自然科学を女子の手に!
〈偉大な科学者にして良妻賢母〉伝説を打ち破り、巧みな筆で描き出す真実のキュリー夫人とその時代。結婚と死別、家族と戦争、アカデミーとの闘い、不倫事件、放射能の栄光と悲惨ーー、彼女が直面したのはすべて現代の問題だ。
物語論・言語行為論の視点を用いつつ、「花ごもり」から「われから」にいたる作品をとりあげ、女性への差別が日常的であった明治時代にあっておどろくほど現代的なジェンダー意識をそなえていた一葉文学の謎にせまる。
女たちはたくさんの仕事をこなしてきた。バリの女たちの日常が、日本の女たちの現在を照らし出す。交響する民族誌。
1930年代と50年代、それは人々が主体性に目覚め、闘争や自己表現を集団で企てた時代だったーー戦争文学から綴方運動、女性運動、原水爆言説を議論の対象にして、多様な表象行為を実践する人々のありようを解きほぐし、〈民衆〉の今日的な可能性に迫る。
はじめに
第1部 一九三八年、拡張する文学ーー周縁の発見と包摂
第1章 「民族」の〈歴史性〉と「民衆」の〈普遍性〉--島木健作『生活の探求』、火野葦平『麦と兵隊』
1 「民衆」「大衆」へのまなざし
2 「民衆」の称揚が意味するもの
3 「農民」ないし「民衆」の表象ーー島木健作『生活の探求』
4 「民族」の境界を越えてーー火野葦平『麦と兵隊』
5 「文学」への期待
第2章 周縁を表象する書き手たちーー豊田正子『綴方教室』、火野葦平『麦と兵隊』
1 『綴方教室』ブーム
2 綴方の文体規範と書き手像
3 火野葦平『麦と兵隊』の語り
4 ジャンルを超える価値
5 拡張する文学
第3章 「少女」たちの語りのゆくえーー太宰治「女生徒」「千代女」とその周辺
1 鑑賞すべき「生地のよさ」
2 「何心なく」書くことーー太宰治「千代女」
3 「女生徒」のセクシュアリティ
4 太宰治の「青春」と「少女」たちの語りのゆくえ
第2部 一九五〇年代、綴る/語る女たちーー発話の政治性あるいはマジョリティ形成とアイデンティティ
第4章 「人民文学」と〈書くこと〉--階級的視点と国民文学論
1 「人民文学」という雑誌
2 「勤労者」の文学
3 労働者階級は何を(傍点2字)書きうるのか
4 「国民文学」をめぐって
5 どのように(傍点5字)書くべきなのか
第5章 「私」を綴る「人びと」--一九五〇年代における「綴方」
1 「綴方」をめぐって
2 江口江一「母の死とその後」
3 意識へのまなざしーー一九五〇年代の言説空間
4 表象される「なかまたち」
5 無色な「大衆」の登場
第6章 泣く「女」たちーー「平和」の語りとジェンダー
1 『二十四の瞳』と日本教職員組合婦人部
2 模索される「女教師」像ーー第一回婦人教員研究協議会とジェンダー
3 報告から語りへーー『扉をひらくもの』と『母と女教師と』
4 〈愛〉と〈無力〉--映画『二十四の瞳』
5 「涙」の力
第7章 〈未来〉の諸相ーー原水爆禁止署名運動とジェンダー
1 原水爆禁止署名運動
2 女性表象と未来志向
3 破綻する時間の物語ーー大田洋子『夕凪の街と人とーー一九五三年の実態』
4 〈未来〉は誰のものか
5 〈未来〉の諸相
終章 〈無色〉な主体のゆくえーー「声」の承認をめぐって
初出一覧
おわりに
日本社会で長期間にわたって居住している高学歴移民女性について、包括的な「ライフコース」の視点からその経験と現状を明らかにし、そこからみえてきた問題の解決策を探る。従来の移民女性像を超え、多様な生き方を描き出す移民研究・ジェンダー研究の最新成果。
人間精神の自由と平等を標榜し、
19世紀アメリカ・ルネッサンス期を代表する思想家、
ラルフ・ウォルドー・エマソン(1803-82)。
「自己信頼」を信条に個人主義を貫くエマソンは、
アメリカ社会発展のシンボルとされ、
社会改革者としての側面は見過ごされてきた。
「自己信頼」にもとづく個人主義と、社会に対する責務で
葛藤するエマソンは、自然科学、とくに進化論をとおして、
自身の改革思想を形成していく。
本書では、主に進化、人種、ジェンダーの視座から、
エマソンの社会改革思想を包括的に検証し、
さらに、奴隷制廃止運動と女性解放運動といった、
当時の社会改革運動とエマソンの関わりを詳述、
社会改革者としてのエマソンを再評価する。
また、エマソンの家庭、
マーガレット・フラーやヘンリー・D・ソローとの交友関係にも
焦点をあて、思想の実践も考察する。
目次内容
序章
第1章 自然科学と進化にみる思想の原点
1 自己信頼と社会改革観
2 自然科学への関心ーー「対応の思想」と信仰の確立
3 進化思想と楽観主義ーー神意の象徴としての上昇螺旋運動
第2章 エマソンと奴隷制
1 社会への責務と正義感ーー個人と社会の狭間で
2 奴隷制問題と人種観を巡って
3 奴隷制廃止運動への参加
第3章 エマソンと女性の権利
1 女性解放運動への関わりーー理想の女性像との葛藤
2 「女性について」(1855)にみる女性観
3 思想の変化ーー1869年の講演から
第4章 家庭におけるエマソンと思想の実践
1 夫婦の関係と結婚観
2 愛と友情ーーフラーやソローとの交友関係を中心に
3 妻リディアンと「真の女性らしさ」
終章
SDGsの前身であるMDGsの達成において、ラオスは保健、教育、ジェンダー平等の分野でどのように成果をあげたのか。ラオ族、カム族、モン族の村での調査を踏まえ、国家の政策実施能力を補完するラオス女性同盟の役割を中心に目標達成のメカニズムを明らかにする。
この本は、2013年11月16、17日に開催した日中韓女性史国際シンポジウム「女性史・ジェンダー史からみる東アジアの歴史像」の諸報告と、2014年3月22日開催の総合女性史学会大会「女性史・ジェンダー史からみる東アジアの歴史像ー女性史の新たな可能性を求めて」における諸報告を再構成し、1冊にまとめたものです。
欧米には見られない独特なジャンルである「少女小説」。明治末期から現在までの少女小説の物語構造を代表的な作品やジュニア小説・コバルト文庫、マンガ、ラノベを素材に読み解いて、時代ごとに変わる“少女像”や少年/少女の分割線の変容をあぶり出す。そして、明治末から百年間にわたり受容されてきた少女小説がはらむジェンダーの問題系を解明する。
避難所、仮設住宅、復興行政など復興に関わるあらゆる場面で女性たちの声がかき消されてしまっている。女性の声はなぜ聴かれないのか。災害・復興におけるジェンダーについて考える。
市民主権による平和構築の必要性を訴えるとともにジェンダー平等実現のための課題と展望について熱く語った待望の講演録。代理母・クォータ制・平和的生存権など最新の問題に憲法から切り込む渾身のメッセージ。
序 章 近代の旅路ーー1903年中国女性
第一章 中国民族主義の神話ーー進化論・人種観・博覧会事件
1 中国近代の民族主義をめぐって
2 華夷・人種の表象
3 「保国」「保種」と社会進化論
4 黄帝神話・黄種・黄禍論
5 大阪博覧会事件
6 章炳麟の対周縁少数民族観
7 進化論と民族主義の行方
第二章 恋愛神聖と優生思想
1 五四新文化ディスコース
2 中国における優生学の受容
3 人口論・産児制限・恋愛結婚と優生思想
4 社会変革・女性解放言説と優生思想ーー周作人・周建人を中心に
5 優生学論争ーー周建人・潘光旦
6 恋愛の行方・フェミニズムの困境
第三章 足のディスコース
1 身体の国民化
2 纏足の表象
3 国粋から「残廃」・国恥へ
4 「落伍の足」の苦悩
5 纏足の末路と「質」の再発見
第四章 民族学・多民族国家論ーー費孝通
1 多民族性
2 近代中国人類・民族学の成立
3 費孝通の思想形成
4 「マルクス主義」の困難
5 「多元一体」中華民族論
終 章 近代から見える現在
注
参考文献
あとがき
人名索引
ビューティー・サロンは「女らしさ」を読み解く絶好のスポット。身体・ジェンダー・健康をめぐる利用客の多彩な関心と、美容という労働の位置と経験を鮮やかに浮かび上がらせ、新たなフェミニスト思想の地平を拓く。
不安定な現代社会,わが子の将来を憂う親たちの心は揺れている。「やりたいことをさせてあげたい」「自立してほしい」「女の子だから近くにいてほしい」……。ジェンダー,経済,地域の違いによって中間層の親たちがとる子育て戦略・実践はどう変化するのか。
第I部 地域と格差社会
第1章 親の教育行動と地域差
第2章 公教育に対する親の意識の地域差ーー公立学校教育改革の進行と「脱出」意欲の変容
第3章 進学に向けての地域格差とジェンダー格差ーー背景にあるケア役割への期待
第II部 ジェンダーという格差
第4章 女性の就業選択ーー母親の就業経歴を中心に
第5章 教育する父親の意識と実践
第6章 家族の実践とジェンダーの構築
第III部 子育てする親の戦略
第7章 子どもの「主体的進路選択」と親のかかわり
第8章 個人化する社会と親の教育期待
終章 子育ては変わるのかーー格差社会を越える子ども観・子育て観を考える
摂食障害の経験をもつ女性の感情や気持に耳をかたむけ、その言葉を通して、女性と性をとりまく問題群を明るみに出す。