受け、トラブルを解決する“便利屋”。今回、彼が受けた依頼は、京都の教団に誘拐された少女を救出すること。依頼人によれば、このハイスクールに入ったばかりの少女こそが、最近サイバースペースを騒がせている神出鬼没の謎のハッカー、“フリー=アイ”の正体だというのだが…意外とあっけなく少女を捕捉できたキッドだったが、仕事はそれだけでは終わらなかった。教団の殺し屋、大企業お抱えの私警察の暗闘に巻き込まれたキッドと少女の運命は。
五月の風市の市民プールが、ある夜、虹色にそめられた。だれが、なんのために。いっぽう、パックン夫人の邸宅では、おなじ夜に宝石盗難事件がおきていた。チビーと助手のニャットは、いばりやのケッコー警部にじゃまされながらも、二つの事件の謎を追っていく…。史上最小の名探偵、子ネズミのチビーと、単純だけど力仕事はおまかせの探偵助手、子ネコのニャットがコンビを組んで活躍する、本格推理シリーズ。
君にもこの光は届いているかー。光の演奏ー“光楽”-を通じて、子供たちにメッセージの発信をはじめた天才高校生・光瑠。その目的を探ろうと、大人たちの魔手が忍び寄るが…。実力派が放つ、傑作ファンタスティック・ミステリー。
人の世は「やちまた」=道がいくつもに分かれている所。人生の歩み、人と人との結びつきは幾重にも繋がり、また分かれていく。漢学者の祖父、夭折した父の生涯を縦糸に、明治大正昭和を生きた一族の数奇な運命を辿る評伝文学の名作(日本エッセイストクラブ賞受賞)。
歴史と個人とのかかわりという視点からとらえた日本と中国。個性的な生き方が印象的な中国の人びととの交流。
あたし、早瀬亜子。プリマドンナめざしてバレエのレッスンに励む、17歳。ある日、スタジオの前でブリーチ髪に、左耳ピアスの男のコに声をかけられたの。彼は、近くでバイトをしてるコージ。ただのナンパ男かと思ったけど、宇宙や星のこと、たくさん教えてくれる-トラペジウムがオリオン座の大星雲から生まれた星たちだってことも。大きな宇宙の中では、ちっぽけなあたしだけど、いつかきっと夢をかなえたい。
いまだ出現しないものをすでに見てしまっていなければならないというのが、私が文学に無理強いに負わせている凝視力であるが、ここに収めた文章のなかでそのような架空凝視の機能について充分言い足りているとは思われない。そのような主題が一本の芯となって連なっていない感じがしても、架空凝視の機能の展開は小説の方に譲って、ここではただ幾つかの文章のそこかしこにその文学的志向が隠見しているだけでよしとしなければならない。私のこれまで書いたエッセイ、評論、回想、随想などのすべてをここに集める。(評論集「あとがき」より)