日本では、パートタイム労働市場の拡大とパートタイマーの企業内定着と同時に、パートタイム労働者と正社員との賃金格差が広がり、「職務と処遇の不均衡」が拡大している。本書では、スーパーマーケット産業の事例を通じて、このような現象が起きる構造と過程を、ジェンダー視点と行為者戦略アプローチから、企業、労働組合、パートタイマー本人それぞれの行為戦略を分析する。日本的パートタイム労働市場の特徴の形成と再生産を解き明かす試み。
序 章 日本におけるパートタイム労働とは
1 問題意識と研究課題
2 分析の視座
3 先行研究
4 研究対象と資料
5 本書の構成と特徴
第1章 スーパーマーケット産業とパートタイム労働ーー主婦パートの基幹労働力化
1 スーパーマーケット産業の成長と主婦パート
2 事例店舗の紹介
3 主婦パートの量的基幹労働力化ーー事例店舗を中心に
4 主婦パートの質的基幹労働力化ーー事例店舗を中心に
5 主婦パートの基幹労働力化と女性正社員
6 基幹労働力化とジェンダー
第2章 企業の行為戦略ーー制限的内部化と区別作り
1 企業の課題ーー二兎を追う
2 選別的内部化ーーパートタイマーの雇用区分
3 擬似内部化(1)--パートタイマーの教育訓練と評価
4 擬似内部化(2)--賃金制度
5 区別作りーー家庭優先性の認定
6 主婦パート活用モデル
7 基幹労働力化と主婦協定の衝突
第3章 労働組合の行為戦略ーー排除と包摂
1 労働組合の課題ーー三つの危機
2 事例労働組合のパートタイマーの組織化状況
3 危機解決戦略の決定要因
4 2000年代におけるパートタイマー組織化戦略の変化
5 組織化と基幹労働力化の相関関係
第4章 主婦パートの行為戦略ーー受容と抵抗
1 主婦パートの生涯経験と就業経験
2 主婦パートの目線
3 主婦パートの対応戦略(1)--受容戦略
4 主婦パートの対応戦略(2)--抵抗戦略
5 非公式権力の拡大と公式権力の亀裂
終 章 日本的パートタイム労働市場の変容と再生産ーー主婦協定の改正と制限的内部化の拡張
1 新しい人事制度の内容と狙い
2 改正制度における社員区分別処遇格差
3 「働き方のジェンダー化」と「身分としてのジェンダー」
4 共に生きていく社会のためのジェンダー平等
付図表
参考文献
あとがき
アンケート
索 引
近年、ジェンダーを論じる際には、旧来の男女二元論を超えるようになってきている。本書は現代社会に生きる「ノンバイナリー」(性自認が男女の二枠に当てはまらない人)たち30人の率直な語りを集め、ジェンダーとは何かという問いに真正面から向き合う。
19世紀半ばに生まれた電信の技術は、多くの女性たちに新たな職業空間を提供した。彼女たちは、従来の「女の居場所」を超えて技術職に就き、男性に伍して働き、電信会社相手のストライキを果敢に闘った。西部劇や小説にはヒロインとして登場した。今や忘れられた、当時の「サイバー・スペース」に生きた先駆的女性群像を生き生きと描いた本書は、現代の働く女性たちにも力を与えよう。
図表一覧
日本の読者へ
謝辞
第1章 電信業ではたらく女性
米国の電信業への女性の進出
カナダとヨーロッパにおける女性電信手
非欧米世界における電信と女性
二〇世紀における電信業と女性
第2章 電信オフィスにおける毎日の業務
鉄道駅の電信所の場合
モールス電鍵と「バグキー」
商業電信局の場合
労働環境
労働時間
テレタイプの導入
職業上の事故・病気
第3章 社会における電信オペレーターの位置
電信手の社会階層
電信手のエスニック構成
電信手の学歴と訓練
電信手として働くようになった理由
統計に見る労働力としての電信手
電信手のレジャーライフ
電信手の旅行と移動
宗教、親睦、および社会活動の組織
電信コンテスト
家族と結婚
第4章 電信オフィスにおける女性の諸問題
米国における女性の電信への進出と『テレグラファー』誌上論争
ヨーロッパの電信業における女性の進出
一八七〇年代の米国における女性電信手論争
職場における振舞いとジェンダー
男女同一賃金問題
起業家としての女性
電信オフィスにおける競争──リジー・スノーの場合
電信オフィスと性道徳
第5章 文芸と映画に見る女性電信手
文学に描かれた女性電信手
映画のなかの女性電信手
第6章 女性電信手と労働運動
電信手保護同盟と一八七〇年のストライキ
ヨーロッパの女性と労働運動
電信手友愛会と一八八三年のストライキ
女性電信オペレーターと婦人運動
鉄道電信手騎士団
アメリカ商業電信手労働組合(CTUA)と一九〇七年のストライキ
一九一九年のストライキ
オーストリアにおける一九一九年のストライキ
その後のアメリカ商業電信手労働組合
第7章 むすび
電信業の工業化
電信時代の終焉
技術労働者としての女性電信手
まだ書かれていない歴史を求めて
なぜ歴史を再発見するのか
訳者あとがき
文献
原注
索引
被爆国がなぜ原発大国になったのか?ヒロシマはなぜフクシマを止められなかったのか?なぜむざむざと54基もの原発建設を許してしまったのか?-。
フランスや日本の教師教育では、いま何が課題となっているのか。フランスの教職の事例を検証し、日本の教育施策への示唆を見い出す。
日本の学校教育には課題が多くあげられている。すなわち、教師の質保証(=専門職化)、教師の社会的地位の向上、管理職のジェンダーバランス、長時間労働や教師不足に対し教師を支える環境整備等などである。同じ課題を抱えるフランスの先行事例研究を検討することにより、日本の教師/教師教育の改善の手がかりを得ることができる。
「ジェンダーに関わる多領域をカバーする」「女性の人生の節目を取り上げる」「最新の法律等の情報を盛り込む」ことを基本方針として、女性をめぐる現代社会における問題について、ドラマやマンガ等を用いながら分かりやすく解説。改訂版では、LGBTQや奨学金問題等の近年関心が高まっているテーマに関する解説も新たに掲載。また、 2017年施行の改正男女雇用機会均等法、2018年施行の改正介護保険法等の最新の法令改正にも対応。
改訂版はじめに
第1章 女性学とは
1 女性学の発祥と発展
2 アメリカにおける女性学の発展
3 日本における女性学の発展
4 女性学の将来と課題
第2章 ジェンダー平等をめぐる歴史と理論
1 フェミニズムの歴史と理論
2 今日のフェミニズム──平等の進展と揺り戻し
第3章 家族問題
1 家族をめぐる現代の状況
2 家族とは何か──ヒトが生存していくシステム
3 家族モデルとしての〈近代家族〉
4 現代の日本家族問題の諸相──家族の機能とは
5 家族のゆくえ
第4章 結 婚
1 結婚観の変化
2 結婚をめぐる多様性
3 配偶者の選択──見合い結婚と恋愛結婚
4 離 婚
5 今日の結婚事情──婚活と再婚
6 女性にとっての結婚とは
第5章 子育て
1 子育ては誰が担うのか,担ってきたのか
2 子育て政策
3 今後の子育てを考える
第6章 働くこと
1 女性労働力の変化
2 労働政策の進展
3 両立支援策の進行──育児・介護休業法の変遷と次世代育成支援対策推進法
第7章 高齢者問題
1 老後の女性問題
2 高齢者政策の進展──介護の社会化をめざして
3 高齢者と介護問題
4 認知症高齢者の増加
5 高齢者施策の取り組み課題
第8章 困難を抱える女性と社会福祉
1 貧困と女性
2 暴力と女性
第9章 買売春・性の商品化
1 女性の人権とセクシュアリティ
2 売春防止法の成立と施行
3 買売春と国際問題
4 買売春をなくすために
第10章 セクシュアリティの多様性
1 セクシュアリティとセクシュアル・マイノリティ
2 身体の多様性
3 性同一性障害(GID:Gender Identity Disorder)
4 同 性 愛
索 引
コラム
1 男女共同参画社会基本法と女子マラソン──男女平等への取り組みは,ゆっくり,しっかり,長期戦で
2 小説・映画に描かれる若年性認知症──萩原浩『明日の記憶』(光文社,2004年)
3 映画『ナヌムの家』に描かれた「従軍慰安婦」
4 映画『ハンズオブラブ──手のひらの勇気』にみるレズビアンカップルの軌跡
中国、台湾、韓国、北朝鮮そして日本の社会におけるジェンダーのあり方を詳細に検討し、性別による制約から自由な社会を構想する。
この本は、性差別や性役割分業などと呼ばれる問題を、東アジアの諸社会の中で比較し、その上で日本社会の特徴を浮かびあがらせようという試みである。「東アジアの家父長制」というタイトルは、家父長制という言葉になじみのない読者には、いささかとっつきにくい印象を与えるかもしれないが、われわれの暮らす社会が、性別に基づいて、どのように編成された社会であるのかを、家父長制という概念を用いながら明らかにしていきたい。〈まえがき〉より
まえがき
序 章 ジェンダーの比較社会学へ向けて
第I部
第一章 家父長制とは何か
1 家父長制の交通整理
2 従来の文化人類学・社会学などにおける用法
3 欧米のフェミニズムにおける用法
4 汎通性ある家父長制概念の構築へ向けて
第二章 主婦の誕生と変遷ーー既婚女性の労働力化と主婦化
1 アプローチの整理
2 主婦の誕生と変遷の図式ーー資本主義型
3 社会主義型
第三章 欧米の家父長制と主婦の変遷
1 原生的労働関係から近代主婦の誕生ーーイギリスを中心として
2 現代主婦の誕生ーーアメリカを中心に
3 主婦の消滅? --北欧を中心として
4 社会主義型
第II部
第四章 日本の近代主婦と家父長制
1 原生的労働関係とそこからの脱却
2 日本型の近代的家父長制の背景ーー儒教と女性、良妻賢母主義を中心に
3 近代主婦の誕生
4 戦時下の近代主婦ーー再び母性の強調
第五章 日本の現代主婦と家父長制
1 戦後の高度成長ーー産業化の新しい展開
2 日本の現代家父長制ーー新たな規範の形成
3 主体の側の対応
4 日本における現代主婦
5 現代日本の家父長制とその問題点
第III部
第六章 韓国の家父長制
1 韓国における産業化
2 韓国型家父長制の背景
3 韓国女性の就労形態
4 韓国型の家父長制
第七章 台湾の家父長制
1 台湾における産業化
2 台湾型家父長制の背景
3 台湾女性の就労形態
4 台湾型の家父長制
第八章 北朝鮮の家父長制
1 社会主義化ーーその政策の展開と女性観
2 脱社会主義化ーー金日成化と伝統との共鳴
第九章 中国の家父長制
1 社会主義化
2 脱社会主義化
3 中国におけるジェンダーの現状と将来
第十章 結論
1 東アジアのジェンダーの比較社会学
2 現代日本における「女性問題」の解決へ向けて
男とフェミニズム? --あとがきにかえて
参考文献
索 引
アフリカの民間信仰を源流とし、19世紀にハイチのヴードゥー教の「生ける死者」となった「ゾンビ」。
1932年にアメリカ映画で吸血鬼に次ぐモンスターとして登場後は、またたくまにスクリーンを席捲し、やがては社会のさまざまな事象を代弁し、刻印できる便利な「表象/隠喩」として定着した。理性も知性ももたず人を襲い、嚙まれた者も同類になっていく──
本書はこうしたゾンビのあり方に、この世/主体/資本主義/人種/ジェンダーの枠組みから逃避する道の可能性を見出す。
多彩な現代思想の手法を駆使して、現代社会でゾンビ表象が担う意味をあぶりだした知的冒険の書。
プロローグ:ゾンビを待ちながら
第1章:この世からの緊急避難
1──観客がゾンビを産み出した
2──アメリカ=ゾンビ
3──鏡としてのゾンビ
4──災害多幸症
第2章:主体からの緊急避難
1──解放としてのゾンビ身体
2──意味から碇を上げる
3──どちらでもあり、どちらでもない
4──ゼットピア
第3章:資本主義からの緊急避難
1──反専有の魔術
2──資本主義が/とゾンビ
3──2000年代のゾンビ
第4章:人種からの緊急避難
1──白いゾンビの出現
2──黒人の変容
3──ハイパーホワイトの登場
4──オリエンタル・ゾンビ
5──ゾンビ王オバマ
第5章:性からの緊急避難
1──ゾンベイビー
2──セクシャル・ゾンビ・ナンバー・ワン
3──ロマンチック・ゾンビ
4──リキッド・モダニティとゾンビ
第6章:緊急避難口から振り返る
1──「それじゃあ、ゾンビになってみよう」
2──映像を見るということ
エピローグ:真正ゾンビのほうへ
河田嗣郎の男女平等思想は、男女同権の立場から、当時女子教育の主流であった「良妻賢母主義」教育を批判し、女性の自立と母性の保護をともに論ずるものであった。本書は、河田の残した膨大な著書・論文・記事を精査し、その思想が現代のジェンダー論につながる先駆性を持っていたことを明らかにする。
第1章 河田嗣郎の生涯と研究活動
第2章 家族制度論における女性解放の論点
第3章 性別特性教育論の超克──「良妻賢母主義」批判と公民教育
第4章 性別と社会構築性──「天然的な区別」と「社会的な区別」
第5章 社会政策論における男女平等の論理
終 章 河田嗣郎の男女平等思想の歴史的意義
本書は、日本における「科学としての政治学」の軌跡をたどる。
学会を創設し、行動論を徐々に受容する一方、マルクス主義の成果を一部摂取しながら、時代とともに変貌していく様子を描く。
その歴史を丸山眞男、升味準之輔、京極純一、『レヴァイアサン』グループ、佐藤誠三郎などの研究成果を踏まえながら論じる。
さらに、政治改革、ジェンダー研究、実験政治学など具体的な論点も照らし、その見取り図を示す。
日本以上のペースで少子高齢化が進む韓国は、「雇用許可制」を導入し、非熟練外国人労働者を正式に受け入れる政策転換に踏み切った。その労働政策、語学教育、結婚移民などの話題を現地取材で掘り下げ、問題が山積する日本の外国人政策に示唆を与える必読書。
他者のない愛を営むナルシスト、他者の非存在を生きる独我論者、オカルト・輪廻転生・宗教などのブームの背景にある神秘主義の興隆。超母権文明の到来の中で、エロスは迷宮化し、自我は溶解し、アモルファス化する…。世紀末の男性論をリードしてきた心理学者が、新たなる他者論と世界観の心理学を構想しつつ世に問う、最も先鋭的な文明の書。
長時間労働、過労死、社畜、経済摩擦…。繰り返し指摘されてきた、日本の企業中心社会が作り出す歪み。だが、従来の議論ではある問題がー女性と男性が直面する〈現実〉の違いがー忘れられてはいなかっただろうか。「ジェンダー(性別)関係」をキーワードに、あらたな角度から現代日本の構造と動態をとらえる刺激的な試み。
世界の男女平等趨勢に照らして、不公正と言うべき日本の労働・生活・政策のジェンダー・バイアス。日独比較を通して変革のために何が必要かを説く。
映画と文学からのアプローチ。アメリカの現在の文化情勢を文学的な立場から概観する。たんなる文学研究から文化研究へと視野を広げることで、多元文化主義にもとづく「アメリカの近代」の姿が、その矛盾とともに浮かび上がる。
ヴェトナム系アメリカ人の女性の眼で、アジア・アフリカの「周縁性」を解体するー詩的に、そして分析的に。ドキュメンタリー映画論ほか、挑戦的な批評。