中国、台湾、韓国、北朝鮮そして日本の社会におけるジェンダーのあり方を詳細に検討し、性別による制約から自由な社会を構想する。
この本は、性差別や性役割分業などと呼ばれる問題を、東アジアの諸社会の中で比較し、その上で日本社会の特徴を浮かびあがらせようという試みである。「東アジアの家父長制」というタイトルは、家父長制という言葉になじみのない読者には、いささかとっつきにくい印象を与えるかもしれないが、われわれの暮らす社会が、性別に基づいて、どのように編成された社会であるのかを、家父長制という概念を用いながら明らかにしていきたい。〈まえがき〉より
まえがき
序 章 ジェンダーの比較社会学へ向けて
第I部
第一章 家父長制とは何か
1 家父長制の交通整理
2 従来の文化人類学・社会学などにおける用法
3 欧米のフェミニズムにおける用法
4 汎通性ある家父長制概念の構築へ向けて
第二章 主婦の誕生と変遷ーー既婚女性の労働力化と主婦化
1 アプローチの整理
2 主婦の誕生と変遷の図式ーー資本主義型
3 社会主義型
第三章 欧米の家父長制と主婦の変遷
1 原生的労働関係から近代主婦の誕生ーーイギリスを中心として
2 現代主婦の誕生ーーアメリカを中心に
3 主婦の消滅? --北欧を中心として
4 社会主義型
第II部
第四章 日本の近代主婦と家父長制
1 原生的労働関係とそこからの脱却
2 日本型の近代的家父長制の背景ーー儒教と女性、良妻賢母主義を中心に
3 近代主婦の誕生
4 戦時下の近代主婦ーー再び母性の強調
第五章 日本の現代主婦と家父長制
1 戦後の高度成長ーー産業化の新しい展開
2 日本の現代家父長制ーー新たな規範の形成
3 主体の側の対応
4 日本における現代主婦
5 現代日本の家父長制とその問題点
第III部
第六章 韓国の家父長制
1 韓国における産業化
2 韓国型家父長制の背景
3 韓国女性の就労形態
4 韓国型の家父長制
第七章 台湾の家父長制
1 台湾における産業化
2 台湾型家父長制の背景
3 台湾女性の就労形態
4 台湾型の家父長制
第八章 北朝鮮の家父長制
1 社会主義化ーーその政策の展開と女性観
2 脱社会主義化ーー金日成化と伝統との共鳴
第九章 中国の家父長制
1 社会主義化
2 脱社会主義化
3 中国におけるジェンダーの現状と将来
第十章 結論
1 東アジアのジェンダーの比較社会学
2 現代日本における「女性問題」の解決へ向けて
男とフェミニズム? --あとがきにかえて
参考文献
索 引
本書は、日本における「科学としての政治学」の軌跡をたどる。
学会を創設し、行動論を徐々に受容する一方、マルクス主義の成果を一部摂取しながら、時代とともに変貌していく様子を描く。
その歴史を丸山眞男、升味準之輔、京極純一、『レヴァイアサン』グループ、佐藤誠三郎などの研究成果を踏まえながら論じる。
さらに、政治改革、ジェンダー研究、実験政治学など具体的な論点も照らし、その見取り図を示す。
日本以上のペースで少子高齢化が進む韓国は、「雇用許可制」を導入し、非熟練外国人労働者を正式に受け入れる政策転換に踏み切った。その労働政策、語学教育、結婚移民などの話題を現地取材で掘り下げ、問題が山積する日本の外国人政策に示唆を与える必読書。
他者のない愛を営むナルシスト、他者の非存在を生きる独我論者、オカルト・輪廻転生・宗教などのブームの背景にある神秘主義の興隆。超母権文明の到来の中で、エロスは迷宮化し、自我は溶解し、アモルファス化する…。世紀末の男性論をリードしてきた心理学者が、新たなる他者論と世界観の心理学を構想しつつ世に問う、最も先鋭的な文明の書。
長時間労働、過労死、社畜、経済摩擦…。繰り返し指摘されてきた、日本の企業中心社会が作り出す歪み。だが、従来の議論ではある問題がー女性と男性が直面する〈現実〉の違いがー忘れられてはいなかっただろうか。「ジェンダー(性別)関係」をキーワードに、あらたな角度から現代日本の構造と動態をとらえる刺激的な試み。
世界の男女平等趨勢に照らして、不公正と言うべき日本の労働・生活・政策のジェンダー・バイアス。日独比較を通して変革のために何が必要かを説く。
映画と文学からのアプローチ。アメリカの現在の文化情勢を文学的な立場から概観する。たんなる文学研究から文化研究へと視野を広げることで、多元文化主義にもとづく「アメリカの近代」の姿が、その矛盾とともに浮かび上がる。
ヴェトナム系アメリカ人の女性の眼で、アジア・アフリカの「周縁性」を解体するー詩的に、そして分析的に。ドキュメンタリー映画論ほか、挑戦的な批評。
教育現場に自信と誇りを取り戻すことはできるだろうか。偏見にみちた短大のイメージを壊し、学生と教員の本音を引き出す。
家族単位から個人単位へ。差別的な社会秩序の変革を目標に、われわれの常識、法律・福祉など具体的諸制度を考察する。男女両性にとっての解放論。
芸術作品として鑑賞されてきた日本の絵画をもう一度見なおしてみよう。美しくあるいはエロチックに描かれたたくさんの女性像がある。これら女性像はどういう状況の下で描かれたのか。平安時代から近代まで、絵画に描かれた女性像をとりあげ、時代や社会が女性に何を求めていたのか、女と男の関係はどうなっていたのか、その隠されたメッセージを読み解く。新しい美術史入門。
いま『女性として生きる』とは?「女らしさ」を再生産する文化的装置と社会心理を徹底的に解明し、女性が真にエンパワメントする条件を追求する入魂の労作。
近代日本の思想モラルの本質を問う。
両性の平等教育は、文化的、歴史的に形成された性別秩序ージェンダーを見直し、旧来のそれにとらわれない、対等・平等な関係を男女生徒にいかに育てていくかというジェンダー・フリーの教育としてもとらえられ、実践されるようになってきた。本書は、これまで全国各地で行われたすぐれた実践を皆で共有し、さらに発展、普及させることを目標とするもの。小、中、高のさまざまな教科で授業として取り組まれた実践、授業以外の諸活動による実践を取りあげている。