「〈戦後〉という死体はどこにしまいこまれたのか」亡き友、土方巽、渋沢龍彦、そして漱石という〈病友〉の思い出に、戦後の記憶が虹のように重なる。好評の連作詩篇に四つの変奏的テクストを添える。
人間の弱さと愚かさを清冽な筆致で描き、愛の本質と可能性を追求する恋愛小説の傑作。アメリカ東海岸の小さい港町、東品川の倉庫街、そして神話の里出雲を択び、時空を越えてこれらの海沿いの街を繋ぐ、はかないけれど確かに存在する「虹」を描いた。
小料理屋で働いていた女性の急死から、その馴染み客とのひそやかな交情を淡彩な筆致で描き、粋な感情を流露した表題作ほか亡父と異母兄への複雑な想いを描いた「夏落葉」など傑作短篇8篇を収録。
最近進学率が落ちてきた女子高校小町学園は、一種の刺激剤として男子生徒を入学させることにした。天田呑一、竜円、高山ら八人がその第一弾だった。右をむいても、左をむいても女ばかり。女生徒たちの蔑視と圧制の下で、自ら〈コオロギ組〉と名乗った彼らの長く熱い自由への闘いが始まった。生涯独身確実、オールドミスの校長ゲンバクとの対立。女生徒にちょっかいをだす他校の不良やヤクザとの抗争。そして、校内に潜入した銀行強盗を、奇策をもちいて捕えたことから、〈コオロギ組〉は、一躍マスコミの寵児になるが…。若者達の恋、友情、そしてひたむきな熱気を描く、青春痛快小説。
男と女、今と昔、老いと命、暮らしと創造、そして、武蔵野と北の国の海辺…。捉え難い人生の一刻を絶妙の遠近法で綴る、久々のエッセイ集。
失恋て、心の中にどしゃぶりの雨が降るんだね。なにもかも、いやになっちゃった…。そんな綾乃にふりかかった、思いがけない不思議な出来事。綾乃・友樹・仔猫ー雨の中で出逢った3人(?)の、心と身体が入れ替わった…。もとに戻れるのかしら?自分を見失ってさまよう、綾乃の心。雨がかけた魔法は、ちょっぴり意地悪。心の雨がやむ時、綾乃の瞳に映るものは…。
江戸川区の機械部品倉庫で、管理人をしていた寺村久作という男が焼死体で発見された。ところが被害者の身元と年齢が全く分らない。事故で入院した倉庫番に代役として雇われただけなので、戸籍抄本も履歴書もないという。住民台帳にも見当らない。おまけに死体が焼かれているため、指紋も顔も見分けがつかないのだ。捜査が膠着状態になったある日、女の声で電話があった。その身元不明人は近所に住んでいた“寺山”ではないかというのだ。2人が同一人の可能性は高いのだが…。死者の証明への陥穽を突く意欲作他5篇。