歯牙解剖は技工士として直接関連がある歯と,そしてこれに密接な関係をもつ口腔,およびその周辺の形態と構造を攻究する学問である.したがって歯科技工士を志す人々が最初に学ぶ学問である.故に本書は歯科技工士教授要綱に基づいているが,内容は簡略に,そしてぜひ学び知らねばならない点について詳しく,かつ理解しやすいよう記述した.
無歯顎者の口腔に装着されている全部床義歯の多くが著しく不適切な床外形をしており、特に下顎義歯にこの傾向が著しい。正しい印象採得の技術は今世紀初頭から明らかにされているが、多くの全部床義歯補綴に関する成書にはきめ細かなフォローに至るまで明示されていない。本書は、解剖学およびそれに基づく印象技術はもちろん、従来の成書には見られなかった患者の心理状態や取り扱い方にまで及び、総義歯は患者と一体になって作り上げるものだという観点に立って書かれた印象採得のためのユニークな書である。
本別冊は、去る’86年2月、東京で行なわれたザ・クインテッセンス・シンポジウムの各講演内容を、演者(シンポジスト)の方々に論文としてまとめいただき、収録したものです。